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中・長編SS投稿スレ その3

1名無しさん:2011/11/08(火) 18:57:14
中編、長編のSSを書くスレです。
オリジナル、二次創作どちらでもどうぞ。

その2が960を越えたので……
1000に達してからこちらに移動してください。

前スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9191/1298483078/

347earth:2017/01/03(火) 22:54:21
筆が乗ったので実験SSの続きを掲載します。
会談後の銀河帝国側の様子です。

348earth:2017/01/03(火) 22:54:51

  時空の迷い子達
 《支援への道》


 銀河帝国を率いる三賢者はフォークからの提案・21世紀地球支援について特に反対はしなかった。
 ブローネ、ライガー、山田はいつも使う小会議室に集まってワールドナビゲーターに検討させた案をたたき台にして
検討に入った。

「この戦いで発生した深刻な環境汚染への対応としてコスモクリーナーによる環境浄化。続けて必要な観測機器、亜光速航宙艦、
反物質機雷、光子魚雷の有償供与、ただ有償と言ってもあちらの経済状況などを考慮して、太陽系の資源の最低限の採掘権で
済ませようと思うのだが?」

 ブローネの発言を聞いたライガーと山田は同意するようにうなずく。

「我々が《人類共有の資産》である太陽系の資源と引き換えに兵器や技術を《売却》する形をとれば向こうも無駄に疑心暗鬼に
陥らずに済むだろう。まぁ人類がその足を踏み入れたことのない星を含め、太陽系の領有を認めたこと自体が大幅な譲歩だと
理解してもらいたいものだが」

 人類がその足跡を刻んだことのない星々を含め、太陽系全ての領有を認めたということ自体が大幅な譲歩と言えた。
 実際には「直接統治すると防衛範囲が広がり過ぎる」という切実な理由もある。
 まず殴り込み艦隊主力をいつまでもかの世界に置き続けられるとも限らない。しかし宇宙怪獣に目をつけられている以上、
第二波の襲来に備える必要がある。そのためには別の有力な艦隊を配置しなければならない。
 銀河帝国は宇宙怪獣の脅威を受けて無人艦やロボット兵などの大量生産を進めているが、これらはまず重要拠点に配備される。 
仮に第99観測世界の地球を優先すると、他に手薄な場所が生まれる。それは現状において容認できなかった。
 
「一応、バリア衛星があれば、宙対地爆撃を受けてもシェルターに退避する時間は稼げます。その間に我々が救援に駆けつける
のもありでしょう」
「うむ、山田博士のいうことも道理だな」

 かくして支援プランの概要は決定され、どの程度支援するのかを更につめていくことになる。
 しかし山田はある懸念も覚えていた。

「地球側、全権代表など決められますか?」  

 これにブローネとライガーは一様に「「難しい」」と答えた。

「少なくとも1国に絞ることは無理だろう」
「他国の奴隷になって生き延びるくらいなら、道連れで死んでやるという国もあるだろうな。特にプライドが高い国には」
「フォーク提督はそれを理解していなかったのですか?」

 怪訝そうに問う山田に、ブローネは苦笑する。

349earth:2017/01/03(火) 22:55:24

「理解はしていただろう。だからこそ、交渉の席で代表は決めろと言ったが、どこかの国を代表にしろとまでは言わなかった」
「つまり新たな国際機関を作らせる、或いは国連に窓口を一本化させると?」
「前者なら現状の国連よりは強制力のある組織。それでいて地球連邦未満といったところだろう。後者なら安保理がその役割を
担うか……まぁそれでもハードルはかなり高いだろう」
「正直、かなり無茶な気がしますが。この世界で地球連邦が作れたのも、もとはガミラスの攻撃で人類の大半が死んだおかげ
とも言えますし」

 山田の意見にブローネは異を唱えない。
 彼らが本拠とする世界でさえ、ガミラス戦役以前は人類統一政府は存在しなかった。
 地球連邦が出来たのもガミラス戦役で人類の多くが遊星爆弾で死亡し、話し合いが通じない人類共通の脅威(ガミラス残党含む)
があった為だ。
 そしてその地球連邦と地球防衛軍、連邦構成国の国軍がデザリアム戦役でガタガタになったため、余所者であった三賢者が
主導する地球帝国が建国できたと言える。まぁ三賢者からすれば面倒ごとを押し付けられた気分でもあったが。
 
「しかし交渉ルートが一本化されてないとこちらも困る。地球諸国すべてと個別に交渉してくれなどとフォーク提督から要請が
あったらあの世界の地球のことなど無視して太陽系で勝手に戦った方がまだ良いと返すところだ」

 ライガーもすかさず頷く。

「彼は銀河帝国宇宙軍の軍人だ。それゆえに銀河帝国の国益を優先せざるを得ない。しかし地球をこのまま見捨てることも
できない。だからこそ、あの提案を行ったのだろう」  
「……もし地球が取りまとめることが出来なかったら?」
「地球側への支援は無しだ。まぁ改良型コスモクリーナーの実地試験の場には丁度いいから、あの地球でデータどりをする
のもありだろう」
「なんだかんだ言って、支援はしてやる気じゃないですか」
「支援ではなく試験だ」

 ライガーはそう断言するが、いつもより口調が柔らかかったため、それが建前であると山田も理解した。
 ブローネも満足げにほほ笑む。
 
「確かに試験、ですね」
「そう試験だ。支援などではない」
「うむ、試験だ。新技術ではどんなトラブルが起きるかわからない」

 旧ボラー連邦の人間からすれば砂糖菓子よりも甘い対応だった。

「21世紀地球諸国が我々の努力を無駄にしない賢明な決断を下すことを祈りましょう」   
   
 兎にも角にも、銀河帝国は支援計画を策定した。
 すべては地球諸国の決断に委ねられることになる。

350earth:2017/01/03(火) 22:56:40
あとがき
銀河帝国はかなり甘い模様です。
故郷に似た世界に絆されたと言えるかも知れません。
尤も地球側がその厚意にこたえられるかは不明ですが。

351earth:2017/01/04(水) 23:48:11
実験SSの続編を掲載します。

352earth:2017/01/04(水) 23:48:45

  時空の迷い子達
 《地球諸国、沖縄にて斯く踊れり》

 圧倒的な強者であるはずの銀河帝国が地球の賢明な判断を願っていることなど露も知らない地球諸国は銀河帝国との
会談後、地球全権代表設置の件について話し合いをもったが……結論がでる気配はなかった。
 何しろ並行世界の銀河を支配し、圧倒的な科学力、軍事力を誇る銀河帝国との交渉役(それも全権代表)をもぎ取る
ことができれば、その国家の国際的地位は一気に急上昇する。銀河帝国の力を上手く借りれればアメリカ合衆国にとって
代わる覇権国家にさえなれる可能性がある。その誘惑に勝てる国などそうはいない。
 中国の代表団は露骨に地球代表には自国が相応しいと主張して憚らず、アメリカと衝突した。
 宇宙怪獣と銀河帝国が地球に来るまで覇権国家であったアメリカ合衆国は自国こそがその地位にふさわしいと考えて譲らない。

「宇宙怪獣どもが襲来するまで、世界の秩序を維持してきたのは我々合衆国だ。ならば地球の代表を名乗っても問題ない」

 米大統領ディレルはそう断言するが、露大統領ジェガノフはそれに疑問を呈する。

「しかしその宇宙怪獣の襲来で貴国も大打撃を受けた。世界の秩序を維持する力が今もあるのかね?」
「確かに打撃は受けた。だがすぐに回復する」
「その割には国内が騒がしいようだが?」

 フランス、中国の代表団が露の意見に同意するように頷く。
 実際、米国は宇宙怪獣襲来によって本土に多大な損害を被っており、混乱のドサクサに紛れ暴動が多発しているのだ。   
 それを突いたジェガノフの皮肉にディレルは皮肉で言い返す。

「そういうあなた方も人のことを言えるのかね?」
  
 ディレルの指摘通り、ロシア、中国、欧州も宇宙怪獣によって深手を負わされ混乱の最中だった。
 武力で不満を抑え込んでいた中国は当然ながら、欧州でもこれまで色々なお題目で抑圧されてきた不満が爆発して
各地で暴動が発生している。
 より深刻なのが中東やアフリカなどの国々だった。 
 中東ではアメリカ軍が大損害を被ってプレゼンスが低下。これに付け込むような動きをする国、勢力が増えている。
このためイスラエルなどは殺気立っており、第5次中東戦争勃発の可能性さえ囁かれている。 
 アフリカではすでに紛争が多発しており、政府が崩壊した国も存在する。

