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110
:
『彼と、彼を取り巻く影の世界』
:2009/05/11(月) 04:24:06 ID:L.k4gxM20
『ったく! 弦の字をフるなんざ、その女、馬鹿じゃねーのか!?』
レディースのアバターが木刀をベシベシ鳴らし、言った。
彼女の名前は絹沢蘭(きぬさわ らん)。口調の乱暴さからも伺えるとおり、喧嘩っ早い乱暴娘である。その手の早さが災いし高校生集団に
囲まれて、あわやというピンチを弦太郎に助けてもらった経緯があり、彼に恋をする。彼のことを『弦の字』などと呼び、普段はこうして荒っぽい
口調であるが、本人の前ではずいぶんと可愛らしい女の子になってしまうあたり、なんともいじらしい。
『弦太郎殿の素晴らしさは、わかる者にしかわからないのでござる。』
ぺろり、と剥がれた壁紙の裏から、隠れ身の術で潜んでいた女忍者が言う。
横内加美菜(よこうち かみな)は、なぜだか忍者口調であるが別に本物の忍者ではない。普段は無口なスポーツ少女である。最初は
スポーツマンとしての弦太郎に憧れ、そして次第に恋へと発展をした。
『弦太郎様には申し訳ありませんが、ほっとしましたわ。』
白い日傘のお嬢様、福島小雨(ふくしま こさめ)のアバターが言う。おっとりとしたテンポ、そして上品な言葉遣い、実に高貴なお嬢様の
話し方ではあるが、別段彼女がそういった家の生まれかと言えばそうではなく、ごく普通、より少し上くらいの家庭に育った。この丁寧さは、
彼女自身の資質である。その資質が、弦太郎の優しさに惹かれ、深く恋するに至った。
『それよりも、これからどうするでありますか!?』
敬礼の姿勢から休めの姿勢に切り替えて、軍服少女が言う。
彼女の名前は山倉美晴(やまくら みはる)。どちらかというと下級士官風の軍人口調である彼女は、別段厳しい軍曹キャラというわけではない。
とにかく陽気な元気娘であり、はきはきとした喋り方がなぜかそういう口調に行き着いてしまっただけで、別に彼女が軍国主義というわけではないらしい。
楽しいことが大好きで、ノリがよい弦太郎を友達感覚で捉えていたのだが、それが次第に恋愛感情へ変わっていることをバッチリ自覚してしまったのだ。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・急がないとないと・・・。』
水晶玉をキラキラ明滅させながら、占い師の少女がぽつりという。語尾がなぜだかかぶって繰り返してしまうのは、不思議な彼女の口癖のようなものだ。
早瀬狭霧(はやせ さぎり)は、普段寡黙な少女で、どうにも電波な感じである。弦太郎に対する恋愛感情も、最初は占いで出た運命の相手に対する
思いこみであった。何度占ってもその相手は変わらず、ある意味運命に導かれて弦太郎に恋をする。
『たしかになぁー、これはチャンスかもしれないねー。』
三度笠の風来坊が、くわえた長楊枝をピコピコ上下させながら言った。
語尾を伸ばして気怠げに喋る、彼女、堂島みくも(どうじま みくも)は、このメンバーの中にあってあまり束縛されるのを嫌う質があった。マイペース、
といった感じの彼女だが、弦太郎に対する恋もまさに一目惚れ。
みくもが言った『チャンス』とは、まさに弦太郎にアタックするチャンスである。
「・・・たしかに、今しかないかも」
空が呟く。
組織同士が牽制しあい、誰も弦太郎に手が出せなかった現状で、皆がそれぞれ機を窺っていた。
しかし今、『弦太郎が、他の女を好きになった』という事実。
これは、多くの女たちを動揺させた。
未遂ではあったが、自分たちが牽制をしあっている間、当の本人は全く別の女に恋をしていたのだ。
その恋は実らなかったは、各組織にとっては幸いなことではあった。
しかし、次の恋はどうなるかもわからない。
空が言う『今』は、この変化に各組織が行動を移すと思われる、その機先を征する『今』という意味だ。
ここで後れをとるわけにはいかない。
111
:
『彼と、彼を取り巻く影の世界』
:2009/05/11(月) 04:25:36 ID:L.k4gxM20
「何とか、お兄ちゃんと私たちの間に、既成事実を作らないと・・・」
空が言う言葉に、画面上のアバターたちがざわざわと議論を始めた。
『だけどさぁ、あの弦の字が、あたしたち七人をイッキに抱くなんて、するかぁ?』
『そこを、自分たちのお色気で陥落するでありますよ!』
『それにしても七人同時だなんて、殿方のお体の方が心配ですわ。』
『そこはそれ、弦太郎殿のように普段から鍛えている肉体であれば、それぐらい軽いでござろう。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お薬の力を借りるのはのは?』
『って、そんなクスリあんのかよ!!』
『薬仕掛けとはあまり感心しないでござる。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあお酒とかとか。』
『なるほど、お酒でありますか!』
『まぁー、それくらいが妥当なんじゃないかなぁー?』
『しかし、弦太郎殿のアルコール耐性はいかほどのものでござるか?』
『空さんは、何かご存じではなくて?』
日傘お嬢様のアバターに問われ、空は何かを思い出すかのように息を呑んでから。
「実は、お兄ちゃんは酔っぱらうと、エッチになります・・・」
ざわ、ざわとアバターたちが口々に、驚きの声やらなにやらをさえずり始めた。
『でー、具体的にはどんな感じよー?』
ざわめきを制した風来坊が、空に話を促す。
「去年のお正月に、お父さんにすすめられてお兄ちゃんが日本酒を飲んでみたんですが、コップ三杯目あたりでいきなり、
年賀挨拶に来てたいとこのお姉ちゃんに抱きついたんです。
『わーい、おっぱいだー!』って・・・。」
その報告に、ざわめきが静まった。
『・・・・・・・・・・・・げ、弦太郎殿も、豊満な乳房の信奉者でござったか・・・!』
がっくりとひざをつく忍者娘。
隣では、ヤンキーが木刀をぶんぶん振り回してわめいている。
『ちくしょーーーッ! 乳なんて、乳なんてッ!』
そんな仲間を、ほかの者が宥める。
『私たちはまだ小学生なんですから、小さいお胸も仕方ありませんわ。』
『それにさー、女の子のおっぱいが好きなだけで、大きさは気にしないかもしれないぞー?』
『と、とにかく、お酒に弱いのであれば作戦に使えるでありますよ!!』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ決定と言うことでことで。』
「じ、じゃあ、そっちの方向で、作戦を練ろうか・・・」
空がそういって脱線を収めた。
実のところこの空自身もAカップの寂しいスペックであったのだが、そこはそれ悔し涙を堪えてみんなをまとめるのであった。
112
:
『彼と、彼を取り巻く影の世界』
:2009/05/11(月) 04:26:47 ID:L.k4gxM20
「おかえり、おじさん、おばさん」
空が自室で友人たちと電話会議を繰り広げているそのころ、弦太郎は部屋を出て、台所にいた。
もうすぐ日付も変わろうかという頃合い、眠れない弦太郎がコーヒーでも作ろうか、と思ったのだ。
そうして、やかんの湯を沸かし始めた頃に、この家の主であるところの津島夫妻が帰ってきた。
しばらく三人は雑談をしていたのだが、その内の一人奥方が退席し、持ち帰った洗濯物の処理に取りかかった。そうなると、そこは弦太郎と、
世界的な生物科学者である津島博士の二人きりとなった。
「・・・弦太郎君、なにかあったのかい?」
いくつかの他愛ない話題の後、微妙な間をあけてから博士が問いかけた。どこか普段と様子の違う、少年の影のような部分を感じ取ったのだろう。
弦太郎は、苦笑を浮かべて、今日の出来事、破れた恋の顛末を語った。
博士は、自身の過去の苦い経験にそれを重ね、同情をした。
しかし、それにしてもと思う。
(それにしても、弦太郎君はずいぶんといい男のように思ってたんだが、そんな彼を振っちゃう女の子がいたんだなぁ・・・)
彼は、自分が養う友人の息子を見て、そんな印象を得る。
弦太郎は、津島博士の実子ではない。
博士の友人であった静博士の息子なのだ。
静博士は津島博士と同じ研究所で、それぞれの研究課題を持つチームのリーダー同士であった。それぞれの研究対象は異なるものの、お互い
成果を競い合うライバルであり、親友でもあったのだ。
しかし、五年前、不幸な事故により静博士は他界する。研究所からの帰りに、同じく助手をしていた彼の妻とともに交通事故に遭い、二人同時に
命を落とした。
津島博士は、天涯孤独となった弦太郎を引き取り、親友だった男に代わって彼を育てた。
「俺も、一度ぐらいはモテモテになりたいなぁ。」
弦太郎はそういって、おどけるように笑った。
失恋を吹っ切ろうとしているのだ、博士もそれ以上この話題を続けるのをやめた。
(・・・しかし、もしもあいつの『研究』が成功していれば、弦太郎君もモテてたかもしれないのになぁ・・・)
ただそれだけ、少しの懐古にとらわれた津島博士は、他愛のないもしもの話をそれっきり頭の中から追い出してしまった。
そのあとも、博士は、弦太郎が入れてくれたコーヒーを楽しむ。
息子のように育てた少年と談笑をしながら、少しでも彼が報われればいいなぁと、ぼんやりと思う。
そして、彼に想いを寄せる愛娘の空と結ばれてくれればよいななどと、少々気の急いたことを考えるのだった。
113
:
『彼と、彼を取り巻く影の世界』
:2009/05/11(月) 04:27:48 ID:L.k4gxM20
『では、首尾よく事を運ぶでござるよ。』
『作戦決行時間、ヒトマルサンマル厳守であります!!』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドキドキするする。』
『私も、明日はがんばりますわ。』
『オメーも明日は遅れンじゃねーぞ!』
『わかったよー。さすがに明日ぐらいはねー。』
「それじゃあ、あした、がんばろう!!」
それから携帯電話のディスプレイ上から次々とアバターが姿を消し、空はアプリケーションを終了させた。
これからあと、空には、今夜の内にやらなければいけないことがある。
大好きな兄のために、心を込めた手作りで。
そうして、彼女手ずからの、一綴りのチケットが出来上がった。
第一話、
『君は信じられるか!? 小学生だけの風俗店!!』へ続く。
熱いぜ!
END OF TEXT
114
:
449
:2009/05/11(月) 04:29:53 ID:L.k4gxM20
以上です。
ココまで読んで、疲れたと感じる方、本編は一区切りおいて御覧になるか、
いっそのこと読むのをあきらめた方がいいかもしれません。
ではひとまず、お疲れ様です。
115
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2009/05/12(火) 01:41:21 ID:K0PNE.ucC
GJ!!
本編読んだ時にはまさかこんな壮大な裏があったとは思いもしませんでした。
SNEGな主人公の活躍が六年二組のみにとどまらないことを祈りたい次第です。
116
:
449
:2009/05/25(月) 03:11:28 ID:L.k4gxM20
さっさと第2話「弦太郎君を見守る会バージョン」を書き進めなければいけないのですが、ついつい「六年二組バージョン」を書き足してしまいました。
結局、後編だけで100kbオーバーになってしまったので、急遽これも分割して投下することにしました、
やはり、一気に100kbとか、読む方はしんどいと思うんです。
あまりセリフの少ない文体なので、50kb以上を連続で読むのは、集中力が途切れるんじゃないかと。
とにかく、好きなように思いつくまま、楽しく書いています。
もっと短くまとめることはかなりの確率で可能ですが、私が面白くないのでやりません。
というわけで、アカ・ソ・ノモノさんに続いて、月曜日の夜くらいに中編を投下します。
117
:
449
:2009/06/17(水) 07:03:01 ID:L.k4gxM20
キャバクラ六年二組が終了しました。
以下に投下するのは、バックストーリーですので、
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8110/1171153485/102-114
これを読んだ方のみ、読んでみてください。
118
:
第一加三分の一話「闇に光る瞳」
:2009/06/17(水) 07:06:28 ID:L.k4gxM20
随分と夜も遅くなった帰り道。
少女たちを送ると言った弦太郎と、それについてきた空。
七人の小学六年生と、一人の高校生。
みんながみんな、先ほどの余韻を噛みしめるような、口数少ない道行きだった。
近道を行こうか、と弦太郎が足先を変えた。
まっすぐ行けばそれなりにかかる帰り道を、傍らにある神社に下りてその境内を通ればずいぶんと近道になる。
そして弦太郎が踏み出した、せいぜい五段の石階段。
近道をすすめた弦太郎本人が先導するかのように一歩足を踏み出した瞬間、
ずるり、
と靴底の滑る音と共に、弦太郎の身体がわずか一瞬、石段の上からはみ出した。
あっ!
と少女たちが驚く間に、彼の身体は落下した。
たった五段の、小さな下りの石段で。
しりもちをついて。
そして、ごちん、という鈍い音と共に、弦太郎の後頭部が石段の角にぶち当たった。
「いってーーーーーーーッッ!!」
叫び声をあげて、弦太郎がのたうち回る。少女たちもあわてて彼に寄り添い、口々に声をかけて彼を気遣った。
普段の弦太郎なら、こんな他愛のない場所で足を踏み外すなど、考えられないことだ。仮に踏み外したとしても、
そこから体勢を保つくらいのバランス感覚も十分持っている。
おそらく、本日摂取したアルコールがいくらか尾を引いて、平衡感覚を狂わせていたのだろう。
そしてしばらく。
ようやく痛みの引いた弦太郎が、口を開いた。
「あれ? なんでみんながここにいるんだ?」
119
:
第一加三分の一話「闇に光る瞳」
:2009/06/17(水) 07:07:09 ID:L.k4gxM20
少女たちは、その言葉に凍り付いた。
「俺も・・・、おかしいな」
不思議そうに首を傾げ、弦太郎が言った。
「『今日』、あの子にフられて、家に帰ってから・・・飯食って、・・・・おじさんとコーヒーのんで・・・布団に入って・・・あれ? その後でここに来たのか、俺!?」
行動を思い返そうとしている彼の言葉の異変に、その場にいたものすべてが気づいた。
そう、彼は、今日一日の記憶を、まるまる失っているようなのだ。
「ふふふ、まだ私たちにもチャンスがあるということか・・・」
この光景を見つめていた、一対の眼(まなこ)。
彼女はそういって、その場から身を翻した。
彼女にはやるべきことがある。
次は、彼女たちのターンなのだ。
そしてさらに、彼女も気付かぬもう一対の瞳が、それらの光景を不敵に見守っていた。
END OF TEXT
120
:
第一加三分の一話「闇に光る瞳」
:2009/06/17(水) 07:09:00 ID:L.k4gxM20
次回。
群衆。
少女たちの群。
廊下で通り過ぎる少女、立ち止まり談笑する少女。
クラスの中でいくつかのグループを作って笑い会う少女たち。
彼女たちは、傍目に何気ない学園生活を謳歌している風に見える。
だが、はたしてそうなのか?
学級委員長、美化委員長、風紀委員長、図書委員長。
そして生徒会長。
彼女たちがとうとう動いた。
その動きに呼応するかのように、少女たちによる群衆が、ざわりと蠢く。
次回第二話、『猛攻!エロゲ地獄!!』
彼女たちの視線は、たった一人の男に。
121
:
449
:2009/06/17(水) 07:11:29 ID:L.k4gxM20
以上です。
第2話は、そのうちに。
122
:
208
:2010/01/26(火) 23:02:22 ID:PVlZUDfI0
本スレで規制を食らっているのでリレーの続き。気が付いた人、後は頼む。
その夜。
「と言うわけで羽礼霧君」
「と言うわけも何も、なんで俺の部屋にいるんですか、メガネじゃない委員長」
「山本だ。
このぽこんっなデバイスを作り直すので、君の意見を聞きたいだけだ」
「流石にパン型はどうかとも思うしね」
「ん〜〜〜!んんっ〜〜!!」
と言う事で、大して広くも無いオレの部屋に、委員長と、先生と、先生が小脇に抱えた簀巻きと、男1に女3の大人数が詰め掛けている。
多分、そのうち二人増える。
「それと、肝腎な事を忘れるところだったが、君の胃の中にはこのポンコツの欠片が入り込んでいる。
できれば回収しておきたい。何、ちょっとクスグッタイダケダ」
言うなり、先生がキスして来た!しかも、舌が入って……長い、長過ぎる、喉の奥まで……
「……ゲホッ、ゲホッ……今の……」
『おいおい、いい若いのがこの程度で音を上げるない。まあ、オレも、野郎の胃の中とか行きたくねえんだがな』
……菜波先生の舌が喋った……いや、喉の奥から蛇が顔を出している!
『おうおう、オレぁこのソローンズの一族に昔から使えてる使い魔さ。名前は庄吉郎、よろしくな』
「で、回収できたの?庄吉郎」
『おうおう、ばっちりよ。この若造のデータも取れたんで解析に回しているところだ』
「……ぷはっ!あちきにナニをする気じゃこの蛇はっ」
『ナニって……オレが持ってるのはお前の欠片。お前にナニかするのはこの若造だろ?ソローンズ、メガネじゃないの』
「メガネで人を見分けるな!……まあ、その、なんだ」
「応急処置で精気が漏れるのを止めるのにも限度があるし……」
じゃあ、怒らないから俺のケツからネギを抜いてください。
じゅぷり。先生ことソローンズが、仰向けに寝っ転がったオレのを舐めしゃぶっている。
その割に気持ちよくも大きくも硬くもならないのは、尻に刺さったネギが気の流れを抑えているからだとか。
「じゃあ、抜きますよ……えい」
「うん、いいわよ……んぐ、ふぁふがにひかでだとふぃくわ……んぐんぐ……ふぅ」
ネギを抜かれた途端、オレの一物に色々と衝撃が走り、たまらず先生の口で抜いてしまう。
「これで、精気の駄々漏れは止まったけど……溜まった分は出さないと」
言うなり先生、今度はパイズリにかかる。また硬くなったところで跨り、下の口でくわえ込んだ。
「先生、その次こそ私ですよっ!?」
「わ、分かって、いるっ!だが、こ、これはキク……」
俺の上で乱れる先生。いや、先生がこういう事をするのって、凄く……やらしいです。
「羽礼霧君……早くいっちゃいなさい」
「あちきは、このメガネじゃないのの次なのじゃ。だからさっさと済ませるのじゃ」
委員長はオレの玉に吸い付き、犬娘は顔の上に跨る。耐えられず、先生の中に……
「出しましたね?次は、今度こそ次は……」
ああ、委員長の目が狩人のようだ……
自分で書いた癖になんだけど、メガネじゃない委員長ってムツカシイ。
123
:
449
:2011/02/09(水) 02:55:00 ID:z95jMoZ.0
>>121
から1年と半年。
124
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 02:58:14 ID:z95jMoZ.0
「静弦太郎、その学園生活驚異のメカニズム。」
(ナレーション)
光あるところに影がある。
彼の学園生活の影に、数知れず少女の姿があった。
純情一途、彼を愛する影の乙女たち。
だが人よ、名を問う無かれ。
彼に尽くし、彼のために散る。
それが、少女たちのさだめなのだ。
(セリフ)
「弦太郎君、大好き!」
(歌)
風よ吹け吹け嵐よ吠えろ、逃げ道無いぞ!
弦太郎君、覚悟!
おうおうおうおう、やーっ!
忍法『包囲網』
LOVE YOU!
好きよ 好きよ 好きよ 好きよ
切ないの
抱いて 抱いて 抱いて 抱いて
優しくね
愛しい あなた
我ら乙女さ 負けないわ
一人の女が二人の女、三人四人!
五人! 十人!
おうおうおうおう、やーっ!
忍法『数頼み(かずだのみ)』
FOR YOU!
好きよ 好きよ 好きよ 好きよ
悩ましい
抱いて 抱いて 抱いて 抱いて
いつまでも
愛しい あなた
我ら乙女さ くじけない
空に月無く闇夜の中に、影が浮かぶ。
おまえはだれだ!!
おうおうおうおう、やーっ!
忍法『ストーキング』
WITH YOU!
好きよ 好きよ 好きよ 好きよ
たまらない
抱いて 抱いて 抱いて 抱いて
心まで
愛しい あなた
我ら乙女さ 気付いてよ
125
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:03:10 ID:z95jMoZ.0
組織、集団において、このようなテーマ曲を持つということには、なかなかに侮れない意味がある。
その組織に属する者の意気を同調させることが出来る。たとえばピアノによる柔らかなメロディの曲であれば、和やかな
歓談が出来るだろうし、ヴァイオリンによる上品な調べを聞けば、おのずと会話にも優雅さが宿る。勇ましいブラスバンドの
軍歌を聴けば、兵の戦意も向上するだろう。
そしてこの、『静弦太郎君を優しく見守る会』の会歌『弦太郎君を支える影の歌』は、細かく区切られたテンポのいいメロディが
印象に残る歌である。軽快に刻まれるビートは、この会が迅速で正確な行動を旨とする集まりであることを表し、要所に混ざる
金管楽器の力強さはけして力任せではないしなやかなパワーを感じさせる。
ここは、いったいいかなる場所なのか。
真っ暗な室内に、会歌『弦太郎君を支える影の歌』が流れるスピーカー。階段状に並ぶ机、それを埋め尽くす人、人。総勢
五十人以上はいるだろうか。しかもすべて、同じ制服に身を包んだ少女たちである。
照明がついた。
そこは、とある学校の視聴覚教室である。演壇の上、教卓としても使われる演台の後ろは、黒板の代わりにスクリーンが
備え付けられたミニシアターのようでもあった。
「これより、定例報告会を行います。」
壇上に立ったのが、この学園で生徒会副会長を務める、北海 道流(きたうみ みちる)だ。背の高い、大人びた風貌の
美少女で、背中まで届く髪を緩やかにウェーブさせている。穏やかな表情の中にも、事務的な堅さを含む雰囲気で、壇上より
集まった少女たちに視線を向ける。
「まずは『生活フォロー班』、報告願います。」
北海の言葉に、スクリーンに対して傾斜を持つ座席の中から、一人の少女が起立した。まだまだあどけない顔立ち、そして
高校生としては小柄な部類の背丈など、初々しい雰囲気を持つ。ぺこりと一礼のあと、彼女、加護 志摩子(かご しまこ)が
言葉を発した。
「生活フォロー班、一年の加護です。」
一年生ということは、まだこの学園に入って間もないはず。しかして彼女がこの、静弦太郎という少年に思いを寄せる集団に
身を置くには、それなりの理由がある。
この組織において、二年三年と比較するに、一年生というグレードは人数が少ない。単純に、学園に入学して間がないため、
静弦太郎に恋するに至る機会がないためだ。
それでも一年生がいないわけではない。この、加護という少女もそうであるように、学園外ですでに弦太郎と出会い、恋に
落ちてしまっているのである。そして彼を追いかけるようにして学園に入学、紆余曲折を経て、この組織に身を置くことに
なったのである。
つまり、彼女ら一年生は学園では新入生、いわば新兵であるが、こと弦太郎を恋することに関してはその階級章もただの
看板、その実は相当に訓練されたエリート兵なのである。
加護は、立ち上がり懐から携帯電話を取り出した。そして顔の傍らに寄せ、話し始めた。
「生活フォロー班としての活動は、問題なく完遂しています。」
その言葉、おおよそ彼女のそばにいないと聞き取れないレベルの声量であったが、携帯電話とリンクした教室内の
スピーカーの力を借りて、室内の皆にあまねく届く言葉に大きさを変えた。
「弦太郎さんの食堂利用、座席の確保率、完遂。
弦太郎さんのパン購入、品数確保率、完遂。
その他、一日毎のミッションに関しては、お手元に報告資料を転送します。」
PDAとして、高性能な情報端末である携帯電話から、一斉に情報が発信された。この教室に集まった乙女たちはそれを
自分の携帯で受信、それぞれがデータを閲覧する。
126
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:07:10 ID:z95jMoZ.0
彼女たち、『生活フォロー班』とは、非常に地味な、影の部隊である。
その活動内容は、『静弦太郎が、快適に学園生活を送れるようにフォローする』ことであり、その行動はすべてが隠密、
彼に知られることがあってはならないとされている。
たとえば、通学。
彼女らは、弦太郎の通学ルートに関して、徹底した美化活動を行っている。弦太郎が通学する際、彼の足下に目障りな
ゴミや、不衛生な動物の糞などが落ちていてはならないとして、それらをすべて排除する。
雨の日は、足下で泥水が跳ねないように、めぼしい水たまりを埋めたり、たまった雨水を掻き出したり。
たとえば休憩時間。
混雑する購買部に彼が向かうとなれば、人垣を捌く盾となり、彼の道を作ってやる。
めぼしい商品、人気のある品物はあらかじめ押さえておき、弦太郎以外が購入することをさりげなく牽制する。
昼食時の食堂では、機動力を重視した席取り部隊が先行、清潔で眺めのよい席を確保する。食堂が混雑し、到着した
弦太郎が座席を求めれば、彼がそばに来た頃合いでさりげなく席を明け渡し、スムースに彼がそのテーブルを
確保できるように努める。
いくつもの項目が、彼の生活パターンに準じて組み替えられて、常にその先回りを行うようにして構成される。
彼が右を歩けば、その先にある危険物を排除。左に歩けばその足場を組まなく確認し、不快な要素を徹底削除。
そんな生活フォロー班を束ねる者こそ、一年生にして精鋭、加護志摩子なのであった。
「おつかれさまでした。みなさんにはこの調子で、今後もフォローをお願いします。」
壇上北海の言葉に、加護は先ほどと同じような一礼をし、席に座った。
「次に『動向観察班』、報告をお願いします。」
声に応じて起立する少女あり。
「動向観察班、伊賀だ。」
ショートカットをシャギーにそろえ、頬を髪で隠す少女は、それだけでシャープな印象が目立つ。鋭い美貌の彼女、
しかしながら今声を出すまで、周りのものはほとんど彼女の存在に気がついていなかった。特に意識するわけでもなく
恒常的に発動する穏形の術である。
「今週も特に子細なし、といいたいところだが、あくまでもそれは校内にいたっての話。
先日あの小童どもに後れをとった。」
忌々しそうな声で、その少女、伊賀宇江乃(いが うえの)が言った。
「・・・その件は、今となっては仕方のないこと。同居の敵が相手となれば、あくまでも向こうが有利ですからね。」
さて、『件の出来事』についてである。
いま、この場に集まる少女たちは、先に述べた通り、『静弦太郎君を優しく見守る会』に席を置くものたちである。
同会の趣旨は文字通り、静弦太郎という少年の学園生活を、影ながら見守り、円滑に進めようというものである。
いくつか存在する、静弦太郎を巡る集団の中でも、その構成人数は最大のものだ。
彼女たちは主に、静弦太郎という少年の、『学園生活』をテリトリーとする集団だった。
127
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:11:13 ID:z95jMoZ.0
テリトリーとは。
静弦太郎に思いを寄せる少女たち、その組織は大きく分けて三つ。
件の彼女ら、『静弦太郎君を優しく見守る会』。
そして、彼の部活動を共にする少女を中心とした、『静弦太郎君と爽やかな汗を流す団』。
さらに、彼と同居する妹のような少女、そのクラスメイトによる『六年二組』。
彼女らの組織は、弦太郎少年と過ごす生活時間帯を区切りとした、活動領域を持っている。
それがテリトリーだ。
『汗を流す団』が、弦太郎の所属する合気道部に励む放課後の時間、『見守る会』が放課後までの学園生活全般、
そして『六年二組』は、彼が帰宅したあとの時間を占有する。
もちろん、当の弦太郎は、まさか自分の生活時間帯がこれほどの少女たちによって注目されているなどとは夢にも思わず、
学園生活を謳歌しているのだ。
さて、『件の出来事』である。
先日、組織『六年二組』の首魁より、『見守る会』のリーダーにホットラインがつながった。
用件は、驚くべきものだった。
静弦太郎が、何者かに好意を寄せ、ラブレターをしたためたというのだ。
この報を受けた『見守る会』の面々は、その相手を押さえるべく、徹底的に彼の行動を監視した。
そして、彼が意中の女に告白し、玉砕する場面を確認するに至ったのだ。
彼のラブレターが不発に終わり、安堵の息を吐く『見守る会』面々であったが、そこに隙があった。
続く日曜日、毎週の習慣である朝の自主稽古に彼が姿を見せない。
彼の自宅近辺で動向を監視していた見張り番、伊賀宇江乃がその異変を察知したとき、すでに組織『六年二組』による計画が
進行していたのだった。
賑わう街から離れ、木々に囲まれた里山の中程にある弦太郎の家(正しくは『六年二組』首魁である津島空(つしま そら)の自宅)
から彼が出かけたあと、『六年二組』構成員の少女たちが集結した。
弦太郎の後をつけていた伊賀は、その知らせを受けつつも、事前に得ていた情報『この日は街にパソコンを買いに行く』に
判断を甘くしてしまった。
結果、弦太郎はランニングに出たあとすぐに自宅に戻り、そのまま夜まで家を出ることがなかった。
その日、組織『六年二組』による『プロジェクト・キャバクラ』によって、構成員すべてが彼と肉体関係を結ぶに至ったのである。
伊賀宇江乃はこのときのことを思いだして歯噛みする。
彼が自宅を出たときに、なんとしてでも彼を足止めし、家に帰さぬようにしていれば『六年二組』の計画を潰せたものを。
「しかし、幸いなこともありました。」
司会をしていた北海道流が言った。
彼に身体を許し、その恋人の座を得たと思われた『六年二組』の面々であるが、思わぬ落とし穴があった。
彼を誘惑し、自分たちを抱かせる手段の一つとして、彼にアルコールを盛った。酔気で理性のタガを外し、モラルに阻まれて
手を出せない小学生女子というハードルを越えさせた。
確かにその策は成功した。
しかし、そのあと小学生を送る道すがら、酒気により平衡感覚を狂わせ、石段で転倒、後頭部を打った。
そしてその衝撃で、その日一日の出来事をすっかり忘れてしまったのである。
策士、策に溺れる。
詰めの甘さと噛み合わぬ運気に助けられ、『六年二組』による独占状態は回避された。
「幸運にも、昨日の出来事は弦太郎君の記憶からは忘却され、『無かったこと』になっています。」
128
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:14:12 ID:z95jMoZ.0
北海の言葉のあと、わずかな間をおいて。
鋭い声が会場に響いた。
「今こそ我々の計画を発動するときなのだ!」
声の主は、北海の背後、視聴覚教室のスクリーンの前。
「これ以上、何者の動きをも許すことなく、迅速に計画を遂行するのだ!!」
同時に、スクリーンに大写しとなる彼女は、高らかな声で宣言した。
読者諸氏、もし貴君等が前作、第0話『彼と、彼を取り巻く影の世界』をお読みいただいているならば思い出して欲しい。
前作で暗躍する組織『六年二組』の首魁が、携帯電話よりつないだホットラインの相手を。
暗がりの中、カメラには目元を映さず、意匠不明の存在として声のみの登場となった女。
彼女の真なる姿こそ、大写しのスクリーンを背に、司会の北海を制し大壇上に現れた少女なのである。
その名も東 京華(あずま きょうか)、彼女こそは学園の当代生徒会長にして静弦太郎のクラスメイト、そしてこの、
『静弦太郎君を優しく見守る会』のリーダーなのであった。
「時は来た。
今こそ我々の計画、『プロジェクト・ノア』を実行に移すのだ!」
とう、と鋭く息を吐き、助走を付けて演台の上に飛び乗る彼女。
壇上よりひときわ高く、演台の上、肩を怒らせて立ち上がる姿は威風堂々。
東京華はそうして、集う同胞に檄を飛ばす。
彼女の容姿を語るに、ひとまず長い黒髪をあげよう。
とにかく長い。
肩より長く、背中を覆い、腰のあたりを通り過ぎて、その毛先はなんと彼女の膝の裏まで届く。
おまけに、髪の生え際である頭皮、毛髪の密度はよほど密集しているのだろう、その末端である膝のあたりではふわふわと
空気を孕み、恐るべきボリュームとなって彼女の全体的なシルエットとなっている。
彼女を背後から見ると、まるで髪の毛の固まりに足が生えて歩いているかのようにも見えてしまうくらいなのだ。
さらに、その髪と相まって、彼女の容姿を印象づけるものがある。
それは、東京華その人の、身長である。
129
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:16:40 ID:z95jMoZ.0
「会長、演台の上に土足であがってはいけません。」
背後より、東の副官である北海が窘める。そして、東の両脇の下に手を回し、ひょい、と持ち上げては足下に下ろした。たん、
と靴音を響かせて着地した京華は、北海を見上げて言う。
「ええい! 子供扱いをするな!」
そのように、子供扱いを嫌う京華はその通りのコンプレックスを持っている。
つまり、身長が低いのだ。
その低さをどのようにして語ればよいか。
おおよそ、小学校高学年と同じくらいだ。
少し背の高い北海道留と比較すると、その頭は北海のお腹のあたりまでしかない。
意志の強いきりりとした表情をしてはいるものの、身長がこの程度であるため、ただ気の強い子供にしか見えぬ。
手足の細さも童女のそれならば、そのてのひらも小さな紅葉のそれである。
天地の理を破ることもなく、胸の大きさは間違いなく十代にも満たぬ成長度合い。
やや痩せぎすの身体は、細い腰、肉の付かない尻といまだ二次性徴を迎えぬ体つき。
年齢不相応、この成長の遅さは、しかし病的に身体異常を疑うような歪さがなく、まさに寿命の長い亜人種族の如し。成長が
遅いのではなく、緩いのである。
このような身体であっても、間違いなくその年齢は今年十七を迎える高校二年生。幼女のなりではあっても、知能は高く、
意志も強く、洞察も鋭い。
現にこうして、この学園の生徒会長に就任したことも、彼女の明晰な頭脳や、生徒を正しく導くリーダーシップを買われてのこと。
だれが呼んだか、『こども生徒会長』!
