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架空戦記系ネタの書き込み その86

521yukikaze:2017/04/22(土) 22:16:56
「ああそうそう。私らが『アメちゃんも苦しいんじゃないか』と思ったのが、第三次の空襲です。その時の部隊が
対地専門の筈の護衛空母部隊なんですよ。あんだけ正規空母を持っているアメちゃんが、わざわざ護衛空母部隊を
繰り出してくる。こりゃあ向こうも懐が苦しいんじゃないのかって思いましたね。まあうちらは『ここでこいつら
減らしておけば後が楽だ』と、60機位いた機体を減らすのに必死でしたが」

結果的に、彼らが帰還した後に、ハルゼーが出した最後の攻撃隊によって、第三次攻撃時点で煙を吐いていた
瑞鳳は沈み、龍鳳も大破してしまったのだが、それを坂井たちのせいにするのは酷であろう。
事実、この時期の陸軍第13飛行戦隊の奮戦は、『フィリピン戦での陸軍部隊の白眉』と言われるだけの戦績
(最終的にはフィリピン戦を通じて、戦闘機28機、攻撃機32機の撃墜を記録している。なお自軍は、56機中
38機の損失を受けている。)を残している。

「レイテて艦隊がアメちゃんを吹き飛ばしたことを知った時は、もう基地中が万歳三唱でしたよ。アメちゃんの
攻撃がピタッと止まって、『アメちゃんが逃げていくぞ』と聞いた時は、歓声を上げていました。だから
木村から『米軍は逃げている。今すぐ追撃しろ』なんて命令が下った時は、全員が馬鹿にしていましたね。
『無能大将の命令なんざまともに聞けるか。最初から最後まで足を引っ張りやがって。そんなに追撃したけりゃ
防空壕で震えている花谷のケツでも蹴飛ばしやがれ』って、全員が貶していました。
まあそれでも戦隊長さんが『あんなバカの命令なんか聞く気はないが、それでも戦友たちの傘になってくれんか』
と、頭下げたから『戦隊長殿の頼みならば』って、雷電部隊が対地用のロケット弾詰み込んで、うちらはその
護衛として飛びましたよ。結果的に、無茶な命令でひどい目にあったレイテの旅団の撤退を助けられたのが
幸いでしたが、もっとも、それは向こうも陸軍兵の速やかな撤退を第一義に考えて、それ以外はしないように
自制していたのが大きかったでしょうね」

かくしてフィリピンでの坂井の戦いは終わったのだが、それからが大変だったという。

「今でこそ笑い話ですが、みんな私が死んでいたと思っていたんですわ。13飛行戦隊の皆さんも、私がここにいる
なんてことを伝える余裕なんてどこにもありませんでしたから。なので原隊復帰をするべく連絡を取ったら、
電話口で『坂井は生きとったんか!!』と、驚きの声があがり、『今まで何しとったんじゃ!!』と、笹井中尉
から怒鳴られたんで『陸さんの戦闘機に乗って、アメちゃんの飛行機を落としていました。赤い尾翼の隼です』
と申告すると『あの時の隼はお前だったんか!!』と、二重に驚かれました」

もっとも、坂井が大変だったのはそれ以降だった。
レイテ沖での決戦は、日本海軍にとっては大勝であったものの、同時に在フィリピンの陸軍上層部の無能さから
陸海軍の関係が一気に悪化していたのであった。
如何に東条が、事実上、軍の政策ラインから外され、逃亡した富永を筆頭に、的外れな作戦指揮を連発した
木村や、無能の限りを尽くした花谷が、苛烈な処罰を受けたからと言って、海軍側の反発が簡単に収まる
状況ではなかったのだ。
故に、『現場の陸海軍将兵が一致協力して米軍に立ち向かった』という図は、陸海協調が必要と判断している
上層部にとっては、これ以上ない程の宣伝材料であったのだ。

「もう酷いもんでしたよ。今でいうと完全な客寄せパンダです。講演の依頼がひっきりなしに来るんですが
その時も軍の広報から『陸軍の名誉を傷つけず、陸海協調を果たしてほしい』なんてこと言われて、13飛行戦隊の
皆さんと一緒になって呆れかえっていましたから。遂には映画まで撮られた日には『こりゃ一体どこの何という
話だ?』という位にまで脚色されていましたわ。お蔭で戦後の一時期はうそつき呼ばわりですよ」

坂井曰く『正直な話、谷口監督には悪いですが『フィリピンの荒鷲』は、二度と見たくありませんね。映画の
出来云々じゃなくて、私を大川内伝次郎、太田中尉さんが長谷川一夫、太田さんの親友役で黒川弥太郎、
従軍看護婦役で高峰秀子とか、当人達にしてみりゃあ、恥ずかしすぎて見れませんよ』と、困った顔で
言っていたが、こうした宣伝により、陸海軍の感情的な反発は、表面上は鳴りを潜めたものの、今度は
海軍での坂井の居場所がなくなろうとしていた。




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