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「放浪商人キヨシ」
1
:
mogmog
:2008/04/07(月) 16:50:55
その男の名はタケダキヨシ。悩める者達の前に突如姿を現し、不思議な道具で悩みを解決してくれると言う。
黒いスーツに身を包んだ長身のその男を、人は放浪商人キヨシと呼ぶ。
彼の正体を知る者は誰もいない。未来から来た商人とも、天界から来た天使とも、はたまた異世界から来た悪魔とも言われている。
もっとも、彼の事を知る者はごくわずかである。
今日もまた、どこかに彼は現れる。
2
:
mogmog
:2008/04/07(月) 16:53:50
「放浪商人キヨシ やり直しサイコロ その1」
義雄はがっくりとひざをついた。今回は自信があった。実際、始めの方は予想通りの展開だった。だが、あろうことか最後のコーナーで先頭の馬が転倒。その瞬間、最後の掛け金が消えた。
ギャンブル好きの義雄にとって、パチンコと競馬が一番の楽しみだった。友人と賭け麻雀をすることもあった。義雄は運が強い方だったが、それでも手元のお金はどんどん減っていった。その内、妻の喜美恵に内緒で貯金をつぎ込むようになっていた。悪いこととは思っていてもやめられなかった。気づいた時には、貯金は100万円を下回っていた。
義雄には二人の娘がいる。10歳の恵梨華はもうすぐ受験生になるし、6歳の利奈は来年から小学校に通い始める。これから必要になる多額の教育費のために長い間ためてきた貯金だった。
そこで義雄は賭けに出た。貯金を全額おろし、競馬場へ向かった。競馬は他の賭け事と違ってある程度予測することができる。中学生の時から競馬に興味を持ち始めた義雄は、長年の経験からかなり高い確率で当てることができた。
しかし、賭け事は所詮賭け事。何が起こるかはわからないものだ。一頭の馬が転倒したがために、貯金はおろか自分の小遣いまでもが消えてしまった。
財布には千円札が一枚とほんの少しの小銭しか残っていなかった。帰りの交通費の分だ。
義雄はうつむきながら競馬場を出た。
妻になんと説明すればよいかわからなかった。今まで何とかごまかしてきたが、今回ばかりはごまかせないだろう。
帰りたくなかった。死ねば楽になる。そんなことが頭をよぎった。
「それなら、人生をやり直して見たらいかがです?」
誰かに声をかけられた。顔を上げると、黒いスーツを着た男が立っていた。長身で、黒いシルクハットをかぶっている。
「私の名前はタケダキヨシ。世間では放浪商人キヨシと呼ばれております。私の不思議な道具であなたの悩みを解決して差し上げましょう」
男は指を鳴らした。すると周りの景色が消え、小さな雑貨屋の店内の風景になった。
「ギャンブル好きのあなたにはこれがぴったりでしょう」
男が差し出したのは十面体のサイコロだった。表面には1から10までの数字が書かれている。
「これは『やり直しサイコロ』。これを振れば、出た目の数に応じて人生をやり直すことができます」
「人生をやり直す?」
「例えば、『1』の目が出れば人生を1割巻き戻すことができます。『10』の目が出れば人生を最初からやり直すことができます。どれだけ昔に戻れるかは運しだいです」
信じられない話だが、義雄は高い関心を示した。
「じゃあ、もらっていくよ」
「ありがとうございます。1000円になります」
「えっ?お金取るのかい?」
「はい。商人ですから」
「うーん、わかった」
義雄は最後の千円札を渡した。サイコロが本物であれば、人生を巻き戻してお金や家族のことなど気にする必要は無くなるだろうが、本物でなかったとしたら飛び降り自殺でもするしかない。だが、ギャンブル好きの義雄はこのサイコロに賭けてみることにしたのだ。
「おっと、忘れるところでした。サイコロを二回続けて振って同じ目を出せば、それまで巻き戻した分を取り消すことができます。では、新しい人生が明るいものでありますように」
そう言って男が指を鳴らすと、義雄は競馬場の前に戻っていた。男の姿は消えていたが、義雄の手にはサイコロがしっかりと握られていた。
夢じゃなかったことは手のひらのサイコロが物語っていた。財布の中身も小銭だけになっていた。
小銭を数えてみると1円玉や5円玉ばかりで、200円にも満たなかった。これでは家に帰れない。
いや、帰る必要なんて無いのだ。あの男の言うことが本当なら、このサイコロですべて解決できるはずだ。
早速サイコロを使ってみようと思ったその時、聞きなれた声を耳にした。
「先輩、どうしたんですか?」
振り返ると、会社の後輩の千春が立っていた。
「いや、家に帰るお金が無くなっちゃってね」
「また競馬で摩っちゃったんですか?」
「ははは。ばれちゃったか」
「良かったら私の車で送っていきましょうか?」
「いいのか?」
「ええ。先輩にはいつもお世話になってますから」
千春は職場のアイドル的存在だった。そんな彼女の車に乗せてもらえるなんて、世の中悪いことばかりではないようだ。
義雄はサイコロをポケットにしまった。こいつを使うのはもう少し後にしよう。
3
:
mogmog
:2008/04/09(水) 14:46:06
「放浪商人キヨシ やり直しサイコロ その2」
「あ、ここでいいよ」
