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「のと」本編
3
:
shin
:2006/11/21(火) 17:41:11
西暦2015年8月9日、午前11時2分 長崎 野母岬沖
平甲板型の船体は、素人には空母に見えるかもしれない。しかしながら、「のと」は海上自衛隊輸送艦であり、のと級LSTの1番艦である。四隻建造されたおおすみ級の運用実績を鑑み、更に多極化する自衛隊の各種PKO活動に対応する為におおすみ級輸送艦を拡大再設計した輸送艦であり、その排水量は17000トンに達していた。
今年五月に就航、慣熟訓練終了後、佐世保地方総監部での物資収容を終え、指定された訓練海域である硫黄島近海に向かっての航行中であった。のとは本訓練が終了次第、中東で行われているPKFに派遣される予定である。初期のPKOと違い、戦闘が想定されるこの時期の中東派遣を念頭に置いた訓練は、実戦さながらの状況で、のとの揚陸・収容能力をフルに確認する事もあり、艦内に搭載された各種戦闘車両は、全て規定通り武器弾薬もフル装備で満載されていた。
半島有事も想定されている昨今では、これも当然の事かもしれなかった。
「aircraft carrier。」
のと艦長矢崎少佐は、感慨深いように呟く。
それもそうである。
21世紀に入り、自衛隊もその戦力を大きく変貌させようとしていた。
おおすみ級が登場したときには、航空機の発艦能力があるかどうかは、大きな問題としてマスコミで取り上げられていた。
しかしながら、それから十数年たった今日では、誰もそんな事を気にすることも無い。
日本を取り巻く政治環境がそのような余裕を奪い去ったといって良いだろう。
艦橋から見える後方の平型甲版の中央部に置かれているのは、どう見ても戦闘機である。
航空自衛隊の次期防空迎撃機、FX-S10、それがあたりを気にすることも無く、平然と繋留されている。
過去十年間の間に何度と無く繰り返された、国連による紛争地への緊急展開と停戦監視任務において、自衛隊程その評価を高めた軍隊は無かった。
極端なまでの人命尊重と、例え犠牲者が出ようとも武器の使用を最低限に抑えようとする姿勢が奇妙な事に高い評価となっていた。
結局、紛争当事者達にとって、問答無用で両者を停戦に導く欧米の軍隊よりも、出来うる限り対話を重視する軍隊の方が蒙る被害も小さい。
そう言うことだった。
大規模な紛争抑止力は、米国を中心とする国連軍の役割、それに対して比較的小規模での地域紛争においては、その調停役としての自衛隊と言う役割分担が、国連安全保障理事会常任理事国たる日本に求められるものだった。
この結果が、最新型輸送艦のと級に求められたスペックである。
最低限の装備で、緊急展開可能な抑止力の輸送。そうそのための次期防空迎撃機の搭載。
たった四機にしか過ぎないが、それでもこれは戦力としての空母保持の為の第一歩には違いなかった。
「な、なに!」
それは、突然だった。
艦長以下乗組員全てが理解する余裕もなかった。
一瞬の間に、のとはあふれかえる光に包まれ、そして消えた・・・
それが、発見されるのは海上レーダー上でのとを示す光点が動かなくなり、一切の無線通信が途絶えた事を不振に思い、保安庁の哨戒挺が飛んできた時だった。
そこには古風な客船が一隻、停止したまま波のまにまに漂っているだけだった。
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