「このままでは、演台が邪魔で私の顔がみんなに見えんのだ。」
こども生徒会長、東京華が、自分を演台上から抱いて下ろした副会長に向かって言う。たしかに、ふつうに台の後ろに
行儀よく立っていても、その頭頂が少し見えるか程度にしかならない。どことなく愛らしく、そして間の抜けたその姿は、
組織のトップたる者が多少は気にしておかなければいけない威厳のようなものを損なっていく危険性がある。
なれば、普段の演説時にはどのようにしているのかというと。
「会長! これをお使いください!」
突如の声と共に、演壇の裏側、京華のそばに一人の少女が駆けつけた。
ばっさりと大胆にカットしたベリーショートの髪、細い四肢の割には力の宿る体躯はエネルギーにあふれていた。そして、
学園の制服を身にまといつつもその膝をガードするサポーターや拳を守るウレタン製のナックルなど、いかにも体育会系
武闘派の出で立ちである。
彼女の名は岡谷 真希(おかや まき)、生徒会に書記という肩書きで所属する二年生。
しかしてその実体は、書記とは名ばかり。筆を持つことなどいっさいなく、ただただ生徒会、ひいては東京華に仕え
肉体労働に従事する使用人である。
そしてもちろん、彼女もまた静弦太郎に恋する乙女であった。
彼女は、文化系の女子が集まる同会において、珍しく武闘行動可能な空手家である。
130
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:24:50 ID:z95jMoZ.0
彼女について語るには、まず生徒会長、東京華について補足せねばなるまい。
東京華の家は、政財界に強い影響力を持つ旧家であり、何代も前から腹心の家来とも言える一族をいくつも側に置いてきた。
岡谷の家系もまたその腹心の一つであり、東の家の従者として子飼いとなっている。一族のすべてがそうしてきたように、
真希もまた幼い頃から京華のそばに仕え、ボディガードの一人として腕を磨き、今に至るのである。
ちなみに、先の北海の家もまた、東の家臣である。
さて、たったいま岡谷真希が京華に差し出したもの、それは半メートルほどの高さになる折り畳み式の脚立であった。
彼女は常にその脚立を背負い、京華のそばに控えているのだが、間の悪いことにこの集会の直前、メンテナンス不全が
発覚したのだ。
その事実は、同じく付き人である北海道留が先に集会のとりまとめを始めた頃、京華が舞台袖で出番待ちしていた際に
打ち明けられた。
私が馬になります! と、責任を感じた真希が京華に申し出た。演説時には真希が四つん這いの馬となり、その背を
踏みつけるようにして脚立代わりに使って欲しいとのこと。
しかし、組織の代表者が、構成員の一人である真希を足蹴にして演説するという姿はいかがなものだろうか。見る人間の
目には、いかにも傲慢、サディスティックな独裁者のように映るに違いない。
場合によってはそういったたぐいの演出が必要なときもあるだろうが、今はまだその場面ではない。彼女はまだ高潔な
指導者でなければならないのだから。
脚立のメンテナンスは、少々時間をかければ片が付くはずだ。足場の不安定な場所でもオートバランサーと脚長アジャスト
機能によって心地よい水平が確保できる最新式の脚立は、少々複雑なメカニズムを有している。しかし、真希はそれを熟知し
常日頃からメンテナンスしている。今回の不備は通常ならほとんど起こりえない、非常に間の悪いアクシデントなのだから。
京華は、真希の卑屈な申し出を却下し、早急にメンテナンスに当たらせた。
そして京華は、演台の上に直接登りアジテートする、インパクト重視の方法を選択したのだ。
「メンテナンスは完璧です、ささ、こちらをお使いください!」
そうして、京華の登場からわずかに遅れて、脚立のメンテナンスを終えた真希が、演台の裏にそれを設置して言った。
脚立使用のアクシデント、高所からの転倒を危惧してのメンテナンスが、結果的に京華をより高い演台の上に押し上げたのだから、
馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
岡谷真希と同じく京華に仕える使用人でもある北海は、ため息をついてそのやりとりを眺めていた。
「では、『プロジェクト・ノア』の進行について、最終確認を行います。」
演壇には、脚立使用によってようやく腰上が見えるくらいの高さに落ち着いた京華が腕を組みふんぞり返っていた。顎を引き、
会場すべてを視野に入れつつ、そばで進行を進める北海の言葉を聞いていた。
「我々のプラン、『プロジェクト・ノア』は、その名にある通り、ノアの箱船を作り上げる計画です。」
そのプランの趣旨は、こうだ。
ターゲットはもちろん静弦太郎。
彼を、某かの用向きで呼び出し、東の家が所有する隔絶された場所に幽閉する。
そして、その場所にはもちろん、彼を慕う『見守る会』の面々がいる。
閉ざされた状況の中、静弦太郎には、周りの少女に対する朴念仁的思考を見つめ直してもらい、彼女らの恋慕に気づいてもらう。
「そうなれば、あとはその隔絶された『箱船』の中で、唯一の男性として私たちを愛してもらいます。」
いかに朴念仁とはいえ、逃げ場をなくした上でのアプローチであれば、向き合わざるを得ない。五十名を超す構成員のすべてを
等しく愛してもらうためには、かなりの時間隔絶された場所が必要なのである。
それを演出するイベントから始まり、彼の朴念仁を打破し、その男性本能を刺激して、彼の愛を授かる。
それが彼女らの遂行する『プロジェクト・ノア』なのだ。
131
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:30:01 ID:z95jMoZ.0
一つの挙手があった。
会場を埋める少女たちの中、北海によるプランの最終確認が終わったあと、一人の少女が挙手をして発言した。
「ほかの組織の妨害に対する策は、どのような手段なのでしょうか。」
彼女の名は王砂 香里奈(おうさ かりな)という。長くサラサラとした、ウェーブヘアの持ち主で、背も高くスタイルもよい。
制服の上からでもわかる胸の豊かさは、グラビアアイドルもかくやと言った美しさで、昨年の水泳授業において多くの
男子生徒を悩殺した。
クラスにおいては学級委員長を務め、リーダーシップを発揮している。
「『六年二組』も、昨日の失敗に焦っているはず。失地回復のために強攻な手段にでるかもしれません。
それに、私たちと同じように、事態に焦っているのは『汗を流す団』も同じ。
彼女たちの動きを警戒しないといけないのでは?」
彼女の問いに、会場の女生徒たちの一部が小さくざわついた。
しかし、それらの声を抑えて、さらに起立して発言する女子があった。
「そのあたりは大丈夫ですよ。」
大井 貴子(おおい たかこ)。校内では美化委員長という役職で、備品の管理や清掃に関する調査取り締まりを行っている。
組織の中でも、活動方針には冷静な意見をする、慎重派である。
小柄でスレンダーな体躯ながらも、年頃の女子高生らしく瑞々しい色香のある少女だ。身なりも乱れなくこざっぱりしており、
美化委員の役職に見合った清潔感が印象的である。
「私の情報網で、『汗を流す団』の予定はおおよそ掴んでいます。
『六年二組』に関しては、伊賀さんが。」
そのように話を振られ、動向観察班の伊賀宇江乃が、深く頷いた。
伊賀宇江乃は、先程述べたように、静弦太郎の放課後、自宅近辺をマークし、同時に『六年二組』の修学する小学校に
乱破(らっぱ)を放っていた。彼女に穏形を学んだ女子生徒たちは、組織内では伊賀忍群と呼ばれている。
加えて彼女らは忍術と称した、電波に依らぬ集音術にて、室内の会話を多少なりとも解析しているのであった。
そして学園の備品、施設を管理する大井は、何重にも張り巡らせた情報収集設備により、『汗を流す団』のテリトリーである
武道場などからも敵情をかすめ取っているのだ。
「それらの情報を元に、私のほうで作戦を立てました。」
大井と伊賀の発言に続き、か細い声であとを続ける者があった。
おとなしい声ながら、明晰な思考で問題点を考察する彼女は、背中までの髪を大きく一つの三つ編みに結い、身なりを
おとなしく慣らして静かに言葉を続けた。
その少女、図書委員長の伏尾 果歩(ふくお かほ)という。
「私たちの作戦決行時に関して、ダミー情報を流しています。
複数のダミー情報に紛れさせ、情報深度のより深い本命ダミーを設置して陽動します。」
彼女は、その明晰な頭脳をもってこの組織の軍師となっていた。会長である東京華からの信任も厚く、折々に知恵を
貸すようになっている。
132
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:33:42 ID:z95jMoZ.0
「では、これより各自の携帯に、『行動指示書』をメールします。」
北海が発言すると、会場の女子が一斉に各自の携帯を開く音を立てた。北海道留の手元で、恐るべき早さで指先が踊り、
携帯の小さいボタンを正確にオペレートする。
会場の女子たちがわずかにざわめく。自分の携帯に送られてきた指示書に目を通し、おのれがとるべき行動を確認、
反芻を始めたのである。
「いわずもがなだが、各自、この場を出る際にはその『指示書』を破棄抹消するように。」
会長である京華が発した命は、なにも今日だけのことではない。この組織の行動をほか組織に漏らさないための、
当たり前の行為である。
北海によって、グループ毎、あるいは特に個別行動を行う面子毎に、的確に指示書が配布された。そして数分のあと、
最後の一人まで指示書の破棄が完了したことが確認された。
己のやるべきことがはっきりした個人は、もう迷わない。
組織の中のすべての個人にその命が行き渡ったあと、次にあるものはただ一つ。
「諸君、作戦開始だ!!」
彼女ら少女兵を解き放つ、リーダーの号令である。
携帯電話が鳴った。
鳴ったといえど大きな音はなく、かすかな振動で着信を告げる携帯電話を、スカートの下、腿に巻いたホルスターベルトから
抜き放つ。黒のニーソックスと、同じく黒の下着のあいだ、限られた領域にだけ見える腿は、眩く輝く白い肌。
ここは学内のいずこか。校舎内ではなく、高く昇る太陽の光が作る、大きな影の中に彼女は立っている。人影も彼女以外に
なく、おおよそここに用がある人間など、今の時間そうそう現れないようだ。
その彼女、手頃な長さの髪を髷のように結い、後方に流している。髪型だけを見れば、南国の果物パイナップルのようにも
見えるが、彼女自身の放つ精悍な気配はそのような可愛げのあるものではなく、いかつい戦国武将のそれを思わせる。
なにより、その右目を隠す眼帯が、整った少女の美貌に気迫を添えている。
隻眼の美少女、仙田 伊織(せんだ いおり)がそこに立つ理由とは。
133
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:35:56 ID:z95jMoZ.0
携帯電話を開き、回線を開く。
先の集会から数時間後、今このタイミングで自分にかかる通信となれば、おおよその相手は見当がつく。そうなれば
液晶表示を見るまでもなく、わざわざ名を問うまでもない。
「なにかあったか?」
学園の風紀を取り締まる、風紀委員長の肩書きも持つ伊織が問うた携帯の向こう。その着信の主が伊織に応じる。
『いや。作戦は至極順調だ。あとはおまえたちの健闘にかかっている。』
その通話の声は、生徒会長東京華。組織『静弦太郎君を見守る会』を束ねるものである。
「そうか。」
伊織は、短く、呟いたのち、覚悟を決めて言った。
「多少、遅れることにはなるが、必ずそちらへ向かう。」
それは、任務完遂を誓う言葉。己の身を捨てて事にあたるのではなく、己が生き残ってこそ完了となる任務であることを、
正しく理解している。
『ヨシ、健闘を祈る。』
通話は途切れた。もうこの回線は、作戦終了時まで開くことはない。
伊織は、静かに携帯電話を閉じ、腿のホルダーに戻した。
そして、一本の愛刀に手を按じる。
制服のスカートに引っ掛けたベルトは、左の腰に下げられた木刀の重みで傾ぎ、少女の手に触れてわずかに皮のきしむ音を立てた。
これで、あとは戦うのみ。
数分後、伊織の待つ学園の校舎裏に、二人の少女が駆けつけた。生徒会書記である岡谷真希と、もうひとり監視班の
伊賀宇江乃である。
二人のうち岡谷が、大きな頭陀袋を肩掛けに担いで、残る伊賀が周囲の警戒を担当しているようだ。
「押忍、お待たせしました!」
小声ながらも威勢のいい、岡谷の声に伊織が応じる。
「首尾は?」
「バッチリです!」
伊織は、岡谷真希が担ぐ頭陀袋に視線を移す。少女の肩には幾分大きすぎる荷物である。
ちょうど、男子生徒一人分をまるまる袋に包んだような、大きな荷物。
「追っ手が来た。」
周囲を警戒していた伊賀が二人を小声で促す。時間がない、急げ。
「じゃあ、自分たちは行きます!」
「ああ、気をつけてな。」
134
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:38:20 ID:z95jMoZ.0
岡谷が敬礼のような仕草をすると、伊織は親指を立ててサムズアップで応じた。岡谷に続いて伊賀が目礼だけしてその場を
去ると、再びここは伊織ただ一人となった。二人は伊織の背後、学園の外塀に設けられた抜け穴より学園外へと脱出したのだ。
しかし、さほど間をおかず新たな人影がこの場に接近。
ざざざざざっ、と靴裏と地面が擦れる音。ただの有象無象にあらず、武芸者のたてる独特の足音。
しかもその数、一人二人ではなく、伊織の読みでは五人。
「くっ、貴様、風紀委員の仙田か!」
現れた少女たちは伊織の読み通り五人。スカート、ブレザーの制服姿の美少女たちだが、皆その姿に殺気がある。竹刀袋を
背にしている姿、おそらくは剣道部員か。
そのうち一人が待ちかまえていた伊織を睨みつけて言った。
「岡谷はどうした!?」
伊賀と対峙する少女のうち、綺麗なおかっぱの少女が荒く問う。
明らかにこの少女たちは、先ほどの岡谷を追い、伊賀が警告した彼女らの追っ手である。
ならば、伊織にとってすべきことは一つ。
くく、と小さく笑い、伊織が言った。
「岡谷? 知らないな。ここには誰も来ていないぞ。」
とぼけるにも下手な芝居である。いや、端から隠すつもりもないらしい。
その反応に、五人の追っ手がいきり立った。
「ちっ、私たちを足止めするつもりか!」
そして彼女らは、それぞれ制服の背に負った長物を抜き放つ。よく使い込まれた竹刀である。
この追っ手、間違いようがない。
敵対勢力の一つ、『静弦太郎君と爽やかな汗を流す団』である。
静弦太郎を巡る三つの大きな勢力。
その一角をなすのが、武闘派集団である件の組織だ。構成員は、主に学園の武術系のクラブに所属する女子であり、
言わずもがなであるがすべて、弦太郎に恋する乙女たちである。
数こそ『見守る会』に大きく後れをとるが、構成員はすべてが某かの武術をたしなむ少女たちということで、その危険度は
かなり高い。
今、伊織の前にいるのはその武闘集団の刺客五人、おそらくは女子剣道部。
校舎裏、学園の外塀を背に立つ伊織を前に、扇の形に広がり、間合いを取る。
竹刀を正眼に構えた五人の少女剣士たちは、じりじりと距離を小さく刻み、伊織へ切りかかる隙をうかがっていた。
「みんな、相手はあの『独眼竜』だ、油断をするな!」
独眼竜。
それは、隻眼の剣士、仙田伊織の通り名である。
片目を傷め、常に眼帯をしている姿が歴史上の人物伊達政宗と重なるところがあったのだろう、いつからともなく、そのような
呼ばれ方をするようになった。当の本人にしても、その呼ばれ方は気に入っている様子。
「油断をしないからといって、ましてや五人掛かりだからといって、それで私に勝てるとは思わぬことだ。」
135
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:40:24 ID:z95jMoZ.0
件の通り名で呼ばれて気分が乗ってきたのか、そのように嘯いて伊織、すらりと剣を抜いた。
その瞬間、伊織を取り巻く少女たちの緊張がさらに高まった。
相手が得物を抜いたのだから当たり前だが、ただそれだけの話ではない。
伊織が抜いたのは、ただの木刀だ。腰に掛けたベルト、その隙間に差し込んだ木刀を抜き放っただけである。
しかし、五人にはそれが、白刃煌く日本刀に見えた。
ただの木刀を、真剣と思わせるほどの剣気があったのだ。
「五人、五人同時で行くぞ!」
「はいっ!」
「おっけー!」
「了解!」
「わかった!」
五人同時、といっても、正しくは五人同時ではない。目の前の一人に対して、五人が一斉に剣を向けても、敵の一度の
回避動作ですべてかわされてしまう恐れがある。悪くすれば、仲間同士で傷つけあう可能性だってある。
つまり、この五人が一度に行く、という意味は、機を逃さず一気に行く、ということである。
一番手が切りつけ、それをかわした敵にあわせて二番手が切りかかり、続けざまの回避に動きが鈍ったところを三番手が
切り、姿勢が乱れたところを四人目が切りつけ、残る五人目がとどめを刺す、という流れである。
彼女らはこのコンビネーションを、「烈風五連撃」と呼んでいた。
「せい!」
「やー!」
「とぉ!」
「はぁーっ!」
「きえーっ!」
少女達の気合いの声、それが五つ重なって、出た、「烈風五連撃」!!