義雄は車を自宅から少し離れた場所に止めさせた。彼女と一緒にいるところを喜美恵に見られたりしたら変な勘違いをされるに決まっている。
「あの、先輩」
車から降りようとする義雄を千春が引きとめた。
「私の悩み聞いてもらえますか?」
「ああ、いいよ」
義雄はシートにかけ直すとドアを閉めた。
「私、3年間付き合った彼氏がいたんです。婚約もしました。でも昨日、振られてしまったんです」
「えっ?」
こんな美人を振るなんて、どれだけ贅沢なやつなんだ、その彼氏は。
「私、騙されてたんです。彼は結婚詐欺師で、借金があると言って私からお金を騙し取っていたんです」
なるほど。そういうことか。
「それってどれぐらいの額なの?」
「1000万円くらいだと思います」
「!!」
「自分ひとりではとても用意できなかったので、両親や親戚からも借りました。私が幸せになれるのならと言って、喜んで貸してくれました。でも、私はそれを裏切ってしまったんです」
「そんな。悪いのは君じゃなくてその詐欺師だろ?」
「いいえ。私に人を見る目が無かったせいでこうなってしまったんです。私、いっそ死んでしまいたいと思ったんですけど、そんな勇気も無くって……」
「死ぬなんてそんな……。人生をやり直せばいいじゃないか」
「人生をやり直す?」
義雄はポケットからサイコロを取り出した。
「もし人生をやり直せるとしたら、いつからやり直したい?」
「えっと……高校時代かな?部活も充実してたし」
「じゃあ、このサイコロを振ってごらん。人生をやり直すことができるかもしれない」
「こうですか?」
千春はサイコロを受け取るとダッシュボードの上に転がした。サイコロは「5」を上に向けて止まった。
義雄は千春の様子を観察した。はじめは何の変化も無いように見えたが、よく見ると千春が少しずつ若返っているのに気づいた。
もともと千春は童顔だったが、さらに子供っぽい顔つきになった。
顔つきは小学生くらいに見えるが、胸が膨らんでいるところを見ると中学生くらいだろうか。
「どうしたんですか?私の顔をじろじろ……」
千春の声は子供っぽい高い声になっていた。
「あれ?なんだか声が変……」
「鏡か何かありますか?それで自分の顔を見てみてください」
千春はハンドバッグから手鏡を取り出し、自分の顔を見た。鏡には中学時代の千春の顔が映っていた。
「これっていったい……」
「千春さんは今いくつ?」
「えっ……27ですけど……」
「じゃあ、27歳から5割引いてだいたい14歳くらいになったんだね。もし『4』を出していたら27の4割引で16歳くらいになれたんだけど」
「そういうことだったんですか。とても信じられないけど……本当のことみたいですね。よーし。次は『4』を出してみせるわ」
千春はもう一度サイコロを転がした。今度は「7」だった。
今度はすぐに変化がわかった。千春の体が急激に縮み始めたのだ。
体が縮むにつれ、服がどんどんぶかぶかになっていく。
顔つきは幼さを増し、胸のふくらみは無くなってしまった。
だぶだぶになった袖に両手がすっぽり入ってしまい、すっかり幼くなった顔が襟首からのぞいているだけになってしまった。
「えっと……にじゅうななちゃいからななわりひくから……わたちはっちゃいくらいになったのね?」
いや、その割には幼すぎる。どう見ても幼稚園児にしか見えない。
「もしかして、27歳の7割引じゃなくて、27歳の5割引からさらに7割引になったんじゃないかな?」
「それじゃあ、わたちなんちゃいになっちゃったの?」
「だいたい……4歳くらい」
「よ、よんちゃい!?どうちよう。こんなちゅがたじゃかいちゃにいけないわ」
「と、とにかく家まで送っていくよ。そんな体じゃ運転できないだろ?」
義雄は千春を助手席に座らせ、車を運転して千春のアパートへ向かった。
「ちゅみまちぇん。めいわくかけちゃって……」
「いや、悪いのは僕の方です。サイコロの使い方をよく理解していなかったばっかりに千春さんをこんな姿にしてしまって……明日様子を見に来ますね」
義雄は千春をアパートに送り届けると、歩いて自宅に帰って行った。
4
:
名無しなメルモ
:2008/04/10(木) 23:54:42
やっぱり、この後、その他の人間も巻き込んで若返りが進行するんですかね。
期待。
5
:
名無しなメルモ
:2008/04/12(土) 17:49:42
おもしろいです!
千春以外にもいろんな女性の若返りに期待です。
6
:
mogmog
:2008/04/15(火) 10:57:16
「放浪商人キヨシ やり直しサイコロ その3」
「おかえりなさい」
自宅のドアを開けると、懐かしい姿が目に飛び込んできた。
「母さん!どうしてここに?」
「近くにくる用事があったから来ちゃった。迷惑だったかしら?」
「いやいや、とんでもない」
義雄は部屋着に着替えると居間のソファに腰掛けた。
「ねえねえ、この前始めてエステに行ったんだけど、どうかしら?」
「そういえば肌がきれいになってるような……」
「でしょ?でもね、あまり満足してないのよ。肌はきれいになったのに、見た目はちっとも若々しく見えないのよ」
もうすぐ70歳になると言うのに、そんなに若く見られたいのだろうか。
「それならいい方法があるよ」
義雄はサイコロを取り出した。
「これを振れば若返られるよ」
ふと、幼児になってしまった千春のことを思い出した。母もあんなふうになってしまうのではないか?
