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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

772使空高:2009/12/30(水) 13:47:29 ID:kFLIND6Y
「何のことだか、私には見当もつかんかった。じゃが、君が召喚されて来た後でな、あのコルベール
君が興奮して語ってくれたのじゃ。君と一緒に召喚された奇妙な形をした物体を、君から借り受けた
とな。それで、死んだ彼と彼の持っていた『破壊の杖』が思い起こされた。もしやと思うた。彼や君
は、このハルケギニアとはまったく別の場所から来たのでは、と」
 問いかけて来るようなオスマン氏の視線を受けて、リキエルは答えた。
「オレの住んでたところは、アメリカって国のフロリダって州です。話を聞く限りじゃ、その恩人も
アメリカ人なんじゃねーッスかね。そして、ロケットランチャーいくつも抱えてるなんてよォー、尋
常じゃあないぜ。どこかで、紛争だか戦争やってたんだ、きっと」
「戦争か。それで彼は傷を負ったか。まだ若い身空でのぉ、さぞ国に帰りたかったじゃろう」
 改めて悼むように、オスマン氏は深く息をついた。それから顔を上げると、リキエルに笑いかけた。
「すまんかったな。老いぼれのために時間を割かせてしまったの」
「いや、いい時間を過ごせたんじゃねーかと思いますよ。たぶん、互いに」
「重畳じゃな。よければこの後のパーティーも、楽しんでくれたまえ。君も主役の一人じゃ」
「せいぜいそうさせてもらうかな。料理なんかは期待大だ。……ああ、そうだ。こっちからもよォ〜、
一つ聞きたいんスけど、いいですか?」
 踵を返しかけてとどまり、リキエルがたずねた。オスマン氏は鷹揚に頷いた。
「確認みたいなもんなんスすけどね。オレのこの左手の、これ。武器なんかを持つと光って、体が軽
くなったりするんスけど、使い魔の能力ってやつなんですか?」
「いかにもそうじゃ。そのルーンをつける者は『ガンダールヴ』といってな、強力な使い魔じゃ。そ
して、ここだけの話――」
 オスマン氏はそこで区切りをつけた。そしてリキエルに、もっと近くに来るよう手真似した。さら
にリキエルが側に来ると、机の上に身を乗り出して、必要もないのに声をひそめて続けた。
「伝説の使い魔の証でもある」
 リキエルは眉を上げた。オスマン氏の大仰な態度からして、話半分で聞くべきことかも知れなかっ
たが、それ以上に興味をひかれた。
「伝説? それじゃあ、オレは伝説の使い魔か」
「うむ。なぜそのルーンが君についたのか、それは皆目わからんがな」
 無責任に言って、オスマン氏は元のように椅子に納まった。それから何事か思いついたように、そ
うじゃそうじゃと呟き手を叩いた。
「何も褒美が出せん代わり、と言ってはあれじゃが、これを受け取ってくれんか」
 言いながらオスマン氏は、机の引き出しを開けた。
「これも、彼の形見の品じゃ。『固定化』があるとはいえ、さすがに土の下に埋めるのもはばかられた
のでな」
 オスマン氏が差し出して来たものを、リキエルは反射的に受け取った。
 手のひらに余るくらいの、一冊の本だった。別段、読書家というわけでもないリキエルにとっても、
その題名はある種の馴染み深さを感じさせるものだった。版はかなり古く、ところどころがよれてし
まっているが、聖書である。オスマン氏の恩人とやらは、よほど信心深い人間だったのだろう。
 しげしげと書を眺めるリキエルに、オスマン氏は言った。
「どうやらそれも、君の世界のものらしいの。私には読めんかったよ。まあ、本は読める人間の手元
にあった方がよいじゃろうて」

◆ ◆ ◆

 会場のホールに着いたときには、舞踏会はもうはじまっていた。安っぽさのない華美な装飾や、食
物とも見えないほど見事に盛られた馳走の数々、常の様子とはうって変わって優麗に動く生徒の群れ
が、まさしくと思わせた。リキエルは、ルイズがどこかにいはしないかと目をせわしなくしたが、と
ても見つけられるものではなかった。


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