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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

781ティータイムは幽霊屋敷で:2010/04/26(月) 18:31:15 ID:5xWlG0aw

交錯する杖と刃。それに乗せられた互いの意地がぶつかり合って火花と散る。
出方を窺う小手先の業など1つとしてない。両者は渾身の力を込めて得物を振るう。
絶え間なく響く剣戟にエンポリオは直感した――“この戦いはどちらかが倒れるまで終わらない”と。

「おねえちゃん! 二人を止めて! このままじゃ……」
「無理だね。もう言葉なんかアイツらには届かないよ」

必死に裾に縋りつくエンポリオを一瞥もせずに振り払う。
言葉でダメなら実力行使か? ―――バカらしい。
あの旋風じみた斬り合いに飛び込もうなんてのは自殺志願者だけだ。
切り結ぶ両者を苛立たしげにイザベラは眺める。
彼女は彼等の実力を読み違えていた。
ただのお坊ちゃんだと思っていたウェールズにかつての面影はない。
憎悪が彼を更なる高みに引き上げたのだろう、すでに彼の魔法はスクエアに達している。
何より敵を必殺せんとする修羅の如き気迫はかつての彼にはなかった物だ。
しかし、それにもまして予想外だったのは、それを防ぎ続ける平民の方だった。
メイジでさえ数合も持つまいと思われる猛攻を粗末な剣で凌ぎ続ける。
それも技量ではなく並外れた膂力と運動神経だけで。
だが遂に体力が限界を迎えたのか、見る間に才人の動きは失速していく。
このままなら遠からず才人の首はウェールズに切り落とされるだろう。

イザベラの視線が才人に向けられる。
平民でありながらこれだけの実力を持ち、しかも何処の国にも所属していない。
自らの手駒にするなら万金を積んでも惜しくない人材だ。―――だが命を張るほど重要でもない。
ただのバカなら要らない。自分の立場も弁えずに誰彼噛み付く狂犬を飼うつもりはない。
何かある度に他人の尻拭いに駆り出されるなんて冗談じゃない。
仮にも王族に刃を向けたんだ。ルイズも心のどこかでは諦めているだろう。
どうせ死ねば次の使い魔が召喚できる。そしたら今度こそまともな物を呼び出せばいい。
―――まあ正直、見てて飽きない奴だから死なれると少しは困るか。

「剣を捨てて命乞いするってんなら手助けしてやらない事もないけどね」


決闘を見つめていた二人の姫は対称的に表情を変えた。
ウェールズの身を案じていたアンリエッタは安堵に顔を緩めた。
彼女にしてみれば婚約者が突然、暴漢に襲われたような物だった。
誰が何を言おうともこの場の正義はウェールズにある。
この世界に住まう人間にとってエルフは不倶戴天の大敵。
仮にウェールズの言葉が嘘だったとしても生かしておくわけにはいかない。
無論、アンリエッタが彼の言葉を疑うなどありえない。
本来ならばワルド子爵を仕向けて成敗する所だが、彼は親友の使い魔でもある。
そんな事をして嫌われたくはないと思うのが心情だった。
何よりもウェールズが自分で決着を付けようとしている―――少なくとも彼女にはそう見えたのだ。

逆に才人の窮地に思わずシャルロットは顔を背けた。
防ぎきれなくなった軍杖が無惨に才人の体を削ぎ落としていく。
最初は服、そして皮膚、ついには血が飛び散るまでに肉を抉りはじめる。
このままでは間違いなく才人は殺される。
声を上げようとするも二人の気迫に飲まれて何も言えない。
何を言えばいいのか、言ったとしても聞き届けてもらえるだろうか。
今はドレスもティアラもない、ただの無力な少女でしかないのに。
彼女は一心不乱に祈った。それだけが自分にできる事と信じて。
たとえどんなにみっともなくていい。今すぐ剣を捨ててウェールズに謝罪して欲しいと。
そうすれば後は私が庇う。お父様や叔父上の力を借りてでも守り抜く。
英雄であって欲しいと思った少年に、今度は英雄である事を捨てて欲しいと強く願う。
そんな恥知らずな想いを抱くほどシャルロットにとって彼は特別な存在だった。


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