だが、千春の時とは条件が違う。母は今68歳。例え「9」が出たとしても7歳くらいになるだけだ。生活に大した支障は出ないだろう。「10」さえ出なければ良いのだ。
「こんなもので若返られるの?」
「いいから試してみなよ」
母はテーブルの上にサイコロを転がした。出た目は「6」だった。
母は見る見るうちに若返り、義雄よりずっと若くなってしまった。27歳くらいになったはずだ。
「どうだい?調子は」
「なんだか力がみなぎってくるってかんじ。でも、どういうこと?」
「君は若返ったんだよ。ほら、見てごらん」
義雄は母を姿見の前に立たせた。
「まあ!これが私?」
母は姿見の前でいろいろなポーズを取った。
「どう、満足?」
「ええ、もちろん!」
20代の若々しい母の姿に、義雄はしばらく見とれていた。年下になった母は、なんだか可愛らしく感じられた。
「喜美恵さん、何か手伝うことあるかしら?」
「それじゃあ、そこの……」
振り返った喜美恵は目を丸くした。目の前に立っていたのは見知らぬ若い女性だった。
「あら、どうしたの?ぽかんとして」
女性はくすりと笑った。その声は義母のものだった。
「お義母さん……ですよね?」
「そうよ。びっくりした?」
「びっくりしたも何も、急にそんな若々しい姿になっちゃうなんて、いったいどうしたんですか?」
「うふふ。実はね――」
翌日の昼過ぎ、義母を駅まで送ってきた喜美恵は義雄の部屋に入った。目的のものはすぐに見つかった。引き出しから正十面体のサイコロを取り出すと、喜美恵は部屋を出て行った。
「ふふふ。これで私もお義母さんみたいにぴっちぴちのギャルに大変身よ!」
喜美恵は居間の姿見の前に立ち、サイコロを床に転がした。出た目は「7」だった。
喜美恵は自分の体が若さを取り戻していく様子をわくわくしながら眺めた。
たるんでいたおなかは引き締まり、肌は潤いを取り戻した。
だが、いつまでも喜んでいられなかった。20歳くらいの姿になっても、若返りが止まる様子は無かった。
喜美恵の背丈が縮み始め、服のサイズが合わなくなってきた。エプロンの肩紐は外れ、スカートはずり落ちてしまった。
とうとう喜美恵は、恵梨華と同じくらいの年齢になってしまった。
「ど、どうしよう……」
とりあえず服を着替えることにした。喜美恵は子供部屋に行き、恵梨華の服に着替えた。
居間に戻ってくると、ちょうど恵理華が学校から帰ってきた。
「ただいま!」
喜美恵はあせった。今時分のおかれている状況をどう説明すればいいか必死に考えた。ありのままのことを話して信じてもらえないだろう。幼稚園児の利奈ならごまかせそうだが、小学校高学年の恵理華は無理だ。
耳をすますと、階段を上っていく音がした。恵理華は二階の子供部屋に行ったようだ。
喜美恵はそっと居間を抜け出し、家の外に出た。
7
:
名無しなメルモ
:2008/04/16(水) 23:43:37
喜美恵の若返りに激萌え!
喜美恵が持ち出したサイコロでもっともっといろんな女を
若返りに巻き込んでほしいな
8
:
名無しなメルモ
:2008/04/18(金) 23:21:28
mogmog氏、続きを楽しみにしてます。
ご近所さんや通行人を巻き込む展開を期待。
9
:
mogmog
:2008/04/20(日) 12:08:57
「放浪商人キヨシ やり直しサイコロ その4」
義雄は仕事を早めに終わらせるとすぐに千春のアパートに向かった。
ベルを鳴らすと、見知らぬ女性が顔を出した。その女性はどことなく千春に似ていた。
「えっと……千春さんのお母さんですか?」
「そうですけど」
「あのう、千春さんはいらっしゃいますか?」
「千春なら幼稚園にいますけど」
(幼稚園!?)
どうやら千春の母親は、千春が大人だったことを忘れてしまっているようだ。これもサイコロの力なのだろうか?
