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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

555ヘビー・ゼロ:2008/03/20(木) 22:50:14 ID:YWphJUIk


 夏も盛りだというのに、月さえ黙してしまったかのような静かな夜。人々は本能的に何かを感じ取ったのか極力外へ出てこようとはしない。
 そんな中、道を駆ける一人の男がいた。幻獣マンティコアの刺繍の施されたマントを翻し、とある建物の扉を開いて中に駆け込む。
「ゼッサール隊長、各拠点の包囲完了いたしました」
 男は入ると同時に敬礼を取った。視線の先には机に向かっているマンティコア隊隊長ド・ゼッサールの姿があった。机の上に広げた街の地図から視線を上げて隊士を労う。
「ご苦労。引き続き警戒しておけ。くれぐれも住民に不安を与えるなよ」
 それに答えた隊士は、しかし沈黙した後でゼッサールに尋ねてきた。
「しかし隊長、敵は素人に毛の生えたチンピラとは言え、敵の本拠地での戦闘です。数も相当だと報告もありますし……本当に援護はいらないのでありましょうか」
「ヒポグリフ隊がすでに行っているのならば問題はない」
「ですが……これほどの大捕物、万一失敗するようなことがあれば我々衛士隊の沽券に関わります!」
「……お前、入隊して何年になる?」
「は?あ、えっと、マンティコア隊に配属されて今期で六年目であります!」
「そうか」
 突飛な質問に男は小首を傾げたが、ゼッサールはそれを気にする様子もなく腕を組んだ。
「……私はな、大捕物だからヒポグリフ隊に任せたんだよ」
 それだけ言って視線を隅にやる。そこには居心地悪そうに立っている少年たちの姿があった。水魔法により傷は治癒しているが、ここに連れてこられたことに戸惑いを隠せないでいる様子だ。
 そこへゼッサールが声をかける。
「諸君らの勇気ある行動に感謝する。君たちのおかげで国の大事は未然に防げそうだ。己が身を省みないその勇気は尊敬に値する」
「あ、ああ……そりゃ、どうも」
 国中の憧れである魔法衛士隊の隊長にそう言われて、少年たちはむず痒そうだった。何となく夢のような気さえする。
「家まで護衛を付けよう」
「いや、いい!……です。ケガも治ったし自分達で帰れる。……ます」
 そうか、と隊長はその厳つい髭面に人の良さそうな笑みを浮かべ少年たちを扉まで促す。そして少年たちは外へ踏み出した。
扉を開けた瞬間に飛び込んできた光景に息を呑む。
 マンティコア隊隊士たちが道の脇にずらりと並んでいるではないか。背後からゼッサールの太い声が響く。
「救国の英雄に敬礼ッ!」
 ザッ、という音とともに一斉に敬礼する隊士たち。その間を少年たちはうつむき肩を揺らして歩いていく。
 奪われ蔑み踏みにじられてきた人生。人として扱われぬ絶望。失意に駆られ道を逸れ、下を向いて歩いてきた。日陰こそが我が住処。そう思っていた。これからもそうだと思っていた。
 だが――
「バカ野郎。下を向くんじゃねーよお前ら」
 リーダー格の少年が前を見ながらそう言った。
「こういうときは胸を張って堂々と歩くんだよ」
 オレ達はまだまだこれからだ。そう思わせるような光に踏み出す一歩だった。


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