しかし、それは必殺とは成り得なかった。
がががががっ! と隙間ない連撃の音が起こり、地に伏せたのは剣道部五人娘。五人はそれぞれの得物を手放し、牙を
折られてしまっていた。
独眼竜伊織は、軽く木剣をひゅんと振り払い、あたかも鞘に収めるかのごとく、腰のベルトに差し挟んで動きを止めた。
この一瞬になにが起こったのか。
簡単に言えば、五人娘の技のタイミングに先んじて、伊織が五人の剣の鍔を打った。
竹刀を握った少女、いままさに渾身の一撃を放とうというその両手、ほんのわずかに握力がゆるんだ瞬間を狙って、竹刀の
鍔越しに一刀を叩き込んだのだ。
これは、五人娘の、間合いの甘さ故の敗北か。
独眼竜伊織の、神速ともいえる踏み込みの早さを、慎重に見積もったつもりでいてまだまだ足りなかったのだ。
「さすがに、乙女の身体をむやみに折るわけにも行かないからな、その程度にしておいた。
しばらくは痺れて剣は振れないだろうがな。」
竹刀に比べて硬く、重い木刀の一撃を、防具もつけぬ少女の身体に叩き込めば、無事にすむはずもない。
伊織もそこは、実力差を手加減に回したようだ。
136
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:41:24 ID:z95jMoZ.0
「相変わらず、甘いね、仙田さん。」
その声が聞こえたときには、仙田伊織は一度は離した手を再び剣の柄に按じていた。
「剣道部、いよいよ部長どののお出ましか。」
伊織の前に新たに現れた刺客、その名は、剣道部部長、柳生呉羽(やぎゅう くれは)。
長い黒髪をさらさらと流し、静かに歩み来る美少女。
学園の制服であるブレザーにスカート、その衣装見てくれだけを取ればふつうの学園生徒であるのだが。
この学園に、隻眼の美少女剣士二人あり。
一人は生徒会、憲兵隊長もとい、風紀委員長、仙田伊織。
一人は剣道部部長にして、全国大会一位の天才剣士、柳生呉羽。
二人とも、示し合わせたように片目を眼帯にて覆っているが、もちろんこれは粋がっての戯れではない。
独眼竜の伊織に対して、呉羽に付いた通り名は柳生十兵衛。
彼女らはともに、幼い頃より剣術を納め、その際に負傷した傷跡が残っているのである。
その傷に関する縁についてはここでは触れないでおこう。
「あなたがここに残って足止めなんて、よっぽどのことなのね。」
涼しい表情を崩さず、呉羽が言う。
「さてね。」
対して伊織も、多くを語らない。
「それじゃあ、久しぶりに、お手合わせ願おうかな。」
呉羽が背腰部に、横一文字に仕込んだ剣を抜く。2m弱ほどの、彼女自身の身の丈近い木刀だ。
「さて、わたしもちゃんと、独眼竜の『足止め』をしないとね。」
二人の距離、少女の歩幅にしておおよそ10歩半。
しかし呉羽はその距離を一足飛びで潰し、抜き放たれた長剣は、切っ先の軌跡も残さぬまま伊織の袂へと飛び込んだ。
助走無しでの高速跳躍、呉羽の得意技である。
得意技ではあるが、そこは呉羽と因縁浅からぬ伊織のこと、それも間合いと読んでいる。腰から抜き切らぬ剣で切っ先を
受け止め、抜き放つついでに払い落とした。
ざざざっ、と油断なく後退し、再び間合いを取った呉羽。さすが、と小さく呟いて、ちろりと舌舐めずり。
「私の『足止め』をするだと?」
伊織が、呉羽に問う。呉羽はそれを涼しく受け流し、二度、三度と打ち込みを加えた。
137
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:43:58 ID:z95jMoZ.0
呉羽こそ、学生とはいえ全国一位の腕前である。しかし伊織とてただ者ではない。大会には出ないため箔がない彼女であるが、
その実力、間違いなく全国級である。
さらにいえば、今の二人が使うのは剣道ではなく、剣術。ルールに則った試合とはまた違った戦いを得意とする。
お互い、手を抜くつもりもなく隙のない攻防を繰り返し、再び間合いが離れたときに、呉羽が先程の問いにようやく答えを返した。
「あなたたち『見守る会』の中で、一番戦闘力が高いのは間違いなくあなた。
ということは、あなたさえ押さえておけば、残りをしとめるのはそう難しいことではない、ってことかな。」
「なんだと・・・?」
伊織が、構えていた木刀を地擦りの位置に変え、表情をさらに険しくしかめる。
「あなたたちの策はお見通し。
弦太郎君を拉致して監禁し、自由を奪ってから、あなたたちが勝手に思いを遂げようっていうことね。」
にやり、と笑った呉羽は、さらに言葉を続けた。
「さっきの空手使いには別の追っ手、私たちの本隊が向かっているということよ。」
「ここまでくれば、もう大丈夫!」
人間がすっぽり入るくらいの頭陀袋、それを肩掛けに担いでいた空手娘、岡谷真希がひと息ついて言った。
ここは、学園より離れた駅近くの自然公園。そこそこ広い敷地内には、日の光を遮る程度には木々の密集した森と、その中を
歩くための広い遊歩道がある。
その公園の中、少し開けた広場に数台のベンチ。岡谷真希と伊賀宇江乃がたどり着いたこの場所には日中にしては人気も
なく、その場所を独占するのは彼女らただ二人だけだった。
その刹那、鋭い風切り音を伊賀がとらえた。
「っ!」
音を聞いてから動いたのではまるで間に合っていなかったであろう。
伊賀は、殺気のにじむ気配をとらえ、とっさに岡谷をかばった。どん、と突き飛ばされて彼女はよろけたが、そのかわり彼女を
狙った凶弾からは免れた。
「うわっ! アブなっ!」
先端をウレタンの鏃で覆った矢が、その凶器だった。先は尖らず、また弾力のある材質であるために、当たっても突き刺さったり
貫通することはない。しかし、当たれば間違いなく、痛い。
「油断するな! 次がくるぞ!」
宇江乃が真希を強く促し、警戒させる。しかし、第二撃はなかった。
「この、卑怯者!」
その声は、公園の木々の中から聞こえ、少ししてその声の主が、先程の矢が射られた方向より姿を現した。
「私たちの頭首をたばかり、弦太郎様を拉致したあげく、彼を盾にして私の矢を遮るとは!!」
138
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:46:43 ID:z95jMoZ.0
現れたのは、凛々しい弓道着の少女。間違いなく、先程の一矢は彼女の放ったもの。最初の一矢のあと、二矢三矢と
続かなかったのは、偶然にも真希が抱える頭陀袋が射線の邪魔をしてのこと。
そうすると、その頭陀袋の中身とは。
「・・・・・・・・・ぅーーーーっ、ぅぅーーっ!!」
袋がもぞり、と動き、小さくうめく声が聞こえた。
「薬が切れたみたいね。」
宇江乃が小さく呟く。次第に暴れ出す頭陀袋、それを担ぐのが困難になったのか、真希はそれを足下に下ろした。
地面に下ろされた袋、それはよく見れば、縛り付けた人間を押し込めた代物だ。おそらく口には猿ぐつわを噛ませ、自由に声を
出すことを封じているのだろう。
その、頭陀袋に入れられた人間をぞんざいに扱う様を見て、弓道着の少女が激高した。
「あなたたちっ!! 弦太郎様に対するその仕打ち、断じて許すことなりませんっ!!」
弓道少女の激昂にあわせて、周囲の森より続々と人影が現れた。その数、総勢十余名。
制服であったり、それぞれ武術の道着であったりと姿は様々だが、そのすべてが腕に覚えのある武芸者であることはわかる。
彼女らこそ、『汗を流す団』、正しくは、『静弦太郎君と爽やかな汗を流す団』の構成員である。
岡谷真希も、『見守る会』の中では腕利きの部類ではある。しかしそれはほかが文化系の者に偏っているからであり、
武芸者ぞろいの『汗を流す団』面々と比べては、やや見劣りする。もちろん、伊賀宇江乃にしても、隠密行動こそ長けてはいるが、
対人攻撃に絶対的強さを持つものではない。
『見守る会』の中で、『汗を流す団』に対抗できるのは唯一仙田伊織のみであろう。
「さぁ、おとなしく、弦太郎様を返しなさい。」
十名を越える武芸者に囲まれて絶体絶命の、真希と宇江乃ではある。
退路もなく、腕でも劣る戦略的不利な局面。
二人の運命もここまでか、といった危機的状況。
しかし二人は、俯いていた顔を上げ、見つめ合った。
「もうそろそろ、頃合いだ。」
「押忍、次のステップに移行ですね!」
ちらりと見た腕時計、その時間を確認する宇江乃。同時に、周りの人間の数を数える真希。
そして、時計を見ていた宇江乃が言った。
「真希、もうすぐ来るぞ!」
「押忍!」
二人の会話に、なにやらただならぬものを感じた弓道少女、辺りを見回す。
すると、遠くから何かの音が近づいてくるのに気が付いた。
その音は、エンジンの音。タイヤが地面を擦る音。こちらに向かって近づいてくる音。
「車ですっ! 車がこっちにきます!」
139
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:49:20 ID:z95jMoZ.0
叫んだ弓道少女ではあるが、そのころにはすでに、公園の遊歩道を突っ切って、軽自動車が一台広場に突入するところだった。
「宇江乃さん、真希さん!」
軽自動車を駆ってこの場に突入してきたのは、生徒会副会長である北海道流。実は高校三年生18歳である彼女、
すでに運転免許も取得済みであった。
広場の中央、二人の側まで駆けつけた軽自動車は、その勢いを殺すのと方向転換を見事なサイドターンで決めて見せた。
砂煙を立てて一時停まった車に二人が乗り込むと、すかさずアクセル急発進。
二人に呼びかけるため、窓を開けていた北海めがけて弓道部員による斉射が行われたが、間一髪パワーウィンドウが
間に合って窓ガラスによって遮られた。
二人を確保、離脱した自動車に、その広場に集まった『汗を流す団』一同はなす術もなく、ただ見送るしかできなかった。
車が立ち去ったあと、残された頭陀袋を解放してみると、それは静弦太郎ではなく、誰とも知らぬただの男子生徒だった。
「くそっ、やられた!」
場面は戻り、再び校舎裏。
手を出すすことの出来ない剣道部員五人娘が、自分たちの部長である柳生呉羽と、『見守る会』随一の剣客、仙田伊織の
戦いを見守っていた。
しかし、どうにも仙田伊織の様子がおかしい。
攻勢に出るでもなく、時折口元を手でかばうなど、剣術の戦いの中では不自然な動きが多くなってきた。
そしてとうとう、間合いを取った彼女は、口元を押さえて動きを止めてしまった。
「・・・・・・・・・くくく、」
押し殺した含み笑いの声、その出所は、伊織の隠された口元であった。
「なにがおかしい?」
不意に笑い出した伊織に、呉羽が声を落とし、問いかけた。
計画を先回りされ、自棄になったのか、とも見えた。しかしどうにも様子が違う。
「ははははははははっ!!」
含み笑いも押さえきれず、とうとう高笑いを始めた伊織。呉羽は、先程まで自陣営有利の自信が、次第に揺らぎ始めた。
そのとき、呉羽の制服の袂から、電子音が鳴った。軽快な音ながら、制服姿の女子高生から発せられる音にしてはどこか
違和感がある。
呉羽は、袂から携帯電話を取り出した。音源はそれ、着信メロディである。曲名は、『浪花節だよ人生は』、いわゆる演歌である。
片手に木剣、もう片手に携帯電話を持ちながら、呉羽はそのどちらも持て余しているようだった。
鳴り続ける携帯電話をとりたかったが、目の前の伊織を警戒する剣を下ろすわけにもいかない。
「いいから、さっさとでたらどうだ?」
伊織が呆れて言う。視線を相手から離さないまま、携帯電話を開いて通話ボタンを押すくらい、剣を片手にしていても
一挙動作で出来る。伊織はそう思うのだが、目の前の剣道日本一にとっては、どうやらそうそう簡単なことではなかったらしい。
呉羽は、剣を背腰のホルスターに納め、両手を使って携帯を開き、液晶画面を睨み、ボタン配列を睨んで、空いた手でおそるおそる、
ようやく通話ボタンを押した。
140
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:51:45 ID:z95jMoZ.0
「もしもし、やぎゅうです。」
妙に緊張しながら、携帯電話で話し出す呉羽。最初こそ相づちを打ったりしながら応じていたのだが、とたんに機嫌悪く、
とうとう怒り出してしまった。
「よくもわたしたちを騙したねっ!」
片手で持った携帯電話に、もう片手の指でボタンを押して通話終了。
何とも不慣れな、携帯電話初心者のような扱い方だ。
その動作を見ていた伊織は呆れて、笑い声を憐憫の溜息に変えた。
「本当におまえたち『汗を流す団』は、機械オンチの集まりだなぁ。
携帯電話もまともに使えんとは。」
「う、うるさいっ!
携帯電話くらい、らくらくと使いこなしているんだから!」
ムキになって反論する呉羽だが、伊織は呉羽の持つ携帯を指さして、
「それは、老人向けに発売されている、らくらくケータイだろう。
メールも使えず通話のみで、ボタンの数も最小限。
そんな大きなボタンで、何でそんなにおそるおそる操作してるんだ?」
ちょうどそのとき呉羽の通話から遅れて、剣道部五人娘の袂からも携帯電話の着信音が鳴った。鳴り続ける携帯を
恐る恐る扱う姿は、まさに部長とそっくりだ。
どうやら、機械オンチなのは、部長の呉羽だけでなく部員たちにも及び、それはまさしく彼女ら『汗を流す団』構成員すべてに
おいて共通するようだ。
ことわっておくが、この世は現代日本であり、日常生活にはいろいろな機械類、情報端末や高性能な家電類などが
あふれかえっている。
そして彼女たちは高校生。頭の固い老人達と違って、いわゆるハイテク機器と呼ばれるアイテムだって、それほど抵抗なく
使いこなせてしまう。
そんな時代、『武道が達者な者はハイテクに弱い』などと、根拠のまるでない偏見を押し通すつもりはない。
だが、残念ながら、こと『汗を流す団』においては、この偏見が真理として成り立ってしまう。
おそらく、彼女ら個人が持つ唯一のハイテクですら、今時の女子高生が持つにはありえない、機能削減、簡単操作の
老人向け携帯電話なのである。
ちなみに彼女ら、ビデオデッキの録画予約も自分一人では出来ない。
「くそっ、ここも囮だったとは!」
呉羽が、携帯を懐にしまい、改めて剣を抜き戻す。
切っ先を向けられた伊織は、してやったりの笑顔を浮かべ、剣道日本一の天才美少女剣士を楽しくイジり始めた。
「そういうことだ。
もう少し、こちらでほかの奴らも引き付けておけるかと思っていたが、そこまでうまくはいかなかったな。
『先回り』なんて知恵を回すとは、ずいぶんとお利口になったものだ。」
「げ、弦太郎様をどこにやった!?」
「さてね。」
煙に巻く。
141
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:55:21 ID:z95jMoZ.0
伊織は背後、外塀の向こうからの足音を察知した。もちろんそれも、ただ者ではない武芸者の足音。
おそらくは、真希と宇江乃を追跡していた連中が、標的を見失って戻ってきたのだろう。
本来の伊織の任務は、先程彼女がいったとおり、ここに出来るだけ敵を引き付け、逃げ回る真希と宇江乃を援護することであった。
プランでは、二人の方に追っ手が集中した場合、ダミーを抱えての逃走を中断し、副会長の北海道流が運転する車によって
離脱することになっていた。
できればもう少し、偽の頭陀袋を抱えた真希たちに逃走を続けてもらい、他勢力を攪乱しておきたかったのだが。
呉羽の様子を見る限り、真希と宇江乃は無事逃げおおせたようだ。
そうなれば、伊織とてここに残っている理由もない。
「そういうわけなんで、私もここいらでおいとまさせてもらう。」
伊織が、落ち着いた様子でそう宣言する。
「な、なんだと!?」
呉羽が狼狽し、木刀を構え直す。
「いよいよ私も、弦太郎君に『女』にしてもらえるんだ。
こんなところでぼやぼやしている場合じゃないのさ。」
「お、おんな!?」
伊織の言葉に、構えた剣を取り落として呉羽が狼狽する。
当然の話だが、『静弦太郎君と爽やかな汗を流す団』構成員である柳生呉羽とその部下五人、処女である。もちろん
仙田伊織とて現在は処女であるが、もうすでに任務完了は目前、いよいよ彼にバージンを捧げる時が来るのを確信したのだ。
「では、ごきげんよう。」
そういって素早く、伊織は傍らの草むらを払った。人の腰ほどはある植物に偽装されていたその草むらは、彼女の手によって
保護シートごと払われ、そこに隠されていた小型のオフロードバイクを解放した。
「まずい!」
あわてた呉羽が剣を拾い伊織に迫るも、当の彼女は手慣れた動作で素早くエンジンを始動させ、いきなりのフルスロットルで
発進させた。
なかなかに熟達したバイク捌きである。
「おまえ、風紀委員長のくせに、校則違反だろ、それ!」
「気にするな。」
免許の有無云々のことではなく、学園の規則として『バイク通学禁止』であり、『校内へのバイク乗り入れ禁止』である。
そんなことは、学園の風紀委員長である仙田伊織、釈迦に説法百も承知。
呉羽のツッコミももっともであるが、目的達成のためには大した問題ではない。気にするな、の一言でばっさり切り捨てた。
乗っているバイクこそ、『猿』の通り名を持つ小型バイクではあるが、それを伊織は自在に乗り回す。まるで雑兵をあしらう
騎馬武者のようだ。ひらひらとひらめくスカート姿の騎馬武者少女は、取り囲む剣道部員たちを易々と突破し、バイクの
スピードで地擦りから跳ね上げた木刀で呉羽の木刀を打ち上げた。
そうして伊織のバイクは、校舎裏から離脱、校庭を突っ切って逃走した。
「くそっ、逃げるな!」
そんなことを言われて止まるほど伊織はお人好しではない。
必死で追い縋るもののバイクのスピードで引き離される呉羽たちを置き去りにして、伊織はその場から姿を消した。
142
:
第1.6667(小数点五位以下四捨五入)話。
:2011/02/09(水) 03:56:42 ID:z95jMoZ.0
「おかしい。これは、なにかあったのかも!?」
一人の少女が、携帯電話を握りしめて、そのディスプレイを凝視していた。
場所は変わって、ここはとある場所、とある小学校、とある六年二組の教室。
とある小学生、津島空は、とある高校生、静弦太郎の同居人である。
高校生の弦太郎と、小学生の空。ここで空を単純に『妹』と断じてしまえないのは、彼にまつわる境遇が絡んでくるわけだが、
ここでは詳細を省く。
とにかく血は繋がっていないものの、弦太郎は空のことを妹として大事に思っている。しかし空は、弦太郎のことを兄のように
慕いながらも同時に、より強い感情で彼のことを一人の男性として、恋い焦がれている。
そして、この津島空には、もう一つの顔がある。
静弦太郎を巡る女達のグループ、『六年二組』の首魁であった。
「お兄ちゃんからのGPS発信が消えた!?」
先ほどまで、『見守る会』のリーダー、東から、ホットラインを通じての通話があった。そしてしばらくの間その通話に
応じている間に、どうやら弦太郎からの着信があったようなのだ。
慌てて折り返し電話をかけるものの、弦太郎の携帯には繋がらない。電波の届かない場所に移動してしまったようだ。
そして、彼の居場所を確認しようとしたのだが、彼の鞄に忍び込ませてあったGPS発信器からの応答がない。そして
携帯電話からの発信も途絶えた。
慌てた空が、先ほどのホットライン自身が『見守る会』の妨害工作だと気づいたときには、打つべき手段のいくつかが
時期を逸していた。
そして、事態の解析と対策に動く空と『六年二組』の面々。
実はこのあと、クラス行事のために北海道へ旅立つ弦太郎を追い、追跡尾行をする段取りであったのだ。
だが今回、彼女らについて多くを語るまい。
なぜなら、これで彼女らの出番はほぼ終了だからである。
「ちょっと! これいったいどーゆーこと!?」
143
:
449
:2011/02/09(水) 03:58:05 ID:z95jMoZ.0
この続き、第二話 『ありがち?! 純愛ギャルゲのあんなこと!!』は、本スレで。
144
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 05:59:35 ID:Y2wfuGwM0
暑い。
暑いよなぁ、まったく。
さて、この猛暑の中、みなさま如何お過ごしだろうか。
みなさまご自慢のハーレムの女の子たちと、クーラーの効いた部屋でキャッキャウフフを楽しんでおられるのだろうか。
実に結構。
ハーレムスレの住人足るもの、ひとかたのハーレム主でなくてなんとする、ってな。
ハーレム持ってる奴が、それを謳歌するのは当然の義務と権利。
俺、俺?
俺は、まぁ、仕事をしておりましたよ。
この、くそ暑い日中に、靴底すり減らすような地道なお仕事をしております。
腰が曲がるようなご老体とまではいかなくとも、もういい加減若くもなく、女子高生たちからはお兄さんではなくおじさんと呼ばれるくくりの年齢だ。とりあえず年齢は伏せさせていただくが、
炎天下の外回りはなかなかにキツい年頃、ご配慮願いたい。
自宅こそ親からもらったそこそこ旧家の洋風屋敷に住んでいるものの、それ以外の資産はほとんどなし。生活をするためにはいろいろと働かなくてはいけないような台所事情という奴でして。
今日も今日とて、ニュースでばたばたと熱中症による死者が出たとか何とか騒いでるような猛暑日で、例によって例のごとく俺はとにかくお天道様にさらされて一日中働いておりましたよ。
さて、今日も一日、よく働いた。
日中さんざん熱光線を送り続けた太陽も、沈みかける頃には断末魔の強力西日光線で俺達を攻めたてた。
その太陽もようやく沈み、安らぎの夜が来る。
っていっても、その夜だって蒸し暑い熱帯夜なんだけどね。
沈んだように見せかけて、実はまだ太陽がその辺に隠れてるんじゃないだろうかってくらい、暑い夜。
こうも暑いと、普通の女達を集めた肉布団では暑苦しくて快適とは言えないだろう。
そこんところ、みなさんどうしてる?
実は俺のハーレム、夏に過ごしやすい女達ばかりなので、涼風快眠夏ベッドができてしまうのだ。
145
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:00:58 ID:Y2wfuGwM0
「旦那様、おかえりなさいませ」
「今日も暑かったですねぇ」
寝室に入った俺を出向かえたのは、深雪(みゆき)と小雪(こゆき)の双子姉妹。普段はお嬢様学校に通う高校生だ。
線の細い和風の美少女で、顔形はそっくり瓜二つなので深雪は長髪、小雪は短髪にしてあるから区別が付くようにしてある。
実は彼女らは人間と雪女のハーフなのだ。
昔は周囲に正体を隠して生活をしていたが、母親の正体がばれて迫害されかかったところを俺が救い出して今に至る。
残念ながら母親は手遅れだったが、姉妹は俺が連れだし、遠方にある俺の屋敷に住まうことになったのだ。
今ではすっかり俺に心を許し、ここから高校に通うかたわら俺の愛人として平和に暮らしている。
深雪と小雪がふたりして、俺にかしづいて背広と帽子を丁寧に片していく。
ハーフとはいえさすがに雪女、透けるような色白の肌が神秘的な美しさ。
ちなみに今日は、部屋着がわりのランジェリー姿だ。
レース多めのブラとショーツはお揃いのデザインだが、深雪が黒、小雪が白のカラバリ仕様。
長い黒髪の深雪が黒の下着をつけると、白い肌とのコントラストがくっきりとしていて実に煽情的だ。
対して、くるんと小さくまとまったショートカットの小雪は、真白の肌に真白の下着をつけているのだが、そのどちらもがあまりにも純白すぎて、
肌と下着の境目も見失いそうだ。
俺がソファに腰掛けると、二人は左右に別れて座る。ただ三人並んで座ったわけではない。真ん中の俺がソファに深く腰を下ろしてくつろぐと、
両隣の深雪と小雪は浅く尻を乗せる程度にして俺に寄り添う。二人は俺に、給仕するために座ったわけだ。
「今日もお仕事、お疲れ様です」
「ささ、おひとつどうぞ〜」
左に座った小雪が盆に乗った猪口を差し出し、右に座った深雪が徳利を傾ける。
しかも二人はそれぞれ猪口と酒に、ふっ、と小さく息を吹いてから俺に供してくるのだ。ハーフながらも流石は雪女、猪口も酒もいい感じに冷えて、
極上の冷酒になる。
世に女子高生ランパブは数あれど、双子雪女の女子高生が接待してくれる店などどこにもあるまいよ。
146
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:01:54 ID:Y2wfuGwM0
軽い“あて(肴)”と一緒に少々の冷酒を楽しんでから、俺は風呂に入った。
「だんなさま、おつかれさまですー」
ほんわかおっとりした声、
風呂場で俺を待っていてくれたのは、金髪碧眼の美少女だ。名をココという。
最初に紹介した深雪小雪でハーフ雪女なんだから、次に紹介するココだって普通の人間じゃないことは想像つくだろう?