「確かに大きな打撃を受けたが、我が国はまだ十分な力を持っている」

 ディレルは強気一辺倒だった。
 そんな彼の態度に呆れた者たちが妥協案に見える案を示す。
 
「新たな国際機関を作り、そこで窓口を一本化するのはどうだろうか?」
「国連を再建して、そこで一本化するというのは?」

 その提案に対しディレルは苦い顔をする。

「多数の国を参加させたとして、それで意見を纏めることが出来るのかね? 宇宙怪獣という脅威がせまっている以上、
悠長な話し合いができるとは限らないのだぞ」

353earth:2017/01/04(水) 23:49:17
 
 ディレルの答えは道理にかなうように見えなくともなかったが、彼としては『自国の安全保障と直結する銀河帝国との交渉を
他国にかき乱してほしくない』というのが本音だった。

(数に物を言わせて、我が国を封じ込めようとする魂胆だろうが……)
  
 実際、提案した者たちの魂胆はそこにあった。 
 ジェガノフはその魂胆を理解しつつも「それはどうか?」と擁護する姿勢を示す。

「その点は否定できない。ただ、《指導的な役割を果たす国》に《相応の権利》が与えらえるのなら一考の余地があるだろう」
「ほう? 具体的には?」
「宇宙怪獣は世界の安全保障に直結する問題だ。それならば安全保障理事会のやり方に倣うのが妥当だろう」  

 常任理事国・五大国による指導体制を強調するジェガノフ。
 しかしG20の国々の中には、五大国に地球を牛耳られるとの懸念が生じ、これに反対する意見が相次いだ。

「今回の会談からわかるように銀河帝国はG20を重視している。五大国だけを特別視している訳ではない」

 インド代表の物言いに米中露の面々は少し苛立ったような顔をする。
 片やイギリス、フランス、ドイツはどうするべきかと小言で話し合う。 
 このあとも会議は踊るを地でいくような展開が続いたため、列席していた嘉納は気分転換のため、急いで手配させたDVDを
見ることを提案した。

「相手を知るためにも、銀河帝国が存在する世界にそっくりな《宇宙戦艦ヤマト》を見てはどうでしょうか? それに宇宙怪獣が
出てくる『トップを狙え』という作品もあります」

 嘉納の提案は受け入れられ、会議は一時中断され休憩となった。 

「やれやれ、こりゃあ、纏めるのが一苦労だ。いやそもそも纏まるのかね?」

 そんな嘉納に北条が声をかける。

「しかし纏められなければ、銀河帝国は我々を見捨てるかも知れない。やるしかないだろう」
「ですが総理、どこの国も簡単には譲りませんよ。文字通り国運が掛かっています。それに国民の期待も大きい」

 全権代表を決める国際会議が紛糾していたが、銀河帝国が並行世界の23世紀地球を中心とした国家であることを公表することに
反対する国は存在せず、沖縄に駆けつけていたマスコミに公表されていた。
 ただし公開されたのは銀河帝国は並行世界の23世紀の地球を頂点とした巨大な星間国家であり、彼らは今回襲来した宇宙怪獣と
戦っているという情報だけであり、ヤマト世界云々については混乱の元になるのではないかとの声もあり、公開は見送られている。
 それでも同じ人類が助けてくれたとの情報は多くの人間を安堵させた。
 また同じ人類だからこそ共闘できるという期待、いや声が挙がっている。帝国との交渉が始まるとの報道を聞いた者の中には、
都合のよい期待をする者さえいた。
 某国では銀河帝国にいるであろう同胞と手を携えて、自民族を宇宙の覇者になどと正気を疑うことを公言する者さえいる。

「やれやれ……ヤマトや宇宙怪獣が実在する。前者については嬉しい、嬉しいが……できれば両方とも遠い隣人であったほうが
面倒がなかっただろうな」 
 
 嘉納はそう言ってため息をついた。

354earth:2017/01/04(水) 23:51:03
あとがき
会議は踊るでした。
果たして決まるのやら……。

355earth:2017/01/05(木) 22:16:56
実験SSの続きを掲載します。
といっても短めの閑話のような話ですが。

357earth:2017/01/05(木) 22:20:06


  時空の迷い子達
 《フォークの憂鬱》


 G20による国際会議が踊っている様子は、銀河帝国側に筒抜けであった。
 アドミラル・ヒジカタに戻っていたフォークは臨時の長官室にした部屋で部下からの報告を聞くと軽く頭を抱える。

「まぁ予想はしていたが……いやはや」

 要求を突きつけた彼自身、纏まるのは困難と見ていた。
 しかしそうでも言わなければ、銀河帝国上層部(特に三賢者)も納得してくれない以上、言わざるを得なかったのだ。 
 わずかな可能性に賭けたのだが、その賭けは予想通り彼の負けで終わりそうだった。

「如何しますか?」
「最低限のケアはして、あとは自助努力に期待。これが一番可能性が高いプランだろう。こちらが用意した支援計画が無駄に
なるのは残念だが……」
  
 三賢者が支援に後ろ向きなら、21世紀世界の人類を実験動物に例えて支援の必要性を訴えるつもりだったフォークは、その
必要がなくなったことに安堵した。
 
(我々の上司が思っていたよりも《人の子》であったことを確認できただけでも上々だな。だとすると、あとは特地か)

 銀河帝国側かれすれば特地は厄ネタの塊(特に正神関連)であり、好き好んで関わり合いになりたくはなかった。
 ライガーは「許されるならジオイド弾で吹っ飛ばしたほうが後腐れがなくていい」と思っていたほどだ。
 フォークは、「例え《原作》通りであっても非武装の民間人や関係ない亜人もろとも抹殺は人としてどうか」との思いが
あるので、仮に特地側と事を構えるにしても銀座事件の原因を作るなど問題の多い冥府の神に仕置き(他の神への見せしめ兼ねる)
をして手打ちでいいのではないかと思っていた。
 しかし特地の帝国に対しては容赦する必要性を感じていない。特地の権益に対して興味を持たない銀河帝国からすれば、現地が
多少混乱しても問題なかった。

(対帝国戦となれば帝国の中枢を奇襲して終了だな。あとは現地住民に任せれば良い。わざわざ地上に関わる必要はないからな)

 多少乱暴な手であるが、宙対地爆撃で空から一方的に攻撃することだってできる。
 そしてそれを防ぐ手立てもを彼らは持たない。訓練よりも簡単な作戦になるだろう。 
 銀河帝国政府は具体的にどうするかをまだ決めていないが、特地の情報があるに越したことはない。故に彼はまず特地の世界が
どこにあるかを探っていた。
 
「銀座の門、いや次元回廊で何かわかったことは?」
「異界観測班はあと36時間程度で回廊を形成した世界の座標を特定できるとのことです」
「一日半か……よし偵察部隊を用意するように参謀長に伝えてくれ」
「了解しました」

 フォークは部下が部屋から出ていくのを見た後、考え込む。
 銀河帝国からすれば特地の価値は高いとは言えない。だが21世紀側はそうではない。

「しかし問題は日本が、この世界がどう動くかだな。まぁ門が潰れている以上、どうすることもできないだろうが……我々に
何かしらの協力を求めてくる可能性もある」

 帝国軍は銀座に侵攻したが自衛隊、警察の反撃、そして宇宙怪獣の攻撃でその多くが死亡している。
 それでも少数の捕虜を日本は得ており、いずれ門を築いて侵攻してきた異世界の存在を彼らは知るだろう。そのときの対応も
考えなければならない。
 
「……無駄な仕事が増えるから、見つかったときには滅んでいました、なんてオチにならないだろうか。残業をやるにしても
別の業務に時間を割きたいし」

 本音か冗談か、区別がつかない台詞を呟いた後、フォークは再び仕事に戻った。
 彼の願いが叶うかどうか、それを知る者はこちらにはまだいなかった。

358earth:2017/01/05(木) 22:21:40
あとがき
アンチものは多々ありますが、感情の問題ではなく自分の仕事が増えるから滅んで
いてほしいなと思われた世界はないでしょう(苦笑)。

359earth:2017/01/08(日) 01:07:49
実験SSの続きを載せます。

360earth:2017/01/08(日) 01:08:29


  時空の迷い子達
  《とある提督の即断》


 銀座の門を築いたと思われる世界の場所を特定した銀河帝国は偵察部隊を送り込んだ。
 三賢者は殴り込み艦隊から適宜増援を送ること、場合によってはFG(《特地》がある星に与えられた暗号名)に介入
してもよいとフォークに伝えた。
 三賢者は「何度計算しても面倒ごとになるという予測しかないのだが」と苦い顔だったが、《原作》との差異が存在する
可能性もあると判断した故の決定であった。
 しかし偵察部隊が送ってきた情報は三賢者、そしてフォークの予想を覆すものだった。
 アドミラル・ヒジカタの第一艦橋で報告を聞いたフォークは驚愕のあまり目を見開いた。

