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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

697ゼロいぬっ!:2009/04/25(土) 17:01:11 ID:dPBRqNnM

そうして『はじまり』はやり直された。
広場に数いた生徒たちの姿はなく、桃みがかった髪の少女を中心に、
褐色の肌の少女と青い髪の少女、そして眼鏡をかけた教師が見守るように立つのみ。
あの日よりも温かな風が木の葉を運んで吹き抜けていく。

彼女の前には火が焚かれ、それがパチパチと音を立てる。
ソリが黒く焦げて焼け落ち、彼女の日記と研究資料もただの灰へと変わる。
記録も思い出も等しく炎の中へと消え去っていく。
穏やかな風が灰を舞い上げて彼方へと運び去る。

「本当にもう大丈夫なの?」
心配そうに訊ねるキュルケにルイズは小さく頷いた。
答える彼女の瞳からは意志の力が感じ取れた。
余計な心配だったと安堵の溜息を漏らすキュルケの横で、
タバサは黙って事の成り行きを見守る。
彼女は知っている、人は大切な者を失う事で強くなるのだと。
悲しみを乗り越えた時、人はそれを糧にして成長する。
同類だからこそ分かる。彼女は完全に過去を払拭したわけではない。
今も燻るような炎が彼女の胸の内を焼いているのだろう。
だから見届けようと思う。それが彼女の運命に関わった自分の務めだと思うから。

「では、よろしいですね。ミス・ヴァリエール」
「はい。ミスタ・コルベール」

教師の指示を受けて、彼女は杖を天高く掲げた。
空をキャンバスに絵を描くように杖の先端を振るう。
かの時をなぞる様に紡がれる詠唱。
しかし、その仔細は微妙に異なっていた。

「宇宙の果てのどこかにいる私と運命を共にする者よ!」

従者としてではなく、共に肩を並べて苦難な道程を歩もう。
悲しい時は慰め、辛い時は肩を貸し、互いの背を預けて戦おう。

「誇り高き魂と、曇る事なき意志を、そして絶望に屈さぬ勇気を継ぐ使い魔よ!」

名前も残す事さえ許されなかった彼のルーンを、その想いと共に受け取って欲しい。
彼が遺したものを明日へと、そして未来へと伝えて欲しい。
それがいつの日か、誰かの希望として伝わっていくように。

「私は心より求めうったえるわ!」

そこまで告げてルイズの動きが止まった。
ここから先の言葉を紡ぐのを躊躇ったのだ。
言えば、それは彼との決別を意味する事になる。
前の使い魔との契約が終わり、新しい使い魔が呼び出される。
それは彼が死んだ時点でも決まっていた事だ。
だけど、彼女はその一歩が踏み出せずにいた。


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