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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

738ゼロいぬっ!:2009/07/01(水) 23:38:44 ID:fafafQwU

疑いの眼差しを向ける兵士達に、やれやれと男は頭を掻いた。
やはり、こういった連中を動かすのはもっと目先の物でなければ。
その上で最も効果的な物を彼は長年の経験から熟知していた。

「じゃあ、こいつは知っているか。
今アルビオンにゃ兵士達の慰労の為に高級酒場が幾つも出張してるってな」

先輩の言葉に耳を貸さなかった兵士達の耳が動く。
彼等の視線は先行する彼へと向けられている。
それを感じ取ってニヤリと男は笑みを浮かべた。
結局の所、兵士を良く動かすのは出世欲や名誉欲ではない。
もっと純粋な三大欲求こそが彼等を突き動かすのだ。

「さすがに貴族の御偉方に手は出せねえが商売女なら話は別だ。
だがな、路地裏で客取ってるような安物じゃねえぞ。
伯爵様方も夢中になって金貨を落としていく最高級品だ。
いいか、早い者勝ちだ! 真っ先に港に辿り着いた奴から好きなのを選ばせてやる!」

男の言葉に兵士達は槍を手に雄叫びを上げた。
足取りは力強く、纏わりつく泥を跳ね飛ばしながら突き進む。
そこには先程までの重い足取りをした弱卒はいない。
今の連中は文字通り、飢えたケダモノどもだ。
“分かりやすく、そして扱いやすい連中だ”と呆れ半分で笑みを浮かべる。

その一方で士気の上がらぬ兵士達もいた。
新兵ならばそれも仕方ないと思ったかもしれない。
だが、その一団は貴族派だった頃からの正規兵達だった。
見れば顔は青白く、その身体は小刻みに震えていた。
それは雨風の冷たさばかりではなく内から込み上げる何かに起因しているように見えた。

「まるで分かっちゃいねえ! トリステインにはあの“ニューカッスルの怪物”がいるんだぞ!」

怯える兵士達の一人が耐え切れず、遂にその名前を口にした。
途端、血気に逸る若手達もそれを鼓舞する古参兵も全員が凍りついた。
“ニューカッスルの怪物”それはアルビオン軍では不吉の象徴とも言われる存在だった。
最初に現れたニューカッスル城では城内に進入した傭兵団を悉く殺し尽くし、
さらには包囲していた大軍にも襲いかかり多数の死傷者を出したと伝えられている。
またタルブ戦にも現れて何隻もの艦艇を沈めたとの逸話もある。
一時期、その怪物がトリステイン王国の生み出した生物兵器であるとの話も出てきた。
だが、それらはあくまで噂に過ぎない。

しかし、この兵団は“彼”の実在を知っていた。
彼等はニューカスル城に後詰として参加し、
城内と城外、無数に転がった人とも物とも区別の付かぬ肉塊を目にした。
かろうじて生き残った者達からは怪物が齎した身の毛もよだつ恐怖を聞かされ、
どこからともなく響く獣の遠吠えに身を竦ませた。
ニューカッスルも、タルブも、今も同じだと彼等は考える。
あと一息で敵を倒せるという時に、あの怪物は姿を現してきた。
だから、今この瞬間にも自分達の目の前に現れてもおかしくはない。
彼等はそう強く信じ込んでいた。


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