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「のと」本編
172
:
shin
◆QzrHPBAK6k
:2007/01/01(月) 04:29:20
97式中戦車、昭和10年から配備が始まった、帝国が誇る最新鋭の戦闘車両である。
傾斜のついた前面装甲と、丸みを帯びた砲塔は、明らかにそれまでの戦車のイメージとは全く違うものだった。
最初に部隊に配備された時には、どうしてこれが中戦車なのだと言うのが、戦車兵たちのもっぱらの感想だった。
少なくとも、今まで細々と配備されていたこれ以前の戦車と比較すれば、どうみても重戦車である。
しかしながら、部隊の中から特に選抜され、習熟訓練に派遣された特技章持ちの兵や下士官達は、大村総合演習場から帰ってくると、様子が一変する。
彼らは部隊の演習でも、そして勿論たまに発生する小規模な紛争においても、徹底した機動戦術に拘るようになり、停車しての射撃は最低限に抑えようと必死になるのだった。
そう、彼らは大村で、いやと言うほど思い知らされるのである。
97式は、あくまでも中戦車であり、それよりも遥かに強力な重戦車が帝国には存在することを。
現在はほぼ手作りで、制作費が駆逐艦に相当すると言われ、演習に用いるしかないが、いずれ帝国が本格生産に乗り出すであろう、次期、いや次の次かもしれない、強力無比な戦車。
搭載されている砲塔は100ミリ以上でありながら、そのシルエットは、限りなく低い。
演習を行えば、到底自分達の97式が届かない距離から、正確な模擬弾を叩き込んでくる、隔絶した存在。
そんな戦車がいずれ登場すると判れば、戦車兵達もその戦い方からおごりが消えるのも無理なかった。
とは言え、現在では多分最強の戦車の部類に入る、97式中戦車は、慎重に動き出し、河岸に設置する。
筏が傾きかけるが、それでも強力なキャタピラは地面を掴み、何とか無事島に乗り上げることが出来た。
普通の97式と違い、カンチャース島に降り立った戦車には、背後に長方形の鉄板のような物が付いていた。
簡易式だが、排土版がついており、その意味ではトラクターとして使える一台である。
「田中大尉!お久しぶりです。」
砲塔から顔を出して、嬉しそうに佐藤に話しかけてくるのは、島田大尉だった。
「なんだ、結局貴様、来たのか。」
「ええっ、対岸の守りは部下に任せて来ました。あちらより、大尉のいる所の方が面白そうですしね。」
半分、笑いを堪えるような言い方で、島田は茶化すように、言ってくる。
何せ、本土で出動する前に、木村大佐と三人で打ち合わせを行っており、島田も佐藤が変名を使っている事を知っている。
しかも、こいつは恐怖と言う感情をどこかに置き忘れたような漢であり、その行動基準は、面白いかそうでないかに限られている。
「判った、判った。直ぐに排土板を使って、援体壕を作るのを手伝ってくれ。急げ、じきに赤軍さんがやってくる。」
「了解しました。」
エンジンが、一際うなりを上げて、戦車は兵たちに先導されて、作業に向かっていった。
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