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「のと」本編
153
:
shin
◆QzrHPBAK6k
:2006/12/23(土) 21:33:39
「失礼します。」
部長室に入ると、既に先客がいた。
「梅津だ。宜しく。」
軽く頭を下げ、指し示されたソファに腰を下ろす。
「資料は読んだな。早速だが、行き先は、乾岔子(カンチャーズ)島だ。」
その名前を聞いても、一体何処にあるのか、佐藤には全く検討がつかなかった。
「アムール川沿い、ハルピンの北西400キロの地点、言うまでも無く中ソ国境だ。」
佐藤は、いやそうに繭をしかめる。
「一応、一個中隊を付ける。身分は、停戦監視団派遣将校。後方支援としては、ハルピンで習熟訓練中の戦車中隊が、演習も兼ねて、国境周辺を警備中だ。指揮官は島田大尉。50キロ程上流の、アイグンで、中華民国北辺軍に引渡し予定の新式河川砲艦が試験中だ。こちらは、木村大佐が試験管として乗船していることとなっているので、いざとなったら、彼の指揮下に入るように。」
佐藤の眉が釣り上がる。
ここまで、大掛かりな準備が整っている以上、事はただ事ではない。
「「のと」情報は知ってるな。」
改めて確認するまでもない。
総務課特務班が派遣される地点は、「のと」情報と呼ばれる丸秘情報からによる場合が多く、その由来は様々な噂があるが、精度の高い防諜情報である。
「今回は、精度はそれ程高いものではないが、アムール川にある中州に、ソ連軍が侵攻を企てているとの事だ。」
なるほど、その為の出動ならば、良く判る。
しかしそれが、特務班が動くほどの事なのか。
佐藤の疑問が顔に現れたのか、梅津が尚も話を続ける。
「現地指揮官の独断ならば、単なる国境での小競り合いで終る。しかし、裏でソ連首脳の意思が働いていたら、どう思う?」
「威力偵察ですか?」
何らかの意図があり、実施されるならば、それはその後の侵攻準備に他ならない。
なるほど、欧州でも徐々にきな臭い雰囲気が漂い始めていると聞く。
ソ連が動くとすれば、東か西か、どちらも可能性はある。
西が慌しくなり、列強がそれにかまけている間に、東で動く可能性、逆に東を固めておき、その間に西で動く可能性、両方とも可能であろう。
いくら、現在は大きな紛争も無く、帝国とソ連、中華の関係が比較的良好とは言え、ソ連が中国共産党を支援しているのは、公然の秘密だし、ロシアはロシアである。
「どちらの可能性が高いと考えられますか?」
「その判断がつかんから、情報部が動かざる得ないんだよ。」
それまで、黙って聞いていた堀部長が、ポツリと言った。
ごもっとも・・・
佐藤は、軽く頭を下げ、部長に敬意を表する。
「まあ、どちらにしても、禍根を断つため、中洲への侵入者は殲滅してくれ。但し、あくまでも中華国軍の手によってだ。」
「それは・・・難しいですね。」
「判っている。しかし、国軍が国境紛争一つ解決出来ないと判れば、ソ連はつけ上がる。帝国が他の地域での紛争にかまけて、動けないと見れば、何をするか判らんからな。」
なるほど、帝国は欧州に参戦する積りらしい。
その位は、ここにいれば、佐藤でも判る。
梅津はその辺りまで理解したらしい佐藤の顔を満足そうに見つめる。
まあ、「のと」資料では、陸軍中野学校の創設者と書かれている以上は、この位は当然か・・・
そんな事を梅津が考えているのは、佐藤幸徳中佐には、判るはずも無かった。
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