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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

782ティータイムは幽霊屋敷で:2010/04/26(月) 18:32:32 ID:5xWlG0aw

「やめてください! もういいんです!」

ティファニアは叫んだ。瞳から大粒の涙を零しながら必死に声を張り上げた。
もうこれ以上、誰かが血を流すのを見たくなかった。ましてや、それが自分のためなら尚更。
ここで自分が犠牲になればそれで済むというのならそれも仕方ないと思った。
だけど、懇願するような彼女の声は剣を振るう少年の耳には届かない。
傍観することしかできず悲嘆に暮れる少女をマチルダは優しく抱きとめた。


「あの娘は貴様の何だ? 妹か?恋人か?それとも恩人か? 違う、赤の他人だ!」
「それを守る理由は何だ! ただの同情、憐憫の感情にすぎん!」
「そんな安っぽい正義感で、この私の前に立ちはだかるな!」

ウェールズの口から吐き出されるのは詠唱ではなく罵倒とも叱責とも取れる雄叫び。
感情を剥き出しに苛立ちを形に変えるかのように杖を叩き込み続ける。
彼の憎悪の対象はいつしかティファニアから才人へと移っていた。
大義を背負って苦難の道を歩む彼を無知な平民が遮る。
それがどれだけ自分と死んだ者達を侮辱する行為か、恐らく相手は理解していない。
―――だからこそ許せないのだ。

「無念のうちに死んでいった父上やバリー、部下達の心が!
アルビオンに生きる全ての民を守らねばならぬ責務の重さが!
全てを失った私の気持ちが! 何も背負わず奇麗事を抜かす貴様に分かるというのか!」

受けに回った剣を力任せに薙ぎ払う。
激しい衝撃が握りから腕、肩まで痺れを伝導させる。
すかさず繰り出されるウェールズの追撃に血飛沫が舞う。
刻まれたガンダールヴのルーンは輝きを失い、
腕は鉛みたいに重く、脚は泥沼に沈んだかのように身動きが取れない。
傷口からは思い出したかのように痛みと熱が、剣を握る手には既に感覚がない。
それでも才人はウェールズを睨み返しながら背後の少女を指し示す。

「あの子が何をしたって言うんだよ。泣いてるじゃねえか。
誰にも傷付いてほしくないって、敵味方なしに倒れた連中の為に悲しんでるじゃねえか。
そんな子にどんな罪があるってんだ! 言ってみろよ!」
 
なけなしの気力を振り絞った才人の剣が直上から振り下ろされる。
しかし、その一撃もウェールズの身には届かず虚しく宙を切った。
背後にいるティファニアの姿を見やったウェールズの表情が僅かに曇る。
それでも彼は断固たる決意で言い放った。

「彼女の罪は―――この世に生を受けた事だ」

生まれた事、それ自体が悪であるとウェールズはそう断言した。
ティファニアの存在が知れ渡ればアルビオンは破滅する。
王家の血筋に異教徒であるエルフの血が混じる、この事実は王家の権威を失墜させるだろう。
そうなればアルビオン全土の貴族諸侯はテューダー王家に取って代わらんと内乱を引き起こし、
そうして混乱の坩堝と化したアルビオンを治安維持の名目で侵攻すべく各国も動き出す。
かつての家臣たちが互いに殺し合い、愛した祖国は他国の軍勢に蹂躙される。
焼かれ、奪われ、殺され、傷付けられ、追い出され、アルビオンは全てを失うだろう。
たった一人の命とアルビオン王国を秤にかける事などできない。


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