「……信じられん」

 フォークは天井に設置されているメインパネルに映し出された偵察部隊指揮官に「それは本当なのか?」と聞き返すが
答えは変わらない。

『いえ、間違いありません。現地時間で48時間前に多数の宇宙怪獣が目標惑星《FG》周辺で殲滅されたことは確実です。
ただし《FG》も多大な被害を被っています』
「《FG》の被害は後で聞く。何があった?」
『……映像を回します』

 光の速度で48時間必要とする場所に展開させた偵察艦によって観測された《48時間前の現地の映像》がメインパネルに
映し出される。
 それは多数のヒトサイズのロボットが宇宙怪獣と戦う光景だった。
 多数のヒトサイズのロボットが亜光速、場合によってはそれ以上の速度で戦場を駆けまわり、宇宙怪獣と互角に戦っている。銀河
帝国本国がある世界の地球人類が見ても驚くであろう光景がそこにはあった。
 しかしフォークは別の意味で驚いた。いや、目を疑った。

「て、鉄人兵団、だと?」 

 フォークは小声だが、思わずうめいた。
 彼が《原作》で知るような攻撃など生ぬるいとばかりに、鉄人兵団の兵士たちは圧倒的な攻撃力と機動力で宇宙怪獣と戦った。
 数的な劣勢など気にもせず、ロボット兵は宇宙怪獣を次々に撃破していく。それは銀河帝国軍の艦艇であっても、あのロボット兵に
取りつかれればただではすまないことを示していた。
      
(あの冥府の神、追い詰められてなりふり構わない手に出たのか?)  
 
 フォークは苦い顔をして偵察部隊の指揮官に尋ねる。

「戦闘はどの程度続いた?」
『半日です』
「そうか。なら重要と思われる局面と最終局面だけを手短で頼む」
『了解しました』

361earth:2017/01/08(日) 01:09:01

 鉄人兵団のロボット兵に手を焼いた宇宙怪獣だったが、彼らは次第にその数を増していった。
 文字通り、宙を覆わんばかりの数をもって押し寄せる宇宙怪獣によって鉄人兵団は次第に押されていく。それでも戦線を崩壊させる
ことなく持ち堪えている様子は「ドラえもん最強の敵」と賞されることだけの実力を持っていることを示していた。

「「「……」」」

 《原作》を知るフォークですら驚愕しているのだから、《原作》を知らない将兵(大半はクローンかアンドロイドだが)がこの
超高性能ロボットの大軍団と、常軌を逸した物量(それも質も兼ね備えた)を誇る宇宙怪獣の一大会戦に目を奪われるのは当然だった。

(あれが鉄人兵団の手加減無しの攻撃か……まるでヒトサイズの宇宙戦艦だな)
  
 その鉄人兵団も不利を悟ったのか彼らは次第にFGに戻っていく。
 そして鉄人兵団が後退する度に宇宙怪獣は前進していき、FGを射程圏内に納めると容赦のない宙対地攻撃を開始する。
 無数の光がFGに降り注ぐが、それらは惑星には到達しない。惑星周辺にバリアが張られているのか、宇宙怪獣から放たれた攻撃は
弾かれていく。
 これに業を煮やしたのか、ざっと見積もっても万の単位の宇宙怪獣が亜光速で突っ込み、バリアと接触後に自爆する作戦に打って出る。
 フォークは「原作6話かよ」と呟きつつも、視線を外せない。
 3回の波状攻撃の末に、FGを囲っていたと思われるバリアは砕かれる。そしてそれを待っていたかのように後続の宇宙怪獣が一斉攻撃
を開始する。しかしそれでもFGは抵抗を止めない。地表に設置されたと思われる砲台から無数のビームが放たれ、宇宙怪獣を次々に宇宙
の塵としていく。
 壮絶な潰しあいが暫く続き……先にFG側が力尽きた。
 抵抗を排除したのを確認した宇宙怪獣は更に接近し、星にとどめを刺した。
  
「……数の暴力といったところか」 
 
 映像を見終えたフォークは軽く息を吐いた。

「……それで、宇宙怪獣は?」
『宇宙怪獣は現在、この恒星系の恒星周辺に集結しています。この戦いで受けた傷を癒しているものかと』
「こちらが気づかれた様子は?」
『ありません』 
「……それは重畳」

 そう言うとフォークは即断する。

「横合いから殴りかかれなかったが……多少なりとも疲れた相手に殴りかかることはできる。このチャンス、そうはない」

 今の彼にとって《特地》の調査は優先度の低いものになっていた。

(鉄人兵団があの世界にいた時点で現地住民は色々と拙いことになっていただろうが……俺がするのはこの好機を生かすことのみ!)

 フォークは会議は踊るを地で行く地球諸国に対し、「宇宙怪獣が周辺世界に出現。これより迎撃に向かう」と通達するや否や、主力艦隊と
共に全力出撃したのだ。
 もはや世界が特定されるのを恐れて迂回する必要も、欺瞞行動をする必要もない。
 故に彼らは最短ルートで宇宙怪獣が集結する恒星を目指し……恒星もろとも宇宙怪獣を始末することになる。

362earth:2017/01/08(日) 01:10:41
あとがき
劇場版前か後かで特地の住民の運命は変わるでしょう……。
まぁ神様ですからきっとよい選択をしてくれたと信じましょう(棒)。

フォークとしては特地よりも宇宙怪獣入れ食いのほうが美味しかったかも(笑)。

363earth:2017/01/08(日) 21:13:35
実験SSの続きを掲載します。
特地世界での戦闘後の銀河帝国側の様子です。

364earth:2017/01/08(日) 21:14:10

  時空の迷い子達
  《祭の後始末》


 銀河帝国軍は改良したジオイド弾を含め大量破壊兵器を恒星に大量に撃ち込み、恒星そのものを大爆発させるという実に豪快な
戦術をもって大量の宇宙怪獣を一度に抹殺するという手に打って出た。
 さすがの宇宙怪獣も恒星の大爆発には抗しきれず、爆発と発生した衝撃波によって多大な被害を被った。そしてその隙を突くかの
ように銀河帝国軍は襲い掛かり、その恒星系、及びその周辺宙域に展開していた宇宙怪獣の殲滅に成功した。
 撃滅した宇宙怪獣の数は3億以上。銀河帝国宇宙軍は前回の戦いを含め実に4億近い宇宙怪獣を短期間の内に葬ることに成功した
のだ。引き換えに恒星どころか恒星系そのものが崩壊するという21世紀人類から見れば大惨事をもたらしたのだが……。

「対宇宙怪獣戦を考えると、費用対効果は完璧だな」

 セイレーンの第一艦橋でフォークは戦果と自軍の消耗を比較するとそう評価した。
 恒星系が一つ滅んだものの、無数の並行世界の中にある無主の恒星系一つと引き換えに軽微な損害で勝てるなら問題ない、それが
銀河帝国側の考えだった。
 それが自分たちの故郷の価値観からどれだけずれているか……三賢者もフォークも気づかなかった。いやそれに気づこうともしな
かった。彼らの思考は鉄人兵団出現とその対処に向けられていた。
  
(三賢者の面々も大わらわだろうな。《原作》との差異がこのような形で示されたのだから)

 三賢者は鉄人兵団出現を受けてドラえもん世界から介入を受ける可能性が高まっていると判断し、勢力圏の監視体制をより強化
することを決定した。

「ドラえもんが出現した場合、下手な介入を受ける前に、早めにお帰り願うしかあるまい。場合によっては多少の土産を持たせても
問題ないだろう。当然、記憶の消去などの措置もできるだけ無しにする。嫌がられて脱走されたら劇場版の始まりだ」

 小会議室で放たれたブローネの言葉にライガーも山田も異を唱えない。
   
「技術を隠蔽してきた甲斐があったというものだ」
「ええ、銀河帝国建国に時空犯罪者がかかわっている……などと思われたら目も当てられませんし」
 
 三賢者にとって特地の神々やボラー連邦よりも1体の子守りロボットと4人の小学生のほうが怖かった。
 かといって彼らはこの5人だけを恐れている訳ではない。 
 
「鉄人兵団が他世界に進出している様子は? あれだけの科学力を誇る連中だ。間違いなく門を解析しているはずだ」
「今のところ、確認されていないが……警戒は必要だ。まぁ全力の鉄人兵団の実力が判ったのは大きな成果だ。いやはや門という
不便な移動手段で展開できる部隊だけでこれだけのことが出来るとは驚いた」
「劇場版前なら異世界に奴隷狩りと称して出撃する可能性がありますね。この場合、ドラえもん劇場版の順番が変動しますが」
「何はともあれ、ドラえもんの奮戦を期待するしかないか」

