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中編以上のネタの書き込み その57

604影響を受ける人:2018/04/07(土) 23:21:18

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そんなアホなやり取りを見ていた田中ウメは、内心で深い溜息を吐きつつも冷徹な目でゴミを視界に入れないように、前を向く。

「まったく、あの馬鹿は・・・ 今日は神聖な卒業式だというのに。」
「そうですね。」
「そう言えば、加東圭子の容態はどうですか?」
「物理的な問題は打ち身に擦り傷です。軽傷なので問題ありません。
 問題は魔力に関する症状です。
 魔力枯渇症と魔力導流擬痛症、能力持ちによくある魔導脳不快症ですね。」

魔力枯渇症は脱水症状な状態であり、水分をこまめにとればいい物理的な解決方法が無い。
強制魔力回復薬を大量に飲んだ際に起きる副作用で、強制回復していた分、長期にわたって魔力の回復が起こらないのだ。
魔力枯渇による脱力感と気怠さが遅い掛かり、食べ物を受け付けにくくなってしまう。
この症状が発症した際に併発するのが、魔力導流擬痛症。簡単に言うなら神経痛だ。
某運命な境界の月姫な世界にある魔力回路のようなモノが、強制回復による圧力上昇によって耐え切れない部分が肉体の各所に現れる。

赤く張れ、下手に回復魔法を掛ければ更なる激痛に悩まされてしまう。昔ながらの薬草学による対処以外ない。
魔導脳不快症は能力持ちによく起きる症状。簡単に言うなら頭痛。
某運命なぐだ男に盾子の世界にある魔力回路のようなモノが、能力の過剰使用によるオーバーヒート状態になっている。
普段ならしばらく安静にすれば治るのだが、魔力導流擬痛症が発症しているのが問題だった。
併発した事により、頭痛がより悪化した状態で襲い掛かってくる。

眩暈も起きて、視力も低下しているとの事。
時間を掛ければ治る見込みは有るがこうなった以上、彼女が望むように退役させるしかないだろう。
何時治るのかわからないし、訓練にも参加できないのであれば仕方がない。

「航空母艦に緊急着陸し。さらに墜落したと報告を受けて、どれだけ心配したか。」
(本当かなぁ・・・)

水瀬ササリ大佐と比べると、どっちもどっちのような気がする。
章香に聞くと、厳しさも同じくらいだし。

「なにか、気に障る事を考えていませんか?」
「いえ。なにも。」

この人も、どうやって心の中を探っているのだろうか?

「さて、そろそろ無駄口を止めましょう。」
「はい。」

―――――

卒業式が開始されると、進行役の声と音楽隊の演奏のみが会場を支配した。
厳かで、別れの悲しい感情により、なんとなく暗い印象を受ける。
それでも笑顔で上級生を見送ろうと、下級生たちはぎこちない笑顔を浮かべていた。
静々と進行していき、何事も無く卒業証書を手渡しできる生徒は全て終わった。
そして、学園長が壇上に上がった。

「皆さん。御卒業おめでとうございます。
 ウィッチになり、目標を見つけられた方。
 まだ、目標を見つけられない方。
 ウィッチになれなかった方。
 前に進むことを止めない限り、道は続いて行きます。

 可能性は誰にでもあり、掴むチャンスを見逃さないでください。
 間違える事もあるでしょう。立ち止まってしまう事もあるでしょう。
 その時は、振り返って道を見直す事もよいです。
 もしくは、周りにいる友人・親類・先輩・後輩を見て下さい。
 悩んでいる事を話さなくても構いません。

 ただ、話してくれるだけで・・・ 会話をしてくれるだけでも構わないのです。
 話してくれないというのは、とても気持ちがざわめきます。
 一人で解決できることもあれば、出来ない事もあるのです。
 他愛のない事でも、関係ない話でも、少しでも心が軽くなったのなら。
 話せる覚悟が出来たと思ったら。話してください。

 私達は人です。会話を通して交流を図る生命です。
 会話無くして、心を知る事は早々できません。痛みを知ることは出来ません。
 会話を通して、初めて気持ちを知る事が出来るのです。
 しかし、「それでも話したくはない。」と言う方がいるかもしれません。
 残念な事に全ての人は善性ではありません。悪性を持ち合わせるのが人間です。

 人を見分け、自分の味方となる人物を見つけるのは容易ではありません。
 根気よく、小さなことからコツコツと。時間をかけて関係を構築していくのです。
 未来を明るくするのも、暗くしていくのも自分次第です。
 悪意に負けなよう。皆さんの運と努力を、常に祈りを捧げます。」

そこまで言うと、少し間を空けて息を吸い直した。




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