ココは人魚なのだ。
人魚ではあるが、こうやって陸で暮らしている以上、日本の足で歩行の出来る姿である。普通の人間とまったく同じ姿だ。
輝くような瑞々しさの肌、そして金髪。人間の年齢にして高校生相当の体つき。ぷるんと弾力のあるおっぱい、そして薄く生えた陰毛はやっぱり金髪だ。
そして、風呂場で待っていたのは一人ではない。
ココの後ろで、二人の少女が正座に三つ指ついて俺を出迎えた。
「おかえりなさいませ、マスター。お帰りが遅いので待ちくたびれてしまいました。」
一人は、長身の少女、ノエル。銀色の長髪で、整った顔立ちの左目を髪で隠している、実にクールな印象のする女の子だ。
ココ同様にスタイルもよく、細い四肢に美しい形の胸、そして細くくびれた腰ってな具合に、黄金律ともいえる完璧なプロポーションだ。
そしてもう一人の少女が、同じ姿勢でノエルに並んで控えている少女、セイラだ。
「あるじさま、お疲れさまでした! ボクたちが心を込めて、お疲れを癒してあげますね!」
セイラは背の低い、中学生くらいの体つきの女の子だ。その肌は褐色で、癖のある黒い髪と相まってインド美少女の風貌。その瞳からは、内からあふれ出す元気エネルギーが見て取れる。
当たり前のことだが、という言い回しをするのも恐縮だ。もちろんこの二人もココと同じく人魚なのな。
なぜ、人魚のココたちが俺の家の風呂場にいるか、というあたりを軽く説明しておこうか。
147
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:05:28 ID:Y2wfuGwM0
諸兄はご存じかどうか、世界中の海にはそれぞれ人魚たちが住んでいて、七つの国に分かれている。ココはその中でも南太平洋の国の生まれだ。
しかもその国のお姫様であるココは、世界中の海を支えるという海底神殿の七本柱を守護するマーメイドプリンセス、などという堅苦しくもやっかいな役目を持っていた。
そしてそのころの俺はといえば、仕事に必用なオリハルコン鉱石を探しに世界中の海底遺跡をうろうろと巡っていた。
んで、俺は件の海底神殿でココと出会った。
最初、ココは俺のことを、柱を狙ってやってきた悪者だと勘違いして襲いかかってきた。
人魚でありながら海の魔物『スキュラ』の能力を持つココはなかなかに手強かったが、何とか撃退した。
同じように、北極海を支える柱にはその生まれのノエルが、インド洋を支える柱を守るためにセイラが、ってなかんじで出くわした俺は、これも何とか退けた。
二人ともココのように、人魚でありながら魔物の力を宿した戦闘力で、えらく苦戦した。ノエルはクラーケンという魔物、セイラはクリュサオルという海神の息子の力を使う。
実際、苦戦の末に倒してみれば、彼女らはその魔物の呪いに操られ、苦しんでいた可哀想な人魚姫たちだったわけで、結果的に俺は彼女らを呪いから解放してやったかたちになった。
で、三人の人魚を倒したものの、肝心のオリハルコンがないので他の所を探し出そうとしたところ、彼女らの大ボス、ポセイどんが登場した。
馬鹿でかいチョウチンアンコウの姿をしたポセイどんは、「柱を壊すのだけは勘弁してくれー!」と俺に懇願してきた。
こちらはオリハルコン探しが目的なので別に柱の破壊はどうでもよかったんだが、相手は俺の目的がそれだと思いこんでいて、こちらの話を聞こうともしない。こちらの否定を、
つり上げ交渉の手だとでも考えたのだろう。
埒が開かないんで無視して帰るかなー、と考え始めた頃、
「見逃してくれたら、この三人のプリンセスをおまえの使い魔にしてもかまわんぞ!」
という趣旨の条件を提示してきた。この三人は、さすがにマーメイドプリンセスと言うだけあって、極上の美少女だ。
使い魔云々はともかく、お持ち帰りおKってのは魅力的な提案だった。
あとは、さも渋々柱の破壊をあきらめたかのような演技でもって、三人の姫を連れて帰ることが出来た。
とまぁ、そんな経緯で俺の屋敷にきた三人、最初は彼女らも「柱を守るために」とかの使命感でもってここに残っていたわけだが、しばらくするとようやく打ち解けて、
こちらに柱の破壊をする意志がないことを理解してくれた。だから海に帰ってもかまわない、と俺が選択肢を与えても、彼女たちは自分の選択で俺についてくることを決めた。
そこでようやく三人は、俺のお手つきになった。
俺は和姦派なので、彼女らが受け入れてくれるまではこちらから強引なアプローチをしなかった。相手をその気にさせてからいただく、それが主義なのだ。
彼女らのバージンをいただいたときのことを思い出すと、今でもすぐに勃起できるぜ。
それが三年ほど前、そして今にいたる、と。
「さぁ、それじゃあ、ご奉仕させていただきますね?」
俺の着衣を完全に脱がし終えた三人は、ココの言葉を皮切りに俺への奉仕を開始した。
三人のソープテクは、もちろん実地で学習したわけでもなくましてや天性のものでもなく、高貴なマーメイドプリンセスの必須技能というわけでもない。
当たり前だが本やビデオからの見よう見まねから始まった。
性的に未熟な彼女たちに俺が貸し出したそれら教材は、さながら知能の低い類人猿の元に現れた知恵の石版『モノリス』のようなものだ。ここで『2001年宇宙の旅』の
『ツァラトゥストラはかくかたりき』がBGMで流れる。
そして彼女らは、テクニックの要点、つまり男を喜ばせることを芯に据えて、めきめき腕を上げていった。
だからあくまでも彼女たちのテクは、我流で亜流なのだ。
148
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:08:57 ID:Y2wfuGwM0
俺がイス(もちろんスケベな方の)に座ると、ココとセイラがダブルでキス。ちゅっちゅっとかわいらしいキスで俺を楽しませてくれる間に、
ノエルがボディソープを泡立てたり、ローションをお湯で溶いたりしている。
なんだかんだで彼女らも魔物。人間の男である俺の汗とか体液は好物らしく、キスに紛れて舌でペロペロと舐めてくるのがまたくすぐったい。
「今日は、私のおっぱいでお背中流しますね?」
そしてココが、ぷるぷるオッパイをボディソープでぬるぬるにして俺の背中に押しつけた。たちまちソープの泡が背中をまんべんなく被い、
ココのオッパイがぬるんぬるんと動き回る。ココのオッパイは弾力も心地よく、円を描いたり上下を繰り返したりと、その感触も俺を飽きさせない。
「ん、・・・ん、ん・・・、お加減はどうですか、だんなさま?」
「あ〜、キモチイイよ。」
「よかった、このままもう少し、がんばってみますね?」
俺の背中の、肩胛骨やらのでこぼこがココの胸を刺激するのだろう、背中越しに聞こえるココの声は少し鼻にかかって、耳に心地よい甘さになっている。
「あるじさま、ボクたちはあるじさまの手を、洗わせていただきますね!」
俺が背中の感触に心蕩けさせていると、セイラとノエルがそれぞれ俺の腕をとった。左右の腕にそれぞれ一人、セイラは右にノエルは左の腕を股の間に挟むと、
ソープの泡立ちを利用してアソコをこすりつけてきた。いわゆる『たわし洗い』というやつだ。しかしたわしと言うにはノエルの陰毛は清楚だし、
セイラにいたっては産毛すら見受けられないくらいのツルッツル。看板にやや偽りありだ。
そして、そんな風に俺の腕の上で悩ましく腰を動かせる二人を見ていると、どうしても目に付くものがある。
二人のへその下、下腹部に文字が入れ墨されているのだ。
『新吾様専用淫乱肉奴隷セイラ』
『新吾様専用性処理奴隷ノエル』
・・・・・・誤解される前に、一応釈明させてくれ。
ちなみに新吾とは俺の名前。姓名を葵新吾(あおい しんご)という。
俺が、こんな鬼畜ストレートな淫猥文字を女の子に嬉々として入れ墨するような変態外道だと思われると、非常に困る。
またまた昔の話に戻る。
彼女たちを連れて帰って少したったころ、突然三人が苦しみだした。
なんでも人魚特有の呪いで、人間の男に恋をしてしまうと苦しんで、最後は泡になって消えてしまうのだという。
海底神殿でいろいろとあったし、結果的に呪いから救ったことになるわけで、そのあたりから俺に心惹かれ始めていたとのこと。
俺としても好意を持たれるのは嬉しいが、それが元で消滅してしまうような事態は遠慮願いたい。
何かその呪いを回避する方法はないかと訪ねたら、ひとつだけ、裏技的な方法があるという。
「新吾さんが、私たちを恋人ではなく、三人まとめて奴隷として扱ってくださればいいのです。」
つまり、俺が彼女たちを奴隷として扱うことで、彼女たちの俺に対する恋心は『主人に使える忠誠心』ということになるために、呪いの対象から外れるのだ、という趣旨だった。
149
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:10:15 ID:Y2wfuGwM0
芽生えた恋心を捨てるのは、彼女たちとしては絶対やりたくない方法で、それこそ死んだ方がマシ、と強く主張するので、俺はその裏技に賭けることにした。
そのための儀式として、彼女たちの身体に、俺の奴隷である証明を入れ墨する必用がある、ということで、先のエロワードを刻印する運びとなった。
もちろんこれはセイラとノエルだけでなく、ココのへそ下にも入れ墨されている。彼女の入れ墨文字は『新吾様専用肉壷牝奴隷ココ』となっている。
ここで主張しておきたいのは、この文面、俺が考えたんじゃねーぞ、ってこと。彼女ら自身が、自分のへそ下に入れ墨する文字を嬉しそうに考えて、
さも『言い伝えでは、このような言葉を入れないといけないのです』とか言って申告してきたんだよ。
しかも、あとになってわかったことだが、呪いを誤魔化すための方法としては、奴隷として契約する、つまり使い魔とするってだけでよかったのだ。
人魚姫の呪いはピュアな恋に限定されるらしく、使い魔と主人の主従関係というのは呪いに入らないということだ。
別に性奴隷である必要はまったく無し。
故に淫語の入れ墨を入れる必要もまったく無し。
じゃあ何で彼女らはそんな思いきったことをしたのか。
たぶん、先に俺の愛人になっていた深雪小雪、他の女たちへの対抗心とか、そのあたりだろう。
別段、いがみ合っているわけでもなく、至極仲がいいのだが、そこは女としてのプライドみたいなものがあるのだろう、後から来た者は俺と、
より深く結びついた関係でありたいのかもしれない。
言い換えれば、俺が彼女たちを性奴隷にしたのではなく、彼女たちのマスターとして認められ、逃げられないように捕まってしまった、というわけだ。
まぁ、結果的には可愛い女の子を自分の所有物としてゲットできたわけだし、ふつうならば人間の男に恋をすると泡になって消えてしまうという人魚姫の呪い、
それを裏技っぽい手でキャンセルして、いつでもイチャイチャとセックスできるような関係になれたわけだ。
彼女らのペースに乗せられてしまった感が強いけど、まぁそれも良しとしよう。
呪いで死にかけていた、というのは事実だし、俺のことを好きでいてくれるのは今も変わらないことだからな。
男に恋すると泡になって消えてしまう呪いを解かれた彼女たちだが、こんどは恋した男にソープランドの泡姫のごとく奉仕するというのは、洒落が効いているのか悪趣味なのか。
150
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:11:03 ID:Y2wfuGwM0
「マスター、指も綺麗に、洗います。」
俺の腕をたわし洗いしていたノエルが、今度は俺の手のひらをとって、指の一本一本を彼女自身の肉壷に入れて洗う、『壷洗い』を開始した。
自分のアソコに男の指を入れて、膣襞を蠕動させて洗う。洗うと言ってもゴシゴシと力強く垢を落とすような洗い方ではないわけで、そこはまぁ、
男を喜ばせるサービスのひとつ、素直に彼女の感触と痴態を楽しもう。
「ん、くふ、あはぁ・・・、マスターの指、どれも逞しくて素敵です・・・。」
俺の指をまんべんなくアソコに入れて抜き差ししては、火照った表情でおもねるノエル。傷のある片目を隠した髪が揺れて、ちらちらと素顔がのぞく。
なんでも昔、生まれ故郷の北極海で強い海流に巻き込まれてしまい、そのときの事故で氷塊にぶつかり片目を失ったのだという。
確かに失われた左目には傷跡が残るものの、俺にはそれすら彼女の美しさの一部だと思えてならない。
今のところ、それを口にして彼女に告げたことはない。しかし、その傷を見られるのを最初は嫌がっていたノエルが、
最近は恥ずかしながらも俺にこっそり見せてくれるようになってきたあたり、何となくは伝わっているんだと思う。
「あるじさま、今度はあるじさまのお股を、ボクのお顔で洗ってあげますね。」
そういったセイラが、俺の股間に顔を埋めた。
すでに俺のペニスはギンギンにいきり立っているので、股間のセイラとは正面でご対面となる。
「愛しい愛しいあるじさまのおちんぽにご奉仕できて、ボクは幸せ者ですっ。」
ココやノエルよりも幼い印象のセイラ、そんな童顔の少女が俺の暴れん坊に息のかかる距離まで顔を寄せた。そして唇をちゅーっととがらせてキス。
「ちゅっ、ちゅっ、んちゅっ、」
魚が餌を啄むようなキスの連続、続いて今度は、舌をべーっと出して、べろべろと舐め舐め。
「はむっ、ん、れろっ、れろっ、」
はじめこそ遠慮がちだったのが、少し舐めて発情したのか、どんどんがっつくような勢いでテンションあげていくセイラ。もう舌先だけでなく、
顔ごと押しつけてちんぽに密着、舌奉仕というよりは顔奉仕といった具合にサカりまくりだ。
これだけ発情しながらもまだ舐めるだけで口に含んでのフェラチオにいかないのは、俺がまだ許可を出していないから。
人魚姫というよりは元気な豆柴といった感じのセイラ、しつけはちゃんと出来ているのだ。
151
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:12:51 ID:Y2wfuGwM0
その後は、俺が横になってのマットプレイ。三人の泡姫がローションでぬるぬるになった身体を使って俺に奉仕する。
「だんなさま、キモチイイですか〜?」
「マスター、誠心誠意ご奉仕いたしますので、ごゆっくり堪能くださいませ。」
「あるじさまぁ〜、スキスキ〜っ!」
ノエルが俺の足にまとわりつきながら、足の指を一本一本丁寧にねぶる。セイラが俺の股間を中心に、チンコや尻穴、陰毛まみれの陰嚢などを余すところなく舐め尽くす。
そしてココが尻をこちらに向ける姿勢で俺の身体の上に重なり、ローションたっぷりの身体で泡踊り。
俺は、三人の人魚姫から泡の奉仕を受けて、身も心もリフレッシュな感じで堪能していた。ちょうど目の前に、ココのお尻がゆさゆさと揺れていて、目にも楽しい極上の気分だ。
「ああん、もう、我慢できないよ〜!」
と、俺の股間を中心に奉仕していたセイラが声を上げた。
「あるじさま〜! ごほうび、ごほうび欲しいですぅ〜!」
三人の中で一番の子供、セイラはまだまだ堪え性のないわけで、いい加減に自分の性欲の高まりを我慢できなかったみたいだ。
それでも、俺のおあずけを守って、自分勝手に振る舞わないだけでもがんばった方だろうか。
俺の身体を洗うのもあらかた終わり、三人にもそろそろご褒美をあげる頃合いになった。ご褒美とはもちろんセックスのことで、
俺の精を彼女たちに与えることでエネルギー補給となる。
逆に、壷洗いの延長だと思えば彼女たちの奉仕ともいえる。彼女たちのお道具を使って、俺のちんこを直接しごいて綺麗にしてくれるわけだ。
「ああっ! あるじさまのおちんぽ入ってきたっ!!」
仰向けになった俺の上にまたがり、セイラが俺のちんこをアソコに入れた。まだまだ幼い膣を無理矢理押し広げて進入する感触はえもいわれぬ心地よさ。
子犬のようにキャンキャンと鳴いて絶頂するセイラの声を楽しみながら、幼い子宮の中にたっぷりと子種をそそぎ込んでやった。
152
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:15:32 ID:Y2wfuGwM0
「ひうっ! くはぁ〜〜・・・・・、マスターのお情けがいただけて、ノエルは幸せです・・・・・・。」
先ほどから続いて俺は仰向けで、今度はノエルが俺のちんこにまたがった。射精直後でも固いままの俺のちんこをありがたそうに、丁寧にアソコに納めたノエルは、
高まった性欲のまま突っ走る前に立ち止まり、俺に感謝した。
ノエルはこんなふうに、セックスするときだって慎ましい。礼儀は正しいし、
三人の中にあっても他の二人をたてるあたり、一番大人なのかもしれない。
彼女の言葉に俺は腰を強くコン、と突き上げて応えてやると、ようやく保っていた理性もあっさり崩れ、きゃん、と可愛らしい声を上げた。
そしてそのままなし崩しに、ノエルはあられもなく乱れて腰を振り、俺のちんこに善がり狂った。
普段は目の傷を隠す髪が乱れるような激しい動きを嫌がっている彼女でも、もうそんなことは気にしてられないようだ。
そうして彼女もか細い声を上げて絶頂した。同時に俺も、乱れる彼女も綺麗だなーと感動しつつ、射精した。
「はぁ〜っ、ああ〜ん、だんなさまの逞しいおちんぽ、素敵ですぅ〜・・・・・・。」
相変わらず俺は仰向けのまま、連続射精でも萎えることのないちんこの上にココがまたがって、ぷにぷにのアソコで咥え込んだ。
三人の人魚姫、それぞれのアソコの感触を楽しめる立場の俺。総じて思うに、彼女ら人魚姫たちは共通して極上の名器だ。膣の入り口がぎゅっ、と締まり、
中はざわざわと襞がうごめく感じ。巾着は巾着でもイソギンチャク、というか。海棲生物つながり、というわけではないだろうけど。
そしてココのアソコは、三人の中でも一番ウネウネ具合がスゴい。アソコの中が独立した生き物みたいにウネウネと。
ココは、そういった物凄いお道具で俺のちんこを包み込み、クネクネと腰を揺らしながら悩ましくのけぞった。
ココの膣襞で俺のちんこを壷洗い、そのまま俺もされるがままで楽しむのも良いが、ついつい調子が出て俺も動いてしまう。
ココの腰をつかみ、奥深くまで挿入したままイソギンチャクの中身をぐりぐりとちんこでかき回すように動いたり。
「ひいっあああっああああっっ!!」
今度は引いて、一番締まりが強い入り口付近を小刻みに擦ってみたり。
「ん!あっ、あっあっひっあっあっあぁ〜〜〜ん!」
浅く擦ったかと思えば深く突き、三浅一深で何度も何度も突きまくったり。
「ふわぁああっ、イク、イキそうです、わたし、もうダメです、だんなさま、だんなさまぁ〜〜〜!」
かと思えば唐突に動きを止めてみたり。
「いやぁん! いじわるしないでぇ〜〜!!」
そんな風にココのお道具を楽しんだ俺、泣きそうになりながら懇願する彼女の様子にも満足。それそろ焦らすのも可哀想だから、腰をつかんだ手を離して自由にしてやった。
「あっ、ありがとうございます、イク、イかせていただきますっ!!」
ココは猛然と腰を振り、ひときわ甲高い声を上げて絶頂した。もちろん、最後に俺のご褒美を搾り取ることも忘れてはいない。
俺は誘われるままに、ココの奥深くに精液を流し込んでやった。
153
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:22:21 ID:Y2wfuGwM0
そうやって、少し長めの風呂を終えた後は、もう夜も遅い。そろそろお休みの時間だ。
寝る前に、少しだけリラックスタイム。
さて、ここで改めて、俺の寝室の全景を解説しよう。
俺の寝室自体は、かなり広い。
先祖代々受け継いだ屋敷の、大広間に相当する部屋を改装して寝室にした。俺自身のハーレムを作ると決めたときに、なにをおいても寝室だけは豪勢にしよう、と決めたからだ。
まず主役はベッドだろう。
普通サイズに比べて大きいベッドをクィーンとかキングなどというが、俺の寝室のベッドはキングよりも一回りデカい。さしずめ、ゴッドサイズとでも呼ぶべきか。
俺自身はただの矮小な人間だが、ベッドの大きさぐらい神を名乗っても罰も当たるまい。
まぁ、ハーレムを作るに当たって、資産の関係でいくつかの贅沢は諦めなければいけなかったが、どうしてもベッドのサイズだけは譲れない。ここは俺のわがままを通した。
そして、そのベッドをコの字に取り囲むようにして、巨大な水槽がある。
寝室自体はそこそこ広い部屋なのだが、この水槽はその部屋の半分くらいを占める。ジンベイザメとまではいかないものの、マンボウがのんびり漂えるくらいの広さと深さがある。
お察しの通り、ここは先ほどの泡姫、もとい人魚姫たちのお休みスペースだ。
彼女らはこの屋敷に水槽持参でやってきたのだ。
中の海水とか、どうやって維持管理しているのかは知らないが、いつでもクリアで綺麗な水で満たされている。
あとは、さっき深雪小雪がもてなしてくれたソファーとテーブル、34インチのプラズマテレビ、化粧台、パソコンが乗った文机、小さめの冷蔵庫。
そして壁にはいくつかの窓と、さっきの浴室へ通じる扉、そして出入り口。
そんなところか。
基本的に、仕事以外で家にいるときはこの寝室にこもることが多い。女たちが食事の用意をして持ってきてくれるので、生活のだいたいがこの部屋でまかなえる。
極端なときは、寝室の外に出るのはトイレだけ、って日もあるくらいだ。
154
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:22:51 ID:Y2wfuGwM0
湯上がりの俺がソファーに腰掛けると、足音も軽く二人の女が現れた。
「お疲れさまでした、新吾殿。」
明瞭な日本語で俺をねぎらってくれたのはシルフィード、つまり『風の精霊』の少女である鈴音(すずね)だ。
もう一人、言葉を話すことなくただ深く礼をしたのが、ミストエレメント、つまり『霧の精霊』の少女である紗霧(さきり)という。
鈴音は、シルフィードなどという洋風の属性ながら、その風貌は純和風で、しかも袴姿というオリエンタルな出で立ちだ。
美少女剣士風の装束を、襟元もややゆったりと着崩している。
眉目もきりりとした清冽な面立ちのわりにあまり堅苦しくない独特の雰囲気で、黒く艶のある長髪を緩く束ねていた。
紗霧は、さすがに霧の精霊と言うだけあって、周囲に絶えず薄霞のような霧を纏っている。いわゆる、仙女だ。
帯も緩く袂も大きくはだけた、ずいぶん露出の多い着物を着ているのだが、身体の周囲を被う薄霞が肌の要所要所を包み隠してしまうために、神秘的な美しさとなって引き立っている。
髪も長く、動きも霞のように儚い彼女だが、それに反して胸も大きくスタイルがいいもんで、仙女にしてはずいぶんと俗っぽい色香が漂う。
とりあえずこの二人とのなれそめ的な話でもしておこうかとおもう。
昔、債券を取り立てにいった相手が錬金術師で、返す金がないとか寝言をほざいてた。
俺が丁寧に、やんわりと、お金を返してもらわないとこちらも困ります、って身体に説明すると、もう少しだけ待ってくれたら、黄金の錬成が終わるから、とかまだごねてきた。
こちらも、相手の力量を見込んで信用貸ししていたわけだが、いい加減うだつの上がらない状況に自分の慧眼のなさを痛感していたところだったので、それは聞けぬと突っぱねた。
仕方がないから、研究室の金目のものを適当に見繕って持って帰ろうとすると、
「あなたに絶対服従する精霊を合成するから、今回はそれで勘弁してくれ。」
そういって、このシルフィードを合成した。主人が名付けてもよいとのことだったので、俺は彼女に鈴音と名付けた。
さすが精霊というだけあって物凄い美少女だったシルフィード、これはラッキー、と俺は喜んだ。
俺に絶対服従、ということは、ヤらせろといったらいくらでもヤらせてくれるということだ。
今からはかなり昔の話で、そのころまだハーレムを持っていなかった俺は、風俗にいく金が浮くのならそれはそれでいいか、と思い直し、返済を待ってやることにした。
155
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:23:43 ID:Y2wfuGwM0
さて屋敷に戻ってきた俺は、さっそくヤらせてもらおうと飛びかかると、彼女はひらりと俺をかわした。
「わたしは風の精霊、何者にも囚われない。」
えらくクールにそう言った彼女は、その後もいっさい俺に身体を許さなかった。
話が違うじゃねーか、と錬金術師の所に文句を言いにいくと、奴は平謝りで、今度は大丈夫だからと、もう一人の精霊を合成して俺によこした。それが霧の精霊だった。
俺は彼女に紗霧と名付けた。
結果から言うと、紗霧も俺にヤらせてくれなかった。
「わたしは霧の精霊、実体を見せず忍び寄る白い影。」
とかなんとか、怪しげなことを言う紗霧は、俺が飛びかかると身体を霧散させてかわしまくる。まさに霧を掴むが如し。
で、錬金術師のところに文句を言いにいったら、奴は夜逃げした後だった。
どうにも、奴の錬金術の腕前は中途半端で、完全な使役状態での精霊合成が成功したわけではなかったようだ。
腹が立った俺は、屋敷の倉にあった書物を漁って錬金術を勉強した。
それでも資料が足りなかったので、ミスカトニック大学までいって書庫に半年閉じこもり、絶対服従の精霊使役術を解読した。
で、屋敷に戻って試そうとしたところ、その術の詳細を聞いた鈴音と紗霧は何とも微妙な顔をした。
「この術は、私たちではなく別の精霊を呼び出して、絶対服従の束縛をかけるものです。」
「お役御免になった私たちは、この物質界から消滅します。」
それを聞いて、俺、超ショック。
鈴音と紗霧とセックスしたいが為に、あんなカビ臭い書庫に籠もったというのに、その術で得られる女の子がその二人ではないとか、いったい誰得なんだ。
なんとも悔しいことだが、半年以上の労力が徒労に終わったのだ。
この二人とセックスが出来ないのなら、こんな術を使っても意味がない。
がっくり来た俺が術の中止を宣言すると、二人はこれまた微妙な、呆れたような、可哀想なものを見る目で俺に言った。
「正直、あなたの、私たちの身体への執着には感服いたしました。」
「正式な術による契約ではありませんが、少しの間くらいなら、あなたのしもべとして仕えてあげましょう。」
そう言って二人、ため息混じりにうなづいた。
つまりは、ヤらせてくれる、ということだった。
いったいどういった心境の変化か、俺にはわからなかったので、そのあたりを聞いてみると、
「精霊とはいえ私たちも女、ここまで純粋に求められると、悪い気もしない、ということです。」
と、心持ち頬を染めて答えてくれた。
156
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:24:41 ID:Y2wfuGwM0
それからこの二人とは、長いつきあいになる。
当初、少しの間だけという約束だった。
俺が彼女らに飽きるまで、あるいは二人が俺に愛想を尽かすまで、といった非常に曖昧な間柄だったから、彼女たちがいついなくなってもおかしくない状態だった。
もっとも俺が二人に飽きることはなかったが。
で、いつだったか二人から申し出があって、もういっそのこと本契約を結んでしまおう、ということになり、今に至る。
彼女たちにとっての、最初で最後のマスターになったわけだ。
「新吾殿、また白髪が増えましたね。」
俺の髪を梳りながら、鈴音がしみじみという。
ヒトが気にしていることを。
「ふふ、それでも、悪くはないと思います。」
鈴音は、俺の髪の流れに白い線を見つけては、愛おしそうに指先でなぞる。
「これはこれで渋みがあって、男前に映えると思いますよ。」
そんなものだろうか。
まぁ、それでも鈴音にそう言ってもらえると、悪い気はしない。年をとって失うものもあるが、逆に得るものだってあるということか。
シルフィードの鈴音が、ドライヤーのような熱風を起こして俺の髪を整えていく。
機械がたてる騒音もなく、程良い熱で水分をとばされて、まばらに白の混ざったガサツな髪もさらりと乾いた。
「新吾様、お肩をほぐして差し上げますね。」
続いて、紗霧が俺の肩を揉んでくれる。
ここに来た当初はあれほど掴み所のなかった身体なのに、こうしてマッサージをしてくれるときなどはしっかりとした実体があり、肩こりを力強く揉み解してくれるのだ。
「お仕事、大変だったみたいですね。」
くりくりと、肩に肘を立てるようにしてツボを押してくれる紗霧は、耳に近い唇からそんな風に仕事のねぎらいの言葉。
「ああ、今日も大変だったよ。歩きすぎて足なんかもう、パンパンに腫れちゃってさ。」
紗霧は俺の愚痴に、お疲れさまでした、と優しく応えてから、
「では、足の方もマッサージいたしましょうか。」
と申し出てくれた。
指圧の心は母心、押せば命の泉湧く。マッサージに必要なのは技術だけでなく心遣いも大事なんだ。その辺、紗霧はいい具合に俺の身体を気遣ってくれる。
つよく、やさしく、じっくりと、丁寧に俺の疲れを取り除いてくれる、ありがたい奴なのだ。もう、霧の精霊の能力とかぜんぜん関係なし。
157
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:26:01 ID:Y2wfuGwM0
というわけで、そろそろ就寝だ。
紗霧のマッサージを終えて、鈴音も伴って自慢のベッドに向かう。
「旦那様、どうぞ、ベッドはいい感じに冷やしておきましたよ。」
「ごゆっくりお休みくださいね。」
ゴッドサイズのベッドの上には、深雪と小雪のハーフ雪女双子姉妹が先に来ていて、冷房のない昼間の室温に暖まっていたベッドの熱気を抜いてくれていた。
混じりっけのない100%雪女だと、勢いついて冷たくしすぎるんじゃないだろうか。その点二人はハーフなもので、冷たすぎずにちょうどいい。
俺がベッドに横たわると、左右から深雪と小雪が肌を寄せてくる。ひんやりと涼しい体温がちょうどいい抱き心地。適温28度くらいだろうか。
そして、俺がベッドに横になると、ふわり、と心地よいハーブの香り。
「シンゴ、お疲れ〜!」
人間の声よりも声量の小さい、と言うよりは、声帯自身が小さいために周波数の高い声しか出ないといった方が正しいだろう。
俺の耳元で、極々小さな声で話しかけてきたのは、ハーブの妖精さん。名前を『薫(かおる)』という。
身長にして約十五センチほど、なりは小さいが彼女もまた俺のハーレムの一員だ。
「今日も一日、ご苦労さんだったね〜。ゆっくり休んで、明日もお仕事ガンバロー!!」
栗色の髪はふわふわした綿帽子のようで、お人形さんが着るような小さな造りの服を着て、背中のフェアリーウィングでひらひらと宙に浮かんでいる。
鱗粉の代わりに、ハーブの香りをきらきらと振りまいている。
薫は、小さい身体ながらも一生懸命俺に尽くしてくれる。ハーブの香りは心身をリラックスさせる効用がある以外に、空気をひんやりと心地よく感じさせる働きがある。
彼女が俺の周りでひらひらと舞うだけでも、ずいぶんと心地よく、過ごしやすくなるのだ。
ちなみに、薫との出会いのいきさつについて話すと。
特にない。
庭にハーブを植えていたら、こいつが出てきた。
ただそれだけだ。
えらそうに、わかった風な言い方をさせてもらえるならば。
妖精さんは、いつでも私たちの側にいるのです。
そして、私たちとお友達になりたいと、ずっと願ってくれているのです。
ですから、ピュアな心で妖精さんのことを信じていれば、ひょっこり姿を見せてくれるかもしれませんよ?
まぁ、この辺は妖精さん学の権威であらせられるエミール先生のお言葉を借りたわけだが。
ようは、俺の心が曇りないピュアハートだったから、妖精さんが俺に姿を見せてくれたというわけだ。
納得してくれたか?
ちなみに、薫は『妖精さん』で、鈴音や紗霧は『精霊』だ。同じように考えている奴もいるみたいだが、全然違うからな。
さらに言えば、『妖精』と『妖精さん』は別物だ。
158
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:29:52 ID:Y2wfuGwM0
「じゃあ、あたしも眠るから、『ベッド』出して!」
薫がそういうと、俺に寄り添っていた小雪が、ベッドの傍らから丸いものを持ってきた。大きさは手鞠くらい、木製の格子で出来た鳥かごのような感じだ。
取っ手も足もない、ころころと転がってしまうようなまん丸の籠だ。
ベッドにそれを置くと、薫は自分から扉を開けて、ボールのような籠の中に入っていった。
昔の日本には、寝室に香を炊くための、丸いボールのような器がある。布団の上に転がしておけば、中の入れ物は常に水平を保つ仕組みで灰がこぼれにくいという、
アイディア賞ものの道具だ。
薫るが眠るこの丸いベッドは、小さくて儚い妖精さんが誤って誰かの下敷きにならないように、と工夫して作ったものだ。おまけに、ハムスターの車輪みたいな要領で、
ボールの中で薫が動くことで自由に転がり移動が出来るという優れものだ。
これのおかげで、薫も安心して眠ることが出来るし、俺の側で常にすがすがしいハーブの香りを提供してもらうことができるのだ。
「旦那様、ずいぶんとお疲れのようですね?」
俺の胸元から、深雪の声。
「私たち、まだなにもしていないのに、ここがもうこんなに固くなってしまってます。」
同じく胸元の小雪が、俺のちんこを優しくなぞって、そう言った。
うーむ、これはいわゆる、『疲れマラ』というやつか。
さっき風呂場で三人の人魚姫に射精したばっかりだというのに、身体はそれでもまだまだ出したりないらしい。
「それじゃあ、私たちがお包みしますので、そのままお休みくださいな。」
深雪が言うと、姿勢を起こして俺の腰にまたがり、多い被さってきた。そして固くなっている俺のちんこを、ゆっくりとアソコの中に咥え込んできた。
ぬるん、とゆっくりと進入した俺のちんこは、そのまま深雪の膣奥深く飲み込まれ、暖かな肉襞に包まれた。
「ん・・・・・・旦那様の大事なところ、御加減はいかがですか?」
膣いっぱいに俺のちんこを咥え込んだ深雪、しかし彼女はそれ以上、セックスのための激しい動きをすることなく、ただただ俺のちんこを肉壷で包み込んでくれている。
ハーフの雪女である彼女、しかし体内はそれなりに暖かい。
「もし、お出しになりたいのでしたら、遠慮せずに好きなときにお出しになってくださいね?」
深雪はそう言って、ゆっくりと腰をくねらせた。ずぞぞ、と膣内の襞がうごめいて、俺のちんこをなで回す。
激しい動きではない分、その感触ひとつひとつが鮮明にこちらに伝わってくる。
激しいばかりのセックスではなく、お互いをじっくりゆっくりと感じあえるスローなセックスも、実に趣があっていい。
159
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/09/01(木) 06:30:18 ID:Y2wfuGwM0
穏やかな睡魔がやってきた。本格的な眠りに入っていく俺。
俺の傍らにはハーフ雪女の深雪と小雪が寄り添い、俺にひんやりと涼しい体温を提供してくれる。
同時に、俺のちんこをアソコに挿入し、繋がったまま眠る。俺の射精のたびに二人は交代し、俺の身体の膿を綺麗さっぱりと受け止めてくれるというご奉仕をしてくれる。
ベッドを取り巻く巨大水槽では、三人の美しい人魚姫、ココとノエル、セイラがゆらゆらと涼しげに泳ぐさま眺めることとが出来る。
枕の傍らには、丸い籠に入った薫がコロコロと転がりながらハーブの香りを振りまいて眠っている。
そんな俺達を挟んで、風の精霊の鈴音、霧の精霊の紗霧が横たわる。
紗霧はうっすらと細かい霧を空気に漂わせ、気化熱で室温を下げてくれているし、鈴音は室内の空気を風で循環させて、熱がこもらないようにしてくれている。
ついでに、窓辺につるした風鈴を、時折ちりんと鳴らしては俺の耳を楽しませてくれるのだ。
さてこのように、俺のハーレムは夏の暑い夜に真価を発揮する構成なのだよ。
じゃあ、冬は大変じゃないかって?
