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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

801使空高:2010/06/25(金) 06:49:32 ID:6kZ6pi7U
 そうやってお喋りしつつ、人波に半ば飲まれながらぶらりぶらりと歩いているうちに、地面に跳ね
る日の光がまた強くなっていた。だいたいに空腹の募る頃合である。リキエルたちは朝食もとらずに
学院を発っていたから、それもひとしおであった。
 手ごろな料理屋に入って、今日の薦めを頼んだ。出てきたのは、塩を振った小鯛を蒸し焼きして、
ハーブで香り付けしたものである。いささかきつい香りではあったが、いざ食べてみると、それが軟
らかい魚の身と塩味によくよく絡んで、うまいのだった。少々値は張ったが、胃も心も満たされたあ
とでは、それもまったく気にならなかった。
 食事の後、ふたりは一度別れて動くことにした。せっかく街に来たのだし、各自で自由に見て回ろ
うとルイズが言い出したのである。
「この前は武器屋に行ったきりだしね。どうかしら」
「別に構いやしねえぜ。合流はどうする?」
 ルイズは額に指を当てて、ちょっと考えるそぶりをした。
「そうね。……ここから先にちょっと行くと花壇のある広場に出るんだけど、そこにしましょう。時
刻は二時間後、一時でいいかしら。鐘が鳴ったらすぐにね」
「二時間後に広場だな? よし」
「それじゃあ、はい。お金。スリなんかに取られないでね」

◆ ◆ ◆

 ひとりになってからも、リキエルはただぶらぶらと歩いている。目当てはなかった。そもそも、ど
こに何があるのかも知らない。来たのはこれで二度目だが、ルイズの言ったように、武器屋を見て帰
っただけの街だった。
 とはいえ、退屈かといえばそうでもない。この前とは違って、心には当て所なく歩きながらも、周
囲を見渡せる余裕というものがある。人ごみにはいまだに慣れが来ず、ともすればパニックに陥る自
分の姿が頭をよぎることもあるが、そのまま発作を起こすことはないから、以前と比べればマシもマ
シである。
 ――まだすこし、情緒不安定ではあるがなぁ。自分で言うのも奇妙だが。
 実際ブルドンネは、歩いているだけでなかなかに面白いところだった。
 大通りと言いながら、男が五人も並べば一杯になる程度の、いわゆる商店街である。色々なものが
雑然とただ詰め込まれているように見えながらも、そこには何がしか秩序が根付いていた。人を含め
た街全体が、ひとつのものとして動いている。そういう気配が、目で見、耳で聞くうちに伝わってく
るのだ。
 ときたま、そういった秩序に漏れる動きも見えた。そうした動きを意識して目で追ってみると、い
つも貴族らしい人間が居るのだった。やはり平民と貴族との間には、どうにも隔たるところがあるら
しいな、とリキエルは思った。が、しばらく観察していると、一見して場違いなように見える貴族た
ちも、結局は街に内包された存在としてあるのがわかってきた。
 懐の深い、とでも言うのだろうか。手狭なようでいて、実際に歩いてみるとその深さが見えてくる。
そんなところがこの通り、ひいては街の魅力となり、活気の源となっているのかもしれない。リキエ
ルはそんなふうに思った。
 迷わないようにとだけ考えて、リキエルは気の向くまま動く。それは街という生き物の中をめぐる、
血液の流れの一部のようでもある。通りの右をふらりふらりと歩いては、各種の飾りを扱っているら
しい店の軒下に入り、その巧みさに見入って凝然とし、挙句冷やかしと見破られて店主に追い出され
たりする。街の左をぶらぶらと行けば、途中で見せ売りに行き会って、その場にいたほかの人間と一
緒に、売り子の元気な口上に耳を傾けたりした。


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