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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

588名無しさん:2008/07/02(水) 20:41:52 ID:cKTU8UDU
 だが、その傷も綺麗に消えていた。他にもあの決闘で、腕といわず脚といわず、とにかく全身に
傷を負ったはずだが、伸びをした限りでは、腰から上は何の支障も無く動いた。
 脚のほうはどうかと、ベッドから降りて歩き回ってみた。やはり不自由は無いようである。思い
切って軽いストレッチなどもしたが、だるい感じがあるだけで特に不具合はない。そのだるさも、
長い間寝ていたからだと思われた。どのくらい眠っていたのかは分からないが、これだけ体が動く
のであれば、そう長い間でもないだろう。
 あれだけの負傷が跡も無く、後遺症の一つも無く治るには、一月寝ても足りないはずだ。であれ
ば、これは魔法の恩恵なのだなとリキエルには思い当たった。
 腕と足をブラブラさせて、リキエルが改めて魔法の力に感心していると、部屋の扉をノックする
音が響き、次いで食事を持ったシエスタが入ってきた。シエスタは起き上がっているリキエルを見
ると目を丸くし、「まぁ」と言って立ち尽くした。それからひとしきり目をしばたたかせて、もう一
度まぁと言った。
「起きてらしたんですか。どこか、痛むところとかは?」
「特にないな、体が少しだるいだけだ」
 よかった、と言ってシエスタは笑った。その顔が心底安堵したものだったので、会って間もない
相手に心配をかけたと、リキエルは心うちで苦った。
 その苦りを顔には出さず、リキエルは言った。
「心配をかけたみたいだな、ずいぶんとよぉー。すまなかった」
「いえ、そんな。でも、大変だったんですよ。ここにあなたを連れてくるときに、ミス・ロングビ
ルが応急処置をしたそうなんですが、全然おいつかなくて、先生を呼んで、沢山の秘薬を使ったり
して、ようやく治療したんです」
「…………」
「でも五日も起きないから、やっぱり心配でした」
「…………」
 苦りが顔に出た。存外に長い間、自分は眠っていたようである。しかも、かなり多くの人間に迷
惑をかけたらしい。ミス・ロングビルだけでなく、自分を運んだ人間もいたはずで、自分が使い魔
という立場にいる以上、主人のルイズにも迷惑をかけたろう。
 ――しかしそれだけ眠っていたとなると……。
「その間、もしかして看病を?」
「あ、いえ、私じゃなくてミス・ヴァリエールが」
「ルイズ。あいつがか?」
「はい。夜通しで、汗を拭いたり包帯を替えたり……。秘薬の代金も、ミス・ヴァリエールが出し
たんですよ」
 意外なことを聞いたとリキエルは思った。
 決闘は、原因こそ相手のギーシュにあったが、結果的に受けたのはリキエルで、ルイズの静止を
振り切って、そのまま決闘を続けたのもリキエルだった。あずかり知らぬところで勝手に喧嘩など
始め、勝手に怪我をするような人間など、打ち捨てられたところで文句は言えない。それでなくと
も、ルイズはああいった性格をしているの。多く迷惑をかけた自分を、それほど献身的に面倒みて
くれるとは、リキエルは正直に言って信じられなかった。
 そんなことを思っていると、ちょうどそのルイズが、暗い顔をして部屋に入ってきた。顔が暗い
のは、目の下にできた大きな隈のせいである。夜通しの看病というのは、誇張ではないらしかった。
眠たそうな半眼がリキエルに向いた。
「あら。起きたの。あんた」
「ああ、お前には迷惑をかけた」
「本当よ。決闘だなんて、いい迷惑だわ」
「すまなかったな、薬だとか包帯だとかよぉ。まあ他にもいろいろと、感謝している」
 感謝しているというのは、素直な気持ちを言ったものだが、看病してもらったことに対するもの
ではなかった。そのことにも無論感謝の念はあるが、いまのリキエルは、『欠けた心』の一片が戻っ
てきたことに感謝している。
 父親のことを思い出せたのも、気分がすこぶる良いことも、それらの要因になっている、自分の
過去と向き合えたということも、全てはルイズの存在あってのことだった。いろいろな意味で、ル
イズには頭の下がる思いなのだ。
「当然よ! まったく、使い魔のくせに勝手なことばっかりして!」
 ルイズが怒鳴った。濃い隈のためか、なかなかに迫力があった。


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