「千春が何か……?」
「あ、いえ、人違いでした」
義雄はアパートを後にした。
「ん?」
義雄が自宅に戻ってくると、自宅の門の前に恵理華が立っているのが見えた。
「ごめんなさい!」
義雄に気づいた恵梨華は、頭を下げて義雄に謝った。
「私勝手に……う、うわーん!!」
恵梨華は大声で泣き出した。義雄は恵梨華に駆け寄り、頭をなでて慰めた。
「どうしたんだよ、恵梨華。わけを話してごらん」
「恵梨華じゃないわよ!喜美恵よ!」
「え!?もしかして、サイコロを使ったのか?」
喜美恵はうなずいた。
「あなたのお母さんからサイコロのことを聞いて私も試してみたんだけど、まさか小学生にまで戻っちゃうなんて思わなかったの」
「あのサイコロは出た目によって効果が違うんだよ。何の目が出たか覚えているかい?」
「確か7だったと思う」
「それじゃあ……11歳くらいになったんだね。恵梨華と利奈には話したのか?」
「ううん。話しても信じてくれないだろうし」
「じゃあ、利奈は迎えに行ってないのか?」
「恵理華にメールして代わりに行ってもらったわ。私は用事があるから遅くなるって言っておいた」
「そうか。よし、俺が二人に説明するよ」
「信じてくれるかしら?」
「大丈夫。何とかなるって」
義雄は喜美恵と一緒に家に入った。居間のほうから子供たちの声がする。
「そういえば、サイコロは?」
「居間に転がしたままだわ」
「えっ……」
いやな予感がした。あわてて靴を脱いで居間に入ろうとしたとき、居間から利奈が飛び出してきた。
「パパ。たいへん!おねえちゃんがあかちゃんになっちゃった!」
義雄は居間に駆け込んだ。喜美恵も急いで後に続いた。
居間のテーブルにはすごろくが広げられていた。すぐ横の床の上では、生まれたての赤ん坊が子供服に埋もれてもがいていた。その傍らには十面体のサイコロが「10」を上に向けて転がっていた。
「恵理華!大丈夫か!?」
義雄は恵理華をそっと抱き上げた。恵理華の体は驚くほど軽かった。
「ふにゃあ!ふぎゃあああ!」
「どうしましょう。もうすぐ受験だというのに。ねえ、あなた。元に戻す方法はないの?」
義雄は黒い男の付け加えた言葉を思い出した。
「ひとつだけ方法がある。サイコロを二回続けて振って、同じ目を出せばいいんだ」
「わかった。じゃあ、私がやってみるわね」
「ちょっと待てよ。もし失敗したら君も恵理華みたいになっちゃうんだぞ。喜美恵がこれ以上幼くなったら誰が家事をするんだ?」
「あなたのお母さんに頼めばいいわ」
「そんな、母さんにまで迷惑を……」
「いいじゃない。若返って力が有り余ってるでしょうし。それに、あなたも若い奥さんができてうれしいでしょ?」
「ば、ばか言うんじゃないよ!おまえがそんな姿になったって、俺は……その……」
「冗談に決まってるでしょ!どっちにしろこの体のままでも家事できないし。お願い。私にやらせて!」
「……わかった。君に賭けるよ」
10
:
mogmog
:2008/04/20(日) 12:10:57
他人にサイコロを振らせるシチュエーションが浮かばない……
何かいいアイデアがあったら教えてください。
今後の作品に活かして行きたいと思います。
11
:
名無しなメルモ
:2008/04/20(日) 15:06:36
置いてあったやつを
勝手にとか…
子供とかがいたずらするとか…
12
:
名無しなメルモ
:2008/04/20(日) 22:13:33
>他人にサイコロを振らせるシチュエーションが浮かばない……
基本は、小さな子供や飼っている犬猫などが勝手に持ち出して、そうとしらない通りすがりの人が何も考えずに振ってみて・・・
というところでしょうか。
時期が1月ならスゴロクねたもつかえるんでしょうけどw
13
:
名無しなメルモ
:2008/04/20(日) 23:25:35
子供相手なら
いつでも双六ぐらいしそうだぜ
14
:
名無しなメルモ
:2008/04/21(月) 22:14:55
ついに10の目で生まれたての赤ちゃんに!哀れな恵理華ちゃんw
「ふにゃあ!ふぎゃあああ!」のセリフまわしに激萌え!
mogmog氏の小説はAR時のセリフがすごく臨場感があって上手いので
いつも興奮させてもらってます、これからも期待してますよ!
他人にサイコロ振らせるシチュですかぁ・・・
2回同じ目を出さなきゃ皆元に戻らないわけですよね?
喜美恵が失敗して生まれたてや乳児に戻った後は近所の奥さん達や女子高生達、
といった他人を義雄が無差別に巻き込んでサイコロを2回振らせる展開にすれば自分的には
かなり嬉しい展開、10の目の被害者をまだまだ見てみたいです。
15
:
名無しなメルモ
:2008/04/24(木) 11:18:15
やはり主人公も家族を元に戻すためには他人を騙してでも2回サイコロ振らせる選択するでしょうね。
そう考えるといろんな設定が広がってきます、簡単なところで近所の奥さん連中を巻き込むのが無難かと。
私の場合は人妻が幼児や赤ん坊に戻る設定がツボなもんですからこれは歓迎ネタです。
あとは落し物や忘れ物を届けに来た婦人警官や利奈の保育園の保母さんとかでもいいかも。
とにかく久々の良作ですのでこれからも応援してます。
16
:
mogmog
:2008/05/05(月) 13:34:16
「放浪商人キヨシ やり直しサイコロ その5」
喜美恵はサイコロをそっと振った。サイコロは床の上を転がり、「9」を上に向けて止まった。
「うう……」
喜美恵の体が縮み始めた。
スカートは抵抗も無く脱げ落ち、喜美恵の体はTシャツにすっぽりと包まれてしまった。
「きゃっ!」
サイコロを拾おうとした喜美恵は、パンティが脚にからまってうつぶせに倒れてしまった。
「うぐ……」
喜美恵は思わず涙ぐんだ。
喜美恵はサイコロを拾い、立ち上がった。
1歳児になってしまった喜美恵の足元がおぼつかず、立っているのがやっとだった。
「大丈夫か?」
「へ、へいき!」
喜美恵はサイコロを握り締め、深呼吸をした。
(お願い。「9」を出して!)
