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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

470仮面のルイズ:2007/12/18(火) 18:29:11 ID:l8ewUCEw
「それで、この女性を宿屋に放り込んだ後、その男は煙のように消えてしまったんだな?」
「はい、金貨を渡されまして、『丁重に休ませておけ』と言われました」
「もう一度聞くが、顔は見ていないんだな?」
「はい、帽子を深く被っておりましたので…あ、ただ、薄いグレーの髭を蓄えておりました。声も低めでしたが、重々しい感じではなく、二十代そこそこの貴族様かなぁ…と」
「ふむ……」

ラ・ロシェールの宿屋で、女騎士が店主に質問をしていた。
剣と銃を携え、シュヴァリエのマントを着けたアニエスである。
昨晩、怪我をした女性がメイジらしき男に担がれ、宿屋に放り込まれたと聞いて、事情を調査するため駆けつけたのだ。
アニエスは、その女性が誰なのか知っていた、アルビオン出身の元貴族、マチルダ・オブ・サウスゴータ。


事情を一通り聞いたアニエスは、マチルダの眠っている部屋に入り、備え付けの椅子に腰を下ろす。
マチルダがぐっすりと眠っているのを確認すると、窓の外に目を向けた。
ラ・ロシェールの岩壁や建物は、『レキシントン』からの砲弾で所々が傷ついており、壁面には傷を修復する人夫とメイジの姿が所々に見えていた。

『練金』で修復される壁面や建物、メイジの便利さが羨ましくなって、アニエスは再度マチルダに目をやった。

彼女は腕と肩に包帯を巻かれ、寝息を立てている。
椅子の背もたれに身を預けて、アニエスは昨晩の出来事を思い返していた。

アニエス達銃士隊は、基本的に近衛か、親衛隊待遇で扱われている、だがそれ以外にも『情報収集』という役割が与えられている。
トリスタニアに亡命政権を構えたウェールズ・テューダーからの密命で、トリステインに亡命・疎開したアルビオン国民の調査に当たっていたのだ。
人数を確認するだけではなく、いまだアルビオン国内でレコン・キスタに抵抗を続けるレジスタンスと接触する目的もあった。

アニエスは、ある情報通の男に頼み、レジスタンスとの接触を試みた。
情報通の男から指定された場所は、ラ・ロシェールでは一般的な宿屋で、岩山の一角をくりぬいて作られた宿屋だった。
指定された時刻になると、ラ・ロシェールの丘が月明かりを遮り、宿屋の周囲はまるで月のない夜のように暗闇に覆われる。

宿屋の主人にチップを払い、目的の部屋に案内されたが……そこでアニエスは異変に気づいた。
血の臭いがする。

宿屋の主人に扉を開けさせると、主人が悲鳴を上げて腰を抜かした。
アニエスが中を見ると、そこに生きた人間は一人もおらず、死体だけが転がっていた。

壁をくりぬいて作られた石造りの二段ベッドが、部屋の左右に作られていおり、正面には跳ね上げ式の窓がある。
簡素な机の上には、飲み物が六つ置かれ、死体が三つ。

アニエスは主人に衛兵を連れてくるように告げて、部屋の中を調査した。

三つの死体はお互いに短剣で胸を突かれ、仰向けに倒れていた。
だがアニエスはメイジの仕業だと直感的に理解し、舌打ちをした。

傷口から流れ出るはずの血が少なすぎる上、三人とも口を大きく開いているのだ。
歯の裏を指でなぞると、歯垢…ではない、粘土らしきものが指先に付着した。
心臓を突き刺されているが、ナイフが根本まで深々と刺さっているため、思ったより血は出ていなかった。
体の中は血の海だろう。

アニエスは考える。
『レビテーション』で三人を宙に浮かせ、『練金』で動きを奪い窒息させつつ、ナイフを突き立てたのだろうか?と。
二人か、それか三人の、メイジを含む暗殺者がこの部屋にいたはずだ。

だとしたら急がなくてはならない、暗殺者らしき者の情報だけでも手に入れなければならない。
暗殺者に狙われるということは、後手に回るということでもある。

アニエスは駆けつけた衛兵に後を任せると、衛兵の詰め所で伝書フクロウを借り、暗殺者が潜入していると王宮に知らせた。


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