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避難用作品投下スレ5

690エルサレムⅢ [ありがとう]:2010/02/24(水) 23:09:40 ID:3kpzQWQU0
 頭を撃ち抜こうが止まらないロボットだが、決して不死ではない。機械である以上必ずカラクリがある。
 大体の予想はついている。後は、己の勘を信じて行動できるかだった。

 いけるさ。どこの誰ともつかない声がそう言い、そうだなとルーシーも応えた。
 自分にはこれまでに培ってきたものがある。新しく知ったことがある。思い出したこともある。
 人の心を慮れるやさしさも、身を預けていられる心地良さも持っている。
 そのために犠牲にしてしまったものもある。自分が許せなくなるくらいの後悔だって、した。

 ここで自分がやったこと。ここで生き抜こうとした人たちのこと。
 所詮それはどんな歴史にも残らない、たかが一つの惑星の、屑鉄に沸いた錆のようなものでしかないのだろう。

 しかしたとえそうであったとしても、私は……

 M10を発砲する渚を援護にして、宗一がウージーを持って突進する。
 アハトノインはしゃがみ、長い足を突き出すような足払いを繰り出す。挙動は異常に素早い。だが相手が悪かった。
 世界一のエージェント、ナスティボーイに生半可な格闘は通用しない。
 逆に足を狩った宗一はバランスを崩したアハトノインの顔面目掛けて追撃の前蹴りを見舞う。
 ところがアハトノインは有り得ない速度で上体を反らし、器用に全身をバネにして宗一の蹴りを受け止めた。

 ちっ、と舌打ちしながら宗一がナイフで挑みかかる。
 既に体勢を立て直していたアハトノインはグルカ刀で難なく受け止め、返す刀で宗一の側面、脇腹を狙う。
 バックステップしても避けられない。ならばと宗一は無理矢理前転して刀を空かす。
 そこに付け入らせないのが世界一たる所以だった。

 腕の力だけで体を持ち上げ、脚を振り上げ、踵落としのような一撃を与える。
 アハトノインが崩れる、かと思えばしぶとかった。
 ガシャ、という音がしたかと同時、アハトノインの左手に小型のナイフが収まっていた。仕込みナイフだ。
 マジかよ、と宗一が呻く。しかし言葉とは裏腹に行動は冷静で、
 体勢を崩しつつも近距離では役に立たないウージーを放り捨て、腰に差していた十徳ナイフを引き抜く。


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