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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

783ティータイムは幽霊屋敷で:2010/04/26(月) 18:34:03 ID:5xWlG0aw

「てめぇええええーーー!!」

その返答に、才人は雄叫びとも悲鳴ともつかない絶叫を放った。
動かなかった足は前に、腕を引き千切れんばかりに振り回し、
まるで狂ったかのようにひたすらウェールズに剣を打ち込み続ける。
命を燃やし尽くすかの如く彼は立ち向かっていった。

「そんな事……! 誰にも、誰にだって言わさせねえ!」
「………………」

しかし、それは披露する前に比べてあまりにも鈍く遅く稚拙な物だった。
子供をあしらうかのようにウェールズが決死の反撃を事もなしに凌ぐ。
激昂する才人の動きは単調そのもの。不用意に踏み込んだ一撃を絡めとって剣を弾き飛ばす。
唯一の武器を失った才人にウェールズは軍杖の先端を突きつけた。
勝負はついた。その結果に多くの者から安堵の息が洩れた、才人の身を案じる者達からも。
戦う術を失った以上、これ以上手向かう事は無い。故に殺される心配も無いのだ。
後は何とかウェールズを説き伏せて容赦を願い出るだけ。

だが、そんな彼女達の想いを無視して才人は無手となった腕を振り回す。
剣でさえ当てられなかったのにウェールズに拳が届くはずもない。
放った拳は悉く宙を掻き、掠る気配さえ感じさせない。
才人の出血は致死量に達しようとしている、それにも拘らず彼は戦う事を止めようとしない。
死を前にしても立ちはだかる、その異様な姿にウェールズは言葉を失った。
「何故だ……? 何故そこまでする……」
ようやく搾り出した言葉は降伏勧告ではなく疑問の声だった。


白に染まっていく視界の中、がむしゃらに才人は拳を振り回す。
当たっているのか、届いているのか、それさえも分からない。
千切れかけた意識で崩れ落ちそうな身体をただひたすらに突き動かし続ける。

俺は何も背負っていない、と奴は言った。
それは正しい、俺には何も無い。
力も、金も、魔法も、権力も、俺は何も持っていない。
親も、ダチも、家も、学校も、ここにはない。
俺の事を知っている奴なんて誰もいないし、俺が知ってる奴もいない。
確かな物なんて何一つない……俺はゼロなんだ。
―――だから俺は『自分』だけは曲げるわけにいかねえ。

あの頃みたいに流されて生きれば楽だろうさ。
目の前で起こる事に目を瞑って、貝みたいに口を閉ざせばいい。
ルイズに黙って従い、貴族連中にもおべっか使って適当にやってりゃいい。
そうすれば少なくともこんな死にそうな思いなんてしなくていい。
だけど、そうなっちまったら俺は『平賀才人』じゃなくなっちまう。
最後に残ったものが自分だけというなら、それを守り通さなきゃいけない。

この世界でどっちが正しいかなんて俺には分からない。
だけど、俺は間違っていると思った事に首を縦に振らない。
ガキだって笑われたっていい。この意地が、このバカが『俺』なんだ。
だから許せないものがあるなら俺は絶対に譲らない、絶対にだ。


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