喜美恵は強く願いながらサイコロを振った。だが、出た目は「4」だった。
「あ、あ、あ……」
立っていられなくなった喜美恵は両手をついた。
今度は立ち上がることもできなくなっていたが、喜美恵はサイコロのところまではいはいして行き、サイコロをつかんだ。
「おい、まだやるのか?」
喜美恵はうなずき、サイコロを転がした。今度は「8」だった。
喜美恵はぺたんと腹ばいになった。もはやはいはいすらできなくなってしまった。
「あぶううう!!」
喜美恵は必死にサイコロに手を伸ばした。だが、喜美恵には物をつかむ力もなくなっていた。
義雄は喜美恵をなだめ、ソファに寝かせた。
(俺が勝手なことをしてきたからこうなったんだ。俺の手で解決しなくては……)
サイコロを拾い上げようとした時、恵理華が急に泣き出した。
「ふぎゃあ!ふぎゃあ!」
恵理華の泣き声につられたのか、喜美恵もいっしょに泣き出してしまった。
そういえばまだ夕食を食べていない。きっとおなかがすいて泣き出したに違いない。
「よしよし。ちょっと待ってろよ」
義雄は温めたミルクを哺乳瓶に入れ、恵理華と喜美恵に飲ませた。
その夜、義雄は二人の世話に忙しく、まともに寝ることができなかった。
特に恵理華は夜泣きしてばかりで、ようやく落ち着いたころには日が昇り始めていた。
義雄は眠いのを我慢しながら自分と利奈の朝食を作った。
幸い、その日は休日だった。
義雄は朝食の後片付けを済ませると、寝室に布団を敷いて恵理華と喜美恵を寝かせ、自分はベッドに横になった。
義雄が寝室でうとうとし始めたころ、利奈はよそ行きの服に着替えて家を出た。その手にはサイコロが握られていた。
(わたしがぜったいにママとおねえちゃんをもとにもどしてあげるんだから!)
利奈は近くの公園にやってきた。休日とはいえ、朝早いのでまだそれほど人はいなかった。
「あ、あかりおねえちゃんだ!」
「あら、利奈ちゃん。おはよう」
あかりは恵理華の友達で、利奈はよく遊び相手をしてもらっている。あかりの母親である暁子もいっしょだった。
利奈はポケットからサイコロを取り出した。
「あかりおねえちゃん、これふって!」
「これを振ればいいの?」
あかりはサイコロを受け取り、地面にそっと転がした。出た目は「6」だった。
サイコロが止まったとたんにあかりの背丈が縮み始める。
「あれれ?」
あかりは自分の服がぶかぶかになり、両手が袖に隠れてしまっている荷に気づいた。
あかりは利奈より小さくなって、4歳くらいになってしまった。
「あたち、りなたんよりちったくなったった!」
「あ、あかり、大丈夫!?」
心配する暁子をよそに、あかりは面白がっていた。
「利奈ちゃん、あかりを元に戻す方法はあるのよね?」
「うん。あるよ」
「じゃあ、今すぐ戻して」
「えー。ちばらくこのままでいたいよー!」
「だめよ。これから温水プールに行く予定でしょ?その体じゃおぼれちゃうわよ。それに、水着のサイズが合わないじゃない」
「はーい……」
「それで、元に戻す方法は何?」
「サイコロをもういちどふるの」
あかりはサイコロを拾い上げ、もう一度振った。今度は「8」だった。
「あれれれ?」
あかりの体がさらに縮みだす。とうとう1歳を下回り、自力で立っていられなくなってしまった。
「はうう……」
あかりはぶかぶかの服の中でもがくことしかできなかった。
17
:
mogmog
:2008/05/05(月) 13:40:37
様々な意見ありがとうございます。
当初はあと1話で終わらせる予定でしたが
予想以上に反響が大きかったので、急遽新たに話を付け足すことにしました。
18
:
mogmog
:2008/05/11(日) 16:30:09
「放浪商人キヨシ やり直しサイコロ その6」
「どういうことなの?もう一度振れば元に戻れるんじゃなかったの?」
暁子は利奈にたずねた。
「まえとおなじかずがでないとだめなの」
「そんな……」
「ままー。たちゅけてぇー!」
「大丈夫よ。ママがすぐ元に戻してあげるからね」
暁子はサイコロを振った。だが、出た目は「10」だった。
暁子はみるみるうちに若返り、若かりし頃の姿に戻った。だが、すぐに胸のボリュームが減り始め、背丈も徐々に縮み始めた。
服がぶかぶかになり、サイズの合わなくなってしまったスカートが地面に滑り落ちた。
胸のふくらみはなくなり、すっかり子供体型になってしまった。
「やだ。とまって!」
暁子の顔が丸みを帯びていき、幼さが増していく。体型もふっくらとした幼児体型に変化した。
「もう……だめ……」
暁子はぺたんと座り込んだ。あかりと同じく、暁子にも立ち上がる力がなくなっていた。
