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偽りの日々と体
44
:
猫目ニボシ
:2011/03/28(月) 02:03:34
「止めろ!アタシはガキになんか戻りたくねーんだよ!!」
「静かにしろAR107」
「うるせー!アタシはそんな名前じゃねーよ!!」
さながら手術室の様なベッドに四肢を拘束されている少女の名は、
“長月稲穂”《ながつきいなほ》と云う。
一見すると稲穂は切れ長の長い睫毛や整った鼻筋に彩られた美少女だが、
髪は“金髪”に脱色されており素行の悪さは一目瞭然だった。
―レディースのボス―
彼女は補導されるまではレディースの頭を勤めおり、
喧嘩や飲酒、カツアゲ、親父狩りの常習犯だった。
幾ら未成年者とは云え彼女の素行はあまりにも目に余るもので、
家庭裁判所の少年審判で裁判官は情状酌量の余地なしと
表向きは少女少年院の送致を決めた。
だが、彼女の父親は県内の有力者で母親共々裏から圧力をかけ、
執行停止にされていた曰く付きの法律を適用する譲歩案を引き出したのだ。
やはり、グレてしまっても実の娘を見捨てるのは忍びなかったのだろう。
「ふふっ、AR107最後の制服の着心地はいかがかしら?」
「さっ、最後……!?」
「ええそうよ…だって子供に退行したらそれぶかぶかで着れなくなるでしょ」
「そっ、そんな……」
特別法が執行される青少年には最後に制服を着用することが許可されている。
何故なら、特別法が執行された者は肉体が退行してしまう為、
これまで着ていた制服のサイズが合わなくなるからだ。
稲穂はこれから自身に刑を執行する女性刑務官の話を理解して、
手足が小刻みに震えていた。
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