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避難用作品投下スレ5

633/死:2010/02/06(土) 04:29:13 ID:D/ovS9dk0
「キミたちの力……不可視の力とキミたちの呼ぶそれは、元々は僕の力だ。
 教団はそれをキミたちに……正確には人間に、広めるために存在したんだよ」
「……だけど、FARGOはもうない」

向けられた少年の瞳をじっと見据えながら教団の名を口にする、郁未の声に揺らぎはない。
憎悪も嫌悪もなく、無感動に無感傷に、それを告げる。

「ええ。教団は私たちが壊滅させました。あなたから頂いた、この不可視の力で。
 存命の関係者は、最早片手で数えられる程度のはずです」

淡々と言葉を継いだ鹿沼葉子の声音にも、押し殺した感情は存在しない。
それが回顧をもってのみ語られる、過去の事実でしかないというように。

「力を寄越して研究させて、力でそれを潰させて。全部があんたの差金なら、与えて、奪って……。
 何がしたかったのさ、一体」

溜息混じりに首を振る郁未に、少年の表情が曇る。
答えを求める問いではなかった。
それでも、少年は口を開く。

「それは……汐から、聞いてるだろう」
「あんたからは聞いてない。それを聞いてるとは、私は言わない」

絞り出されたような少年の言葉を、郁未が言下に否定する。
強い視線と、声だった。


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