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ゼロの奇妙な使い魔 対サル用書き込みリレー依頼板

444仮面のルイズ:2007/12/15(土) 13:47:16 ID:/YCsSzJs
一方、場所は変わり、トリステインの首都トリスタニア、その一角。
『魅惑の妖精亭』では、相変わらずロイズ(ルイズ)とロイド(ワルド)の二人が仕事に追われていた。

ルイズは高くもなく低くもない、中堅どころの人気を得ていた。
ワルドは表に出ることなくひたすら裏方仕事を続けている。
店主のスカロンが『訳ありなのに顔を出しちゃまずいでしょ』と気を利かせてくれたのだ。

ワルドは、自分の心境の変化に驚きつつ、これが当然だとも思えていた。
ルイズと再開して母を蘇らせ、リッシュモンに復讐すると誓ったあの日から、価値観がすべて一度崩れ去った気がする。
一度崩れた価値観は、ルイズを中心として再構築され、今は自分でも驚くほど皿洗いが気に入っている。
つかの間だと解っていても、平和なのだ、この場所が。
魔法衛士隊に正式に入隊する前は、実力を見せつけるために無茶な任務に志願し、何度も視線をくぐり抜けて仕事をこなした。
時には農村を襲うオーク鬼を退治したり、はぐれの火竜を退治するなどもした。
その時、村人から感謝されたりもしたが、正直なところ何の感慨も涌かなかった。
たが今は違う、皿洗いをしたり重い荷物を運んだり、閉店後の後かたづけをして、ルイズや他の店員から礼を言われるのがとても嬉しかった。

トリステインの腐敗も、己の名誉欲も、母を蘇らせるという目的も、すべて過去のもの。
今自分がやるべき事は、リッシュモンに復讐する機会が来るまで、ここで与えられた仕事を全うすることだ。

つかの間の平和であったとしても、平和は尊い。
暗闇に光が差し込んだような晴れ晴れとした気分で、ワルドは今日も皿洗いを続けていた。


ルイズは、そんなワルドの変化を感じ取っていた。
仮面のように張り付いた作り笑いではなく、飾り立てもしない健やかな笑みがとても嬉しかった。
思い出の中の、青年時代のワルドよりもずっと魅力的に思えるのだ。
閉店時間が近くなり、ルイズが厨房へと入ってきた、ワルドの隣に並び顔をのぞき込む。
「手伝うわ」
「いや、いいさ、すぐに終わる」
「こんなに沢山皿が残ってるじゃない、私も手伝うわよ」

水場に積み重ねられた食器はかなりの数だった、タワーのように積み重なる食器を一枚一枚手に取り、洗っていく。
ワルドの付けている義手は人間と見紛う程のものだが、精密な動作は完璧ではないので不意に力がかかってしまう。
昨日、それで二枚も皿を割ってしまったので、ワルドはおそるおそる食器を洗っていた。

ルイズが横から手を伸ばすと、皿を左手に持ち、右手でキュッと音を立てて拭う。
すると不思議なことに、ルイズが手で拭った箇所が、汚れ一つ無いほど綺麗に磨かれていた。
「…?」
ワルドが首をかしげると、ルイズは掌を見せた。
ルイズの手のひらは、銀色の毛で覆われており、ブラシのようになっていた。
手首に仕込んだ吸血馬の骨が、黒と銀色の毛を掌に伸ばしていたのだ。
毛の先端は微細で、堅すぎず柔らかすぎない、どんな細かい汚れも落としてしまう。

「便利だな」
「でしょう」

カチャカチャと音を立てながら、食器を洗い続けていると、不意にワルドの動きが止まった。
ルイズは、どうかしたんだろうか?と思いつつワルドの表情を見た。
そこに居るワルドは、かつてニューカッスル城で見たような、感情の見えない顔をしていた。

ルイズの肘がワルドの腕を軽くノックする、ワルドはハッと我に返り、ルイズの方を見た。
「どうしたの?」
「耳を貸してくれ」
ルイズがワルドに密着すると、ワルドはルイズの耳元に口を近づけ、小声で呟いた。
「『遍在』がラ・ロシェールに居るんだが、フーケが何者かに襲われているのを見つけた。相手は……」
「相手は?」
「おそらく、クロムウェルが蘇らせた、ウェールズの近衛兵だ」
「…!」

ルイズの表情が、心なしか厳しくなり、髪の毛がほんの少しだけ逆立つ。
「洗い物は頼むよ、僕は先に部屋に戻る」
手の汚れを軽く洗い落として、ワルドは部屋へと足を向けた。

「…助けてよ、お願い」
ルイズの呟きが、やけにハッキリと聞こえた。


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