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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

675使空高 ◆vS6ov90cAI:2009/01/06(火) 21:30:09 ID:rycuqIO6
 リキエルが背後に立つのを確認すると、ルイズはそれまで落としていた肩を怒らせて、毅然とした
態度になって歩き出した。
 ――なんともなかったな。
 駅に着いて、預けていた馬に跨ったとき、リキエルは不意に思い至った。ひとの大勢いる街中で、
それも芋を洗うような中を揉まれて平常でいられたのは、いつ以来のことだったろう。
 だがリキエルは、なぜか素直にそれを喜べなかった。人づてに評判を聞いて見に行った映画やコン
サートが、ふたを開けてみればさしたる内容でもなかったというような、空虚なつまらなさだけを感
じた。
 なんだ、どうした、喜ばしいことじゃあねーかと、自分を励ますようなことを考えてみたが、駄目
だった。喜悦も深い感慨もなかった。余計に虚しさが募った。そんな自分にかすかな憤りさえ感じた
が、それさえはきとした形をなす前に散って、夜霧のように曖昧で濃い不快感として、胸の中に残っ
た。
 気の滅入ってしまったリキエルは、帰りは一言も口を利かなかった。へそを曲げたルイズも同様で
ある。やたらと寂しい帰路であった。


 学院に帰り着いたときには、もう日は落ちる寸前になっていた。さっきまで西空に夕日が赤々とし
ていたかと思う間に、あたりはすぐ薄暗くなって、遠い山々から夜が地を這って来る。
 馬を繋いだルイズとリキエルは、少し急ぎ足で女子寮に向かった。日が落ちて明かりがともされ、
月の光が強くなるまでの間、ほんの一時あたりは真っ暗になる。わずかな時間ではあるが、足元もお
ぼつかない心細い暗闇である。そうなる前に部屋に戻っておきかった。
 どうにかリキエルたちは、夜が来る前に女子寮に駆け込んだ。階段を上って、廊下を歩くうちに窓
から見えた風景が、一面の色濃い暗黒であったから、間髪の差だったようである。
 部屋の前に着いて、ルイズは鍵を取り出そうとしたが、不意にその動きが止まった。扉がわずかに
開いていて、中から光が漏れている。
 出るときに鍵をかけたのは、ルイズとリキエルがそれぞれに確認している。すわ賊かと、二人は一
瞬目を交し合った。まさかではあるが、閉めた家の戸が開いているというだけで、あまりぞっとしな
い話なのは確かだった。
 眉をひそめてどことなく緊張した面持ちのルイズが、ゆっくりと扉を押し開いて、頭だけ入れて中
をうかがいにかかった。ルイズはうへェだかきえーだかいうような、変な声をひとつだけ立てると、
黙って動かなくなった。
 ――なんなんだ、ええ? 一体よォ。
 続いて部屋の中を覗いたリキエルも、声を立てないだけで、ルイズと大体同じになった。
「あ、リキエル! お帰りなさい。遅かったのね」
「…………」
 キュルケともう一人、青い髪をした小さな娘が平然と居座っていた。キュルケはルイズの椅子で足
組んで、手鏡を覗いて髪をいじっていた様子だし、青髪の少女はこれもルイズのベッドの足に背をも
たれ、愛杖らしいごつごつした長杖をかたわらに立てかけて、重厚な本をぱらりぱらりとやっている。
侵入者の態度ではない。
 キュルケが椅子からひょいと立ち上がり、喜々として言った。
「今日は、ちょっとしたプレゼントを持ってきたのよ」
 それでか、武器屋での含みのある笑いはと、リキエルは合点がいった。それと知って思い返せば、
あの笑みは何かを楽しみにして、その楽しみを思ってこらえがきかなくなった類の笑い方であったこ
とがよくよくわかる。
 ――これは、長くなりそうだぜェ……夜がよぉ〜〜。
 プレゼントとやらをそこに置いているのか、ベッドの裏に引っ込んだキュルケと、早速に頭に血を
昇らせ始めているルイズを交互に見やって、リキエルは目の上に手を置いた。


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