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避難用作品投下スレ5

773凡人表明:2010/04/21(水) 12:12:48 ID:.g4VCraU0
それは、彼女の性格だからかもしれない。
ゆったりとした美凪の気質が、影響しているのかもしれない。
……ならば、彼女と正反対の激情家であるもう一人の少女は、どうなる。

「馬鹿にするんじゃ、ないわよ……っ!」

わなわなと震えながら、少女は握る拳の力を怒りでさらに倍増させた。
彼女も立ち上がっていた。いつの間にか、立ち上がっていた。
折れそうになっていた戸惑う気持ちを胸の奥に押し込めた状態で、広瀬真希はしっかりと自分の両足で立ち上がっていた。

「そんなの勝手でしょ、あたし達が望んだことじゃない!」

真希が味わった恐怖の種は、この瞬間全て吹き飛んでいた。
非日常的残虐な光景に、真希の心は何度も悲鳴を上げている。
慣れることなんて、できやしなかった。
もう、全てから逃げ出したいとさえ、真希は思っていた。
こんな怖い世界から、いなくなりたいと願った。

「あんた何様よ、決め付けるなんて信じらんないっ!」

つかつかと、怒鳴りながら少年と美凪の間に割って入っていく真希には、今やそんな後ろ向きな姿勢の片鱗は一寸も無い。
強い意志を湛えた眼で、真希は少年を睨み付けている。

「真希さん……」

庇われる形で真希の背後に追いやられていた美凪が、真希の羽織っている割烹着の端を恐る恐る引く。
挑発的とも思える度を越えた真希の行動に、さすがの美凪もどう対処すればいいか分からなくなっているらしい。
軽く振り返り美凪と目を合わせると、真希は大きく一度だけ頷いた。
大丈夫だという意志をしっかり込めながら、真希は美凪へとアイコンタクトを送る。
安心の裏づけ等、決してない。
それでも美凪が大人しく引き下がるくらいの力が、真希の瞳の中で盛っていた。


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