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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

753ゼロいぬっ!:2009/07/13(月) 21:23:59 ID:ULXnYHKg

墜落した戦列艦が上げる黒煙に燻ぶ中、コルベールは歩き続けた。
背中越しに聞こえる兵士の歓声や悲鳴にも振り返る事はない。
腕の中には息遣いの絶えた犬。それを我が子の様に抱き締める。

出来るだけ、ここから遠く離れたいと強く願った。
戦乱に放浪されて傷付いた彼の終焉の地はここであってはならない。
血や硝煙の臭いではなく風が薫る花畑、あるいは世界を見渡せる小高い丘か、
どこか誰も知らぬ場所に、そして誰にも知られずに葬られる。
それがトリステインであれ他の国であれ、決して墓を暴かれ利用されるなどあってはならない。
彼は大切な者を守る為、命を尽くして戦った。
その魂の平穏を乱すような事はたとえ始祖と神であろうと許されない。

「やあやあ待っていたよミスタ・コルベール!」

聞き覚えのある耳障りな声が高らかに響く。
コルベールの視線の先には身形の良い貴族が一人。
それはアカデミーから派遣された例の男だった。

「さあ、その薄汚い犬を我々に引き渡したまえ。
これほど貴重な研究資料、土の中で腐らせるには惜しい」

男は“我々”という言葉を殊更強調した。
恐らくはアカデミーの総意を示しているのだろう。
逆らえばアカデミー、引いてはトリステイン王国への反逆となる。
止まっていたコルベールの足が再び前へと歩み始める。
それを見て男は笑みを浮かべる。

「いや、君は実によくやってくれた。
さすがはアカデミーに所属していただけの事はある。
怪物について調べ上げ、こうして我々の元に連れて来てくれた。
君の貢献に、アカデミーも君の復職を認めるだろう」

コルベールを招き入れるように大きく両手を広げてみせる。
だが彼はコルベールの処遇などに興味はなかった。
圧倒的な力を誇示した“バオー”を手に入れる為の口約束。
この遺体を調べ尽くし、再現する事が出来ればトリステイン王国は最強となる。
さらには彼が推奨した“光の杖”の軍事利用も夢想ではなくなったのだ。
形骸化したアカデミーもかつてのような発言力を手にし、自分はその頂点に立つ。
男の目に映るのはコルベールではなく遥かな高みへと続く階段。

コルベールが男へと歩ずつ歩み寄る。
やがて互いの手が届く距離にまで近付き、男は手を差し伸べた。
しかし“彼”へと伸ばされた手は空を切った。
戸惑う男の横をコルベールは平然と通り抜けていく。

完全に無視された形となった男の拳が震える。
怒りと恥ずかしさが込み上げて顔を著しく高潮させる。
そしてコルベールへと振り返ると声を荒げて叫んだ。


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