聞くな。
ちなみに彼女らに、好きな季節を訊いてみると、皆一様に、夏、と答えるのだ。
どう見てもみんな水属性、夏は暑くて大変だろう、と俺が驚くと彼女らは。
「旦那様のお役に立てるのが嬉しいんです。」
などと宣った。
可愛い奴らめ。
こうなりゃ年がら年中くそ暑い、アラブにでも永住しようかねぇ?
END OF TEXT
160
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/11/02(水) 23:43:28 ID:IfPfqXj60
またまたお借りします。
なんか自分のSSばっかり続くので、ちょっとしおり代わりに改行レスを挟みます。
161
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:06:07 ID:IfPfqXj60
%%%%% テレ朝系列アニメ『宇宙超人アカネイザー』 %%%%%
無限に広がる大宇宙。
そこには、遥か彼方悠久の時を超え、激しく戦う二つの勢力があった!
かたや、邪悪な意思で宇宙を支配せんとする『ディスイーター』、かたや正義の意志で星々を護り抜く『ディノソルジャー』。
二つの勢力の争いは終わる兆しを見せることなく、今も戦い続けているのだ!
前回までのアカネイザーは!?
ディノソルジャーの新米兵士アカネイザーは、強力なエネルギー源『マスタースパーク』を輸送する任務を受けた。本体が敵をひきつけ注意をそらせているうちに、ノーマークの新人に
輸送させようという大胆な作戦だ。
しかし彼女は輸送中、自身のオッチョコチョイからそれを落としてしまう!
マスタースパークは、宇宙辺境の太陽系第三惑星地球に落下、原住民である六歳の少年、花村エイジの身体に融合してしまった。
エイジの肉体と完全に融合したマスタースパークは、彼が自然な寿命で息を引き取るまでは剥離できない。
マスタースパークを捜索するディスイータにエイジが見つかれば、彼らの手によってエイジの命は絶たれ、マスタースパークも永久に失われてしまうのだ!
責任を感じたアカネイザーは、地球人『倉沢茜』へと姿を変え、幼い頃からエイジ少年のそばで彼を見守っていたのだ。
そしてとうとう、ディスイーターの尖兵が地球に目を付けた。
戦え、アカネイザー!
地球を、宇宙を護ってくれ!
「エイジに手を出す奴は、あたしが許さない!!」
162
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:06:38 ID:IfPfqXj60
・アカネイザーの超戦力ひみつしょうかい!
アカネイザーは、普段は地球人の女の子『倉沢茜』の姿をしているが、悪の軍団『ディスイーター』を倒すために、ディノソルジャーの女戦士にプログレスチェンジするぞ!
真っ赤なバトルプロテクターを装着した、スーパーパワーの超戦士だ!
最初は、人間と同じくらいの大きさだけど、ディスイーターの巨大破壊兵と闘うために、ティラノザウルス型の巨大ロボットとビッグバン・プログレスフュージョンして、
巨大アカネイザーとなって闘うんだ!
アカネイザーの必殺技は、ディノクラッシャー! 超振動パワーが加わったすごい威力のパンチで、都合の悪い問題を拳で解決できるんだ!
アカネイザー流星キックは、すごく高い場所から急降下して相手にキックする技で、その威力は工場の壁だってぶちこわしてしまうんだ!
アカネイザーボルテックは、体内にためた電気エネルギーを放出する技だ!
アカネイザー・アイは、どんな雑踏のなかでも一目でエイジくんを見つけだすことができるんだ!
ディノティランは、ティラノザウルス型のロボットで、アカネイザーの命令で動くサポートロボットだ。全長は50メートルで、すごく大きいぞ。
そして、アカネイザーのビッグバンプログレスフュージョンで、女性型の巨大ロボット、巨大アカネイザーに変形するぞ!
ディノティランには『時間凍結能力』があって、自分と闘う相手以外は時間が止まった特殊な空間を作り出すことができるんだ。僕たちの町もすべての時間が止まってしまうから、
たとえ巨大破壊兵が町を壊そうとしても、絶対傷つけることができないんだ。
巨大アカネイザーの必殺技は、必殺剣グランスラッシャーで敵をまっぷたつにする『アカネイザー・グラン空竹割り』だ!
これからもアカネイザーは、がんばって地球の平和を守るから、みんなも応援よろしくね!
163
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:07:21 ID:IfPfqXj60
アカネイザー第13話『出た!謎の女忍者!?』
人々が寝静まった夜の街、そこに怪しく蠢く、影があった。
「このあたりに、マスタースパークの反応がある。」
うっすらと届いた月明かりの元、わずかに形を見せるその影は、一つの黒い、岩石だった。
しかしその岩石は、見る見る形を変えていく。岩の身体が、まるでパズルのように組み変わり、人型の塊となった。岩の鎧を身に纏ったロボットである。
「まさか本当に、こんな辺鄙な星に隠されていたとはな・・・。」
その岩石ロボットの、顔に当たる部分、口に当たる器官がもぞもぞと動き、声に似た振動を発する。その振動は知的生命体が聞けば直接脳に働きかけ、意思を伝える言葉になる。いわば、
宇宙共通の言語である。
宇宙。
そう、この岩石ロボットは宇宙からやってきたのだ。
「俺たちがマスタースパークを確保すれば、ディスイーター本隊の幹部だって夢じゃない。こんな辺境担当の下っ端生活ともおさらばできるぜ。」
彼の名はデビロック。宇宙を悪に染めんとする集団『ディスイーター』の一員だ。
彼らディスイーターは、宇宙を破壊と混沌で覆う悪の集団だ。本来は、別の宙域で活動していたのだが、その一部が先遣隊として、我らの銀河系にも進出してきているのだ。
本来、ディスイーターの戦いは星を滅ぼす殲滅戦だ。先遣隊とはいえ、まだ宇宙的に未熟な惑星である地球程度であれば、彼らだけでも滅ぼすことが可能なのだ。
しかし、今の彼らはそれをしない。もちろんそれには理由がある。
宇宙創造のビッグバン、それを起こすほどのエネルギーを秘めた、『マスタースパーク』と呼ばれる物質がある。とある理由により、その物質が、この惑星に存在するらしい。
もし、いつもの調子であっさりこの惑星を破壊してしまえば、脆弱な地球人の肉体に融合したと思われるマスタースパークは、その肉体と共に失われてしまう。彼らはそれを危惧し、
大規模な破壊活動を行う前にマスタースパークと融合した地球人を確保しようとしているのだ。
「さて、じゃあさっさとマスタースパークを探し出そうかね。」
デビロックが呟いて、頑丈そうな体を動かしたとき、星もまばらな夜空に、きらりと輝くひとつの流星があった。
否、それは流星にあらず。
「アカネイザーりゅーーーーせーーー、キーーーーーーーック!!」
それは、深紅のバトルプロテクタに身を包んだ女戦士!
その名は、アカネ・・・・・・っと、すでに名乗ってるな。
アカネイザー流星キック、それは彼女必殺の、高高度から急降下したついでに放つ、すごい威力のキックだった。
ずがーーーーん! とあたりを騒がすものすごい音。アカネイザーが着地した場所にあった廃工場の壁が派手に破壊された。
「うおおっ!」
デビロックは驚いたものの、これといったダメージは受けていない。
まぁ、当たってないからね、キック。
「アカネイザーだと? キサマ、『ディノソルジャー』の戦士か!?」
「・・・フフフ、あたしの名前を知っているとは、よく調べているということか、さすがね、・・・いや、あたしが有名すぎるだけか。」
技の名前に思いっきり、自分の名前を付けてたからな。
164
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:07:49 ID:IfPfqXj60
「あたしはディノソルジャーの戦士、アカネイザー!」
ここで名乗りポーズを決めるアカネイザー。たとえ相手が自分の名前を知っていようとも、これだけはきっちりやっておかないといけない。
スポンサーが怒るからだ。
「『ディノティラン』、聞いてる? 急いで『時間凍結』して!」
アカネイザーが、ヘッドセットに装備された通信機で、母艦『ディノティラン』の制御コンピューターに指令を送る。
『時間凍結』とは、戦闘の場である地球の町を破壊しないために、時間を止めた特殊フィールドを生成する機能だ。これにより、アカネイザーは人々を戦いに巻き込まず、
人知れず戦うことが出来るのだ。
『リョウカイ、時間凍結プロセス開始シマス』
宇宙母艦ディノティランの声とともに、周囲の時間が止まった。アカネイザーとデビロック、そしてディノティランに選別された大気構成物質などのいくつかの例外を除いて、
原子の活動が固定される。
ここは、時間の止まった異次元のようなものだ。
「これで、町を壊す心配がない。気兼ねなくアンタと戦えるってものよ!」
「アカネイザー、グラン空竹割り!!」
母艦ディノティランと融合したスーパーロボット、巨大アカネイザーの必殺剣技が決まった。
巨大化して戦っていたデビロックが、頭から縦に一閃、まっぷたつになってから爆散した。
戦いが終わり、『時間凍結』が解除された世界は、もちろん巨大ロボットたちの戦った痕跡など残ってはいない。いつもと変わらない、平和な世界だ。
アカネイザーは、ひとつの戦いが終わり、宇宙の超エネルギー『マスタースパーク』を守り切れたことに、肩の力を抜いて安堵した。
「エイジに手を出す奴は、あたしが許さないんだから。」
もとい、超エネとかはどーでもいい感じか?
すでにこの宇宙の戦士、自分の使命が本来のものからすり替わっているようである。
それはともかく、一段落したと思われる彼女の、戦い終わって気の抜けた瞬間の独り言、その言葉を聞き留める者がいた。
「ククク・・・、その『エイジ』という地球人に、マスタースパークが隠されているのだな?」
廃工場の破壊された外壁、その陰から現れた影は、歩みを進めてその姿を月光にさらした。
全身を銀の骨と青い水晶の鎧で包んだ、ディスイーターの戦士だ。おそらくは先ほどのデビロック同様、何か別の姿に変形できる性質のロボット生命体なのだろう。
「はじめましてアカネイザー。俺の名はディスイーターの戦士、シャドーティラノだ。」
名乗った戦士は、見るからにパワフルで、戦闘終了直後のアカネイザーに対して余裕たっぷりの笑みを浮かべている。
おそらくは先ほどアカネイザーが倒したデビロックよりも上位の存在だろう、間違いなく強い。
「デビロックがやられたのは残念だが、おかげで良い情報が手に入った。
あとはその『エイジ』とやらを探すだけだからな、キサマにはここで死んでもらおう。」
そういってシャドーティラノが、すらりと抜いた長剣の切っ先を向ける。
それに対し、切っ先に睨みを向けたアカネイザーが、シャドーティラノに向かってまっすぐに、掌を向けた。
「ちょっとタンマ。」
165
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:08:15 ID:IfPfqXj60
少しの間、頭を捻ったあと。
「『エイジ』ってのは、『嬰児(えいじ)』つまり赤ちゃんのことよ。
あたしが言ったのは、可愛い赤ちゃんに手を出したらアカネイザーが懲らしめちゃうぞ、って意味なの。
間違っても男子高校生のエイジのことじゃないからね!?」
・・・・・。
「・・・・・つまり、男子高校生の『エイジ』くんを探せばいいわけだな?」
「ち、ちょっとタンマ!
えーと、その、なんだ、『エイジ』ってのは『age』つまり英語で言う『年齢』のことよ。
高校生ってナイスなエイジだよねー、って意味なの!
高校生なんて全世界津々浦々にいるじゃない、探すの大変だよ?」
「なるほど、このあたりに住む男子高校生のエイジくんだな。」
「ちょっとタンマタンマ!!」
アカネイザーは、これ以上まだ敵に情報を与えるつもりなのか。
深紅のバトルプロテクタ、そのヘルメットの下にある少女の顔には、思いっきり焦りの表情、ダラダラと流れる脂汗。
どうやら、彼女の語彙では他に誤魔化す『エイジ』な単語が思い浮かばないらしい。
(えーと、『英字』? アルファベットがどーたらこーたら、・・・うあー! やばい、誤魔化しきれない!?)
アカネイザー、ピンチ!
少女の瞳、その瞳孔がぐるぐるとおかしな渦巻きになって、いよいよテンパってきた。
「・・・・・・そーだ、そうだよ、アンタをぶっ殺しちゃえばいいんだ・・・・・・。」
深紅のヘルメット、その黒いバイザーの下に、ギラリ、と光る電光の瞳。
「何でこんな簡単なこと思いつかなかったんだろ。
あたし、すっかり平和主義者になってたみたい。」
そしてアカネイザー、握った拳が、キン、と甲高い音を立てた。
出るか!? アカネイザー必殺の超振動パンチ!!
『スイマセン、盛リ上ガッテキタトコロデスガ、時間切レデス。』
と、アカネイザーのヘッドセットにそのような、母艦ディノティランAIからの通信が入った。
瞬間、アカネイザーを包んでいた深紅のバトルプロテクタが消滅し、全く無防備な姿の少女が現れた。
おそらくは眠っているところ駆けつけたのであろう、年頃らしいパジャマ姿の、倉沢茜さんである。
「げ、やば。」
茜の、血の気が引いた。
アカネイザー、大ピンチ!!
166
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:08:47 ID:IfPfqXj60
「ふん、残念だったな。」
シャドーティラノが冷酷に、剣を振りかぶった。
そして振り下ろされる、鋭利な一閃。
ただの少女である茜には防ぎようがない!
アカネイザー、きみは道半ば(だいたい3ヶ月、1クールほど)でその命、費えてしまうのか!?
もしかしてこれが、大人の事情による主人公交代なのか!?
「死ねぇーーーー!!」
ズバッ!!
振り下ろされたシャドーティラノの剣、しかし彼には、全く手応えが伝わらない。
「誰だ!?」
彼が誰何する。
間違いなく少女の命を絶っていたものを、どこかの誰かが邪魔をした。
彼の剣が切った場所、そこに倉沢茜の姿はなかった。
あたりを探るシャドーティラノ、その彼の耳が、小さなつぶやきの声を捕らえた。
「忍法、面滑りの術。」
声に振り向くシャドーティラノ、そこには、黒い装束を着た少女の姿。
そしてその傍らに、同じく黒装束のもう一人の少女が、目を回している茜を抱えていた。
「キサマ、何者だ!?」
もう一度、シャドーティラノが少女たちを誰何する。しかし黒装束の少女たちは、それに応えることはない。
「チッ!」
舌打ち、そして同時にシャドーティラノが動いた。振り下ろしていた長剣を、地擦りの状態から振り上げたのだ。
その切っ先は黒い少女めがけて鋭く閃く!
しかしその剣は、少女を裂くことなく、すぽーん、とあちらの方向へ飛んでいった。
「な、なに!?」
剣を握っていたシャドーティラノが、愕然。
「『忍法・面滑り』は、貴様たち機械生命体を構成する部品の、金属表面同士の摩擦力を下げる技。
握った武器がつるりとすっぽ抜け、ひざがつるりと滑って立ってもおられず、そして終いには、身体の部品も保ってもおられず。」
解説とばかりに黒い少女が口を開く。
「貴様自身の動力が発する振動に、身体をつなぐ螺子(ネジ)もくるくる弛むという寸法だ。」
茜をかばっていた方の少女が付け足した。
「な、なんだとッ!」
そして少女の言葉通り、機械生命体の身体は、あっけなく四散した。
167
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:10:25 ID:IfPfqXj60
茜が気絶から立ち直ったとき、その傍らには、一枚の紙切れがおいてあった。
それには達筆な筆文字で、一言だけ書いてあった。
『馬鹿者』
茜がその文字に激昂して、ふいと夜空を見上げたとき。
建物の屋根から屋根に飛び去る、二つの黒い影を見た。
「に、忍者?」
まさかこの現代日本に忍者とは、時代錯誤も甚だしい。
しかし、現にこうして宇宙の戦士が来ているくらいだから、忍者の一人や二人いたところで罰も当たるまい。
ただ茜は、新たなキャラクターの登場に、なにやら奇妙な胸騒ぎを覚えるのだった。
次回のアカネイザーは!?
「やばい!? テスト勉強ぜんぜんしてないよ!?」
お楽しみに!!
168
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:11:58 ID:IfPfqXj60
###### しおり ######
###### しおり ######
169
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:12:34 ID:IfPfqXj60
%%%%% TV東京系アニメ:『神聖世界のエクスソフィア』 %%%%%
これまでに創造された物語。
いくつもいくつも、無限に存在する平行世界。
その中のひとつ『神聖世界フローティア』では、長い長い戦いの、結末を迎えようとしていた。
ひとつは魔族。もう一つは人間。二つの勢力は長い戦いを続けてきた。
圧倒的な戦闘力で優勢だった魔族だが、人間側の戦士、勇者の血族による抵抗に、完全に押し切れないでいた。
そして、新たに生まれた戦士、勇者にして女神である少女、エクスソフィアによって、人類軍の反撃が始まる。
ソフイアは、その生まれ持った資質により、かつてないほどの戦闘力をもっていた。それに加えて、兵を指揮する能力、逆境を覆す戦略などを駆使して、人類軍を導いていく。
魔族の長、魔王ダイノガイストがソフィアと対峙したとき、すでに戦況は決していた。絶大な力を誇った魔王であるが、彼を守るものは次々と打ち倒され、ソフィアの放った
破魔の刃によって滅びたのだった。
世界に平和が訪れた。
しかしソフィアは、再び魔王ダイノガイストが復活することを予知していた。それを阻止するためには、魔王の魂を別の世界に転生させ、浄化させるしかない。
そしてソフィアは、自らも魔王と同じ世界に転生し、その魂の浄化を見守ることにした。
そして、ここはとある異世界。
人類の文明が発達し、いくつもの文化が世界を育む、『惑星・地球』。
その地球の、日本という国に転生したソフィアはそこで『山科久子(やましな ひさこ)』という名前を得る。彼女に遅れてこの世界に転生してきた魔王は、『花村エイジ』として育てられた。
幼い頃からの幼馴染として、あるいは年下の少年に対する姉として、ソフィアは彼を見守っていた。
ここで二つの、ソフィアにとって予期しない出来事が起こった。
ひとつは、彼女の元いた世界フローティアから、魔王の魂を奪い返すための魔王軍が送られてきたこと。
彼らもまた『転生』という方法を採り、地球人として生まれ変わっていた。しかし転生前の人格が目覚め、彼らの目的である『魔王復活』を果たそうと、
その魂を宿す地球人を殺そうとしているのだ。
地球人・花村エイジが、その寿命半ばで命を絶たれた場合、魔王の魂は浄化が完了しないまま解放され、再び魔王ダイノガイストとして復活するだろう。
そしてもう一つ。
異世界の勇者にして女神であるエクスソフィア、彼女が、魔王の生まれ変わりである少年、花村エイジに、恋をしてしまったのだ。
こうして、彼女は二重の意味で、花村エイジ少年を異世界から転生してきた魔王軍から守らなくてはならなくなったのだ。
170
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:13:11 ID:IfPfqXj60
神聖世界のエクスソフィア・第12章
『告白』
あらすじ。
とある冬の朝。
ごくふつうの高校生として登校したソフィア、山科久子は、自身の靴箱に一枚の紙切れが差し入れられていることに気づく。
その紙には達筆な筆文字で、『山口清香(やまぐち きよか)に注意せよ』と書かれてあった。
山口清香。
その人物に心当たりのなかった久子であるが、少し調べてみたところ、自分の隣のクラスに在籍する女生徒であることがわかった。
もしかすると、魔王の魂を狙った魔王軍の刺客なのかもしれない。警告の主の正体は掴めぬままだったが、とりあえず久子は山口清香の監視を始めた。
よくよく注意してみると、その少女、山口清香は時折、久子に視線を向けることがある。
しかしそれは久子にではなく、彼女の側にいる少年、花村エイジへの視線であることに久子は気がついた。
「もしかして、エイジくんのことが、好きなの?」
久子は清香に接触し、意を決して問いかけた。唐突ではあったが、清香はその質問に、首を縦に振って答えた。
「私、花村君に告白する。もう手紙も出してきた。」
自分がエイジ少年とすでに付き合っていること、そのことは事情があり口外できない。
久子はもちろんそれを隠したが、清香からは、久子がエイジに異性の好意を持っていることだけは見抜かれていた。
「私ね、最近、ヘンな夢を見るんだ。」
清香が、久子に語る。お互いが恋敵であると知った上での、会話。その内容は、他愛のない雑談のように聞こえる。
しかし、それには意味がある。
重大な意味が。
それに気づいた久子の身体が、緊張する。
彼女が語る『ヘンな夢』、それは。
「花村君が『魔王』でね、私が彼の部下の、魔族なんだ。」
久子と同じ世界から転生してきた魔族である彼女の、前世の記憶であった。
それはすなわち、彼女がまもなく、エイジ少年の命を狙う刺客へと変貌する前兆でもある。
いまの、エイジ少年に恋する少女の記憶が前世のものに塗り替えられたとき、山口清香という人間はこの世から消滅し、異世界の肉体を具現化させた怪物になり果ててしまうのだ。
171
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:13:47 ID:IfPfqXj60
清香の言葉を聞きながら、久子は想った。
(わたしは、この地球に転生して、エイジくんと出会えて幸福だ。)
本来ならば、魔王の魂の器という監視対象であった少年。しかし彼を見守るうちに、その心に秘められた優しさ、強さに惹かれていく。
この世界の住人である彼の一生に、別の世界からの宿命を押しつけてしまった自分は、いったいどうやって償えばいいのだろうか。
自分からわずかに遅れて送り込まれた転生体が、今になって次々と出現している。
彼らはあくまでも普通の人間としてこの世界に生まれ育ってきたが、ある時を境に前世の記憶を取り戻し、『前世の使命』に目覚めることで怪物へと変化する。これまでの人間としての
記憶も消え、肉体すら変貌し、完全な怪物に生まれ変わる。
そして魔王の魂の器を破壊して、魔王の浄化を防ごうとしている。
この世界に魔王の魂を送り込んだ責任として、久子、いや、勇者ソフィアとして、それらの刺客から少年を守らねばならない。
「私はね、前世では、魔王のすぐ側に控えていた女戦士なんだって。」
清香が話す、夢の続き。
「魔王が勇者に倒された後、その魂を追って、この世界に転生してきたみたい。」
話す言葉我に、震えが宿った。
「魔王の魂は、花村君の身体にあるんだって。だから私は、花村君を殺さなくちゃいけないの。」
清香は泣いていた。
「こんなの、ただの夢だよね?
でも、同じ夢を毎晩毎晩、毎晩見るの。
『あいつを殺せ』って、夢のなかの私が、自分に言い聞かせるように、何度も何度も繰り返すの。」
泣きながら、不安を吐き出すように話し続ける。
「だんだん私、わからなくなってくるの。
もしあの夢が本当のことだったら、『私』はいったいなんなんだろう、って。
花村君を殺すためにこの世界に生まれ変わった怪物が、完全に目覚めるまでの『かりそめ』でしかないんじゃないかって。」
清香は、触れれば脆く壊れてしまいそうな儚さで、久子に語る。
久子はただ、言葉なく彼女の言葉を聞いていた。
(わたしは幸福だ。『前世』での記憶と使命、それがエイジくんに恋してからも変わらずに、むしろもっと強い理由になっている。)
久子は想った。
(山口さんだって、エイジくんのことが好きだという気持ちを強く持てば、前世の記憶を押さえることが出来るかもしれない!)
172
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:14:23 ID:IfPfqXj60
「山口さん、エイジくんのこと、本当に好きなんだよね?」
久子はもう一度、清香に問いかけた。
「うん、好きだよ。この学校に入ってから、ずっと花村君のことだけを見てきた。」
瞳を涙に濡らしながら答える清香に、久子も答えを返した。
「わたしも、エイジくんのことが好き。」
そして久子は、清香を抱きしめた。
「わたしも一緒に告白するよ。
いっそのこと、二人してエイジくんのカノジョになっちゃおうか?」
じつはもう、自分は彼に告白しているのだが、今はわざわざ言うべきことでもない。
今は、清香の心をリラックスさせ、『前世の使命』にあらがうための下地を整えなければいけない。
(わたしは、『魔王の魂を見守る』為だけにこの世界に転生してきた。
でも今は違う。
魔王の魂なんかなくたって、わたしはエイジくんを守ってあげたい!
ただ『魔王の魂の器』だから守らないといけない、なんていう義務感じゃない。
わたしが彼を守りたい、と思えるようになったから、わたしは今、戦っている。
エイジくんに恋することで、わたしのなかの『前世の使命』が変わったんだとしたら、
山口さんも、『前世の使命』を覆すことが出来るかもしれない。)
同じ男に思いを寄せる者どうし、出来ることなら戦いたくはない。戦えば間違いなく、どちらかが死ぬ。
「二人して、エイジくんを好きな女の子がいっぺんに、エイジくんに告白したら、案外受け入れてくれるかもしれないよ?」
そして二人は別れた。
久子は清香に自分の携帯電話の番号を教え、何かあったらすぐに連絡を入れるように告げた。
夜になって、久子のその携帯電話が鳴った。先ほど番号を伝えたばかりの、山口清香からだ。
「私、花村君を殺したくない・・・・・・。」
その言葉を最後に、あとは低い、獣のうなる声だけが携帯の耳元に聞こえてくる。
その声は、『前世の使命』に目覚めた者が変化した、怪物の声。
地球人、山口清香はこの瞬間、消滅した。
173
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:14:55 ID:IfPfqXj60
久子は、戦いを決意した。
『前世の使命』に完全に目覚めてしまった者は、もう元の人間には戻れない。あとはもう、ただの戦士どうし、戦いあって殺し合うしかない。
携帯電話を静かに閉じた久子は、瞳を閉じて小さく呟いた。
「転生合神。」
この言葉は、この世界の人間として生まれた久子が、前世である女神エクスソフィアの力を身に備えるときのキーとなる。
久子の身体は、瞬間まばゆい光に包まれたあと、この世界の衣服すべてを一時消滅させ、異次元からの鎧を身に纏う。
白い肌の美しい少女、その身体の一部を鎧が覆う。胸や腰といった、少女の秘めるべき部分を守り、額や小手、脛当てなど、戦いに必用な最低限の部分を金属の防具があてがわれる。
現世の記憶をもったまま、前世の戦う力をその身に纏う久子。
彼女は今、『女神エクスソフィア』として、この世界に現臨したのだ。
(でも、もしかしたらまだ、山口さんの心は消えていないかもしれない・・・)
戦いに向かう久子。しかし彼女の心にはまだ、一抹の逡巡があったのだ。
次回、『胡蝶の夢』。
174
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:15:45 ID:IfPfqXj60
###### しおり ######
###### しおり ######
175
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:16:28 ID:IfPfqXj60
%%%%% フジTV系アニメ『魔法な乙女・みらくるみらん』 %%%%%
「みらくるみらん、デビューー!!」
パステルカラーの世界、虹の滑り台を勢いよく滑り、宙に向かってジャンプした少女は、ひらひらとフリルの多いコスチュームをはためかせ、くるりと回転してから着地した。
淡い色合いの、ひらひらした少女趣味の衣装。長いツインテールの髪が躍動感たっぷりに揺れて跳ねる。
いま、ここに、新しい魔法少女が一人、誕生した。
第1話「みらくるみらん、華麗にデビュー!」
みらくるみらんは、人間たちの世界と繋がったもう一つの世界、魔法の国『マジカラーサ』の女の子。
そこは、肉体を持たない精神生命体の国。みらんたちは、人間の世界を見守りながら暮らしていた。
しかしある日、マジカラーサと隣り合う国、スパイダリオンの住人たちが、人間たちを滅ぼそうと動き出した!
