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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

599使空高:2008/07/29(火) 12:55:17 ID:o5O3.CNw
 好きな人間もあまりいないだろうが、こういう暗闇がリキエルは好きではない。受け付けないと
言い換えてもいい。目を開けているのに何も見えない状態が、パニックの発作を起こして、意志と
無関係に両のまぶたが下り、上げようとしても上がらないときの暗闇と絶望感を、いやがうえにも
思い起こさせるのだ。
 窓の脇のカーテンが揺れて、涼しいというより冷たい風がリキエルの顔に当たったが、リキエル
は汗を握り締めていた。連れ込まれる焦りからかいた冷や汗ではない、かくだけで気分の悪くなる
汗である。もっとはやく目が慣れないかと、リキエルは目頭をもんだ。
「扉を閉めて?」
 闇の中に人の気配が動いて、その気配から声がかけられた。記憶が確かならば、まさしくキュル
ケの声である。
「…………」
 リキエルは動かなかった。これが誰か他の人間に言われたことであれば、特に断る理由もあるま
いと思い、その通りにしたかもわからないが、この場合、場所と人間がどうにも悪い。
 それに今リキエルは、キュルケにちょっとした反感を持っている。ここ最近は沈静化していた発
作が、こんなことで出てしまうかもしれない、わざわざこんな場所に連れ込みやがってという、八
つ当たり的な反感である。勝手な話だが、そうでも考えていなければ、雪だるま式にストレスが重
なり、本当にパニックになりかねない状態だった。
 ――自分で閉めたらどうなんだ。どうせ、自分で開けたのならよォ――ッ。
 そんなリキエルの胸のうちにある反感に、夢にも気づけるわけはないが、キュルケはリキエルに
扉を閉める気がないことは悟ったらしかった。
「……いいわ。まずはこっちにいらっしゃって」
 声には出さないが、リキエルはイライラとして言った。
「まず? それは違うぜ、『まず』オレにどんな用があるんだ?」
「それもこっちで話すわ。さ、いらっしゃい」
「オレは鳥目ではない。こんなふうに右目が下りてしまってはいるが、特に夜盲症とかってわけじ
ゃあないのだ。だが見えないぜ。こんな暗い中にいたんでは、足もとだって見えやしない。明かり
くらいは点けてもらわないとな、来いと言うのならよォ〜〜」
「まあ、気がつかなかったわ」
 変にわざとらしく明るい声音で、キュルケは言った。
 次に、手をたたいたか指を弾いたかする音がした。すると、リキエルの足もと付近からキュルケ
の立っている場所に向かって、ロウソクが滑走路の誘導灯のように火をつけた。ぼんやりと部屋が
明るんだことで、リキエルはほんの少し気分が楽になったが、この場にいる以上、ストレスがつの
っていくのは止まりそうになかった。
 闇の中に浮かび上がったキュルケは、レースのベビードールそれ一枚という扇情的な姿をさらし
ていた。もとのプロポーションがグンバツにいいキュルケがそういった格好をすると、ともすれば
学生であることを失念させる、年長けた女の色気とでもいうべきものがにおい立つ。
 ロウソクの演出といいリキエルを見つめる濡れた双眸といい、男を絡めとる手練手管というもの
を、キュルケはよくわかっていた。
 だがリキエルは、それに誘われはしなかった。誘惑されるほど、心に余剰がないのである。そし
て、そうやってある意味冷静な目で見てみれば、なるほどキュルケは肉付きのよい張りのある体で、
通った鼻筋や瑞々しい唇にも魅力があるが、逆にそういった若々しい部分が、大人っぽい色気の妨
げにもなっている。所詮まだまだといえた。
 リキエルは半分だけ距離を詰めた。
「それで、オレになんの用だ。それを聞いてから決めさせてもらうぜ、近づくかどうか」
 ゆったりとした動きでキュルケは腕を組んだ。胸が少し持ち上がり、あらためてその大きさが強
調される。


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