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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

622Tedious Bastet:2008/09/03(水) 21:34:27 ID:0onyjGxA
 ぐっと目頭が熱くなり、唇の辺りが震えてくる。
 もう、やっていられない気分だった。
「クソッ!クソッ!!なんなんだよぅ。あたしがなにか悪いこと……」
 自分が不幸に陥ったときに口から出る、在り来たりな台詞を口走りそうになって、唐突にマ
ライアは口を閉じた。
 悪いことをしていない。なんて、口が裂けても言えない様な人生を送ってきていることに気
付いたのだ。
「自業自得、ってやつかね」
 体中から力が抜けて肩がガックリと落ちる。
 とぼとぼとその場を去っていくマライアの背中は、煤けているのように見えた。

 空に双子の月が昇る。
 青と赤の光が夜を照らしているおかげか、外の景色は思ったよりもずっと明るい。
 遠くから聞こえてくる獣の鳴き声をBGMに、マライアは寒空の下を寝藁を抱えながら歩い
ていた。
 冷たい石造りの塔から離れ、適度に暖が取れて眠れそうな場所を探し、フラフラと当ても無
く歩いているのだ。
 明かりの下なら少しは暖かいかもしれないと思ったが、松明の下は火の粉が飛んで火傷しそ
うになったし、他の光源は魔法を使用しているらしく、暖かさはあまりない。
 こういう状況に囲まれると、あの嫌気が差すほど熱い灼熱の国が懐かしく思えてくるから不
思議だ。とはいえ、あの土地も夜は十分冷えるのだが。
 何はともあれ、とにかく寒い。
 誰か頼れる人間がいればいいのだが、見知らぬ土地で目を覚ましたのは今日の昼頃。出会っ
た人と言えば、人を小ばかにしている赤毛の女と頭の悪いご主人様。後は、人が良さそうでは
あるが、ナイフを突きつけてしまった手前ちょっと頼り辛いメイドのシエスタくらいだろうか。
 たったの三人。酷く疲れた一日だったはずなのに、たったの三人しか会っていない。
 相性が悪いのだろうか。それとも、単に見知らぬ土地の習慣に振り回されただけなのだろう
か。
 多分、両方だろう。
「誰でも良いから、どこかに起きてるヤツはいないの?」
 ひっそりと人気の無くなった学院の建物はどこも明かりが落とされ、通路を照らす僅かな照
明だけが目立っている。
 あっちこっちへ視線を向けると、人の存在を感じられる明かりも確かにある。学院の中央に
聳える塔の最上階と、女子寮の三階にある赤毛のクソ女の部屋、それに中庭の片隅に佇む煙突
つきの小屋だ。
「クソ女は最初から選択肢から外すとして、行くとしたら塔の最上階かオンボロ小屋のどちら
か、か」
 なんとかと偉い人は高いところが好き、という格言を誰かに聞いた覚えがあったマライアは、
格言通りなら塔の最上階にいる人物は学長かなにかだろうと推測する。
 強い権力をもった相手を何の見返りも用意せずに頼るのは馬鹿のすることだ。高い地位にあ
る人間は、損得勘定を常に計算できるから権力を握っていられる。無為に頼れば弱みを握られ、
割に合わない要求を突きつけられる恐れがある。 
 となると、残るのは小屋だけだ。
 夜の暗さで分かり難いが、煙突からは少量だが煙が出続けている。暖炉を使用しているらし
い。なら、小屋の中は相当暖かいはずだ。
 寒さに耐えかねたマライアは、他に選択肢がないことを確認して明かりの漏れるちっぽけな
家屋に足を向けた。
 レンガで組まれた本当に小さな小屋。一人用という前提で作ってあるのか、それとも魔法と
やらで中を広くしてあるのか。


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