したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ギャルゲ2nd没ネタ投下スレッド

11LIFE DIVE APPEAL ◆AZWNjKqIBQ:2008/03/31(月) 20:01:34 ID:p.yIkAYw
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


月光だけに照らされた灰色の、朽ちた建物の屋上に一人の少女が立っている。

半ばで折れてそのままのアンテナ。罅割れたタイル。腐り、そしてとうに枯れ果てた元緑色。
あそこ……彼、彼女らの拠り所であり、結局は奈落の底でしかなかったあそこにここは似ていた。

呆然と、少女――佐倉霧はその屋上に一人立っていた。
小柄な身体。黒い短髪。凛々しいが硝子のように脆そうな瞳の少女は思う。

――地獄に落ちたんだ、と。

そう彼女は状況を理解した。
まだ間もなく、それでいて果て無い過去と、ついさっきまでの一瞬。そして、現状を照らし合わせそう結論づけた。
六道の概念には修羅界というものがある。争い傷つけあうこと”しか”できない者の世界だ。
ここは、そんな世界なのだと、彼女は思う……自業自得なのだと、思う……。

武器を握るにはあまりにも小さな手。それを彼女は自身の首元へと移動させた。
そこには彼女をこの地獄を逃がさぬようにする最小の檻。拘束の象徴であり、それそのものである首輪が嵌っている。
決して逃しはしない。つるつると指の腹で滑る感触がそう哂っている様だと彼女は思い、そして。

カタカタ……と、誘うように揺れている一枚の金網を見つめる。
屋上と黒い空とを隔てる壁。真っ赤な血色に錆びた金網の内の一枚がカタカタと笑い声をあげている。
いつかは知らないが、そこもかつては一度壊れたのであろう。一本の白い紐で括られているだけだった。

その白い紐が――あの男の様な紐が少女に向けて語りかけてくる。
黒い空。赤い壁の中で一際目立つ。一際異質な白いソレが彼女に語りかける。
ゆらゆらと揺れる不安定なソレが、手招きするように揺れるソレが静かに語りかける。

――なぁ、一つ質問なんだけど。……どうして今すぐにでも死なないんだ?

そうか……と、少女は理解した。
遥か過去に私を置いて逝った彼も、そして太一先輩も……自棄だ。自分を壊したかったんだ、と。
醜いモノには我慢ができなかったから。許せなかったから、自らの手で美しい世界から間引いたのだと。


少女は、醜い自分を壊し、世界から取り除く選択を――……。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板