暁子の体はぶかぶかの服の中でさらに縮んでいき、ついに生まれたての赤ん坊になってしまった。
(ど、どうしよう……)
利奈はしばらくその場に立ち尽くしていた。
***
美沙は里佳と恭子と一緒に学校へ向かっていた。
里佳はセミロングの髪を金色に染めていて、胸が大きく、スカートは他の2人より短くしている。学年で1番の美少女と言われていて、去年の文化祭では高校2年生代表として美人コンテストに出場したほどだ。
恭子は黒いロングヘアで、スリムな体型をしている。里佳とは対照的に、あまり目立たない子だ。
公園の前を通りかかったとき、美沙は立ち止まった。
「どうしたの?」
恭子がたずねた。美沙の視線の先には、小学4年生くらいの少女が立っていた。
「あら、利奈ちゃんじゃない」
美沙はその少女に声をかけた。
「あ、みさおねえちゃん!」
少女はそう言って3人に向かって駆け出した。
「親戚の子?」
「うん。私のいとこ」
「へえ、かわいいじゃん」
利奈は美沙たちのところにやってくると、妙な形をした物を差し出した。
「これふって!」
差し出された物をよく見ると、1から10までの数字が振られていた。どうやらサイコロのようだ。
美沙はサイコロを受け取るとすぐに振った。出た目は「3」だった。
サイコロがとまった瞬間、体がむずむずとしたが、すぐに収まった。
「み、美沙?」
「何っ?」
振り返ると、目の前に里佳の巨大な胸があった。
里佳は美沙より20センチ以上大きくなっていた。小柄な恭子も10センチ以上の差ができていた。
「えっ……」
見下ろすと、自分の体が一回り小さくなっているのに気づいた。胸のふくらみも小さくなっている。
「む、胸が小さくなってる!」
「あはは!美沙ったらすっかりかわいくなっちゃって」
里佳は美沙の頭をなでた。
「笑い事じゃないわよ!利奈ちゃん、これどういうこと?」
「このサイコロをふるとわかがえるの」
「へえ、面白いじゃん。あたしにもやらせて!」
里佳は何のためらいもなくサイコロを振った。出た目は「5」だった。
「おおっ!!」
今度は美沙のときより変化が大きかった。里佳はその様子を面白そうに眺めていた。
自慢の胸はたちまち小さなふくらみに変わり、背丈もあっという間に美沙と同じになった。
しかし里佳の体はさらに縮み続け、利奈と同じくらいの背丈になってしまった。
「ははは。ミニスカがふつうのスカートになってる」
さっきまでひざが丸見えだったが、今ではスカートで隠れていた。
「こんどはきょうこのばんだよ」
「えっ……私は別に……」
「いいじゃん。こんな経験めったにできないでしょ?」
「うん……」
恭子は少しためらったが、里佳に促されてサイコロを振った。出た目は「9」だった。
恭子も他の二人と同じように若返っていった。
背丈はあっという間に美沙を下回り、どんどん里佳に近づいていった。
「きゃっ!」
スカートが恭子のほっそりとした脚を滑り落ちていく。恭子はあわててスカートをつかんだ。
里佳の背丈とほとんど変わらなくなったが、若返りが止まる様子は無い。
幼児になった恭子の体型は丸みを帯び始めた。
顔つきもまん丸になり、恭子は2歳くらいになってしまった。
「へえ。おさないころのきょうこってぽっちゃりしてたんだ」
「いやぁ!みないでぇ!!」
恭子の変わり果てた姿に、美沙も思わず笑ってしまった。
19
:
名無しなメルモ
:2008/05/11(日) 21:46:14
もしかして数年たったのですか?
20
:
mogmog
:2008/05/13(火) 11:47:15
>もしかして数年たったのですか?
どういうことですか?
分かりにくいところやおかしなところがあれば指摘してください。
21
:
名無しなメルモ
:2008/05/13(火) 14:11:24
利奈が小学四年生くらいと書いてありましたので。
最初の方には小学校入学前と表記されていましたが。
22
:
名無しなメルモ
:2008/05/13(火) 23:50:48
mogmogさんGJです。
徐々に徐々に赤ちゃんまで戻っていく喜美恵に激萌えです!
生まれたてホヤホヤの赤ちゃんに戻った人妻の暁子にも感激しました。
面白がってはしゃいでいる金髪の巨乳女子高生の里佳のこれから慌てふためく姿と
小さく変わり果てていく姿を想像すると続きが楽しみでしかたありません。
胸が自慢の女の子ほどギャップが面白いですよね。
これからもがんばってくださいね、応援してます。
23
:
mogmog
:2008/05/14(水) 15:15:37
>利奈が小学四年生くらいと書いてありましたので。
……!
