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「のと」本編

214shin ◆QzrHPBAK6k:2007/01/27(土) 13:47:39
「で、井上、お前がわざわざこんな所まで出向いてくる以上、何か理由があるのだろう。」
「ええ、やはり独逸の動向が気になります。今の所は、チェンバレン首相が率先して、戦争回避の為に、走り回っていますが、独逸がそれをどこまで信用しているのか。
それと、独逸の国内情況は、どの程度まとまっているのかと。」
書面による情報は、国内にいても一応は届いていた。
しかしながら、細かいニュアンスとでも言うべき内容は、実際に現場にいる人間に聞くのが一番である。
今回、日英の所謂統合軍戦略会議に、井上も同行した一番の理由が、これだった。
「信用はしてないな。だけど、利用しているよ、ヒトラーは、」
山本が端的に答える。
「国内情勢は、ヒトラーのいない所では、批判も出る。だが、彼の前に出て批判する勢力は無い。
ありゃ、一種の神がかりだな。俺も一度パーティーに出たが、確かに人を引き付ける力はあるぞ。」
波に乗っていると言うのであろうか、今のヒトラーは本当に圧倒的な存在感で、場を支配していると言っても良かった。
山本自身、レセプションで端のほうで見ていただけだが、身体が震えるようにすら思えた。
独逸語があまり得意でなく、「のと」情報を知っているだけに、構えられたと言う点も大きい。
忙しいヒトラーが、会場にいたのは、ほんの短い間だったが、その場にいた全員が、彼の一挙一動を見つめていたと言っても良かった。
「それだけに、今の独逸で彼に逆らうのは大変だぞ。「のと」情報のように、戦争で負けが込んでくればまた話は違うだろうが、今の所そんな事も無いしな。」
「そうですか、やはり難しいですか。」
井上が残念そうに言う。
彼が、情報分析班に分析を依頼していたのは、独逸での反ナチス勢力の組成の可能性だった。
開戦ともなれば、早期に独逸軍を撃破すべく、作戦は検討されているが、その後の展開も重要だった。
単に、勝てば良いと言うのでは、「のと」世界の帝国と同じである。
最も、あちらの帝国は勝つことすら出来なかった訳であるが。
「で、ヒトラーは英国の宥和政策を利用していると言うスタンスは、「のと」世界と変わらないのですね。我々の対伊太利亜政策の変更や、米国の動向等の影響はそれ程見られないと言う事で、宜しいのですか。」
「うむ、分析班では予測とあまり大きな違いは出てない。動員は続けられているが、その動きに大きな変化は無い。少なくとも彼らが当面戦争にはならないと考えているのは、違いは無い。」
「堀さんの方で何か付け足す事はありますか?」
黙って聞いていた堀に、井上が話を振るが、彼は首を横に振るだけだった。
「それでは、この先は、英国の連中も呼びましょう。」
井上は、部屋の隅にある電話に向かう。


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