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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

771使空高:2009/12/30(水) 13:46:37 ID:kFLIND6Y
「うむ。そのむかし、私が東方の地で修めたパズス流柔術の奥義を、彼に授けようと思うのじゃ。門
外不出なのでな、君にも見せられん。わかってくれ」
 コルベールは苦笑とも呆れともつかない顔をして、しょうがないですなとこぼしつつ、出て行った。


「さて、君に残ってもらったのは他でもない。ちょいと聞きたいことがあるでな。それと、話したい
こともじゃ」
 悪いの、と言ってオスマン氏は笑い、腕を組んで考える姿になった。話したいこととやらを、頭の
中で整理している様子である。それから間もなく、オスマン氏は静かに語り始めた。
 いまから三十年ほども前、オスマン氏はある森を散策しているとき、ワイバーンに襲われた。見た
こともないほど巨大な、雌の個体だったという。折も折で体調を崩していたオスマン氏は、逃げるの
がやっとだった。
 あっという間に追いつかれ、オスマン氏はやむなく杖を抜いた。あるいは軽くない手傷を負うだろ
うが、倒せる自信はあった。だがそうなれば、付近に人里の気配も見えない深い森であったから、後
は野垂れ死ぬに任せる他にない状態だった。
 ここで死ぬや否やと腹をくくりながら、オスマン氏はワイバーンと正対する機をうかがった。勝機
があるとすれば、それは不意討ちだった。
 そしてワイバーンが、オスマン氏にそのひとの腕ほどもある牙を剥いたときだった。オスマン氏は
耳を飛ばすような大音を背に受けた。振り返ったオスマン氏は、逆に射す陽の光の中に二つの筒――
『破壊の杖』を抱えた、大柄なひとの形を認めた。そしてそうかと思う間に、その人影はゆらりと傾
いで倒れた。
 彼は傷を負っていた。オスマン氏は直ぐに彼を学院に連れ帰り、手厚い看護を施したのだが、手遅
れだった。傷はそう深くもかったのだが、ずいぶんと前に、そこから悪いものが入り込んでいたらし
かった。三日して、彼は死んだ。
「そのときの『杖』は、彼の墓に一緒に埋めた。そしてもう一本は、恩人の形見っちゅうことで、勝
手に拝借させてもらった。それが今回、君らの取り戻してくれたものじゃ」
 オスマン氏は、懐かしむようにしばし目を閉じてから、リキエルに目を向けた。穏やかだが、どこ
か刺すようなものも孕む視線だった。
「ところでじゃ。つかぬことを聞かせてもらうがの」
「はあ」
「君は、どこから来たのだね? 包み隠さずに言うてほしい」
「オレは――」
 そこで言葉を切って、リキエルはしばし考えたが、結局は正直に言うことにした。隠すことでもな
いと思った。ただ、自分でも与太話に思えるような出来事を、目の前の学院長が信じるかはわからな
いとも思った。
「オレが来たのは、こことは違う世界なんスよ。あるときちょっとしたことがあって、気を失っちま
ったんスけど、次に目が覚めたら、ルイズに召喚されてたってわけです」
「ふむ、そうか。そうなのじゃな」
 リキエルの案に反して、オスマン氏は得心したように頷いた。
「信じるんですか? オレは確かに事実を言ったつもりだが、冗談みたいな話だ」
「おお、信じるとも。というよりもな、わかった気がしたのじゃよ。……いま話した彼のことじゃが、
死ぬ間際まで、うわ言のように言っておった。元の世界に帰りたいとな」
「…………」


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