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架空戦記系ネタの書き込み その86

520yukikaze:2017/04/22(土) 22:15:50
後に連合国パイロットから『赤い尾翼のオスカーにだけは気をつけろ。奴はとんでもないエースだし、
奴に気を取られると、奴の仲間たちが狙ってくる』と、最注意で語られることになる戦法であるが、
実際には、やむを得ない措置でしかなかったのだ。
そして・・・

「敵は護衛空母所属のF4F4機でした。あれも初期と比べると大分いい機体になっていて、32型でも舐めて
かかると落とされる機体なんです。この機体でどう戦えるかというのを図るには、ある意味最適な機体
でした」

敵が視認できた時、坂井は、いつも以上に慎重に襲撃位置のポイント取りを行ったという。

「何しろ陸軍さんが見ていますからねえ。無様な真似は出来ません。計器やら何やらの配置が陸海共用に
なってくれていたお蔭で、操縦自体はそう困難は生じなかったのですが、飛行機を普通に飛ばすのと
空戦とは全然違いますから。そりゃあもう細心にも細心を重ねて行いましたとも」

そうして坂井は、深呼吸一つすると、エンジンのスロットを上げた。

「いやもう驚きましたよ。頭では分かっていましたが、Ⅲ型の加速性能は想像以上でした。やはり頭が
21型のままだったのでしょうなあ。現状に切り替えた時は、もう射撃せんといかん位置でした」

手で頭をかきながらそう話す坂井であったが、周囲からは『あれほどまでに見事な据え者切りは見たこと
がない』と絶句されたように、1機を落とすと、慌てたもう1機も悠々と落としてのけていた。

「あの時はねえ。全身に衝撃が走りましたよ。2機目を落とす時に旋回したんですが、その時に、
21型の時にできた、あの絶妙な操縦ができたんです。最初はまぐれかと思ったんですが、2機目を
落として、血の昇った相手が、乱射しながら一撃離脱かけてきたのを、自分の想定通りに躱して
のけたことで、これまでのもやもやが完全に消えましたね」

結果的にこの空戦で、坂井は2機撃墜し、残り2機も、坂井に気を取られすぎたことで、坂井の援護役
の陸軍の2機に落とされ、完勝に終わっている。

「もうね。嬉しかったですよ。もう戦闘機パイロットとしては駄目だと思っていたのが、あの1戦で
自信を完全に取り戻すことができたんです。飛行場に戻った時に思わず言いましたよ。『頼む。俺から
この機体を取り上げないでくれ。こいつは最高の戦闘機だ。こいつに乗っている限り絶対に負けない』って。
古参の人達が『そうだよな。隼は強いもんな』って泣いて喜んでいましたよ」

相手の強大な戦力を考えれば、今回の戦果も蟷螂の斧であったかもしれない。
だが、誇りを汚された飛行第13戦隊の面々にとっては、今回の完勝と、何より海軍パイロットが陸軍機を
本気で褒め称えたという事実は、彼らの傷ついた心を癒すには何よりの薬であった。

「それ以降はまあ、アメちゃんに対する嫌がらせですな。向こうの大将も、連合艦隊にかかりきりにならんと
いかんですから、基本は護衛空母の機体相手でしたが、向こうも広い戦域を護衛空母部隊の戦力で何とか
せんといかんでしたから、日を経つこどに苦しくなっていっているのがわかりましたね」

それが肌に感じられたのが、10月30日の戦いであったという。

「戦隊長さんが『海軍さんの艦隊がシブヤン海まで来ているんだ。海軍さんの飛行部隊は助けに行くそう
なんだがもだが、うちも助けにいきたい。すまんがいってくれんか』と言ったんです。そりゃあ味方を
助けにいかにゃいかんと、私が先導していったんですが、そりゃあ壮観な艦隊でした」

懐かしそうに坂井は目を細めていた。
彼の眼下にあったのは、金剛型と伊勢型を除くすべての戦艦である。
特にソロモン海の戦で全国民に知られた大和型2隻は、坂井をして『あんなデカい戦艦を日本は持っていたんか』
と、心から驚いたという。

「で・・・私らが対峙したのは第一次攻撃隊と、護衛空母群からなる第三次攻撃隊でした。敵の戦闘機が少なかった
こともあって、戦闘機は他の部隊に任せて、うちらは雷撃機の阻止に全力を尽くしましたね。爆弾はともかく
雷撃による浸水程面倒なことはありませんから。そう言った点でも隼は有用でした」

もっとも、坂井たちが戦ったのは雷撃機だけではなかった。
雷撃機を守ろうと坂井たちに攻撃を加えた戦闘機もいたのだ。

「勇敢なパイロットでしたよ。こちらの戦闘機を振り切って、何としても雷撃機を守ろうという意志が
こちらにも伝わってくる、そんな立派なパイロットでした。戦後、撃墜したパイロットが、マリアナで生き残って
いた、エースパイロットのブラシウ氏だったことを聞いた時は、成程なと思いました」




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