ミスです。
「小学4年生くらいの」→「6歳くらいの」
でした。
美沙の視点に変わっただけで、時間の経過はありません。
24
:
mogmog
:2008/05/18(日) 11:22:26
「放浪商人キヨシ やり直しサイコロ その7」
「ねえ、利奈ちゃん。そろそろ元に戻してくれる?」
美沙が言った。
「べつにみさはそのままでもいいんじゃない?」
里佳が意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
「どうしてよ?」
「せたけはだいぶちぢんだけど、たいけいはほとんどかわってないじゃん」
「う、うるさいな!それで、戻る方法は何?」
「もういちどふってまえとおなじかずがでればもとにもどれるの」
「ええっ!!じゃあ、もう一度『9』を出さないと戻れないの!?」
里佳が急に顔色を変えて言った。
「あら。さっきまで喜んでたのにどうしたの?」
「そりゃあ、いつでももとにもどれるとおもったからだよ。それで、もしほかのかずがでたらどうなるの?」
「もっとわかがえっちゃうの」
「そんな……」
「確率は10分の1ってことね。まあ、そんな危ない賭けをするくらいならこのままでもいいかも」
「じょうだんじゃないわよ!こんなからだじゃがっこうにいけないし、かれしにもにげられちゃうよ!みさはもとにもどりたいんじゃないの?」
「別に。どうせ戻ったって体型は一緒なんでしょ?」
「くぅ……」
「戻りたいなら自分でサイコロ振りなさい。ほら」
美沙はサイコロを拾い上げ、里佳に手渡した。
「い、いやよ。だって、しっぱいしたらもっとおさなくなっちゃうんでしょ?」
「でも、そうしないと戻れないのよ?」
「うーん……そうだ。恭子が振ればいいのよ」
「ええ!?なんで?」
「それ以上若返ったって大して変わらないじゃない。ね」
里佳は恭子の両手をつかんだ。
「ちょっと、や、やめて!」
里佳は恭子にサイコロを無理やり握らせ、放り投げた。出た目は「10」だった。
恭子の体はさらに小さくなり、立つ力を失った恭子はしりもちをついた。
だが、変化が起きているのは恭子だけではなかった。
「あ、あたちまでちぢんでる!!」
里佳は自分自身も縮んでいくのに気がついた。
恭子に目を向けると、恭子はすでに生まれたての赤ん坊になってしまっていた。
「いやぁ!あかたんになんかなりたくない!!」
そう言った直後、里佳はバランスを崩して倒れ、そのまま服の中に埋もれてしまった。
「ばううう!!」
「ふにゃあ!ふにゃあ!」
「2人とも、しっかりして!」
美沙は2人をかわりばんこに抱き上げ、慰めた。
だが、里佳も恭子もなかなか泣き止みそうに無かった。
「わ、わたし、しーらない!」
利奈はサイコロを拾うと、公園から逃げ去った。
公園を出ると、義雄が家のほうから歩いてくるのが見えた。
「あ、パパ!」
利奈は義雄に駆け寄ろうとしたが、小石につまずいて転んでしまった。
「あっ……」
転んだ拍子に、利奈は持っていたサイコロを落としてしまった。
利奈の手から飛び出したサイコロはころころ転がって、「8」を上に向けて止まった。
しゅるるる……。
サイコロを取ろうと伸ばした腕が目の前で縮んでいく。
利奈は自分の着ている服がどんどん重くなっていくのを感じた。
「利奈!大丈夫か?」
義雄が駆け寄った時には、利奈はすでに1歳の赤ん坊になっていた。
義雄は利奈を抱きかかえ、家に連れて帰った。
義雄は家に着くと、利奈を恵理華と喜美恵の眠る布団に寝かせた。
「ぱぱ、ごめんなたい。あたちのちぇいであかりおねえたんやみさおねえたんまでまきこんじゃった……ふえーん!!」
「大丈夫。パパがみんなを元に戻してやる」
義雄は居間に入り、サイコロを握り締めた。
義雄は深呼吸をし、サイコロを振った。出た目は「9」だった。
義雄の体が若さを取り戻していく。たるんでいたおなかは六つに割れ、胸板が厚くなっていく。
だが、しばらくすると背丈が縮み始め、筋肉も衰え始めた。
変化が止まると、義雄は5歳くらいになっていた。
ギャンブルには慣れているつもりだったが、今回は自分そして家族全員の人生がかかっているのだ。なかなかサイコロを振れなかった。
だが、家族をもとに戻せるのは自分しか残されていないのだ。迷っている時間は無い。
義雄は心に決め、再びサイコロを振った。出た目は「9」だった。
義雄は思わず声を上げて喜んだ。だが、喜んでいる場合ではなかった。義雄の体が再び縮み始めたのだ。
「うおっ……」
義雄はしりもちをついた。義雄は赤ん坊になっていた。しかし、義雄は満足していた。
(これですべて元通りになる……)
安心した義雄は、服に埋もれながら意識を失った。
目を覚ますと、何もかもが元に戻っていた。千春の家を訪ねてみると、彼女はまるで何事もなかったかのように暮らしていた。
ただ、1つだけ変わったことがある。それは、義雄がギャンブルを一切やらなくなったことだ。
2度とサイコロを使う羽目にはならないと義雄は誓うのだった。
25
:
名無しなメルモ
:2008/05/18(日) 15:37:38
mogmogさんGJです!
