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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

552ヘビー・ゼロ:2008/03/20(木) 22:44:31 ID:YWphJUIk
「ひぎあああああぁぁああ!」
 絶叫を始める傭兵の口に壊れた銃をつっこみ声を抑えてしまうと、影になるように上から覗き込んだ。そのせいで傭兵にはアニエスの表情が見えない。
 と言っても今の傭兵にそんなことを気にする余裕はないのだが。
「ああ――まったくだ。まったくもってツイてるよ……。私も、お前もだ。よもやこんな所で仇に出会えるとは思いもしなかった」
「は、はあぎ…?」
「ああ、喋りにくかったか?」
 ずるり…、と口の異物感から解放された傭兵が改めて聞き直す。
「仇だって……?お、オレが?」
「貴様自分の言ったことを三秒も覚えていられんのか?鶏か貴様」
 この世の軽蔑を全て集めたかのような視線を送り、アニエスは傭兵によく聞こえるよう声を低くして言ってやった。
「ダングルテール」
 瞬間的に傭兵の体は固くなった。あまりにも露骨すぎて滑稽なほど。
「う、うそだ……あの村の住人は全員焼き払ったはずだ……!亡霊でもなければ……ありえない!」
「そうだ亡霊だ。私はあの炎から生まれた怨嗟の塊。復讐の亡霊だ。二十回目の夏にしてようやく貴様のもとに来た」
 深い――深い闇がその目には宿っていた。
 ああ、自分はここで殺されるのか。
 恐怖に凍りついた意識が辛うじて紡ぎだしたものは諦めだった。
 目の前の亡霊はそれに答えるかのように突き立てた短刀を薙ぐようにして引き抜いた。壁から自由になった腕は、しかし重力に逆らうことが出来ない。それで腱を断たれたことに至った。足も動かず、完全にまな板の上の鯉である。
 だと言うのに、アニエスはそれだけで手を止めてしまった。
 ひいひいという呼吸か悲鳴か判別できない音を喉からこぼしながら、傭兵は疑問の視線を投げかける。
「生きたままだ」
「へあ?」
「私たちは生きたまま焼かれた。喉は焼かれ肺に熱風が流れ込む。乾ききった眼球は割れて骨まで溶けだすその苦痛――それを与えなければ意味がない」
 アニエスの声に混じって何かの唸り声が傭兵の耳を打った。視線をわずかに下に送れば、闇の中にいくつもの鬼火が見える。そして徐々に大きくなる唸り声と共に姿を現した鬼火の正体は野犬だった。汚く痩せた体は明らかに飢えを訴えている。


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