したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

架空戦記系ネタの書き込み その110

354名無しさん:2019/07/18(木) 18:32:59 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 同年、フランス帝国、パリにて ――
 一人の男が、歩く。
彼を最前列に二列に並んだ男たちが続く。
その男の服装は軍人であった。続く男たちの服装も軍人であった。
その男の背丈は長く無かった。続く男たちの方が大きかった。
けれどもそんなこと、誰も気にもとめない。

「皇帝陛下!」  「フランスの救世主!」
「「「フランス帝国万歳!」」」
そんな賛美歌が流れる中で、彼は最高存在の祭典のために用意された儀式場へとたどり着く。
かつて猛威を振るったテロル。ある世界線では破壊されたが、ここでは破壊されなかった。

「……ロビエスピエールは神を否定した。神威の……神の権威という物を否定して、自らの権力や共和制の権威のなさに気がつき絶望した」
皇帝と賛美される一人の男がその場で何事かを語る。
それはまるで演説のようで、聞く物は彼の腹心や政権の人間たち。すなわち演説では無い。

「それが、コレだ。神を否定して、自分で神を作った。人類知性のその先にある理想の知性体。
最高存在。最高存在の前で人間はすべて平等であり、最高存在の祝福の中で共和制が成り立ち、最高存在の祝福の賛美歌の中で指導者が
国家最高の知性として、指導者として振る舞うのだと」
そして、鼻で笑った。

「バカバカしい。わかりやすい方法をとれば良かったのだ。武力で政権を作ればいい。その後は法律で政権を肯定すれば良い。
大丈夫、法律とは、民衆の支持が一度でも集まれば成立する。それが奴が夢想した共和制の根幹とやらであろう」
ナポレオンという男は強い野心と理性の化身だ。人の姿をした血に飢えた獣ロビエスピエールが死ぬ寸前まで望み続けた『理性』の怪物。
一つだけ、この世界線のフランスは救われていた。
東欧で農奴制が完全には広がっていないように、この世界線のフランスの食料自給率は、史実ほど下がってはいない。
史実、フランス革命の原因は色々と言われているが、究極的にまとめてしまえば、パリ市民が抱いた餓死への恐怖が最大の原動力とも言われている。
冷夏やフランスの経済成長に伴う人口爆発、そして投資家たちの穀物投機が食料価格に直接の大ダメージを与えてしまい、適切な手段を
とれない社会体制や国家構造がついにはフランスで革命という名の流血の嵐を呼び込んだのだと。
それが、あの歴史ほどは吹き荒れていない。まだ。かろうじて。
これから、吹かせる。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板