 大の大人の3人は4人の子供と22世紀製の1体の子守りロボットの奮戦を願った。 

「しかし、特地の神々は消えていても気にはしないが……GATEの原作ヒロインの行方は気になるな」
「おや、陛下も彼女たちに会いたかった、と?」
「そこまで会いたいとは思わんよ。特にロゥリィに会ったら色々と面倒なことになりそうだからな。ただ少しは気になる。
《原作》が完全に崩壊した場合、《原作》において重要な役割を果たした者たちはどのような役割を振られるか」
「なるほど。それはある意味、興味深いですな」
「私としては、彼女たちの未来が少しでも幸多いものになるように祈りますよ」

 山田の意見にライガーは笑う。

「奴隷狩りで連れていかれていたら、死こそ救いになりかねないぞ? 特に女性は奴隷を増やすために活用されるだろう」
「薄い本御用達のR18な展開、と?」
「それで済めばむしろ幸運だろう。必要な臓器だけを抜き取られる展開も考えられる。魔法の研究のための解剖もやるだろう。
どんなことをされても死なない亜神は恰好の研究材料だろうな。特地の神、あの精神生命体もエネルギー生命体。機械生命体に
とっては興味深い研究材料だろう」

365earth:2017/01/08(日) 21:15:12


 山田の脳裏に別の意味でR18に指定されるであろう凄惨な光景が浮かんだ。

「……悍ましい限りですね」
「ドラえもんが負けていれば、地球人類も同じ目に遇った可能性が大だぞ? いやはやそれを考えるとTPがドラえもんの活動を
見過ごしているのも納得できるというものだ」

 ここでブローネが咳払いをする。

「話題がずれているぞ」
「おっと、そうですな。失礼しました。かの世界については資源探索などを進めるということで」
「それでいいだろう。特地以外に魔法文明がないとも限らないだろうからな。件の恒星系は崩壊済みだから無視しても構わん」

 その後もいくつかの議題が話し合われるが、原作ヒロインの話題はない。
 彼らに原作ヒロインに会いたいなどという願望はなかったのだ。勿論、彼らも《物語》に出てくる彼女たちは好きだった。
 しかし《物語》が現実になった世界において無駄な労力をかけてまで彼女たちを探し出そうとする意志はなかった。 
 何はともあれ、特地に関する議論が終わると、彼らは今回の一件におけるもう一方の当事者であった世界に目を向ける。

「それで第99観測世界の地球だが……未だに結論が出ていない。それどころか、報告にもあったように情報が漏れて混乱が
拡大しているようだ」

 ライガーが地球各地の様子を捉えた映像を円卓中央に映し出す。
 映像には一部の国々のみによって地球のリーダーが決められようとしていることへの抗議活動が各地で繰り広げられている
様子が映っている。
 その一方で自国こそが地球の全権代表に相応しいと主張するデモも起きており、G20諸国の議会では「容易な譲歩は絶対に
行うべきではない」との声が高まっている。
 それが沖縄にいる首脳へのプレッシャーにもなっているのは言うまでもない。

「……誰だ、そんなヘマをしたのは?」
「南北に分断されている某国。政府内には北のシンパが多いですからな」

 ブローネは「ああ」と呟いて納得した顔をする。

「あの連中か……まぁスパイ天国の日本でもありそうだったが」  
「留守番をしている第7分艦隊には、世界各地から自称・地球代表による会談を申し入れが殺到。非常に賑やかなことになっている
ようで……全く人類の業というのが垣間見えますな」

 ブローネと山田は揃ってため息をついた。
 そんな二人にライガーが追い打ちをかける。

「ああ、それと面白いことにヤマト、トップをねらえなどの製作関係者の周囲がにぎやかになっているようですな」
「並行世界に彼らの作品とそっくりの世界が実在したから、ですか。現地の脳科学者が忙しくなりますね」
「ははは。忙しいのは彼らだけではないぞ。他分野の科学者も未来技術を解析するべく次々に動員されている。
 ヤマトの実在こそはまだ公表されていないが……TVもネットでは23世紀世界についての議論で夢中。一部のバカが23世紀の
未来に連れて行ってもらおうと沖縄を目指したらしい。おかげで海保と警察も大忙しだ」

 地上の狂騒ぶりを改めて目の当たりにした三賢者は「収拾はつかない」と判断した。
 
「しかしドラえもんがこちらに来る可能性が高まった以上、第99観測世界の地球を放置という訳にもいかん」
 
 ライガーの意見にブローネは渋々といった様子で同意する。

「何かしら手を打つ必要があるか」
「仕事が増えますね」
「「「はぁ〜」」」
 
 いくつもの銀河を統治する超大国・銀河帝国。
 その大帝国を采配する男たちが弱小勢力の扱いに苦慮するという、何も知らない人間が見れば首をかしげる展開が帝国の奥の院で
繰り広げられていた。

366earth:2017/01/08(日) 21:16:28
あとがき
特地世界の話は終了。
こうも特地側の話がばっさり終了する話ってあっただろうか(汗)。
でもGATE地球はいまだにグダグダです。

367earth:2017/01/11(水) 22:15:20
実験SSの続きを掲載します。

368earth:2017/01/11(水) 22:15:52

  時空の迷い子達
 《妥協》


 某国の情報漏えいにより、銀河帝国との交渉のテーブルに着くことが出来る地球全権代表の座を賭けた争いが世界各地で続いていた。
 それは銀河帝国艦隊が異世界から帰還した後も変わらない。いや銀河帝国艦隊が戻ってきて、「本国はそちらの代表さえ決まれば支援
について話し合いたいと言っている。答えはまだか?(意訳)」と返答を促したことから21世紀地球諸国の争いはより過熱していた。
 沖縄会談に呼ばれた無かった国々の間ではG20諸国の専断は許されない、全世界の意見を集約するべきだなどとの意見が噴出した。
また地球代表を自称する者以外に、正規とは別の裏口の交渉ルートを築こうと接触を試みる者さえ現れる始末だった。銀河帝国側は
これらを一切無視したが、それで諦めてくれるほど諦めが良い人間など存在しなかった。
 おまけにこの手の動きにG20も便乗していたため、裏口のルートを巡る駆け引きも過熱する一方だった。 
 その状態で宇宙怪獣の攻撃によって損なわれた富、各国の軍事力、自然環境の影響が出始めたのだから、世界情勢が悪化しないわけがない。
 世界各国は宇宙怪獣から受けた損害から立ち直るどころか、その傷口に塩を塗りあう行為を繰り返している……それを目の当たりにして
いる嘉納はホテルの部屋に置かれた丸テーブルに肘をつけて頭を抱えた。

「……銀河帝国が本当に異星人の国家だったら、もう少し別の動きがあったんだろうが」

 銀河帝国が並行世界とはいえ23世紀の地球を頂点とした国家であったこと、現れた指揮官が紳士的であり、銀河帝国側も支援も人類
支援に前向きであること、そして宇宙怪獣という23世紀地球と21世紀地球の共通の敵がいたことが今の事態を招いたとも言える。 

「いがみ合っている場合じゃないだろうに」

 地球諸国は足の引っ張り合いをしているせいで、宇宙怪獣から受けた被害から協力して立ち直ろうとする動きなど全く現れなかった。
おかげで事態は悪化の一途をたどっている。
 ニューヨーク、ロンドン、東京の壊滅によって金融は大打撃を受け、更に中東が派手に炎上しているために日本を含め多くの国が石油の輸入に
支障をきたしている。おかげで世界経済はガタガタ。当然ながら日本経済も非常に厳しい状況に置かれていた。
 そんな状況だからこそ、地球諸国は一発逆転をかけて銀河帝国から様々な便宜を図ってもらえるであろう地球全権代表の座を巡って駆け引き
を繰り返しているとも言えるのだが……。  
 勿論、そのことを銀河帝国側(特に三賢者)も認識していた。 
 このため三賢者も如何に穏便に事態を収拾するかに腐心していた。勿論、それは純粋に21世紀地球を思って……ということではない。
 彼らが最も恐れていたのは青狸とその愉快な仲間たち(あるいは春日部出身の恐るべき五歳児)がこの21世紀地球諸国の惨状を見て
銀河帝国に不信感を抱く、或いは21世紀の地球に同情した結果、銀河帝国に何かしら不利益になる行動を取ることなのだ。
 三賢者の面々が冷徹な判断を下すのなら、「死人に口なし」となるのだが、さすがに現状でそのような判断を下せなかった。
 このため銀河帝国を統べる3人の科学者は更に妥協することにした。

