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架空戦記系ネタの書き込み その86

519yukikaze:2017/04/22(土) 22:14:55
「そこから先は押し問答でしたね。『良いから乗せろ』『バカヤロウ、海軍なんぞに俺達の翼に触れさせるか』
ってな具合に。まあ最後は『うるせえ!! こいつが死ぬのは空の上だ。アメ公の爆弾で押しつぶされて
死ぬなんて、こいつが喜ぶと思うのか』って、啖呵切っていたら、さっきの士官が『構わん。俺が責任を取る』
って、許可をくれましたね」

坂井にとっては、目的を果たせたと言っていいのだが、その時は戸惑いの方が強かったそうだ。
まあ当然だろう。勢いとはいえ殴り飛ばした士官が、自分の援護射撃をするなんて想像の範囲外だからだ。
困惑する坂井に、その士官は、何でもないことのように言ってのけたという。

「『そいつは俺の親友の機体だ』って言ったんですわ。『俺よりも腕が立って、立派なパイロットだった』と
言ってね。後でわかったんですが、その親友さんは、富永が逃げようとしたのを咎めたら、連中に撃たれて
一命は取り留めましたが、もう空を飛べないんじゃないかって言われるほどの重傷だったそうなんですわ。
まあ、その親友さんは、東条の意向もあって、手厚い治療を施されて、戦後になりますが、警察予備隊
時代に出来た救難隊で大分ご活躍されたそうなんですが、今でも太田さん――ああ、私が殴り飛ばして
しまった中尉さんは、『あいつは戦闘機パイロットのままだったら、空軍の総大将になれたんだが、
人の命を救い続けて、少将に成れたことを誇りにするえらい奴だからなあ』と、いつも言っていますよ。
余談が過ぎましたね。それで太田さんが言ったんですよ。『確かにこいつは飛びたがっている。それなら
飛ばしてやった方があいつも喜ぶ』とね。まあ『海軍野郎。飛ばせてやるがそいつは絶対に壊すな。後、
絶対に返せ』と言われましたがね」

借りパクされたら堪らんと言うことですね。まあ結果的に、終戦までお借りすることになって、第13戦隊
の戦友会の席で、今でも酒の肴にされとりますが、と、坂井は、アルバムに保存している戦友会の写真を
なぞりながら、懐かしそうに語っていた。

「忘れもしません。あの10月28日の戦いは。連合艦隊が本土とブルネイから全力出撃したその日、私の
第二のパイロット人生が始まったんです」

その日、坂井は、太田中尉から渡されたマニュアルを丁寧に読んでいたという。
太田の親友が纏めていたそれは、何故か少しばかり扇情的な絵を多用していたものの、反面、要点がよく
纏められており、全く機体に障ったことのない坂井にも、容易に理解できる内容であった。

「正式なマニュアルというよりは、飛行第13戦隊の部隊向けだったらしいですわ。『これ問題にならんか
ったんですか?』と聞いたら、太田さんが『だから部隊向けなんだよ。ちなみに頭の固い面子には、
『友邦独国の虎戦車の教本を参考にしました』と言って『いい加減なことをぬかすな!!』と、怒鳴られたら
『いえ。独国から見本で購入された虎型戦車の教本にあると中央に勤務している同期が言っていたのであります。
ご確認ください』と言い返すと、どうやら本当だったようで、二度と言わなくなったよ』と、いたずらっ子の
ような顔で言っていたなあ。ほう? 他の部隊でも似たようなのがあったんですか。いやはや、陸軍さんは
こういう面では海軍よりもしゃれっ気がありますなあ」

そうしているうちに、臨時基地に、敵艦載機が接近しているという報が入ってきた。
機数は4機程度。もっとも、向こうにしてみれば、戦力の枯渇というよりは、こちらの空域の哨戒程度の
感覚なのであろうというのが、この基地全員の認識であった。

「『連中・・・もう勝った気でいやがる』と、太田さんたちは憎々しげに言っていましたね。この時には
飛行戦隊の戦隊長さんも腹をくくって『俺が全責任取るから、お前らは最後まで思う存分空を飛んで来い』
と、言ったことで、戦意も取り戻せていたから猶更でしたね。で・・・私がついつい言ってしまったんですわ。
『それなら、連中に戦争を教育してやりましょう』って。みんな、ニヤリと笑いましたね」

もっとも、第13飛行戦隊にも悩みがなかった訳ではない。
現在、この臨時飛行場にある機体は7機しかない。周囲に点在している機体をかき集めれば、十数機程度に
なるかもしれないが、それをすべて賄えるほどの設備をこの飛行場は有していなかった。
なので、当面は、現在ある機体でやりくりする必要があるのだが、それだと陸海軍で基本となるロッテ戦術
が組めない機体が発生するのだ。

「なので『私は単機でやらさせてもらいます。ロッテを組もうにも、陸軍さんといきなり連携取るなんて
そりゃ無理でしょう』と言って、好きなようにさせてもらいました。向こうの戦隊長さんは、私が危なく
なったら助太刀しろとは言ってのけていましたが」




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