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避難用作品投下スレ5

54it's all we could do Ⅱ/ Ha'Olam habah:2009/06/11(木) 16:11:57 ID:AwGSRtsw0
 
「結論から言うと……もうすぐお産が始まります」

嵐の訪れはいつも唐突である。
神ならぬ人の身は自然の猛威を前に驚き、慌て、頭を低くして耐えるより他にない。
たとえそれが、うららかな光の射すリビングに突然巻き起こった小さな嵐であろうとも、何ら変わりなく。

「は?」

長岡志保は間抜けな声を上げ、

「お、お母さん……?」

古河渚は母の言動に戸惑い、

「……」

川澄舞は視線を動かすこともなく紅茶を啜り、

「……苦しい」

そして国崎往人は、己が首を締め上げる細い指の感触に眉を顰めていた。
奇妙に滑る汗が滲んで余計に不快感が増す。

「え? いや、ちょ……はああああ!?」
「落ち着け長岡、起き抜けにあまり騒ぐとまた倒れるぞ。それと俺の首を絞めるな」

隣に座る少女の、薄く肉のついた細腕をどうにか引き剥がそうと苦闘する国崎。
ただでさえ凶悪な目つきが更に険しくなるが、驚愕に揺れる少女は国崎など見てもいない。

「なな、何言ってんのよ志保ちゃんは落ち着いてるわよ変な冗談ばっかり言って早苗さんは!
 けどもしこれが変な夢だったら早く覚めてほしいじゃない!?」
「お前の悪夢は俺の首を絞めると覚めるのか!? いいから離せ!」

がくがくと首を揺らす手を強引に剥がし、汗ばむ肩を掴んで無理やり椅子に座らせる。


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