369earth:2017/01/11(水) 22:16:25

「《ヤマト》、《トップをねらえ》などの創作作品と我々の世界の状況の類似性、関連性を調査する……それを口実に日本に大使館を設置する」

 ブローネの決断に山田が目を見張る。

「陛下、個別交渉に応じと?」
「やむをえまい。まぁ創作作品と類似した並行世界の関連性の調査となれば地球諸国も黙るだろう」

 ライガーはやや渋い顔で頷いた後、気になった点を尋ねる。

「こちらに大使館は?」
「置く必要はなかろう。惑星統一政府がない以上、銀河帝国本国に大使館を置かせる必要はない。それに今の地球の状況では銀河帝国本国の
情報を政治利用するだけだ。場合によっては地球諸国が銀河帝国と敵対する勢力、或いは23世紀の地球諸国に接触を図ることも考えられる。
まぁ我々の監視を掻い潜ることなど出来はしないだろうが、帝都でそのような策動をされるのは不愉快極まる」
「こちらでナショナリズムを煽られて地球内戦になったら目も当てられませんからな」
「ガミラス戦役で宗教、民族間対立を乗り越えられなかった連中が死滅したおかげで、そうそうバカな真似をする人間はいないだろうがね」 

 ガミラス戦役において地球人類は地下都市への避難を余儀なくされた。
 逆を言えば地下都市を持てなかった国々は遊星爆弾で全滅していたし、地下都市に逃げれても宗教、民族対立を乗り越えられなかった都市は
内輪もめで崩壊した。戦争末期には耐え忍ぶことに定評のある日本人の地下都市でも物資不足や自暴自棄による暴動が起きた程なのだ。モラルが
低い地域の地下都市が生き延びれるはずがない。
 まぁその手の人間が間引かれたおかげで地球連邦が出来、更にガトランティス、デザリアム戦役で疲弊したために三賢者が地球帝国をスムーズ
に建国できたとも言えるのだが……。

「兎にも角にも、我々が一惑星に群雄割拠する勢力と話し合うだけでも、稀に見る大幅な譲歩と思ってもらわなければ困る」
 
 これ以上は譲歩してやる必要はないとブローネは断じた。
 今の銀河帝国からすれば21世紀の地球に割拠する勢力など、町どころか村、それも原始人が住む村程度でしかないのだ。

「しかし大使館を設置するとなると、かの世界の太陽系を完全に無防備にするわけにもいかないのでは?」
「宇宙怪獣を撃退できるだけの戦力を常時はりつかせることは出来ないだろう。だが宇宙怪獣の侵攻が遅ければ何とかなる」
「限られた戦力で遅滞戦術を行う、と」
「当然、現地の人間にも協力してもらう。国連宇宙軍でも編成させて、時間稼ぎ程度はしてもらう」
「役に立ちますかな?」
「役に立ってもらう。できなければ滅ぶだけだ。ごく潰しを養う気はない。それで二人の意見は?」

 特に反対意見はなかった。 
 かくして銀河帝国は三賢者の決定の下、動き出した。

370earth:2017/01/11(水) 22:18:35
あとがき
かくして日本に大使館が設置されることになります。
特地に繋がる門の代わりに異世界の銀河帝国との交渉口になる大使館……
これもある意味で『門』と言えるかもしれませんね、異世界と繋がるという意味で。

371earth:2017/01/14(土) 00:23:48
実験SSの続編を投下します。

372earth:2017/01/14(土) 00:24:27


  時空の迷い子達
 《ガルマン・ガミラス連合軍の最期》

 4億もの宇宙怪獣を短期間に掃討したためか、銀河帝国が知る範囲において宇宙怪獣の活動は鈍くなった。
 三賢者はこれに安堵しつつ、宇宙怪獣との戦いに必要な軍事力整備と勢力圏の安定に力を入れた。
 まずソノウソホントの改良型ともいうべき因果律改変装置を用いて銀河系の要衝、及びその周辺宙域において銀河帝国政府
から認可されていない宇宙船のワープを不可能にした。
 反銀河帝国勢力は口汚くこの行為を批判したものの、銀河帝国政府は気にも留めなかった。
 
「文句があるなら掛かってこい」

 銀河帝国政府は態度でそう示した。
 しかし今の銀河帝国政府に真っ向から歯向かう存在などなく、旧ボラー連邦構成国家の大半は銀河帝国の政策に唯々諾々と
従うしか道はなかった。
 三賢者が知る《復活編》で出てきた国々も変わらない。
 居住惑星の自衛力こそ高めることはできるが、恒星系外に遠征する力は奪われたも同然だった。また反銀河帝国勢力の集結も
この政策によってほぼ不可能となった。辺境に拠点を築いた反銀河帝国組織は中央にいる賛同者、支援者との連携をほぼ絶たれ、
各個撃破される存在になり下がったのだ。
 
「銀河帝国は1000年続くかも知れない」

 反銀河帝国派にすらそう思わせる程の圧倒的な科学力と軍事力で銀河を支配する超大国……それが今の銀河帝国だった。
 このため反銀河帝国派の中には銀河を棄てて別銀河に逃れて再起を図る動きが現れた。
 しかしそれを見過ごすような銀河帝国ではない。
 ブローネの肝いりで建造されたヤマト(18代目YAMATO相当)を含む討伐部隊が彼らに襲い掛かったのだ。

「銀河帝国皇帝が自ら手掛けた戦艦、あれこそ銀河帝国の象徴とも言える船なのだ! ここで何としても落とせ!!」

 ガルマン人の抵抗組織の有力者だったガイデルはガルマン人やガミラス帝国残党と組んで抵抗したものの、ヤマトの前では
全く歯が立たなかった。
 全長400mの戦艦(エンタープライズ級と比較すれば小型)が、まるで巡洋艦、いやそれ以上の機動性を発揮して、ガルマン・
ガミラス連合軍の攻撃を回避していく。ガイデルは力押しだけでなく、デブリや小惑星帯に伏兵を配置し奇襲も仕掛けようとしたが、
どれもが失敗、或いは空振りに終わった。
 そしてヤマトは従来のショックカノンを遥かに超えるプラズマショックカノンでガルマン・ガミラス連合軍の艦艇の装甲をまるで
段ボールのように引き裂き、宇宙の塵に変えていった。
 決戦を仕掛けるべく集結していた連合軍の有力艦隊の一つはツインノヴァ波動砲によって根拠地ごと消滅させられた。
 そこには地球人の支配を嫌って逃れてきたガルマン人のコロニー、大マゼラン星雲から逃れてきた旧ガミラス帝国臣民が乗る移民船
も存在したのだが、ガルマン・ガミラス連合軍自体を反乱軍ではなく武装組織の一種と判断している銀河帝国はテロリストの仲間とし
て吹き飛ばした。

「いいガミラス人は死んだガミラス人だけだ」

 エンタープライズ級戦艦・ネメシスⅡで指揮を執る銀河帝国軍討伐艦隊司令官はそう嘯いだ。

373earth:2017/01/14(土) 00:24:59

 彼は63歳という銀河帝国宇宙軍では比較的高齢の軍人であり、ガミラス、ガトランティス、デザリアム、ボラーとの戦いを経験して
生き残った叩き上げのベテラン軍人だった。
 そしてそれゆえに多くの同僚と民間人を目の前で失った。
 その彼にとって異星人とは一部の例外を除いて地球人類に不幸をもたらす存在でしかなく、抑え込むか駆除の対象でしかない。
 故に地球防衛軍が解体され地球帝国軍が編成された際、新設される地球帝国軍に志願し、銀河帝国軍になった今も戦い続けているのだ。
 
「連中が昔、何をしたか……我れるものか。あの人の形をした悪魔どもめ」

 ガトランティス戦役でヤマトが沈まなかった世界(ヤマト2)のヤマトクルーなら眉を顰めそうだが、ネメシスⅡの艦橋にいた将兵は
司令官の言葉に賛同した。 
 別の時間軸であったようにガミラスとの和解がない以上、地球人類にとってガミラス人は地球人類の大半を殺し、地球を滅亡寸前に
追い込んだ不倶戴天の敵でしかないのだ。そしてガミラス人に近い存在であり、銀河帝国に歯向かう以上、ガルマン人も駆除すべき敵で
しかない。
 故に彼らの攻撃には実に容赦がなかった。

「連中を一人でも逃がせば、地球にいる我らの同胞の血で贖うことになと思え!」 

 討伐艦隊は脱出しようとする宇宙船を探し出し、非武装だろうが、民間人が乗っていようが容赦なく沈めた。
 シャルバート信者の中には、自爆攻撃を仕掛けてくる者もいるため、銀河帝国軍は武装組織の根拠地から逃げ出した船舶はすべて敵と
して破壊の対象だった。
 圧倒的な戦力、容赦のない方針、そして山田博士とライガーが持ち込んだヤマト世界以外の技術(特にドラえもん世界関連)などに
よって情報がほぼ筒抜けとなっている抵抗勢力に勝ち目などなかったのだ。