彼らもまた精神生命体だが、特殊な魔法によって肉体を得ることが出来、その身体で人間たちを襲おうとしているのだ。
これを防ぐべく、マジカラーサの魔法戦士たちも、独自の魔法を使って受肉し、人間界に降りたった。
ここに、マジカラーサとスパイダリオンの戦士たちの戦いが始まった。
回顧・魔法学校にて。
「たとえばね、人間が誕生したばっかりのころ。
道具もなく、通信手段もなく、海を越える移動手段もない、お猿さんに毛が生えた程度の人間がね、大体同じ時期に似たような文明を手に入れていくの。
火を使ったり、道具を使ったり。」
「ふうん、でもそれって、偶然なんじゃないですか?
それぞれの文明に数百年単位のスパンがあれば、だいたい似通ったものになりますよ。」
「まぁ、たしかにね。
その『似通った進化』っていう方向性で育った『種(しゅ)』としての生命たち、そのくくりの一つが今現在の『人類』なの。
で、その人類は多種多様な個人の集合なんだけど、それでもやっぱり『似通った進化』に縛られてる。
それは『原初の本能』と言い換えてもいいでしょう。」
「じゃあ、みらんたちマジカラーサの精神生命体を生み出した『人類の集合無意識』っていうのは、その『原初の本能』が繋がって出来たものってことですか?」
「ざっくり言ってしまうと、そういうことね。
でも今はそれに、そこそこの知能を発達させた人類特有の特徴が現れてるの。
大昔のお猿さんはだれもほとんど違いはなかったのに、今の人間は、一人一人が個性豊かで、それぞれに『人類の集合無意識』への影響力が違ってきている。」
176
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:16:57 ID:IfPfqXj60
「なるほど。その、人類の中でも影響力が特に強い人間が、『特異点』ってわけですね?」
「世界的に影響を持つ宗教の教祖、半ば私欲で国家を独裁する指導者。
その善悪は容易にはかることができないけれど、とにかくその一個人が多くの集団の意識を誘導し、それが集合無意識のベクトルにまで影響する。
つまり、その『特異点』が『人類滅ぶべし』とか考えちゃったら、割と全人類もそう言う風に思っちゃうってことなの。
逆に、その特異点がポジティブな思想を持てば、それはほかの人間個人にも伝播する。特異点が「子供を作りたい」とか真剣に考えると、世界中のいろいろなところでそれは個人の
無意識つまり原初の本能に影響を与えて、人類繁栄にも繋がる、というわけよ。
テレビやインターネットみたいな、情報伝達手段が発達した今となっては、それらの情報による力もそこそこあるみたいだけどね。」
「スパイダリオンたちは、そこに目を付けたわけですね?」
「特異点個人が世界に絶望すれば、それは多くの人類に伝播する。特異点を捕まえて、じわじわ苦痛を与えながら殺していけば、その死の直前の絶望は強力な力を持って多くの人類を
巻き添えにする。
全人類を滅亡に向かわせようとするならば、それが効率よいやり方だと考えてるわけね。」
「みらんの使命は、それを阻止するために特異点を守る、ということですかぁ。
で、みらんが守る、『花村エイジさん』って、どんなひとなんですか?」
「それが、ぜんぜんわからないの。宗教家というわけでもなければ政治家でもなく、慈善の偉人というわけでもなければ犯罪者でもなく、ごく普通の高校生。
でも、確かに特異点の反応がでているわけだから、警護すべきだということになったの。」
「なるほど、それで、まだ未熟なみらんが向かわされるわけですね?」
「まぁ、ほかの戦士たちは重要な特異点警護に出払ってしまっているからね、仕方がないわ。」
「わかりました! みらん、全力でそのひとを守ります!!」
回顧終了。
177
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:17:59 ID:IfPfqXj60
第17話『すてきなステーキ、スキスキすき焼き!?』
秋も終わり、そろそろ空気も冷たくなった頃合い。
土曜日、みらんはその日の授業を終え、夕方の約束までの時間をつぶすために、学校の部活棟にある『落語研究部』部室にいた。
もちろん彼女が所属する部なのであるが、部員といってもたんなる頭数あわせ、特に部活らしい活動をするわけでもなく、とりあえず授業の予習復習宿題のたぐいをやっつけていた。
この部室には、みらんのほかにあと二人の女生徒がいて、彼女たちの目的もみらんと同じく時間つぶし。
みらんの勉強の面倒を見てくれているのは一つ年上の先輩で、非常に学業優秀。みらんへの面倒見もよく、頼りになる先輩であった。金髪の彼女、その頭髪は校則違反などではなく、
れっきとした地毛だ。ヨーロッパから帰化したということになっている。もちろん日本語も流暢だ。
「今晩はすき焼きです。非常に楽しみです。」
あまり表情の変化を見せない先輩であるが、言葉通りに夕食のすき焼きを楽しみにしているであろうことが何となくは理解できる。そういう雰囲気を感じ取ることができる。
そのとき、あははははは、と、大きな笑い声が上がった。
その室内にはみらんを始め三人の女子しかいないわけで、声の主はおのずと残る一人だった。
みらんがそちらを見ると、その女子生徒が漫画を読んで大笑いしていた。
みらん以外の二人は同じ学年、同じクラスの友人だ。
女子仲間としては、この三人とあと一人、都合四人でよくつるむことが多い。
それにしても、とみらんは思うのだが。
この、漫画を読んで大笑いしている先輩、ルックスだけでいえば学園一といってもいいくらいに可愛い。その分、性格面でいろいろと残念なところが多いのが惜しい。
勉強の手を止めてそんなことを考えていると、ふいに傍らの鞄がごそごそと動き始めた。
「みらん、みらん〜!」
その声は鞄の中、動く正体が声の主。
鞄の隙間から、にょろんとなにやら出てきた様子。
まるで水銀を思わせる、液体金属のようなもの、生き物。
その、不定形な水銀状の物体は、魔法少女であるみらんのパートナー、にょろ子ちゃんである。
「みらん、たいへん! 町でスパイダリオンが暴れてるわ!」
にょろ子ちゃんは特殊な感覚器官でもって、敵対するスパイダリオンの存在を感じ取ることができるのだ。
「ええ〜!! 今日は土曜日なのに!?」
土曜日はみらんにとって、大切な日である。大好きなエイジ先輩と一緒に過ごせるお泊まり会のある日なのだ。
時計の針はもう三時を回っている。あと二時間少々で片付けなければ、大事なお泊まり会に間に合わなくなってしまう。
「みらん、大変だねぇ。」
のんきに声をかけてくる先輩の声を憎らしく聞きながら、みらんは鞄の中から、赤く煌めくブローチを取り出した。
そのブローチこそ、ただの高校生(身体は中学生並だが)のみらんを、『魔法少女みらくるみらん』に変身させるキーアイテムなのだ。
178
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:18:42 ID:IfPfqXj60
「もう、とにかくソッコーで片付けちゃいますっ!!」
そう言ったみらんが、ブローチを胸に着けて、変身の呪文を唱える。
「みらくるいまくるあしたくる、くるくるくるりんみらくるみらん、マーキュリー回路で大変身!!」
するとみらんの身体がまばゆく輝き、水晶のように煌めく身体が露わになる。そしてブローチからあふれ出したたくさんの花が彼女の身体を覆い尽くし、軽快なきらめきを以て彼女の
コスチュームへと変わっていく。
そして変身完了、みらんは、フリルも華やかな可愛らしい少女服を身にまとい、『魔法少女みらくるみらん』へと姿を変えた。
「じゃあ、行ってきまーす!!」
とるものもとりあえず、みらんは時間が惜しいとばかりに飛び出した。背中から大きな天使の羽が生えて、窓から空に飛び立ったのだ。
「・・・相変わらず派手だよねぇ。」
部屋に残された先輩二人、漫画本を片手にみらんを見送った方が、呆れた口調で言った。
「なにか、いろいろと無駄なプロセスが多い気もしますが、それが彼女のスタイルなのですから、ワタシたちが横から口出しすることでもありませんね。」
あくまでもクールに、金髪の外人女が応えた。
「ところで。」
と、部屋に二人きりになったところで、金髪の方が言った。
「みらんさんが戻ってくるまで、屋上でゴルフでもしましょうか。」
退屈しのぎ、というわけだ。彼女は特に、課外で勉強をわざわざするまでもなく成績優秀なのだ。
そしてそれを受けたもう片方が。
「うん、いいねぇ。」
機嫌よく受けた。
この学校、当代の生徒会長の発案で、屋上に芝生を植えてあり、簡単なパターゴルフができるようになっている。
「ところで、そっちは今週、何か事件あったの?」
早速屋上に出かける準備をしながらの問いに、金髪が返事。
「今週は珍しく事件無し。」
無表情、無表情。
おもしろくもないやりとりに飽きて、二人は屋上に向かった。
なにもやることがないときは、ゴルフに限る。
179
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:19:04 ID:IfPfqXj60
「みらくるみらん、華麗に現着〜!!」
と、可憐な少女のひらひらしたドレスがくるりと一回転。
ばさり、と最後に大きく羽ばたいたあとの羽は、するりと縮んで消えた。
ここは、みらんの住まう場所にほど遠くない町、人通りの多い繁華街だ。
土曜の昼下がり、唐突に現れた魔法少女に、道行く人たちは唖然とした。が、次の瞬間には興味もなさそうに歩み去っていく。
そう、これこそがみらんの『魔法』の一つ。簡単な記憶操作を兼ねた人払いの術だ。
「って、あれ? ここってたしか・・・。」
みらんは、降りたった場所から正面に見える店舗に、至極最近の既視感があった。
そこは、表向きはステーキハウスを装っているもののその実、スパイダリオンたちの前線基地であった場所だ。先週みらんがこれを発見し、詰めていた先兵たちをすべて一掃したところなのである。
そうなると討ち漏らし、あるいは増援のたぐいか、とみらんは慎重に、ぱっちりと大きく開いた眼で店外から中の様子をのぞいてみる。
店内は暗く、人の気配もない。彼らの匂いを感じ取るニョロ子ちゃんも、ここにはいないとみらんに告げた。
店の入り口には『誠に勝手ながら閉店いたします。』との張り紙がしてあって、先週のみらん襲撃によって全滅したスパイダリオンたちは店を放棄したと思われる。
「じゃあ。どこに出たっていうの?」
みらんは、じれてじれて、叫ぶようにニョロ子ちゃんんを問いただした。
「う〜ん、確かこの辺なんだけど・・・。」
そう言った不定形の液体水銀状生命体は、きょろきょろと辺りを見回した。
「みらんちゃん! こっちこっち!」
ニョロ子とみらんが見渡した先の一点で、彼女たちを呼ぶ声がした。
それは、ニョロ子ちゃんと同じく、みらんをサポートする魔法生物たちだ。
金色の綿菓子を思わせる不定形の『ふわりん』、真っ赤な砂状の不定駅生命体『さらさら』、その二匹が指し示す場所こそ、目的の場所であった。多くの客でにぎわう飲食店のようだ。
「ボクたちが探してて、あとをつけておいたんだ!」
「スパイダリオンの増援たちは、この店に入っていったよ!」
二匹が言うとおり、営業中の店内で人々の騒ぐ声が聞こえた。
どうやら、憎き敵のスパイダリオンたちは、無関係の場所に立ち入り、人々に迷惑をかけようとしているらしかった。
「もう!! 今日は急ぐんだから、全力で片付けちゃうよ!!」
みらんは、とにかく今夜のお泊まり会に遅刻しないように、やる気満々で店内に駆け込んだ。
180
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:19:49 ID:IfPfqXj60
「まちなさーーーーーい!!」
店内では、スパイダリオンの先兵たちがバットやゴルフクラブ、バス停の標識などを手に手に、暴れ始めたところだった。
さてそのスパイダリオンであるが、こうしてみると普通の人間である。
しかし彼らは見た目通りの人間ではない。
この姿はあくまでも擬態。その本性は、恐ろしい姿をした怪物なのである。
ここで、この人間世界における、みらんの基本的な戦い方をなぞっていこう。
さて、このスパイダリオンである。
このままほおっておくと、奴らはみらんとの戦闘体勢に移行し、本来の怪物の姿を取り戻す。
さすがにみらんとて、このまま怪物化した奴らとこの場所で戦うわけにはいかない。
なにせ、ここは一般の人間が周りにいるのだ。彼らにその怪物の姿を見せるわけにはいかないし、ましてや戦闘の飛び火で怪我させてしまう可能性がある。
故に、みらんはステージを変える必要がある。
「強制テレポート!!」
みらんが発動した魔法は、自分たちを含む対象たちを、強制的に別の場所に転移させる術である。
これにより、人目を避けること及び、戦いに支障のない場所への移動をこなすことが出来るのだ。
みらんが移動する場所はたいてい決まっている。
日本のどこか山奥にある、無人の採石場。当然あたりに民家もなく、人目を気にすることなく戦うことが出来る。少々の爆発があったところで、人間たちの施設を傷つける心配もない。
「しょうこりもなく、ひとに迷惑をかけようとするスパイダリオン!
天が見逃し地が大目に見たとしても、このみらくるみらんはぜったい許しませんからね!!」
採石場の高台、そこは群れる敵どもを見下ろして名乗り口上を述べるには絶好の場所であった。
大上段からの物言いに、敵であるスパイダリオンたちも憤った。
「オノレ、ミラクルミラン、コノマエノウラミヲハラシテクレヨウゾ!!」
とりあえずまだ人の皮をかぶっていた彼らだったが、みらんへの宣戦布告と同時に本来の姿を取り戻していった。
着ていた服が大きく裂け、膨れ上がるように大きくなる肉体。あるものは鋭い角、そしてトゲを生やし、またあるものは無数の触手を生む。手が二本足が二本などという人間のお約束も
すぐに忘れ、多脚に多手の異形たちへと変身していった。
その数、八匹。
その数はもとより、一匹一匹の戦闘力とて侮れるものではない。
いわゆる雑魚雑兵のたぐいとは一線を画す、強力な怪人たちだ。
はたして、そのような怪物たちを相手に、この華奢な少女、みらんがかなうものなのだろうか。
だが忘れてはいけない。
このみらんとて、ただの少女ではない。
特異点の少年を守るため、スパイダリオンと戦うために送り出された戦士なのだ。
元はカタチのない精神生命体であった彼女らが、そのために受肉したこの肉体が、ただのか弱い子供の身体であろうはずがない。
普段こそ幼いなりの少女の身体、だがそれは、間違いなく戦闘用の兵器の身体なのだ。
「まじかるクローゼット!!」
みらんが高々と挙げた右手、その先の上空に、突然ファスナーが現れた。
空を切り開くようにファスナーが走り、ぺろりと空がめくりあがる。
「今日は、ドーナツショップの店員さんに変身だーーーっ!!」
181
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:20:22 ID:IfPfqXj60
叫ぶ声に応じ、そのファスナーの向こうから光の固まりが飛び出してきた。そしてそれはみらんと融合、まばゆい閃光のあとには、可愛らしいドーナツショップの制服を身に纏った少女の姿。
断っておくが、みらんが大人に成長してのコスプレ、ではない。
あくまでも、中学生の風貌をしたショップスタッフが出来ただけなのだ。
こうして、いわゆる二段変身をしたみらくるみらん、ドーナツショップ店員の制服にコスチュームチェンジをしたからには、いかな戦い方になるというのか。
ドーナツを掴むトングで相手の頭をコツンと叩いたり、ファンシーなライオンのようなマスコットキャラクターを召還してけしかけるのか。
否。
この姿になったからには、思い知らさねばなるまい。
ぽろぽろとドーナツの食べかすを周囲にこぼす行儀の悪い客、コーヒーお代わり自由をいいことに何時間も居座る厚かましい客、周囲をはばかることなく下品に騒ぎ立てる不躾な客。
それら許されざる客に、ドーナツショップの店員がいかに恐ろしい存在であるかということを思い知らせなくてはいけない。
「みらくるみらん、フォームチェンジ!!」
みらんは叫んだ。その、どこぞのアニメ声優もかくやという声量。幼くあどけない声ながら、計り知れないパワーの奔流を感じる。
みらんが発した『フォームチェンジ』の声に反応したのは、彼女をサポートする魔法生命体、その中の一匹、銀色のニョロ子ちゃんだ。
「オッケー!みらんちゃん!!」
ひゅん! と素早く宙を駆け、液体水銀のようなニョロ子ちゃんがみらんの元に馳せ参じた。
「いくよ! ニョロ子ちゃん!」
みらんが応じ、水銀の身体を右手でグワシ、と掴んだ。
そしておもむろに、ニョロ子ちゃんの水銀ボディーをがぶりと噛み千切った。普段のみらん、どこか小動物を思わせる動きではなく、明らかに乱暴な肉食動物のように、水銀の身体を貪った。
その瞬間、変化が起こった。
胃の腑に落ちたニョロ子ちゃんの水銀ボディーは、みらんの肉体にさらなる魔法の力を与える。
心臓より全身に送られる血液、そこにこの物質が混ざることにより、その色は銀色に変わる。同時にみらんの肌も銀色の光沢に包まれ、メタリックなボディーに変化する。
これこそがみらんの更なる力、『みらくるみらん・メタルブラッド』フォームである。
では、メタルブラッドとは如何なる力を持つのか。
その解説も掛かれぬまま、みらんに怪物たちが襲いかかってきた。
論より証拠、説明よりも先にその能力が発現するようだ。
「メタルナックルッ!!」
襲いかかる怪物に、みらんの小さな拳が突き刺さった。敵の皮膚を破り、深々とめり込む鋭い拳。
「サウザンドニードル!!」
腕を敵の体内に預けたまま、次の技を放つ。その技は、体内の血液を鋭い針状ににして皮膚より放つ技だ。これをみらんは、敵の体内に埋め込んだ腕の先から行った。
鮮血を吹き出し倒れた敵に代わり新たな怪物が襲いかかる。
最後まで足掻いた怪物のせいで、新たな攻撃をかわすことが出来ないみらん。
敵の繰り出した鋭いトゲが迫る。
ガキッ、と鈍い音がして、トゲはみらんの皮膚にくい止められた。鋭さとパワーは十分に思われた攻撃であったが、メタルブラッドのみらんの防御力は、それすら軽くあしらうほどのものである。
「パワーシザースッ!!」
182
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:20:53 ID:IfPfqXj60
攻撃を受け止めたみらんはすぐさまそれを返す。パワーシザースと呼ばれた技は、腕の皮膚を大きく隆起させ、巨大なハサミを作ることが出来る。小さな身体に対するその巨大さは、
シオマネキのハサミを思わせる歪さである。
銀色の巨大ハサミはすかさず敵の頭部を挟み込んだ。しかしその頭部も、甲殻類を御思わせる硬い鎧を纏っている。はたしてみらんのハサミ攻撃を通すであろうか。
案じる暇もなかった。
みらんのハサミは鋭利に切れるものではないが、力はある。
強力な万力のようなパワーで、敵の硬い頭部をぐしゃりと押しつぶした。
みらくるみらん・メタルブラッドはこのように、鋭さとパワー、頑強さに優れるフォームである。
しかしこれにも弱点がある。
ご想像の通り、スピードに欠けるのだ。
スパイダリオンの怪物たちもそれを察している。次にみらんに襲いかかる怪物は、スズメバチを異形にしたような、いかにも俊敏さに優れたタイプだ。
みらんがパワーシザースを一振りするものの、敵はそれを難なく避けた。
こちらの攻撃が当たらないとなれば、あとはじり貧の展開である。
あやうし、みらくるみらん!!
みらんは、残る敵を一瞥、そして覚悟を決めた。
「ふわりん、来て!!」
彼女は、新たな魔法生物の名を呼んだ。金色の綿菓子、そんな姿をした生物が、呼ばれに応じてすぐさま参上。
「オッケーみらんちゃん!」
先のニョロ子ちゃんと同じように、みらんはふわりんの身体を掴み取り、ぱくりぱくりと貪った。
説明は省く。ニョロ子と同じような原理で、みらんの体に変化が起こった。今度は金色だ。
「みらくるみらん・サンダーブラッド!!」
先ほどまでみらんの身体を強化していた銀色の血液に代わり、今度は金色の血液が供給された。
その名もサンダーブラッド。雷電気の力を持つフォームである。
「スパークシフト!!」
その叫びとともに体を傾けたみらんのスピードは、先ほど俊敏と評したスズメバチなど軽く凌駕する。すれ違いざまにその頭部がバンと弾けた。
「ストームブロウッ!!」
そのままスピードに乗せて、まるで嵐か竜巻か。鋭い拳の先に空気の螺旋が渦巻き、高速で移動するみらんに遅れて巨大な嵐となった。その嵐が敵を巻き込み、竜巻となって舞い上がる。
「サンダードリルスピンキック!!」
舞い上げられて自由の利かない敵どもが一軸に連なった刹那、地上から電光一閃。みらんのキックが一直線に敵を貫いた。
がっしと大地を踏みしめ着地したみらん、その金色の身体にはいまだ雷光の名残である電気スパークがばちばちと絡まっている。
そして見渡せば、残る敵はあと2匹。
その程度の数ならば、このまま押し切る。
みらんは残るパワーを金色の血液に乗せ、更なる稲光を身に纏った。
「おまちなさい!」
しかしそのとき、どこからともなく謎の声。
183
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:21:47 ID:IfPfqXj60
みらんが鋭く視線を向けた先には、黒装束の二人組。まるで、いや、間違いなくその装束は忍装束。
そうだ、そこにいるのは二人の忍者。
まだ若い二人の少女たち、つまりは『くのいち』であろう。
その、忍者少女の一人がみらんに言った。
「焦りましたね、あなた?
向こうにまだ、敵が残っていますよ。」
そうして、如何なる技術か天空を大きなスクリーンに見立て、鮮明な画像を表示させた。
そこは先ほど、みらんが強制テレポートにて敵を連れ出した場所である飲食店店内。
そこに、バットを持った男が二人、店内で得物を振るい暴れ始めたではないか。
「ああっ! しまった!!」
みらんが慌てる。
確かに、忍者たちの言うとおり、みらんの失態だ。
解決を急ぐあまり、強制テレポートで連れ出す敵の数を見誤ってしまったのだ。
そこで素早い決断を迫られる。
この場所で、残る敵をしとめてから、急いで元の場所に戻り、もう一度この場所に連れ出すか。
それよりも先に、向こうに残った敵をこちらに連れ出し、向こうの被害を最小限にとどめるか。
みらんは後者を選んだ。
「テレポート!!」
みらんは、金色の力サンダーブラッドを解除すると、元の姿に戻った。テレポートは、この姿でないと使えない魔法なのだ。
そして先ほどの店内に戻ったみらんは、暴れている敵を選び出し、強制テレポート。
そうしてみらんは、目前の敵の数を4匹とし、最後の戦いを挑んだ。
しかしみらんの身体にはもう、金色の力はない。一度解除してしまえば、もう一度魔法生物を体内に取り込まない限りフォームチェンジできない。ニョロ子ちゃんやふわりんの身体は
時間がたつと復元するが、ついさっき失ってしまったばかりなので間に合わない。
「さらさらっ!」
そうだ。みらんをサポートする魔法生物はあと一体存在する。
赤い砂のような魔法生命体『さらさら』はみらんに呼ばれ、疾く疾く(とくとく)駆けつけた。
「みらんさん!」
さらさらが差し出したその身を、みらんは躊躇うことなく飲み込んだ。
さらさらの赤い砂は、みらんの体内で血液に新たな変化を起こす。
もとより赤い血の色が、赤い砂の力でさらに赤く、燃えるようにギラつく赤に変わる。
この燃えるような血の姿こそ、みらんの更なるフォーム。
「みらくるみらん・ファイヤーブラッド!!」
みらんの身体が、真っ赤に輝いた。これこそがファイヤーブラッド。
さてその威力、いかほどのものか。
「スナイパードラグーン!!」
184
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:22:14 ID:IfPfqXj60
敵の動きに先じて、みらんの技が繰り出される。
みらんの声に発動した技。突き出した腕、その上腕の皮膚ががばりと大きく開き、にょきりと一本のミサイルが出現した。
どん、と火薬の爆ぜる音がして、そのミサイルは一直線に敵へと放たれた。
そしてすぐさま爆裂、かの怪人を跡形もなく消し飛ばす。
生身の少女、その身体からいきなり現れたミサイル。これこそがファイヤーブラッドの効果。
赤い魔法生物はみらんの血液を強い火薬に変える。
そしてみらんの肉体の中で、生体ミサイルへと精製され、射出されるのだ。
「ハープーンランチャー!!」
今度は、みらんの両肩が大きく膨らんだ。アメフトのショルダー以上に隆起した肩の肉は、ドーナツショップ店員のコスチュームを大きく切り裂き、大きく丸く張り出した。
そして、再び爆裂。今度はその両肩の外郭が大きく弾けると、無数の生体ミサイルがじゃきん、とスタンドアップ。
どどどどど! とあとからあとから、両肩のミサイルが発射され、敵めがけて四方から降り注ぐ。
ようやくミサイルを撃ち尽くし砲撃の手を休めたとき、もう敵は残る一体を残して消滅したあとだった。
そして最後の敵である。
彼は、みらんの強力火力攻撃『ハープーンランチャー』を以てしても討ち漏らした敵である。
見てくれにしてもそう、犀のように硬い皮膚、ずっしりと重量感があり、太い足で安定した体躯はいかにも頑強で、少々の攻撃ではびくともしなさそうだ。
「かぁーーーーーーっ!」
大きく、太い息を吐いたのはみらん。普段の愛らしい女子高生のみらんからは想像できない、腹の底に力を込める太い息だ。
この裂帛の呼吸、いよいよ出るか、ファイヤーブラッドの最終奥義。
「ヘブンズ・ドア!!」
天国の扉、それがこの技の名前だ。
みらんの全身、両手両足、そして肩、背中、硬質化した皮膚のミサイルハッチがすべて解放された。そこからせり出す生体ミサイルの数は、先ほど無数に思われたハープーンランチャーの
比ではない。
その姿は、まるでミサイルで出来たハリネズミ。
いったい、この華奢な少女の身体のどこに、これだけの生体ミサイルが潜んでいたというのか。
「これでっ! とどめですっ!!」
みらんが叫ぶ、その言葉の最後は既に爆音でかき消され、その姿すら爆炎で掠れてしまった。
敵怪人の元に群がる、無数のミサイル群。先ほどの掃射に耐えた怪人ですら、この数は耐え切れるものか?
