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避難用作品投下スレ5

573想いのカナタ:2010/01/06(水) 16:53:03 ID:6Ze9kqqQ0
 渚も同じ気持ちなのだろうか、その声は少し間延びしているようだった。
 ああ、と応じて、最後にもう一度だけ宗一は起き上がった。起き上がって、無防備な渚に口付けをした。
 僅かに力が入る気配が伝わったがそれも一瞬のことで、徐々に力を抜いてそのまま流れに身を任せる。
 そのまま数秒ほどしてから、ようやく宗一は唇を離した。「おやすみなさい」と一言付け加えて。

「はい。……おやすみなさい、です」

 宗一は目を閉じたが、意識を閉じるまで直前の渚の顔が映ったままだった。
 薄い桃色の、作りたてのゼリーのような渚の唇の感触が幸せでならなかったのだった。
 そこで、ようやく宗一は気付いた。

 ――俺は、俺という人間は、やっと、初めて、幸せってものを手にできたのかもしれない。

     *     *     *

「大丈夫? 痛くない?」
「平気。……入りもしないうちから心配しすぎなの」

 それぞれ脇に洗面器とタオルを抱え、一ノ瀬ことみと藤林杏は風呂場へと続く廊下を歩いていた。
 古河渚が風呂から上がったということで、既に休憩時間に入っていたことみは、
 教室で風呂の順番を待っていた杏と合わせて二人で入ることにしたのだ。
 理由は単純なもので、怪我の度合いが著しいということで誰かの助けがなければならないかもしれないということからだ。
 無論、言い出したのはことみではなく杏。意外な心配性ぶりに呆れよりも寧ろ驚きの方を覚えたことみは、
 無下に断る気も持てずに同道させてもらうことにした。

 風呂場は狭いと渚は言っていたが、一人が湯船に、一人が体を洗えば何も問題はないだろう。
 そもそも、ことみは湯船に浸かれるような状態ではなかった。
 風呂に入ろうと思ったのも、爆弾の製作、及びそれまでの行程でで泥臭くなったのをどうにかしたかったという思いからで、
 最悪濡れタオルで体を拭ければ良いと考えていた。
 それはそれで女の子としてどうだろうと思わないではなかったが、頓着してこなかったのもまたことみの性分でもあった。


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