「何故だ、なぜ、ここまで負ける?!」

 連合軍司令部で何とか生きて戻ることができたガイデルはそう吼えたが、現実は変わらない。
 もはや降伏するしか道はないのでは……そう誰もが思ったものの、銀河帝国はそれを許さなかった。
 
「銀河帝国軍艦隊が出現しました! こちらに一直線に向かってきます!!」
「馬鹿な、どうしてここが?」

 銀河系の辺境惑星、それも入念にカモフラージュして地下深くに建設した基地をあっさり発見されたことにガイデルは狼狽する。
 一方、帝国軍は猛攻を加え、瞬く間にガルマン・ガミラス連合軍最後の艦隊を排除していった。
 燃え盛る自軍の艦隊を見せつけられた人々はついに降伏を決意するが……それを伝えることはなかった。そのとき、すでに彼らの
いる惑星に向けてあるものが放たれていた。
 それは改良されたジオイド弾。
 通常のミサイルに紛れ込ませる形で撃たれたソレは、降伏しようとガイデルが回線を開いた瞬間、その惑星に着弾し……星を砕いた。
  
「な、なにが起きている?」

 それがガルマン・ガミラス連合軍を指揮した男の最後の言葉だった。

374earth:2017/01/14(土) 00:25:55
あとがき
ガルマン・ガミラス連合軍終了のお知らせ。
旧作ではデスラーとの和解がないとガミラスは不倶戴天の敵ですから……。

375earth:2017/01/15(日) 00:48:54
実験SSの続きを掲載します。

376earth:2017/01/15(日) 00:49:33

  時空の迷い子達
  《吉報と凶報》

  
 ガルマン・ガミラス連合軍が壊滅したとのニュースは即座に三賢者に報告された。
 民間人が乗っている可能性がある船舶も全て撃沈したことも報告されたが、彼らはそれを是とした。
 彼らは今後のことを協議するために、いつも使っている小会議室に集まった。

「逃亡した船舶は無し。主だった反銀河帝国武装組織を支えていた辺境のコロニーも全て破壊した。銀河中央に燻る反銀河
帝国派への見せしめにもなっただろう」

 ブローネの評価にライガーも同意する。
 普段は強硬策に慎重な意見を言う山田でさえ、この件については口を挟まない。
 現在の銀河帝国では地球帝国時代にその版図を拡大する中、宇宙船を使ったテロに手を焼いた記憶が色濃く残っている。
よって非武装の船舶、仮に女子供が乗っていたとしても反銀河帝国派の武装組織と行動を共にしていたのなら殲滅対象なのだ。
 まして相手は別銀河に逃れて反銀河帝国勢力の再結集を図ろうとした者たち。手心を加えてやる必要を彼らは認めなかった。 

「しかしヤマトの活躍は予想以上だった。いやはや建造した甲斐があったというものだ」

 ブローネは己の肝いりで建造したヤマト級が大活躍したことにご満悦だった。

「ガルマン・ガミラス軍の艦艇を単艦でなで斬りにしていく様は絶頂すら覚えた」
「……ヤマト3に出てきたガルマン・ガミラス帝国の艦艇を改造した程度の性能で26世紀、いやそれ以上の技術で作られた
ヤマトに勝てる訳がないと思うのですが」

 「蹂躙して当然だろう、JK」と山田はそう突っ込むが、ブローネは聞いていない。

「しかし気に入らないのは小型化したためにヤマトをポケット戦艦と諸国が考えていることだな。ヤマトをポケット戦艦とは
言語道断だ。全く、やはり彼らは判っていない」

 山田とライガーは顔を見合わせて「処置なし」と判断するとブローネがこちらに戻ってくるまで待つことにした。
 尤もブローネも二人の視線にすぐに気付いたのか、慌てて咳払いをして会議を再開する。

「しかしよくもここまで戦力が集まったものですね……我々は善政を敷いているつもりだったのですが」

 山田は思ったよりも多くの異星人が反銀河帝国武装組織に加わっていたことに苦い顔をする。
 ライガーは「支配はしたくても、されたくないのはどこの星でも共通ということだろう」と気にするそぶりもない。

「ガルマン・ガミラス連合は潰した。後は根強いシャルバード教……宗教程厄介なものは存在せん。それに万が一、シャルバード
の技術が外部に漏れれば少し面倒なことになる。その気になれば簡単に制圧できるだろうが……」
 
 銀河帝国はシャルバード星の位置をほぼ特定していた。
 無抵抗主義を貫いているかの星を制圧することなど、ライガーの言う様に造作もない。しかしブローネはその手の強硬策には
消極的だった。
 
「平和を愛する無抵抗主義者の星を攻め落とした、などと知られたら堪らない。それは避けるべきだろう」
「シャルバード星はこれまで通り封鎖と監視に留めるのが良いかと。文字通り触らぬ神に祟りなしです。それよりも並行世界の
探索と宇宙怪獣の対策に力を入れるべきです。例の件は決して無視できない案件です」

 ブローネ、山田の反対を受けてライガーはあっさり引き下がった。
 当の本人もそこまで乗り気ではなかったため、強硬策が採用されなかったことに文句は言わなかった。
 シャルバード教以外に取り組まなければならない《火急の問題》があることを彼は理解していた。

「宇宙怪獣は知的生命体が存在する惑星を叩くのではなく、知的生命体が存在する惑星の最寄りの恒星を攻撃し、恒星の表面爆
発を誘発するという方法を取り始めています。これは彼らに学習能力があることの証左と言えるでしょう」

377earth:2017/01/15(日) 00:50:06

 宇宙怪獣の変化はガルマン・ガミラスとの戦闘の最中に起こっていた。
 ライガーとブローネも最初は半信半疑であったが、今では宇宙怪獣に学習能力があること、そして戦術を変更しつつあることが
事実であると認識していた。

「決戦ではなく圧倒的な数で波状攻撃を繰り返し迎撃側を消耗させ、その後に恒星に自爆型の宇宙怪獣を大量に送り込む。これを
やられると堪らないな。ホームベースでなら勝つ自信があるが……」

 ブローネが言う様に恒星系に十分な防衛網を張り巡らせなければ、この手の攻撃を防ぐことは難しい。
 何しろ数匹の宇宙怪獣が恒星に突入した時点で勝負が決する。
 恒星の表面爆発によって知的生命体が存在した惑星は壊滅的打撃を受ける。シェルターなどを用意していれば即滅亡は免れるだ
ろうが、そのあとに惑星から脱出する術を用意していなければ緩慢な死を待つのみとなる。

「それにしても恒星を攻撃するとは……こちらのやり方を模倣したのか?」
「ワールドナビゲーターはその可能性が高いとの回答を示しています」

 ライガーは少し顔をしかめる。 

「相手はただの宇宙怪獣ではないということ、か」
「その場合、相手が宇宙超獣なのか、それとも更にその上位存在なのかは判りませんが……対処は必要でしょう。すでにこの
攻撃によって少なくない知的生命体が破滅しています」

 山田は手元の端末を操作してブローネとライガーの前に破滅した世界のリストが記されたウィンドウを展開する。
 それを見ていたブローネは呻く。

「……スパロボに参戦した実績がある世界の人類も滅んでいるな」
「発生する災厄はセカンドインパクトの比ではありません。正義のスーパーロボットでも太陽を直接叩かれては無力です。我々の
故郷より多少(?)進化した程度の世界では宇宙怪獣の行動を阻止はまず不可能です」
「謎カーボンみたいな技術があっても、防げはしないからな……そういえばそちらはリストに入っていないが?」
「まだ滅んでいませんが」

 そこまで山田が口を開いた直後、山田の目の前に緊急報告を告げるウィンドウが展開される。
 山田は急いでその報告を確認すると……ため息をついた。

「先ほど、第97観測世界が、火星に魔法文明がある世界の地球が壊滅したそうです。火星の潰滅も時間の問題かと」
「……そうか。できればかの子供先生には一目会いたかったがやむを得ないか」
「我々が知るサブカルチャー作品と類似した世界が多いなら、見た目麗しく、性格も良い美少女が炭化することになりますからね」

 三人は何とも言えない顔になる。
  
「全てを救うには全次元の改変をするしか方法はありませんが……我々の手札をすべて切っても不可能でしょう。それでも手札を切れば
かなりの世界が救えますが」 

 ブローネはすぐに首を横に振る。
 
「……我々が故郷の地で多少なりとも憧れを抱いた《物語の少女達》に似た少女のためだけに奥の手を消耗することはできない」

 彼らが熱狂的なファンなら、手持ちの札をいくらでも切っただろう。
 しかし彼らはそこまで熱狂するような人間ではなかったし、銀河帝国の支配者として冷徹な判断を下せる人間だった。
 
