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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

651ゼロと奇妙な隠者:2008/10/27(月) 12:42:27 ID:mRC/mIpA
 会議室の上座には、ウェディングドレスを纏ったアンリエッタが座っていた。きらめくような白絹に身を包んだ姿は衆目を引き付ける美しさを醸し出しているが、居並ぶ貴族達は誰一人としてその清楚な美しさに目を留めようとしない。まして意見を求めようともしない。
 国を揺るがす一大事の中でも、うら若き王女はただ座っているだけ。
 ただ顔を俯かせ、膝の上に置いて握り締めた手をじっと見つめているだけだった。
「――これは偶然の事故――」
「――今なら話し合えば誤解が解けるかも――」
「――この双方の誤解が生んだ遺憾なる交戦が全面戦争へと発展しないうちに――」
 会議室での言葉は何一つアンリエッタに届かず、ただ頭の上を通り抜けていくだけ。
 誰も王女に言葉を届けようともしないし、届ける意味を見出してもいなかった。
「急報です! アルビオン艦隊は降下して占領行動に移りました!」
 伝書フクロウがもたらした書簡を手にした伝令が、息せき切って会議室に飛び込んできた。
「場所は何処だ!」
「ラ・ロシェールの近郊! タルブの草原のようです!」
 伝令の言葉に、会議室はより重い空気を漂わせる。
 自分達が考えている以上に、事態は重大であることに気付き始めざるを得なくなっていた。
 昼を過ぎ、王宮の会議室には次々と報告が飛び込んでくる。
 それらはどれも例外なく、頭を抱え耳を塞ぎたくなるような悪い知らせばかりであった。
 タルブの領主が討ち死にし、偵察の竜騎士隊は一騎たりとも帰還せず、アルビオンからの返答もない。
 敵意を持って杖を向けている敵に対し、未だに自分達がどうするのかも決めあぐねて会議室から出ようともしない貴族達。
 それをただ黙って見ているアンリエッタの心の中では、これまで懸命に押し殺してきた感情がゆっくりと、しかし着実に膨れ上がっていたのだった。
(……これが。伝統あるトリステイン王室)
 前王は子に恵まれなかった。生まれた子供はマリアンヌとの間に生まれた娘、アンリエッタ一人。側室も設けなかった為、トリステインの王位継承権を持つ者は大后マリアンヌと王女アンリエッタの二人だけ。


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