しかもたちが悪いことにこのミサイルの雨は、硬い装甲を貫通することに特化したミサイルスピア、着弾後赤熱化するプラズマミサイル、貫通後に弾頭が四散するクラッシュアロー、
それに加え先ほど見せたスナイパードラグーンやハープーンランチャーなど、彼女の持つありとあらゆるミサイルを一斉に発射した技だ。
もう、そこには爆炎、爆煙、そして爆音しか存在しない。
一斉掃射を終え、全弾撃ち尽くしたみらんからはもう赤い魔法の血は消えていた。
ずたぼろになって既に原形をとどめていないドーナツショップ店員の制服姿。
肌の色も元に戻り、力を使い果たした少女の姿がそこにあった。
そして、ようやく晴れていく爆煙の中、わずかに残る死骸の一部が確認できる。
強固な体躯を誇る敵怪人も、さすがにこの攻撃には耐えきれなかったようだ。
みらくるみらん、完全勝利。
185
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:22:36 ID:IfPfqXj60
「フ、さすがだな、みらくるみらん。」
敵がすべて消滅したことが明確になった頃、声がした。
そのときようやく、この場にいた忍者の存在を思い出したみらん。
「あ、あの、さっきはありがとうございます。」
ぺこり、と深くお辞儀したみらん、そのちんまりとした姿はとても、先ほどまで猛攻を奮っていた戦闘兵器とは思えない。
「なに、我等はなにもしていない。礼は不要だ。」
そう言って、二人の忍者少女はみらんに背を向けた。その、立ち去る間際に、待って下さいとみらんは慌てて呼び止めた。
「あの、あなたたちはなにものなんですか?」
呼び止められ、わずかに立ち止まった二人。しかし彼女たちは振り返ることもせず、言葉だけを残して消えてしまった。
「我等は忍、名乗るにあたわず。」
謎の忍者の登場に、風雲急を告げる『みらくるみらん』第十七話!!
この時みらんは、いまだ理解できないで居たのだ。
去りゆく影に、大きく手を振るみらん。
この時、みらんはまだまだ理解できていなかったのだ。
『忍』とはこの場合、生業の総称にして個人の名にあらず。
「しのびさん、ありがとうございました〜!」
だから、『しのび』とは彼女らの名前ではないぞ、みらくるみらん!
186
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:23:15 ID:IfPfqXj60
戦いは終わった。
みらんは、スパイダリオンが暴れていた店に戻った。
そこでみらんは、店内の人間に魔法をかけ、スパイダリオンの記憶を消去した。
さすがに、荒らされた店内を復元することは出来ない。それらは、その場にいた人間たちの記憶補填が行われ、乱暴な客の喧嘩が原因ということになった。
みらんは、とりあえずその店をあとにした。時計を見ればもう5時前だが、急いで帰ればみんなと無事合流できそうだ。
今日は土曜日。
大好きなエイジ先輩との、待ちに待った週末の逢瀬。
まずはみんなで食事にいき、おなかを満たしたあとのお泊まり会。
「しょく、じ・・・?」
そこでみらんは、ふと思い出した。
学校で待つ先輩の内、今晩の食事のすき焼きを非常に楽しみにしていた少女がいたことを。
そして今あとにした、店内を荒らされた飲食店が『すき焼き専門店』であったことを。
(いやいや、べつに、今夜いく予定の店があそこだって決まった訳じゃないし!?)
みらんは、頭を振ってイヤな予感を払い、急ぎ学校に戻っていった。
つづく。
次回の『魔法な乙女・みらくるみらん』は?
ええっ! ファイヤーブラッドが効かない!?
みらくるみらん、大ピンチ!!
「お蕎麦が動く!? 新しいお友だち『そばーん』!!」
みらんの新しいフォーム、『グリーンブラッド』が登場するよ!
187
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:23:58 ID:IfPfqXj60
###### しおり ######
###### しおり ######
188
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:24:30 ID:IfPfqXj60
%%%%% TBS系列TVアニメ『SF未来世紀クリス・クロス』 %%%%%
今週の『SF未来世紀クリスクロス』は、ゴルフ中継のためお休みします。
189
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:25:16 ID:IfPfqXj60
###### しおり ######
###### しおり ######
190
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:26:26 ID:IfPfqXj60
劇場版・冬休みまんが祭り『史上最強大決戦! アカネイザーvsエクスソフィアvsみらくるみらんvsクリス・クロス』
いまだ夏の暑さを残す9月のある日。
学園の屋上、開かれたスペースは、生徒達が憩いの場所として集えるようにと一面に芝が植えられている。
さながらゴルフ場のグリーンを思わせる緑の屋上は、なかなかに面白味のある芝目に加えてちょこざいな高低差もあり、ちゃんとカップも併設されていることから、簡単なパターゴルフが
楽しめるようになっている。
ちなみにこれらの芝生は、昨年から当代まで連任している生徒会長である花村エイジという男が、自分の趣味と思いつきで作ったものだ。はじめの頃は公私混同とか公費横領とか非難もあったが、
いざ出来てしまえば生徒達も納得する出来映えで、生徒会長の評判も上々にあがったとかの経緯もある。
そして生徒達もこの空間の存在にずいぶん馴染み、休憩時間にもなると、特に今日のような天気の良い日は弁当片手の生徒達が大勢訪れるわけだ。
しかし、今現在は平日の授業中であり、閑散としたものだ。サボリの素行不良どもも、今はここにはいない。
そんな緑の屋上に、4人の女子生徒が現れた。
別段、好んで授業をエスケープするような軽薄な雰囲気はなく、ごく風通の生徒であった。いや、4人が4人とも、一目見れば目に焼きつくような美少女であるという点は、ごく普通とは
言い難いだろうが。
4人の女子生徒は全員が一度に現れたわけではなく、この場所を集合の約束として、別個に集ったようだ。
先にいた三人に対して、最後に現れた一人が言った。
「お待たせしました、先輩。」
学園一年の女子、藤川みらんだ。
他の三人は二年生で。四人のなかで唯一の学年違い、教室の遠いみらんが来たことで全員が揃った。
「さて、『人払い』はどうするべき?」
二年の一人、金髪の乙女である北条クリスが、抑揚の少ない口調で言った。
誰もいない屋上であるからといって、今から彼女たちが話す機密のすべてを完全に守るにはまだまだ心許ない。
特に、この四人が一堂に会して話す内容は、機密も機密、人知のレベルを大きく超えた特殊な内容なのだ、徹底完璧にしておく必要がある。
故にここで言う『人払い』は必然的に、その人知を越えた超常のすべとなる。
「茜ちゃん、あなたのつかう、『時間凍結』というのは?」
四人の中でも心なしか年上の雰囲気を纏う少女、山科久子がもう一人の少女に水を向けると、当の彼女は表情をやや困った風にして、
「いちおう、任務外でディノティランを使うと、マズいんだよね。上官に怒られる。」
と、弱腰の発言。
茜、倉沢茜という名の少女、彼女が強く出ることができないのもまた、珍しいことだった。
ちなみに『ディノティラン』とは、茜が戦闘の際に使用する巨大なロボットのことで、巨大戦闘時の際、地球環境に被害を与えないための『時間凍結』という特殊コーティング空間を
展開することが出来る。巨大ロボット戦を行っても、関係ない地球の生命を傷つけることなく、建築物や自然を破壊しないという、非常に素晴らしい能力なのだが、さすがに使用の制限は
複雑なものがあるらしい。
「規模が大きいだけに、いろいろと不便なところがあるんでしょうね。さすが宇宙の人です〜。」
聞いていたみらんが、感心したようにも小馬鹿にしたようにもとれる反応を示すと、ますます茜は恐縮してしまった。よほどその上官とやらが怖いのだろうか。
「ワタシの持つ『コマンド』は、情報操作や無機物への干渉は得意としているが、生命体への干渉は万全ではない。」
「みらんの魔法は、どっちかっていうとクリス先輩の逆な感じです。この屋上に人が来ないようにするとかは得意ですけど、人工衛星とかでここを覗かれたら防ぐことは出来ません。」
クリスとみらんが言う。
ならば二人がそれぞれ能力を補い合えば良いとも思われるが、この日まだまだそれぞれの特性を理解し切れていない状態で、連携の不備が起こるとも考えられる。
そう考えた久子が、最終的に自分の能力を提案した。
191
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:27:03 ID:IfPfqXj60
「それでは今回は、わたしの『異相次元』をつかいましょう。」
彼女のいう『異相次元』とは、特定空間のみを切り出してコピー空間を作る術のことだ。
現実空間のすぐそばにありながら全くリンクしない、小さな『新世界』を創造することが出来る強力な技だ。
これを含む彼女の能力は、総称して『奇跡』と呼ばれる。
剣と魔法のファンタジー世界の住人である久子、つまりこの地球から異相の異なる別次元の住人である。有り体に言えば、異次元人といったところか。
異次元から来た彼女であるから、そういった術を行使することが出来るのも道理。
もちろんこの『奇跡』にも問題点がある。新世界維持のために彼女の魔力は常に消費されるため、自分の創造した世界でありながら自分の能力が限定されてしまう。
彼女は、彼女と敵対する刺客が出現すれば、この世界の平穏を侵さないようにリスクを受け入れて闘うのだ。
久子の提案に皆は特に反論もせず、それをもって彼女は同意と見なした。
久子が作り出した新しい次元世界。この学園の屋上程度の狭い空間だが、現実空間とは確実に切り離されている。
世界は全体的にモノトーンへと色調を落とし、活動する4人の女だけが元の世界から色彩を持ち込めたようだった。
「へぇ、これが久子姉ぇの能力なのか〜。」
感心して茜が言う。さく、さくと微かな音を立てて芝生の上を歩けば、その感触にわずかな違和感。屋上の端に向かって歩けば、フェンスの手前で壁にぶち当たる。これが『世界の果て』だと
いうのだから、本当に限定された空間なのだと茜も感心した。まるで、書き割りに囲まれた映画撮影セットのようでもある。
「わたしだって、あまり余裕のある術ではないんだから、早く始めましょう?」
久子の言葉は、そのままの意味だ。それに促され、茜も、クリスも、みらんも、神妙に肯いた。
さて、4人の女子が授業を抜け出し、わざわざこのような空間まで用意して話し合うこと。
本日の議題は、『お互いの素性を告白すること』、転じて『誰が花村エイジを護るのか』であった。
ことの起こりはその前夜。
とある戦いが起因する。
4人が4人とも、尋常ではない事情を持つ女子である。
倉沢茜は、宇宙からやってきた戦闘種族。
山科久子は、別次元から転生してきた女神。
北条クリスは、未来の地球からやってきたサイボーグ。
藤川みらんは、魔法の国からやってきた魔法少女。
彼女たち4人は、それぞれがそれぞれの敵対勢力との戦いを行っていた。
四人は通常、戦闘時には現状の人間界に出来るだけ干渉しないように、敵を自分たちの特殊な環境に移動させてから闘う。
そのため4人はこれまでお互いの存在を知ることなく、己の使命に則った戦いを続けていたのだが、この日偶然に4人の戦闘が同時に発生した。つまり、4種の超常の敵が、
花村エイジのいる現代の人間世界に、同時に出現したのである。
そして4人のヒロインたちは、そこで初めて自分以外の異能の存在を知ることになる。
赤いバトルプロテクターを装着した姿で、宇宙から来たロボット生命体と戦う倉沢茜。
肌も露わなビキニアーマーを身にまとい、異形の怪物と戦う山科久子。
真っ白な肌に、電子回路を思わせるラインペイントを施した姿で影のような電子生命体と戦う北条クリス。
ひらひらフリルの可愛らしい、スタンダードな魔法少女のスタイルで奇妙な敵と戦う藤川みらん。
そんな4人がばったりと、この日この時はじめて一堂に会してしまった。
192
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:27:53 ID:IfPfqXj60
つまり、4人が4人とも、自分のよく知る友人である女子が、いままで見たこともない格好で、見たこともない敵と闘っていることを知ってしまったのだ。
戦闘が終わった4人は、まだまだ心の動揺と思考の混乱を抱えながらも、それぞれのいきさつを話し合うべく、翌日時間をとることを約束しあった。
それが本日集まった、事情顛末である。
4人のうち、まずは北条クリスが口を開いた。
「エイジさんの脳には、未来から誤って転送された極秘情報が封印されている。これが敵勢力によって解放されると、この時代にあり得ない技術爆発が起きて、人類の未来は早々に
滅亡の道をたどる。それを阻止するのがワタシの任務。」
この時代よりはるか未来、科学技術の発達した世界で開発された超兵器。未来世界ですら持て余す異端科学の情報が、誤って過去に転送されてしまった。すでにこの時代、人体を
量子変換させ時間を逆行させる技術、いわゆるタイムトラベルが可能になっているのである。
そして、誤って送られたデータの転送先は、人間の『脳細胞』。未来の人類は、脳細胞に情報を『記憶』するだけではなく、ハードディスクの要領で圧縮情報を『記録』出来るように
なっていたのだ。
過去に送られたデータは、非常に小さく圧縮されていて、人間一人の脳に収まっている。しかし、何かの弾みで圧縮データが展開されてしまえば脳容量をオーバーし、他の人間の脳に
四散してしまうおそれがある。結果、その時代にあり得ない情報が広まってしまうのだ。
手っ取り早く、過去に遡ってその人間の脳からデータを回収すればいいようにも思われるのだが、間の悪いことにその人物は歴史上重要起点に位置する存在で、迂闊に手を出すことが
出来ない。
やむなく、その人物の脳を守るためにエージェントが送られた。
それが、生体サイボーグ、北条クリスである。
彼女に課せられた任務は、データを脳に植え付けられた問題の対象者を守り、歴史上問題のない自然死の瞬間にデータを回収すること。
そして運の悪い被害者が、この世界で生活する普通の少年、花村エイジだったのである。
簡単な言葉で説明したクリスだったが、やはり他の3人には今一つ理解できないようだ。
やむなく言葉を尽くし、さらに出来るだけ平易な言葉で補足をしてようやく3人の、ざっくりとした理解を得ることが出来た。
そして次は久子の番となった。
「エイジくんは、わたしたちの世界の魔王の生まれ変わりなの。今の彼が正しく天寿を全うしないと、魔王の魂は浄化されません。それを見守るのがわたしの役目よ。」
異世界の勇者であり女神でもある彼女は、自らが死闘の末に倒した魔王を、その魂を浄化させるべく別の次元に転生させた。
彼女は先んじて地球人・山科久子に転生、魔王の魂を浄化する器の少年が生まれてくる前から、彼のそばで見守ってきた。
しかし魔王の部下たちは、自分たちも後を追うように転生し、魔王の魂の器である少年を狙う。彼が早々に命を落とせば、それだけ浄化を免れた魔王が復活するからである。
久子は、『前世の使命』に目覚めた魔王の部下たちから、魔王の魂の器である少年、花村エイジを守るべく、女神の力を使って戦っているのだ。
魂の転生、といっても他人からすればなかなか納得できるものでもない。3人は久子とは違う別々の技術体系を信じきっているわけだから、すべてを理解してもらうのは不可能だろう。
それでも何とか、わかりやすい説明で3人に事情を伝え終えた。
193
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:28:22 ID:IfPfqXj60
3番手は、藤川みらん。
「エイジ先輩は人間の集合無意識の要となる特異点の一人なんです。みらん達の敵の目的は、人間の集合無意識を絶望で染めて、人類を自滅させて地球から消滅させることなんです。
みらんは、エイジ先輩を守るために、この世界にやってきたんです!」
みらんは地球の人間界とリンクした異世界『マジカラーサ』の住人だ。平たくいえば、『魔法の国』である。
先に話が出た久子の出身も異世界であるが、あちらは人間界と完全に切り離された別次元の話。みらんたちの住む世界は、人間界と表裏一体、ともに同じ地球に存在する世界なのだ。
みらんの戦うべき敵とは、みらんたちと同じ魔法の国の住人でありながら地球人類を滅ぼそうとする『スパイダリオン』たちである。
そのスパイダリオンたちが目を付けたのが『特異点』と呼ばれる存在。ただ一個の人間でありながら、集合無意識に多大な影響を与える特別な人間。
集合無意識とは、生命体の種としての無意識がひとつにリンクしたものだ。これがネガティブな思想に傾くと、人類全体が衰退の道へ向かうことになる。
つまり、人類を破滅に向かわせるためには、特異点を集中的に絶望させれば効率的なのだ。
世界に十数名しかいないといわれる特異点の一人が、日本に住む高校生、花村エイジだ。しかし本人、別段特殊な力が使えるわけでもなく、至って普通の少年。
そんな彼を守るためにマジカラーサから派遣された魔法戦士が、みらんである。
魔法の国だとか集合無意識だとか、ずいぶんとファンタジーでファジーな説明になってしまう。突っ込まれても十分な理解を得る返答が出来るほど、弁が立つみらんではない。
とりあえず、これはそういうものだから、といった具合に、大部分に仮定を残したままの曖昧な論調で状況を解説した。
残る一人となった茜が、彼女の事情を話し始めた。
「エイジの肉体には、宇宙の行く末を決めかねない超エネルギー『マスタースパーク』が眠っているんだ。だからあたしが守ってあげないといけないのよ。」
ドヤ顔だ。
茜は、宇宙を二分する戦闘種族の片一方、いわゆる正義の陣営に属する戦士だ。
その正義陣営が守る、宇宙の超エネルギー『マスタースパーク』が輸送中、アクシデントの発生で地球に落としてしまった。
さらに運の悪いことに、落とした先には現地の現住生命体がいて、その生命体の肉体に深く融合してしまったのだ。
マスタースパーク回収のためには、その生命体の肉体から分離させなければいけないが、それはその生命体の死を意味する。
なまじ、全宇宙の博愛を謳う善なる生命体だけに、その生命体をさっさと殺して回収しよう、というわけにはいかない。
やむなく、その生命体の寿命がすぎるまで待って、死んだ段階で回収すればいい、ということになった。
幸い、地球人類に比べてはるかに長命な種族であるからして、50、60のヒトの寿命ぐらい余裕で待てる。まだ焦る段階ではない、ということだ。
そして、その生命体の保護のために派遣されたのが、トラブルを起こした張本人である新米戦士、アカネイザー(藤沢茜)であった。
幸い、敵対する陣営である『ディスイーター』の本隊は、まさか辺境惑星の新米戦士の元にマスタースパークが隠されているなどとは思いもせず、未だ地球には無関心であった。
宇宙の超エネルギー『マスタースパーク』と融合してしまった地球原住民である花村エイジ、その存在を守るのが茜の役目なのだという。
宇宙規模の、それこそ宇宙開闢の頃にまで遡る、二つの陣営の戦い。
その壮大な事情を背景に持つ茜の説明だったが、なにぶん彼女の解説が大胆に端折りすぎているために、根本理解を得られないまま壮大さ、重要性だけが強調されていく。
なかなか共感を得られないまましびれを切らせた茜によって、とにかく大変な事態だ、ということで結論づけられて、彼女による説明は終わった。
194
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:28:43 ID:IfPfqXj60
本日、このような仰々しい術まで使って機密を保った空間で、4人の女子が話すのは、お互いの事情と、彼女ら4人共通の知己、地球人『花村エイジ』がどのような因果を持つのか、
ということだ。
4人の素性はそれぞれ特殊すぎて、共通点など無さそうにも思えるのだが、実のところその骨子は非常に似通っている。
共通点は、4人とも、それぞれ護るべきものがあるということなのだ。
つまり、彼女たちの戦いは基本的に、敵を攻め立てて滅ぼすたぐいの侵攻戦ではなく、大切なものを護るために闘う、防衛戦といえる。
四人はそれぞれ、闘う理由があり、エイジを守る大儀がある。
一同がそれぞれの事情を説明したあと、こんどは茜が口を開いた。
「地球とか人類とか、スケールがちっちゃいよ。こっちは宇宙の未来がかかってるんだから。」
へらり、と緩やかな笑いを浮かべて、茜が言った。その言葉にはクリスとみらんも、む、と唇をとがらせる。
しかし茜に意見したのはその2人ではなく、穏やかに言葉を聞いていた久子だった。
「その、宇宙スケールのエネルギーを守る戦士にしては、少し頼りないような気がするのだけど。茜ちゃんが落としちゃったんでしょ?」
「う、ぐ・・・。」
的確な指摘。非常に痛い所を突かれた茜は、短く唸ってから、しゅんと力なく項垂れた。
いつも通りといえばいつもの通り、相変わらず久子には頭が上がらない茜であるが、必ずしも久子が常に全員の上位とは限らない。
茜をいさめた久子に、今度はクリスが意見する。
「それをいうなら、ワタシ達の世界とは別次元の敵を引き込んでいる、傍迷惑な女神様もたいがいなのでは。」
そのあたり、普段からかなり後ろめたく感じている久子は、はっきりと指摘されるとてきめんにへこんでしまう。
クールに言い放ったクリスであるが、彼女自身も次の標的になる。
「って、エイジ先輩は未来の事故のせいで迷惑してるのじゃないかな?」
そう呟いたのはみらんだ。
「だいたい、みなさんはエイジ先輩に迷惑をかけすぎなんですよ。
そのてんみらんは純粋に、特異点になってしまったエイジ先輩を守りたいだけなんですから。」
一同のなかで最年少、唯一の後輩である彼女から説教にも似た言い方をされて、残る三人一斉に眉尻をつり上げた。
「お子さまは黙ってて!」
「ふぇぇ・・・。」
三人同時にキツく言い返されて、調子に乗りかけていたみらんは早々に出鼻をくじかれた。
四人が四人とも事情がある、とはいえ、それらは当然彼女ら自身の持ち込んだ事情であり、この場合の被害者である花村エイジからすれば迷惑きわまりないことである。
論点がそこにシフトすると、必然的にお互いのミスを指摘し合うことになるのは当然といえる。
そうして一通り、お互いの痛いところを指摘しあうと、焦れた茜が声を上げた。
「いいから! エイジのことはあたしが守るから! みんなだってエイジが無事ならそれでいいんでしょ?」
自分の未熟をさんざん指摘された茜が、キレたようだ。
彼女はそういって、他者の排除を宣言した。確かに、この場合の被害者である花村エイジが結果的に無事でありさえすれば、守護者が誰であろうとも、いや、誰も守らなくてもいいという
極論になる。
茜はそれをふまえ、自分が責任を持つから彼に手を出すな、というのだ。
しかし、そう言われて簡単にみんなは引き下がらない。
195
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:29:14 ID:IfPfqXj60
「いいえ。エイジくんはわたしが守ります。ですからみなさん、安心してお引き取りを。」
「ワタシは、エイジさんを守ることが任務。それ以外の選択肢はない。」
「エ、エイジ先輩を守ることは、みんなのためになることなんです! みらんが全力で、責任を持ってやり遂げますから、みらんに任せてください!」
結局は三人とも、同じことを申し出る。
その後も、自分の能力があれば彼を守れる、特殊な局面で彼を守れるのは自分しかいない、等々と、誰一人として彼を守ることを他人に委ねることをしない。
そうして議論は口論となり、膠着の様相をみせたとき、またしても茜がキレた。
「もう! あたしはエイジが好きなの! だからいっしょにいたいのっ!!」
今まで、彼女なりに述べてきた理屈や義務責任、そう言った硬い言葉の根っこにある本音の部分が出た。
義務があるから戦うのではない。
負い目があるから守るのではない。
ただ純粋に、彼が好きだから、彼のためだけに戦いたいのだ。
顔を真っ赤にして、今まで誰にも告げたことのない本心を叫んだ茜。
これは彼女の初恋だ。出会いのいきさつこそ不幸な事故であり、上司から言い渡された使命であり負い目からの責任感であった。
だが今ここにいたるに彼女の戦うべき理由は、当初のそれとはまるで変わっていたのだ。
しかし、そう言った変化を遂げていたのは、茜だけではない。
「わたしだって、エイジくんのことが好きです。魔王の魂とか、そんなの関係ありません。」
幼い頃から、姉のような存在として彼を見守ってきた久子。しかしいつしか、むしろ彼の存在こそ自分の心を癒してくれていたことに気が付いた。
「ワタシも、エイジさんのことが、好き、なのです。こんな気持ちになるのは初めてで、ワタシ自身、戸惑っているのですが。」
任務に忠実なサイボーグであったクリスが、エイジと出会うことで変化を始めた。凍った心が溶けだした。止まっていた歯車が動き出した。彼との出会いは、彼女が無くした心を見つけだす、
奇跡ともいえる出来事だったのだ。
「エイジ先輩は、みらんにとっては運命のひとです。任務とか関係なくて、とても大切なひとなんです。」
純粋な少女の恋心は、強い。運命的、などという乙女風のコーティングであっても、その芯はただただ一途に男を慕う、女の強い愛情なのである。
たとえお仕着せで与えられた任務がその出会いであっても、そこから育まれた感情は、正真正銘、彼女にとっての純粋な恋心なのだ。
ここに来て、四人の女がこの場に集まった趣旨が大きく変わった。
一人の守護対象にまつわる脅威の確認と共有、といった情報交換が当初の趣旨だった。
しかし今は、一人の男にたいする思慕恋慕を主張し合う場となってしまった。
つまりは、修羅場、である。
当初こそ、事情は異なるとはいえそれぞれの論理的な主張で議論がなされていたのだが、もう今となっては、ただ感情に従って口論しているだけであった。
好きな男を譲らない、という点においては、四人は誰にも劣らぬ意志を持っていた。
長い時間、気持ちを暖めていた女。短いながらもより強く惹かれていった女。
男に対する接し方はそれぞれ違いはあるものの、彼のことが好き、という点に関しては同じベクトルの四人。
そんな四人が言い合っても、簡単に決着が付く問題ではない。
そうやって口論までも膠着すれば、今度はそれが迷走するのも仕方のないこと。
196
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:29:44 ID:IfPfqXj60
「ワタシは、エイジさんに抱かれたい、と強く想う。」
脈絡無く、唐突にクリスがいった言葉に、久子と茜は言葉を詰まらせた。
しかし、言葉の真意を読み切れなかったみらんだけが反論した。
「みらんだって、エイジ先輩に抱きしめて欲しいです。ぎゅっ、ってしてくれたらすごく嬉しいです!」
ようは、みらんはまだ子供だということだ。
それを諭すかのように、クリスがいう。
「ワタシが望むのは、セックスです。エイジさんに、ワタシを女として抱いて欲しい。」
そこでようやく意味を悟ったみらんが、顔を真っ赤にして口をぱくぱく。
北欧の血を強く引いた美少女、クリスが、その華奢な身体を寂しそうに抱いた。男を求める、切ない女の仕草だ。
そんなクリスの、かすかに漂わせるオンナの空気に、たまらず声を上げて張り合うものがあった。
「わたし、エイジくんの赤ちゃんがほしいの!」
久子だ。
普段から慎ましく、あけすけなことは言わない彼女が、思わず張り合ってしまった。
「わたしも、エイジくんとエッチなことがしたい! それで、二人の愛の結晶を作りたい!」
異世界の女神も、ずいぶんと普通な女の夢を持っていた。
「そ、そんなの、あたしだって欲しいに決まってるよっ!」
「ワタシの本能が告げている。彼の子を孕めと。」
「みらんだって、エイジ先輩の赤ちゃん、欲しいですっ!!」
子造り発言は、他の三人にしてもつられて出てくるものの、もちろんそれは今さっき思いついた言葉ではない。心の奥に秘めていた希望を明かしただけにすぎない。
「エッチなことしなくても、コウノトリさんだったらきっとみらんとエイジ先輩のところに来てくれるはずです!」
ただ一人だけは、あまり正しい知識を持っているわけではなかったようだ。さすがメルヘン世界の住人。
それまでかなりヒートアップしていた三人は、天然ボケともいえるみらんの言葉に、がっくりと力が抜けてしまったのだった。
197
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:30:09 ID:IfPfqXj60
少しの間、言葉が途切れた。
こうして四人、言い争ってはいるが、基本的には仲がいい。
茜と久子は幼い頃からの姉妹のようだし、クリスも素直で気のいい少女だ。みらんは健気で、みんなの妹分として可愛がられている。
いままでそれぞれが、一人の男を譲らない、と強く主張し合ってきた。
しかし、言葉が途切れた少しの今、ふと思う。
自分が彼と結ばれたとき、他の三人はどうなるのか。
その自問の、答は簡単に出た。
つまり、自分が彼と結ばれなかったときのことを想像すればいいのだ。
それはひどく寂しく、悲しい気持ちだった。
そしてそれに気づいてしまっては、自分ただ一人が彼と結ばれても、完全に幸福な気持ちにはなれないということも同時に明らかになった。友人たちに強い悲しみを与え、自分だけが
幸福になることが出来るのか?
