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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

765使空高:2009/12/30(水) 13:41:59 ID:kFLIND6Y
一章十五節〜使い魔は空を見る 土くれは壁を見る〜

「全員、杖を遠くに投げなさい」
 フーケの命令に、ルイズらはしぶる様子を見せた。
 貴族、メイジといっても、杖なしではただの人間である。いま杖を捨てるということは、唯一の対
抗手段を奪われるということだった。しかし『破壊の杖』を向けられていたのでは、結局どの道もな
い。皆大人しく杖を投げた。
 それを見届けると、フーケは懐から杖を取り出して振った。するとひとの背丈ほどもある、さきほ
どのゴーレムを思わせるような土で出来た腕があらわれる。腕は地を滑るような気味の悪い動きをす
ると、ルイズたちの杖を掴み取って操り主の足元まで運んだ。わざわざそんなことまでするあたり、
フーケも用心は怠っていないらしい。
「あんたも、その折れた剣を投げるのよ」
 リキエルにも声がかかった。フーケにしてみれば、自慢のゴーレムの攻めをことごとく避けられ、
挙句には受け止めまでされたのだから、当然といえばそうかも知れない。
 ここでもリキエルは、まるで自失した人間のように口を半開きにして空を眺めていたが、やがて緩
慢に視線を移して、手の中の剣の柄を見た。それから、これものんびりとした動きでフーケを見、瞬
きふたつ分ほどの間が経ってから、その足元めがけて無造作に柄を放り投げた。
 それから間もなく、リキエルの左手が輝きを失った。全身の傷の痛みが戻って来て、ひどい苦しみ
があるはずだが、リキエルはそれをおくびにも出さなかった。悠然ともいえる態度で、フーケを見返
している。
 その視線を不気味に思ったか、フーケは一瞬リキエルから目を外したが、自身の有利を思い直した
ようにまた強い目を向けた。
「この、嘘つきッ」
「いったいどうして!」
 少しでも時間を稼ごうという算段なのか、それとも単純に怒りがそうさせたものか、キュルケとル
イズが前後して叫んだ。
 それを受けたフーケは、小馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、動じる様子もなく淡淡と言った。
「義理はないけど、まあいいわ。教えてあげる。私ね、この『破壊の杖』を奪ったのはいいけれど、
使い方がわからなかったのよ。でも、わからなければひとに聞けばいいだけなのよね」
「学院関係者なら、それを知ってるだろうって?」
「そうよ。まさかあなたたちみたいな学生が出張るとは思わなかったし、あまり期待もしていなかっ
たけど、たまたま偶然、アタリを引いたみたいでよかったわ」
「……わたしたちの誰も、知らなかったらどうするつもりだったの?」
 眉をひそめながら、ルイズが聞いた。
「そのときは、全員ゴーレムで踏み潰して、次の連中を連れて来るだけよ。いい考えでしょ」
 ま、その手間もこうして省けたわけだけど。フーケは酷薄に笑って、あらためてルイズ達に見せつ
けるように、『破壊の杖』を乗せた肩を揺すった。
「さ、質問タイムはもう終わり。そろそろお別れのお時間かしらね。全員、もう少し後ろに下がって
ちょうだい。こんなに近くで使うと、私まで巻き込まれてしまうわ」
 なら自分が下がればいい。顔にそう書きながらも、ルイズたちはフーケの言いなりになって後退し
はじめた。せめてもの抵抗というように、ひどく遅遅とした動きであった。
 タバサなどはここに来てもフーケの隙をうかがって、反撃の糸口を探る様子だったが、賊もさる者
で、喋っている間もそういったほころびを微塵も見せなかった。どうやら本当にお手上げである。
 しかしそんな中で、やはり様子の違うやつがひとりいた。むろんリキエルである。こんなときだと
いうのに、顔色ひとつ指一本たりとも動かさず、奇怪なほどの落ち着きを見せる姿は、体を這う蟻を
気にしない牛といった風情である。あるいは純然たる馬鹿野郎にも見えなくはなかった。


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