「いずれにせよ軍備増強と防衛体制構築が急務だろう」

378earth:2017/01/15(日) 00:51:32
あとがき
宇宙怪獣は戦術を変更。
おかげで潰滅した世界も増えました。
さようなら子供先生……。

379earth:2017/01/16(月) 00:31:22
色々と思うところがあったので、前話の改訂版を掲載します。

380earth:2017/01/16(月) 00:31:52

  時空の迷い子達
  《吉報と凶報》

  
 ガルマン・ガミラス連合軍が壊滅したとのニュースは即座に三賢者に報告された。
 民間人が乗っている可能性がある船舶も全て撃沈したことも報告されたが、彼らはそれを是とした。
 彼らは今後のことを協議するために、いつも使っている小会議室に集まった。

「逃亡した船舶は無し。主だった反銀河帝国武装組織を支えていた辺境のコロニーも全て破壊した。銀河中央に燻る反銀河
帝国派への見せしめにもなっただろう」

 ブローネの評価にライガーも同意する。
 普段は強硬策に慎重な意見を言う山田でさえ、この件については口を挟まない。
 現在の銀河帝国では地球帝国時代にその版図を拡大する中、宇宙船を使ったテロに手を焼いた記憶が色濃く残っている。
よって非武装の船舶、仮に女子供が乗っていたとしても反銀河帝国派の武装組織と行動を共にしていたのなら殲滅対象なのだ。
 まして相手は別銀河に逃れて反銀河帝国勢力の再結集を図ろうとした者たち。手心を加えてやる必要を彼らは認めなかった。 

「しかしヤマトの活躍は予想以上だった。いやはや建造した甲斐があったというものだ」

 ブローネは己の肝いりで建造したヤマト級が大活躍したことにご満悦だった。

「ガルマン・ガミラス軍の艦艇を単艦でなで斬りにしていく様は絶頂すら覚えた」
「……ヤマト3に出てきたガルマン・ガミラス帝国の艦艇を改造した程度の性能で26世紀、いやそれ以上の技術で作られた
ヤマトに勝てる訳がないと思うのですが」

 「蹂躙して当然だろう、JK」と山田はそう突っ込むが、ブローネは聞いていない。

「しかし気に入らないのは小型化したためにヤマトをポケット戦艦と諸国が考えていることだな。ヤマトをポケット戦艦とは
言語道断だ。全く、やはり彼らは判っていない」

 山田とライガーは顔を見合わせて「処置なし」と判断するとブローネがこちらに戻ってくるまで待つことにした。
 尤もブローネも二人の視線にすぐに気付いたのか、慌てて咳払いをして会議を再開する。

「しかしよくもここまで戦力が集まったものですね……我々は善政を敷いているつもりだったのですが」

 山田は思ったよりも多くの異星人が反銀河帝国武装組織に加わっていたことに苦い顔をする。
 ライガーは「支配はしたくても、されたくないのはどこの星でも共通ということだろう」と気にするそぶりもない。

「ガルマン・ガミラス連合は潰した。後は根強いシャルバード教……宗教程厄介なものは存在せん。それに万が一、シャルバード
の技術が外部に漏れれば少し面倒なことになる。その気になれば簡単に制圧できるだろうが……」
 
 銀河帝国はシャルバード星の位置をほぼ特定していた。
 無抵抗主義を貫いているかの星を制圧することなど、ライガーの言う様に造作もない。しかしブローネはその手の強硬策には
消極的だった。
 
「平和を愛する無抵抗主義者の星を攻め落とした、などと知られたら堪らない。それは避けるべきだろう」
「シャルバード星はこれまで通り封鎖と監視に留めるのが良いかと。文字通り触らぬ神に祟りなしです。それよりも並行世界の
探索と宇宙怪獣の対策に力を入れるべきです。例の件は決して無視できない案件です」

 ブローネ、山田の反対を受けてライガーはあっさり引き下がった。
 当の本人もそこまで乗り気ではなかったため、強硬策が採用されなかったことに文句は言わなかった。
 シャルバード教以外に取り組まなければならない《火急の問題》があることを彼は理解していた。

「宇宙怪獣は知的生命体が存在する惑星を叩くのではなく、知的生命体が存在する惑星の最寄りの恒星を攻撃し、恒星の表面爆
発を誘発するという方法を取り始めています。これは彼らに学習能力があることの証左と言えるでしょう」

381earth:2017/01/16(月) 00:33:38

 宇宙怪獣の変化はガルマン・ガミラスとの戦闘の最中に起こっていた。
彼らは第99観測世界を再び強襲した。そして山田博士が言っていた通りの戦術をもって地球人類を亡き者にしようとしたのだ。
 襲撃の直前に配備された予知システムを使い、宇宙怪獣の変化を察知したフォークが適切な手を打ったため大事には至らなかった
ものの、宇宙怪獣がこのような手に打って出ること自体が驚愕に値することだった。
 ライガーとブローネも最初は半信半疑であったが、今では宇宙怪獣に学習能力があること、そして戦術を変更しつつあることが
事実であると認識していた。

「決戦ではなく圧倒的な数で波状攻撃を繰り返し迎撃側を消耗させ、その後に恒星に自爆型の宇宙怪獣を大量に送り込む。これを
やられると堪らないな。防衛網を十分に構築できれば耐えられるだろうが」

 ブローネが言う様に恒星系に十分な防衛網を張り巡らせなければ、この手の攻撃を防ぐことは難しい。
 何しろ数匹の宇宙怪獣が恒星に突入した時点で勝負が決する。
 恒星の表面爆発によって知的生命体が存在した惑星は壊滅的打撃を受ける。シェルターなどを用意していれば即滅亡は免れるだ
ろうが、そのあとに惑星から脱出する術を用意していなければ緩慢な死を待つのみとなる。

「それにしても恒星を攻撃するとは……こちらのやり方を模倣したのか?」
「ワールドナビゲーターはその可能性が高いとの回答を示しています」

 ライガーは少し顔をしかめる。 

「相手はただの宇宙怪獣ではないということ、か」
「その場合、相手が宇宙超獣なのか、それとも更にその上位存在なのかは判りませんが……対処は必要でしょう。また宇宙怪獣は
新戦術について試行錯誤を繰り返しているようです。異次元人が支配する勢力圏が攻撃された際の情報からもそれは読み取れます」

 山田は手元の端末を操作してブローネとライガーの前に破滅した世界のリストが記されたウィンドウを展開する。
 それを見ていたブローネは呻く。

「恒星間航行が可能な技術を持ち、相応の宇宙艦隊を持っている国家ですら、これだけの被害がでるというのか」

 壊滅した恒星系は両手で数えられない。
 そして異次元人の支配領域とは言え、失われた人命は優に100億を超えていた。

「我々の故郷、或いは21世紀に毛が生えたような世界では宇宙怪獣の恒星への攻撃を防ぐどころか、気づけもしないでしょうな」

 ライガーが渋い顔をする。

「宇宙怪獣がハード面で進歩したという情報はありませんが、脅威が増していることには間違いありません。幸い、銀河帝国本国の要衝
では次元転移、それにワープは大きく制限されているため宇宙怪獣への対処は十分に可能でしょう……しかし、それ以外では」

 宇宙怪獣と言えどもワープが不可能なら、恒星間を移動するのに大きな手間がかかる。片やワープが使い放題の銀河帝国本国部隊は十分
な余裕をもって迎撃できるため十分な勝算がある。
 しかしワープが両者ともに可能なら……迎撃側にとって非常に苦しい展開になるだろう。 
 ブローネはやや苦い顔で尋ねる。

「本国以外でもワープを阻害するかね?」
「異次元人がワープ阻害システムの真相に気づく可能性があります。我々に因果律改変を可能とする技術があると彼らが理解した場合、
彼らが冷静でいられるかどうかは……」
「やるのなら異次元人と宇宙怪獣を両方始末するか、こちらの切り札を悟られることなく宇宙怪獣を叩くしかない、と」
「あの異次元人共も宇宙怪獣は放置できないと悟るでしょう。この際、共同戦線とまではいきませんが、それぞれが勝手に宇宙怪獣を叩く
ことで同意することはできるのでは?」

 ライガーもこれに賛意を示す。

「確かに。異次元人も損得勘定で妥協が成立する我々より話し合いが通じない化け物をより脅威とみなすだろう」

 最終的にブローネも同意する。しかし当の本人は苦笑いを浮かべる。

「しかし《原作》で、異世界に進出して資源を収奪し、地球にすら魔の手を伸ばした化け物じみた連中と手を組んで、知的生命体の天敵で
ある《本物の化け物》と戦うことになるとは……」