その考えに行き着いてしまい、四人の途切れた言葉はしばらく紡がれることはなかった。
「て、提案があります。」
無言の時間を止めて、発言したのは久子だった。
結論。
四人同時に交際してもらおう。
198
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:30:36 ID:IfPfqXj60
四人の少女が申し出た、全員一緒に付き合ってもらうという提案は、少年からしても相当の驚きではあったらしく、はじめはかなり狼狽した。
四人の意見さえ揃えばあとは行動あるのみ、彼女らは翌日、話題の焦点である少年、花村エイジとの対話の時間を設けた。
そして彼女らは少年に、昨日決めたばかりの提案を少年に申し出た。
もちろん、彼女たちの素性はすべて伏せたままだ。それらのことを守護対象であるエイジ少年が知るところとなれば、間違いなく彼は彼女らをおもんばかり、自分にできる最善の行動を
とろうとする。場合によっては彼に強い危険が及ぶことになる。
それならば、と四人は約束した。
今後いっさい、彼に気づかれることなく、彼を守り通そうと。
そして前述の通り、彼に対する告白は、今まで通り少年と接してきた少女として、四人の気持ちの部分だけを正直に告げた。
普通に考えれば、四人の女たちがそれぞれ自分を選べと迫るであろうところ、同時に付き合ってくれと言う申し出となったわけだから、少年も面食らうはずである。
しかし彼とて、四人それぞれに恋愛感情を持ち、取捨選択の出来ないところまで好意を高めてしまっていた状態であり、彼女らの申し出はその唯一の救済でもあった。
かくして、男一人と女四人同時の交際が開始された。
肉体的な交わり、つまりセックスに関しても、交際開始のほぼ直後に行われた。
その際に、彼女ら四人の間でいくつかの取り決めがあった。
ひとつは、抜け駆けをしないこと。
他の女を出し抜いて、一人だけが少年と関係を進めることがないように、誓い合った。
つまり、セックスをするときには必ず全員揃ってでしか行わないこととし、プレイ内容も四人足並みをそろえるようにした。さらに、能動的な受精もしばらくは控えることにして、
誰か一人が危険日となれば他の者も性交時には避妊具をつけて臨むようにした。
この、避妊に関しては、四人は少年に、まだ学生だから、といった至極当然の理由付けをしているのだが、本音では先述の諍い時のように彼の子を宿すことを強く望んでいる。
しかし、彼に話した理由は仮初めであり、四人がそれぞれ超常の存在と戦う女戦士であることが本当のところである。
妊娠して、おなかの大きくなった状態では、敵と戦い彼を守ることも出来ないであろうからだ。
四人が取り交わした取り決めの二つ目は、先も言ったことだが、彼を戦いに巻き込まないこと。
実際、彼は非常にデリケートな立場である。
前述の通り、四人のそれぞれの戦う理由の深いところに食い込んでいる彼は、敵に襲われて負傷するといった事態も避けなければならない。
彼女らの持つそれぞれの力には、瀕死の怪我をも治してしまう奇跡の力がある。しかしそれらは、彼の持つ特殊な事情を考慮すると迂闊に使用することが出来ない。彼女たちの力が
それぞれの事情に対して、どのように相互影響するのかまったく読めないからである。
それらの理由から、彼を戦いに巻き込まないことを徹底することに決めた。
そうなると当然、彼女らの正体を彼に明かすことも言語道断となる。
残念ながら、彼女たちはそれぞれ固有の敵対存在以外に対しては、決定的な攻撃方法を持たない。たとえば、みらんの魔法攻撃が通用するのはみらんが戦うスパイダリオンに対してであり、
久子の敵である転生体や茜の戦う宇宙から来た機械生命体、クリスの戦う情報生命体にはほとんど効力を持たない。そしてそれは、茜や久子、クリスにしても同じことが当てはまる。
四人は、共闘は出来ないながらも、彼を守るためにそれぞれががんばることを誓い合ったのだ。
そのような顛末があり、少年と暮らす平和な学園生活の裏で、影となって戦う少女たちの活躍が続くのである。
ここで時を進め、四人の少女と一人の少年が結ばれて数ヶ月が経過した日の出来事。
出来事、とはいっても、その日も特に変わりなく、ほぼ毎週となったハーレムパーティーの夜。
199
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:31:07 ID:IfPfqXj60
四人の少女と一人の少年による乱交セックス、以後お泊まり会と称する集まりは、通常、クリスの住居にて行われる。
この世界の人間夫婦の実子として転生した久子や、偽りの記憶を与えられた家族の住居に住む茜やみらんの住居はそれなりに都合がつきにくく、会場には適さない。両親こそいないものの
祖父等と同居しているエイジ少年の自宅も同様である。
その点、仮想の両親を立体ホログラム投影で誤魔化してきたクリスの住居は、実質一人住まいであるために都合がよかったのだ。
ちなみに、茜、久子、みらんはそれぞれの両親に、クリスの家で勉強会という口実を使っている。もちろん少年少女だけしかいないなどとは伝えず、ちゃんとクリスの両親も家にいることに
なっている。さらにみらんの得意とする、人間の精神に影響する魔法を使い、疑いが向かないようにしてある。
みらんの魔法を使って、彼らの乱交を当たり前に認めさせることも可能だったが、あまり現実からかけ離れた常識改変は長期的に見ると破綻する可能性が高く、出来るだけリスクの
少ないものを選んで実行しているのだ。
そしてエイジ少年は、祖父に対して、クリスの家の防犯目的であると説明した。しかし彼の祖父はうすうす、彼と四人の少女の関係を見抜いている節があり、なおかつそれを肯定していた。
さすがに四人の真の姿までは理解していないだろうが、女四人を同時に恋人にした孫の甲斐性を誇っているようにも見受けられる。
話がやや逸れてしまったので、ここで軌道修正。
この日は土曜日、いつものように午前中の授業を終え、午後の課外活動をすませたあとに彼らは、揃って夕食をとった。
当初の予定であったすき焼きは、みらんと敵の戦いの影響で臨時休業となり、次候補であったステーキレストランはスパイダリオンの前線基地であったが、
彼らの一時撤退により放棄されてしまった。
やむなく近場の店で簡単に食事をすませた彼らはクリスの家に直行し、今宵のパーティーが始まったのである。
先にエイジが入浴し、次いで女たちが順番に風呂を使う。
この入浴にしても、身体を許し合った若い男女ならば、一緒に入ってあれやこれやといった楽しみもあるはずなのだが、残念ながらそれはまだ実現していない。
この風呂はアパート向けの小型ユニットバスで、五人が一緒にはいるのは狭すぎる。
四人は、抜け駆けしない取り決めに従い、五人一緒に入れないのならいっそ彼とは別個に入るべきだということになった。
一番風呂は男から、などと、昭和の女のような奥ゆかしさを発揮して彼に入浴を勧め、そのあとで茜と久子、クリスとみらんがそれぞれ二人して湯を使った。
クリスとみらんが入浴をすませ、部屋に向かった。その部屋とは、今晩彼女たちが彼を迎えるための部屋ではなく、いわば控えの部屋である。エイジ少年には、クリスの両親の部屋といって
入室を遠慮してもらっているが、その両親とは架空の存在なので、実質的にもこの部屋はクリスのための控え部屋として使用されている。
「うっ!」
クリスがその部屋に入るやいなや、目に飛び込んできたビジュアルに、彼女らしからぬ驚きの声を上げた。
続いて、クリスの背後からひょっこりと顔を出したみらんも、同様に声を上げた。
「な、なんて格好ですか、茜先輩!」
部屋にいたのは、先に入浴を済ませた茜と久子だ。
その二人の内、主に茜が、クリスとみらんの驚きの元になっていた。
「ん? どしたの?」
二人の驚きに、茜はスクワットをやめないままに声を返した。
茜は、暇があればこういったスクワット運動や、体の筋肉を伸ばすためのストレッチ体操などをして時間をつぶしていた。
そのことであれば、クリスもみらんも特に驚くことではなかったが、ただ今はその運動を、ずいぶんとおかしな衣装をつけて行っていたからだ。
いや、衣装というよりも、紐、だ。
「ああ、これ? 今日のランジェリーショーのために選んだとっておきの下着なんだ。」
そう言って茜は、立ち上がって身につけた紐、もとい彼女の弁を借りるならば下着を、クリスとみらんに披露した。
200
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:31:31 ID:IfPfqXj60
「わたしは、やめなさいってさんざん言ったんですけど・・・。」
呆れすぎて憔悴したような表情の久子が言った。
彼女は、大人っぽい黒のレースの下着をつけている。その下着の趣味も上品で、黒とはいえ下品すぎず、久子の優雅な美しさを引き立てている。
さて、茜の言った『ランジェリーショー』とは?
数日前に遡る。
夜の闇、ほの暗い灯りの下に集まった少女たち。
ひらひらフリルのミニスカートに、メルヘンチックなパステルカラーの魔法少女スタイルの、みらん。
かすかな光をもキラリと赤く反射する、深紅のメタルスーツに身を包んだ、茜。
純白の裸体にフィットした、電子機器のサーキットを思わせるラインを走らせたボディスーツの、クリス。
グラマラスな肢体の胸と腰、必要最小限の部位を守るビキニアーマーの女戦士、久子。
もし、その場を目撃するものがいれば、「夜中にコスプレの集まりとはまた酔狂な」などと呆れるところだろう。
しかしここは、そういった通りすがりの目撃者のたぐいが存在しない世界、『時間凍結領域』。
この世界を、宇宙からの機械生命体の脅威から守るため、スーパーテクノロジーによって作り出された完全無人の世界。
この日はたまたま、四人がほとんど同時に敵の襲撃にあっていた。何とかそれを退けたあと、茜が他の三人を誘い、少しの休憩時間となったのである。
戦いを終えたあとの四人は、その肉体の疲れを睡眠で癒すまでの間しばらく、仲のよい友人たちと談笑し、精神の憩いとしているようだ。
彼女たちは、人知れず、主に花村エイジ少年には絶対秘密厳守で戦う女戦士たちである。本来ならばその秘密を、自分一人で背負って戦わなければいけなかったはず。
しかし、こうしてぶっちゃけて話せる友人が出来たことは、彼女たちにとって非常に大きな、心の息抜きなのである。
戦いの中の愚痴もあろう、悩みもあろう。しかしそれを友人たちに話すことで、いったいどれほどの救いとなってきたことか。
そして四人の話題は、必然一つに絞られる。彼女ら共通の恋人である、花村エイジのことである。
その日は、次のハーレムパーティーに向けて、何か彼を喜ばせる趣向はないものか、と意見を出し合っていた。
「ランジェリーショーをしましょう!」
意気揚々と挙手して発言したのは、魔法な乙女・みらくるみらん。
「みらんたちが、それぞれとびっきり魅力的な下着姿をエイジ先輩に披露して、楽しんでもらうんです。」
耳を傾ける三人に、弾むような口調で語るみらん、自信たっぷりだ。
「なんていいますか、下着は女の子を可愛らしく包むラッピングみたいなものだと思うんです。
たしかに裸のほうがえっちくてエイジ先輩も喜ぶとは思うんですけど、たまには、こういうのも良いかなって。」
「なるほど。エイジさんにだけ見せるインナーのおしゃれというのも、なかなか興味深いですね。」
腕を組み、ふむふむと納得する、SF未来世紀クリス・クロス。
「まぁ、それでエイジくんが喜んでくれるなら、そういうのもいいかも。」
恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、まんざらでなさそうな神聖世界のエクスソフィア。
「よーし、それじゃあとびっきりセクシーなの選んで、エイジを悩殺しちゃうぞ!」
無駄に意気込み力のあふれた、宇宙超人アカネイザー。
みらんの提案に、三人はおおむね同調したようだった。
そしてみらんの提案は承認され、次回の趣向には彼女らの秘密のランジェリーショーが催されることとなった。
201
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:31:52 ID:IfPfqXj60
斯くいったいきさつがあった。
そのいきさつでもって、茜の、この下着と言うにはあまりにも面積が少なすぎる紐状の下着にいたるのである。
なまじ、茜が胸も豊満で、女性としてのボディラインも整った魅力的な裸体であるから、そのあまりにも露骨なイロモノ下着の着用は、センスを疑うシロモノとなるのだった。
クリスが入室し、みらんが続いてから後ろ手に扉を閉めた。
「茜さん、『それ』、なんなんです?」
もとより表情の変化の少ないクリスだが、それでもやや睨むように瞳を細くすれば、視線はさらに冷たいものになる。
「『それ』って、この下着のこと? さっきも言ったじゃん。」
「『それ』、下着だったんですか。ワタシはてっきり、ご自慢のメタルスーツのセンサー端子か何かだと思いました。」
戦闘用スーツ着用時に、装着者のバイオフィードバックを目的としたセンサーを肌につけることがある、というのはクリスの元いた時代での知識。
クリスは、もちろん比喩ではなく揶揄の意味を込めてそう言ったのだが。
「あたしのスーツは、母艦が直接あたしのコンディションをモニタするから、そんなの着ける必要ないよ。」
皮肉も通じなかった。
「茜先輩、その下着は、下品すぎますよ。」
クリスの皮肉も通じなかったのを見てみらんは、ダイレクトに言ってのけた。
それに続いて、久子も発言する。
「わたしもさっきから、さんざん言いました。」
久子の言葉には、多くの溜息成分が含まれていて、さすがにそれには茜もムッと唇を尖らせた。
クリスみらん両名がくるまでに、久子からしつこく言われていたのだろう。
「べつに下品ってわけじゃないよ。セクシーといって欲しいな。」
茜が反論。そして一言付け足して。
「普段、ピチピチのビキニアーマーで闘ってる久子姉ぇに言われたくないな〜。」
「なッ!」
逆に突っ込まれて、久子がいきり立つ。
「あ、あれは、女神の正当な戦闘衣装なんです!いかがわしい目で見ないでください!」
確かに、姿だけを切り取って論じるのであれば、久子の戦闘姿は、きわどいビキニの面積くらいしか肌を被うものがない、露出過多の姿といえよう。
強い口調の久子だが、その頬の紅潮は憤りからだけではないようだ。どうやら本人も、多少の羞恥は感じている模様。
「しかし見た目はどう見てもビキニ。」
突っ込んだのはクリス。
先ほどまでの矛先を茜から久子に向けたクリスは、事実を、ただ冷静に述べたにすぎない。
「ほとんど裸に近いボディスーツで闘ってるクリスさんには言われたくないです!」
「まぁね、あれは普通の人が見たら、ただの露出狂だよね。クリスもほんと、よくやるよ。」
矛先が返ってきてしまったクリス、唇をへの字に結んで閉口した。確かにその指摘もまた、事実だからだ。
202
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:32:16 ID:IfPfqXj60
「み、みなさん、落ち着いてください〜」
なんだか口論が茜のエロ下着を責める流れから拡大しつつあるのを感じたみらんが仲裁に入るも、
「「「お子さまは黙ってて」」」
三人同時に返されてしまった。
みらん涙目である。
「ふえぇ・・・・・・」
結局、茜の紐下着の件は有耶無耶になってしまった。
女たちは各自それぞれ、今夜のためにチョイスした下着を着用した。勝負下着、というのが適切か。
とにかく、それらの下着が、エイジ少年のお気に召せばなにも問題ないだろう、ということなのである。
髪を整えたり、お肌のケアをしたりと、乙女たちはいろいろと身繕いが必要である。
その間、少年は居間でテレビなどを見てくつろいでいるわけだが、あまり待たせるのも酷だろうが、少年を抜いた四人の秘密話もまだ少しあるようなので、彼にはもう少しの間待っていて
もらおう。
「あのー、みなさんにお聞きしたいんですけど。」
クリスのサラサラ金髪を梳りながら、みらんが言った。
「エイジ先輩って、えっちの回数とかすごいじゃないですか。」
彼女の言葉に、皆一様に頷く。
「あー、確かにスゴいよねぇ。相当鍛えて体力には自信があるあたしでも、次の日は腰がガクガクいっちゃってるもん。」
スポーツ万能でならす彼女ですら、少年の責めには屈するしかない現状である。
「いろいろと調べてみたんですが、この世界の、ふつうの男の人って、短時間のうちに何回もえっちするのは難しいらしいんです。
これって、どなたかがエイジ先輩の身体になにか手を加えたってことなんですか?」
みらんの、素朴な疑問であると同時に、少年の肉体に関する根本的な異常現象の確認である。
「それは、ワタシも疑問に思っていた。精液の量も、1度目の射精から次第に薄れていくものだと聞いた。もちろんワタシはなにも手を出していない。
不用意に調整を入れると、プロテクトに悪影響があるかもしれないから。」
クリスが、冷静に分析する。しかし当然、思い当たる節もないわけだ。
「あたしだって、なにもしてないよ? エイジがあたしの生まれて初めての相手だったから、地球人のセックスってこういうもんなんだ〜って思ってたし。」
「わたしも、とくにこれといっては。」
茜が言い、久子も短く同調する。
「ただ、考えられる原因もなくはありません。なにせ、エイジくんは魔王の魂を受け入れた器だから。」
203
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:32:45 ID:IfPfqXj60
付け加えるように、久子が言うと、
「そういわれると、マスタースパークのエネルギーが影響してるのかもしれない。」
同じように茜も思うところを述べた。
「なんてったって、特異点ですから。」
みらんまでも、短く言葉を付け加える。
「・・・・・・・。」
凪のように穏やかな表情が、ほんの少し動いた。わずかに強く唇が結ばれ、不機嫌な表情となる。どうやら、自分のかかわる事情からは、特にそれらの影響を与えていなさそうであると
自分でわかってしまったために、それが面白くないのだろう。勝ち負けがあるわけでもないのに、負けた気分だ。
「結局、ワタシ達の誰もがエイジさんを加工していないとなれば、もうあれは天然の絶倫ということになる。」
クリスがそうやって強引に話をまとめにいった。いっそ、誰の事情からも影響を受けていないと結論づけたいらしい。
「エイジさんは、生まれついての絶倫なのです。それが結論です。」
クリスが最後に、これ以上の意見は許さないと言わんばかりにぴしゃりと会話を切り上げた。
このように、一応の確認という形はとったが、それ以前に四人の結んだ協定によって、エイジの肉体、精神への介入は禁止と取り決めてある。
ただでさえエイジの肉体および精神は、宇宙の高エネルギー『マスタースパーク』の融合した魔王の魂の器であり、未来からの超科学データを封印した頭脳は人類全体の集合無意識に
強く影響する特異点なのである。
とにかく、これ以上不用意に、エイジへの干渉を避けねばならない。記憶削除なども出来ないから必然的にエイジに秘密を見られてはいけない。怪我の程度を問わず彼女らの特殊な能力を
使うわけにはいかないので、すべては現代医療技術に頼るしかないとなれば、肉体的な危険にほんの少しでもさらすわけにもいかない。
それ故に、彼女らの戦いは彼に知られてはいけない。世界中誰もが知るところになったとしても、絶対彼にだけは秘密にしなければいけない。
だから、そんな四人の決意は、彼の前ではおくびにも出さない。
彼の前では、少女戦士ではなく、恋する乙女でありたい。
204
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:33:34 ID:IfPfqXj60
「あとさぁ、」
茜が言う。柔軟体操も〆に入り、軽く体を慣らしながら。
「みんな、あれ、本当に演技なの?」
茜のその言葉に、ほかの三人は、ギクリ、と身体を硬くした。
「あたし、エイジに抱かれてると幸せになっちゃって、あんな感じで乱れちゃうんだけどさ。
久子姉ぇに言われたみたいに、とても演技なんてできないよ。」
茜の言葉、それは、四人の少女たちがエイジ少年に初めて抱かれる前に、久子から与えられた指示に起因する。
『エイジくんの魂には、魔王の魂が入っています。
効率的に浄化を進めるためには、魔王が持つ嗜虐心を発散させてあげなければいけません。
しかし、普段の生活でそれを外に出すと、周りに被害が出ますし、エイジくんの評判もさがってしまいます。
ですから、エッチの時に、わたしたち相手に思いっきり発散してもらいましょう。
恥ずかしいだろうけど我慢して、おもいっきりエッチに振る舞いましょう。』
久子の指示に、ほかの三人は快く同意した。
そして、セックスの時にはできるだけ、彼にいじめられるのが嬉しい『フリ』をして、彼の嗜虐心を満たし発散させてあげようと決めたのである。
「みんなはエイジのために一生懸命演技してるのに、あたしは素のままであんな感じだから、みんなに悪いなぁ、っておもっちゃうんだ。」
茜が言ったあと、少しの微妙な間を空けて、みらんが挙手、発言した。
「あのぅ、みらんもじつは、演技なんて出来ませんでした。
恥ずかしいですけど、あれ、本当に嬉しいんです。
実はみらん、本当はスゴいエッチな女の子だったみたいです。」
恥ずかしそうに告白した。
見かけは中学生かと思える彼女の乱れる様は、そのギャップが激しすぎて非常に背徳的な雰囲気を持つ。
彼女の告白によれば、どうやらそれは演技抜き、本当の彼女の姿だったようだ。
「だよねぇ!! エイジのセックス気持ちよすぎて、演技なんかしてる余裕なんてないよね!?」
「そうですよ! もう、みらん、コウノトリなんて信じられません! 本当のオトナの身体になりましたから!!」
告白を終えた茜とみらんは、ハイタッチして同類の契りを結んだ。
そんな二人の言葉に続き、今度はクリスが挙手。
「言っておきますが、ワタシは最初から演技など考えていません。
ワタシをイカセまくっているのはエイジさんのセックスの強さに間違いありませんし、
恥ずかしく乱れまくっているのはワタシがエイジさんに屈服した牝である当たり前の証左です。」
無表情でVサイン。
「あ〜、わかるわかる! もうあたしの身体は、エイジに征服されちゃったんだ! って考えただけでも濡れて来ちゃう!!」
「みらんも異存なし!です! みらんの身体はもう、エイジ先輩のオチンポ無しには生きていけません!!」
「ワタシがオンナの身体で生まれてきたことは、このためにあったのだと、真理を見ましたね。
エイジさんに抱かれて演技などと、おこがましいにもほどがあります。」
そうして三人は、はいはいはい!と互いの手を合わせてトリプルハイタッチ。
205
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:34:06 ID:IfPfqXj60
「というわけで、ゴメンね、久子姉ぇ。」
「みらんたち、久子先輩の指示を守っていなかったんです。」
「久子さん一人に恥ずかしい想いをさせて申し訳ありません。」
告白を終え、三人の仲間意識がまとまって、残る久子に謝罪する。
当初のように指示を出していた久子だが、実際にほかの三人は演技などするまでもなく、エイジのセックスに屈服し、さんざん恥ずかしい嬌態を晒していたのである。
「そ・・・そうでしたか。
でも、それでエイジ君が喜んでくれるなら、なにも問題はありません。
わたしも、今まで通り、エイジくんに喜んでもらえるように恥ずかしい演技を・・・。」
つい、と視線を逸らせて言う久子、その挙動に三人、ピンときた。
「実は久子姉ぇも、演技とか関係なくヨがってたのかな?」
「いつもの久子先輩からは想像も出来ないほど、いやらしくイきまくってましたよね?」
「エイジさんに虐められたいとか、どうみても本心でしたし。」
三人が三人、ニヤついた視線で久子を責める。
そしてとうとう、その視線に耐えかねたのか、久子が声を上げた。
「ああもう! そうですそのとおりです!!
わたしも演技なんて出来ませんでした!
エイジくんに抱かれてると、もうメチャクチャにして欲しくてたまらなくなっちゃうの!!
気がついたら、どんどんエッチな言葉でエイジくんに甘えてるし、信じられないくらい恥ずかしい格好でエイジくんを誘ってるの!!
わたし、女神なのに、スゴくイヤラシいオンナなの!
エイジくんのためなら、どんなエッチなことだってウキウキして応じちゃう、インラン女神なの!!
もうわたし、エイジくん専用のセックス奴隷なの!!」
普段押さえてる分、出るときは勢いがついてしまうのだろうか。
久子は顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら、恥ずかしい告白をまくし立てた。
そのあとしばらくの間。そして、茜が久子に声をかけた。
「いいじゃん、ドスケベインラン女神で。エイジもきっと、そんな久子姉ぇのこと、好きに決まってるし。」
慰めるような、励ますような。
「そうですよ、久子先輩のイヤラシい姿、とってもエロいんですから、自信を持って下さい!
久子先輩くらい完璧なマゾ牝奴隷はそうそう居ません!
エイジ先輩も絶対喜んでますよ!」
「エイジさんが天然の絶倫ならば、久子さんも天然の精液便所女神。
誰に遠慮することはありません。もっとその浅ましい本性をさらけ出すのです。」
三人からそれぞれ声をかけられて、その慰めの心に打たれた久子は感動しかけたが、それにしても。
「・・・・・・そこまで言わなくても・・・・・・。」
非常に複雑な気分なのであった。
206
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:34:30 ID:IfPfqXj60
「さて、それじゃあそろそろ行きますか。」
茜が立ち上がる。まるで痴女かと嗜好を疑うセクシーランジェリーだが、その中身はまっすぐな、純情乙女一直線だ。
「そうね、エイジくんも待ちくたびれてるだろうし。」
続いたのが久子。彼の姉的存在にして、実は彼女の方が彼に依存しているという事実。
「みらんも、ドキドキしてきました〜!」
みらんが倣って、跳ねるように立ち上がった。恋をするのも一生懸命、健気さが光る女の子。
「では、エイジさんと過ごすご褒美タイム、存分に満喫しましょう。」
最後に立ち上がったクリス。クール無表情はあくまでも一見だけ、微細ながらも意外と表情の多い彼女。
そうして四人は部屋を出た。
これから、最愛の男との、幸せな時間を過ごす彼女たち。
とりあえずはランジェリーショー、エイジ少年が悦んでくれれば嬉しい、というのは四人共通の思惑で。
胸を躍らせる少女たちの足取りも軽い。
さてそれでは、ショーの開幕。
はじまり、はじまり。
END OF TEXT
207
:
『こんなメディアミックスを考えた』設定編
:2011/11/03(木) 00:35:03 ID:IfPfqXj60
コンシューマーゲームソフト『秘斗忍術姉妹伝かげりとあかり』
近隣からは『幽霊屋敷』として恐れられる廃家屋に、二人の少女が息を潜めて暮らしていた。
彼女たちは、とある使命を帯びて、ここにいた。
生まれたときから架せられた、運命の少年を守るという使命。
その使命を託された、二人の少女。
姉、かげりと妹、あかり。
無敵の忍法を使い、数多の敵を屠ふってきた、恐るべき手練れの姉妹。
その正体、いまだ誰も知らず。
20012年冬発売に向けて、鋭意制作中!
208
:
名無しさん@ハーレム大好き
:2011/11/03(木) 00:35:47 ID:IfPfqXj60
以上です。
長々と申し訳ありませんでした。
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