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「のと」本編

22shin:2006/11/21(火) 21:07:17
11月5日、海軍省某大会議室
小さめの窓には、分厚いカーテンで覆われている。
壁も厚く、外には声が漏れないように留意された、幹部用の特設会議室だった。
凄いな、こう言う部屋もあるのだ・・・
井上は、落ち着かなかった。
一応、本日の会議は山梨海軍次官主催の、対ロンドン軍縮会議意見交換会と言う形式を取っている。
しかし、主要参加者には、「のと」に関する報告会との連絡が行っており、それ故総研から井上が参加しているのである。
海軍大臣 財部 彪、海軍次官 山梨勝之進 中将、海軍軍務局長堀悌吉少将、軍務局第一課長沢本頼雄大佐、軍務局第二課長 星埜守一中佐、教育局長大湊直太郎少将、人事局長 松下元少将、艦政本部長 塩沢幸一中将、航空本部長 安東昌喬中将、海軍軍令部総長 加藤寛治中将 海軍軍令部次長 末次信正少将、軍令部第一部長 百武源吾少将、軍令部第三部長 河野董吾少将、連合艦隊司令長官山本英輔少将・・・
名前と顔を確認するだけでも、ぞっとするほどの綺羅星の集まりだった。
しかも殆どの参加者が自分より階級が上と来れば、緊張しない訳は無い。
今ここで、爆弾でも破裂すれば、海軍は崩壊かな・・・
一瞬不謹慎な事まで考えてしまう。しかも、ひょっとしたら、その方が楽かも知れないと思ってしまい、井上は慌ててそんな考えを打ち消す。

「それじゃ、始めようか。」
財部海軍大臣が、促す。
「軍務局長堀です。本日の会議は、来年初頭開かれるロンドン軍縮会議に対する意見交換会がその議題ですが、その前に、先日の「のと」事件についての報告会も兼ねております。」
何名かの海軍を代表する将官は、頷くものもいる。しかし、その他のものは、興味を示し話に聞き入る。どうやら、「のと」のうわさは広がっているらしい。何らかの情報を流す必要があろう。無闇にうわさだけ広がるのは好ましく無い。
井上は、頭の中のメモ帖に記入する。ふと、あのパソコンをこう言うメモ代わりに使えないのかなとの考えも浮かぶ。
「それでは、まず、「のと」事件の経緯を報告いたします。尚、ここで話される内容は一切他言無用です。この話を漏らされた方は、直ちに解任するとの、陛下からの通達です。」
流石に、一同にどよめきが走る。
確かに、直任官である以上、陛下にその権限は属している。しかし、実際にそれが行われる事はありえなかった。それはそうであろう、指揮系統も何もあったものではない。
だが、それが「陛下の通達」と言う堀の言い方に、皆は陛下のご意思を感じざるを得なかった。通常は「お上のご意思」、「溯上の意向」等と婉曲な言い方が用いられるもので、それは陛下に責任問題を発生させないための独特の言い回しである。しかし、堀の言い方は逆に、責任の所在を明らかにしていた。


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