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中編以上のネタの書き込み その50

830影響を受ける人:2017/06/12(月) 20:52:24

改めてみる徹子の惨状は、言葉にしようが無かった。
斬り飛ばした右腕は既に血は出ていないが、二の腕から先が無い。
左腕はまるで弾けたかのようになっていて、肘から先は消失している。
両足も赤黒い所などなく、骨が飛びだしていた。右足は反対側にねじれる様に折れ曲がり、左足はグシャグシャ。
能力により長くなった髪の毛は骨のように真っ白で、健康だった顔色も死人のようになっている。

栄養すら使い切ったのか、頬がコケ落ちアバラが見え。唇も、肌もカサカサだ。
全身に血が付着し、内出血を起こしていない所などない。呼吸も浅く、危険な状態だとわかる。
反動が有る事は知っていた。だが、これは、想像以上過ぎた。

「徹子! ・・・あぁぁぁ。そんな、なんで!?」

追いついた美緒の慟哭が聞こえるまで、呆然としていたようだ。
周囲を見渡せば里子が顔を伏せ、醇子は目を見開いている。美緒は・・・

「いやだ・・・ いやだぁぁぁぁぁぁ!!!」
「美緒さん!」

頭を振り回して恐慌状態になり掛けていた。恐らく、目の前で死んだ早良ミチルと重ねてしまったのだろう。
立ち直ったお思っていた。しかしいかにあれから時が過ぎようとも、彼女に刻まれた傷は治らない。自分で克服しない限り。
凛は慌てて取り押さえようとしたが、両手がふさがっている。里子もどうしていいか迷っていると、

パァン…

醇子が容赦なく頬を叩いた。チョット強めだったのか、美緒はよろけて少し後ろに下がる。
大久保小毬のように大人しいと思われていた醇子の暴力に、三人の思考が一時的に止った。
叩かれた本人は頬に痛みを感じて手で抑えるが、それよりも暴力に訴えた事がなかった人物の行動に目を白黒させている。
叩いた張本人、竹井純子はにっこり笑いつつ美緒に話しかけた。

「美緒ちゃん。」
「え、あ?」
「徹子ちゃんは死んで無いよ? ミチル先輩みたいに死んで無い。」
「で、でm「でも、なにかな?」ぅ・・・」

笑顔が怖い。凛と里子は普段おとなしい人が怒り狂うと、普段怒る人よりも怖い事を知った。

「凛さん。徹子ちゃんを安全な場所までお願いします。」
「あ、はい。」
「総隊長には言ってありますから。ああそうだ、小毬ちゃんも連れて行ってください。空の弾薬箱を鮫島さんから受け取って、一時帰投するみたいなので合流を。」
「りょ、了解しましたわ!」

一刻も早く離れたい気持ちになっていた凛は、里子に目配せして戦場を離脱するために台風の壁に向かった。
里子も慌てて着いていくが、一度だけ振り返って大きく手を振って去る。
醇子が堪えて大きく手を振ると、ようやく意識が正常に戻った美緒が詰め寄った。

「醇子! どうして「美緒ちゃん、ココはどこ?」え・・・」

普段から知っている、導術士学校から知っている醇子の声ではなかった。
余りにも冷たく、感情がうかがえない声。

「ここは戦場なんだよ?」
「そ、それは・・・」

わかっている。そう言おうとした。でも、それは答えではないような気がする。
言いたい事もわかった。短くも濃密な時間を過ごしたからこそわかる。
親友の惨状に何も思わないのかと問いたい。戦士としての理解と、人としての感情がせめぎ合う。
手を伸ばし、俯いて感情がうかがえない彼女を振り向かせようとして、それはされなかった

「くぉらぁぁぁぁ!」
「うわっ!」「ひゅわ!?」

怒声と共に上空から降ってきた巨人・・・もとい、真嶋志麻が飛び込んできて二人を【擬似椀部】で掴みあげた。

「ナァにしてやがるぅぅ・・・・」

彼女の顔が怒りに歪んで、まさに鬼と言って良い。もしくは悪鬼だ。

「えっと・・・「口答えずんじゃねぇぇぇぇぇ!!」はぃ・・・」
 グゥルルゥゥゥ・・・

怒り狂っている魔獣は【硬絶(こうぜつ)】を肩に担ぎ直し、唸り声を上げる。

「戦場でボーっと突っ立てんじゃねぇ! 死にてぇえなら俺が潰すぞぉ!
 ぞれが嫌なら役目を果たしやがりゃぐぁぁ!!」

その咆哮に、二人は知らず内に背筋をまっすぐさせる。旗本サエの教育の御蔭だ。




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