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「のと」本編

12shin:2006/11/21(火) 20:28:55
東京に戻った二人はすぐさま活動を開始する。
スタッフを揃えなければ、何も出来ない。
彼らが目を付けたのは鈴木商店だった。
先年倒産した鈴木商店の高畑は、資本金100万円にて、株式会社日商を立ち上げていた。
その神戸の事務所に、突然憲兵が訪れ、まるで拉致同様に、高畑は皇居に連れてこられた。

通された部屋は、いつもの会議室である。
既に、呆れ返っている高畑は、陸海軍の将校が二人並んで座っているのに、更に驚きを強くする。
最初に憲兵に同行を求められた時は、恐怖を覚えた。何を聞いても答えてくれない。
そのまま、東京行きの特急に乗せられ、依然何も判らないとなると、最早覚悟を決めるしかなかった。
更に東京駅から、差し回しの車に乗せられた時は、好奇心が先に立っていた。
しかも、それが宮城に向かうのだから、最早何を言わんかである。

二人の将校が立ち上がり、頭を下げる。
「総力研究所の梅津です。所属は陸軍大佐」
「同じく井上です。勿論海軍です。」
「おやおや、何事ですか一体。」
高畑が、そのまま向かいの席に座るのを見て、二人は顔を見合わせる。
これだけ度胸の座った男なら大丈夫であろう。
「突然、拉致同然にお呼び立てして申し訳ない。事情が事情だけに、時間が無いのだ。これから、ここで見せるもの、話す内容は一切他言無用である。」
「まあ、梅津大佐、そう固くならなくても。高畑さんを怖がらせても意味は無いですよ。まず、これを見て貰いたい。」
手渡されたのは、数枚の資料だった。
エッ・・・
「これは?」
一通り目を通すと、高畑は怪訝そうに問いかける。
「全て事実らしい。このまま行けばこうなる。」
そう、それは昭和20年までの歴史の概略だった。
「バカな、未来が判るわけ無い。」
「そう、それが普通の反応だよ。しかし我々はこれを信じる根拠があり、ここがどこだか考えれば、誰がこれを信じているかも判るであろう。」
「そ、そんな予言みたいな事・・・」
高畑は最後まで言うことは出来なかった。
二人は冗談を言っているのではないのは顔を見れば判る。
「先月、浅間丸が遭難したのは知っておろう・・・」
梅津が事情を説明すると、高畑も顔色を変える。
「すると、この先、こんな事になるのですか。後16年で・・・」
「私らも最初に聞いたときは同様に思った。そしてそれは主上も御同様である。」
「この総力研究所は陛下の私的機関として今月6日に設立された。勿論この未来を回避するための研究機関です。」
交互に会話を進める二人を見つめながら、高畑の頭は急速に回り始める。
「そうですか・・・で、私は何をすれば良いのですか。」
梅津が、ほおっと驚いたような表情を浮かべる。
「君には、資金面の管理、政府に対する経済政策の取りまとめをお願いする。」
「判りました。全力を尽くします。」
ここまで連れて来られて、断れる筈も無いことは高畑も計算できる。
それよりも積極的に動けば、かなり面白い事が出来よう。
与えられた情報は少ないが、これだけではない筈だった。
それに、あと一月後にニューヨーク株式市場が大暴落すると最初に書いてある。
この情報だけでも、その価値は高い。
最初から暴落する事が判っていればかなりの事が出来る。
「それで、運用出来る資金は。」
その時、正面の扉が開き、高原の身体が硬直する。
勿論、二人の将校はすぐさま直立不動の体制である。
「皇室の運用可能資産全てだ。」
全く動く事が出来ず、唖然とする高畑だったが、それでも陛下の目元に笑いが浮かんでいるのは見逃さなかった。


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