 兎にも角にも異次元人との合意の下、銀河帝国はこれまで以上に宇宙怪獣対策に力を入れるようになる。

382earth:2017/01/16(月) 00:35:21
あとがき
異次元人と銀河帝国が共通の敵を前にして麗しき友情を発揮します(棒)。
同じ知的生命体同士。話し合えば分かり合えるのでしょう(棒)。

宇宙怪獣を始末出来た場合、どうなるかは判りませんが。

383earth:2017/01/18(水) 01:17:01
実験SSの続きを掲載します。
久しぶりに伊丹の登場です。

384earth:2017/01/18(水) 01:17:34

  時空の迷い子達
《国連宇宙軍への道》

「あ〜どうしてこなったのやら」

 伊丹耀司陸上自衛隊二尉はフェリーの甲板から見える巨大な構造物……沖縄近海に設置された軌道エレベーターを見つめてため息を
つきそうになった。
 そんな伊丹をインテリ風の男が嗜める。

「いい加減、諦めろって。お前は適性試験で合格したんだ。逃げ出す真似なんてできないぜ。それに見てみたいんだろう? 
アニメの宇宙戦艦ヤマトにそっくりな世界を」
「そりゃあ、見てみたいですけどね……しかし、柳田さん、何で俺が通るんです?」
「それは俺も聞きたいよ」

 沖縄に残っていた各国首脳に対し、フォーク提督から銀河帝国政府がG20諸国に対して行った地球全権代表選出の要求を取り下げ、
日本に大使館を設置して個別交渉に応じる方針に転換したことを告げられると世界に激震が走った。
 銀河帝国首都に大使館を設置したいという声もあがったが、フォークはこれを拒否した。 

「惑星統一政府が創設されたら、本国も認めるでしょう」
 
 尚も不満を言い立てる人間がいたが、フォークは無視して続けた。

「銀河帝国は地球防衛に貢献する意思と能力を持つ国家に対して《相応》の支援を行う準備を進めています」
「日本に大使館を置くのは、こちらの世界の日本で発表されている創作作品と我々の世界の状況の類似性に銀河帝国政府が強い関心を
寄せているためです」
  
 「地球防衛に寄与しない国家に飴を与えるつもりはない」と断言したために一部の国からは不満が出たが、銀河帝国側が「宇宙での
戦闘に必要な装備、物資を供給する用意がある」と答えたことで不満の声は収まった。
 そして銀河帝国側が供給を検討している装備の一覧を見せると、誰もが目の色を変えた。

「宇宙怪獣との戦いで必要な観測機器、亜光速航宙艦、反物質機雷、光子魚雷、バリア衛星の供与、それも実質は無償に近い……」

 今の地球では到底用意できない超兵器の数々に北条首相は思わず喉を鳴らした。
 兵器の概要について記された書類を読み進めていくうちに、G20諸国の代表の目も血走ったものになっていく。
 地球側から見ればそれほどまでの大盤振る舞いだった。

「よろしいので?」

 嘉納の問いかけにフォークは頷く。

「21世紀世界の人類が存続するために必要だろうと帝国政府が判断したようです」
「しかしこれほどの便宜を図っていただけるとは」
「政府はこれらの支援とは別に《宇宙怪獣の攻撃》で汚染された地球環境の回復にも協力したいと考えています。これも個別の
交渉になると思いますが」

 実際、銀河帝国側からすればそこまで大した支援ではなかったのだが、地球諸国からすればその提案は魅力的過ぎた。  
 それゆえに今後交渉の窓口となる大使館が日本に置かれることを懸念し、何とか自国に招致できないかと試みる国も現れた。

385earth:2017/01/18(水) 01:18:09
 
 特に某国は「日本の創作作品は後追いでオリジナルは自分の国の作品だ」と主張したが、それが聞き入れられることはなかった。
 尚も諦めきれない国がいるのを見たフォークはため息をつきそうになるのを我慢して、追い打ちをかける。

「今回の交渉が不首尾に終わるのなら、我々は太陽系から艦隊を引き上げ、宇宙怪獣と独自に戦うだけです」

 それは21世紀地球を見捨てることもあり得るというサインであった。
 そんな中、宇宙怪獣が太陽を直接攻撃し、恒星表面爆発を誘発しようとしたのだ。 
 フォークの指揮で地球人類は事なきを得たが、この状況で銀河帝国艦隊が引き上げれば地球人類の滅亡は避けられなくなることを理解
できない人間はいなかった。
 かくして日本への大使館設置と各国との個別交渉は受け入れられた。
 尤もそれは終わりではなく、武器を用いない戦いの始まりでしかなかった。
 銀河帝国が地球各地にコスモクリーナーを搭載したエンタープライズ級戦艦を送り込み、汚染された地球環境の修復を公衆の面前で行った
ことも、それに拍車をかけた。
 21世紀世界の技術はどうすることもできない各種汚染を瞬く間に消し去った光景は、それだけで地球人類に対して銀河帝国の力を改めて 
見せつける形となった。
 科学について大して造詣が深くない人間でさえ、銀河帝国が如何に隔絶した科学力を持っているかを理解できたのだ。技術の価値が良く
判っている者たちがとる行動は決まっていた。
 
「銀河帝国の技術を是が非でも獲得するのだ!」

 かくして米露中の三大国、そしてEUはこぞって東京に設置された大使館に押しかけ、交渉を持ち掛けることになった。      
 この交渉の際、彼らは宇宙怪獣と言う知的生命体の天敵から地球を守るという大義名分の下に創設する国連宇宙軍に協力的な姿勢を打ち出す
ことで自国が責任ある大国であるとのアピールも欠かさなかった。
 世界で唯一大使館が設置された日本も例外ではない。 
 いや、大使館が設置されたからこそ、その環境に胡坐をかいている訳ではないことを示すべく日本政府は動いた。 
 憲法9条や集団的自衛権を盾に反対する者(ごく少数)もいたが、日本政府は「宇宙怪獣との戦いは国家間の戦争とは違うから憲法違反では
ない」として国連宇宙軍への参加に速やかに踏み切った。 
 勿論、宇宙空間での本格的な戦闘(それも亜光速以上で)など米国を含め、どの国もやったことがないため、銀河帝国軍が各国から国連宇宙軍
に派遣された将兵を訓練することになった。
 言うまでもなく志願者が多いことから第一次適性検査は世界各地で行われ、それに合格した者が軌道エレベーターが設置された沖縄に招かれる
ことになっている。
 そして伊丹は第一次適性検査に晴れてパスしたため、ここにいる。

「次は二次検査か……」
「無様な真似をするなよ。ここでの結果は銀河帝国上層部にも報告される。銀河帝国との交渉にも影響があるかも知れないことを忘れるな」
「……判っていますよ」 

 世界各地から集められた軍人たち。
 直接戦いはしないものの、互いの祖国の興亡をかけた戦いが始まろうとしていた。

386earth:2017/01/18(水) 01:19:59
あとがき
国連宇宙軍が創設されます。
自衛隊でも航宙自衛隊が作られるでしょう。
何故か《武闘小姐 パワフルチャイナ》という作品を思い出しました。
この作品、知っているヒト、どれだけいることか。

387名無しさん:2017/04/13(木) 12:43:07
ちらり

388名無しさん:2017/12/12(火) 20:45:47
おや?

389名無しさん:2020/12/19(土) 20:36:39 HOST:KD106128046055.au-net.ne.jp
続きはまだですか?凄く楽しみにしてたので残念です。はやく復活してみんなを楽しませて下さい!

390ひゅうが:2020/12/19(土) 22:04:48 HOST:p361175-ipngn200307kouchi.kochi.ocn.ne.jp
お金なしで抗議文を送れるのはプラトニックな英国陸軍准将とローソクをつけて足元で祈られてる偉大なる主ではないかと

391ham ◆sneo5SWWRw:2020/12/19(土) 23:58:25 HOST:sp49-98-146-70.msd.spmode.ne.jp
>>389
催促は荒らしと思われかねませんよ

392名無しさん:2020/12/20(日) 00:39:44 HOST:59-190-186-62f1.shg1.eonet.ne.jp
AAのネタスレ上げた人物のHOSTとほぼ同じ番号っぽい

393名無しさん:2020/12/23(水) 17:10:04 HOST:KD106128049212.au-net.ne.jp
>>390
なるほど!
なかなか興味深いですね。

394ham ◆sneo5SWWRw:2020/12/23(水) 18:21:57 HOST:sp1-75-215-20.msb.spmode.ne.jp
>>393
sageてくれませんか?
更新と勘違いして、要らぬ争いを起こしますよ。

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