とても楽しく読ませていただきました。
登場人物のほとんどが赤ん坊になっていくのはかなり萌えました!
ぜひまた放浪商人キヨシの新しい話を作ってください。
よろしくお願いします!
26
:
名無しなメルモ
:2008/05/19(月) 21:57:46
mogmogさんお疲れ様です。
女性の赤ちゃん化が大好きなのでとても楽しめました。
キヨシの次なるアイテムでもいろんな女性を赤ちゃんに
戻してくださいね、次回作楽しみに待ってます。
27
:
名無しなメルモ
:2008/05/21(水) 03:13:23
おもしろかったです。
スタイルのいい里佳が急に焦りだして、
結局赤ちゃんになってしまうのもよかったです。
28
:
mogmog
:2008/05/29(木) 13:10:44
「放浪商人キヨシ 愛の片道切符 その1」
こんな気持ちになるのは初めてだった。
早紀とは幼稚園のころからいっしょだったが、小学校高学年になるとそれぞれ同性の友達と付き合うことが多くなり、中学校ではほとんど話すことが無かった。
それが高校になって急に話す機会が多くなった。なぜなら、中学校までは地元の学校に通っていたので幼稚園や小学校からの友達が多かったのだが、高校は少し離れた学校で、知っているのは早紀だけだった。
僕も早紀もそれぞれ新しい友達を増やしつつあったが、やはり昔から知る友達として欠かせない存在だった。
そしてその内、僕は早紀に恋心を抱くようになっていた。だが、早紀は僕のことをただの友達としかみなしていないようで、とても告白する勇気が出なかった。
そんなある日、僕はあの男に出会った。
その男は長身で、黒いスーツを着ていた。男は僕にこう名乗った。
「私の名前はタケダキヨシ。世間では放浪商人キヨシと呼ばれております。私の不思議な道具であなたの悩みを解決して差し上げましょう」
男が指を鳴らすと、僕は一瞬にしてその男の店に移動していた。
そこで男は僕に一枚の紙切れを手渡した。紙はミシン目で4つに区切られており、1枚目には何も書かれておらず、残り3枚にはそれぞれ色の濃さの違うハートが描かれていた。
「これは『愛の片道切符』です。親密になりたい相手の名前を書くと、1枚切り離すごとにその人との関係が深まっていきます。1枚目でその人との間に愛情が生まれ、2枚目で愛情が永遠のものになり、3枚目でその愛情を独り占めできるようになります。ただし、取り消しはできません」
「は、本当ですか?それで、お金は……」
「1000円になります」
代金を支払うとその男は店と共に消えた。だが、僕の手元には確かに「愛の片道切符」が握られていた。
翌日の放課後、僕は思い切って早紀に話しかけた。
「あのさ。そのう……君の家に遊びに行ってもいい……かな?」
「うん、いいよ」
意外とすんなりOKしてくれた。
早紀はマンションに住んでいた。早紀の家を訪れるのは小学3年生の時の早紀の誕生会以来だ。
早紀の両親はどちらも働いているので、家には誰もいなかった。
「紅茶入れようか?」
「あ、ありがとう」
早紀は台所へ行き、僕は居間のソファに腰掛けた。
僕は「愛の片道切符」を取り出した。
(1枚目でその人との間に愛情が生まれ――)
僕は何も考えず、淡い桃色のハートが描かれた1枚目を切り離した。
「おまたせ」
早紀が紅茶を持って居間にやってきた。特に変わった様子は無いように思われた。だが……
(えっ……!?)
早紀は僕と向かい合わせに座るのではなく、僕の隣に座った。しかも、肩が触れ合うくらいの近さだ。
こんなに早紀に接近したのは初めてだった。彼女と話している間、僕はドキドキしっぱなしだった。
早紀との楽しい時間はすぐに終わり、帰る時間になった。
「えー。もう帰っちゃうの?」
「うん。これから塾があるんだ」
「明日また来てくれる?」
「うん。また来るよ」
「じゃあ、約束だよ!」
チュッ!
早紀は僕の頬にキスをした。僕の顔は一瞬にしてカッと熱くなった。
僕は早紀に笑顔で見送られ、マンションを出た。
塾の授業中、僕は早紀の柔らかい唇の感触を思い出していた。
早紀の様子から考えると、どうやらチケットの効果で早紀は僕の恋人になったようだ。
僕は心の中でガッツポーズをした。あまりのうれしさに、塾の先生の話に集中できなかった。
29
:
mogmog
:2008/06/02(月) 12:23:09
「放浪商人キヨシ 愛の片道切符 その2」
翌日の放課後、僕は約束どおり早紀のマンションに行った。
早紀が台所でお茶の準備をしている間、僕は残ったチケットを眺めていた。
2枚目には濃い桃色のハートが、3枚目には真っ赤なハートが描かれていた。
今の状況で十分目的は果たしている。しかし、せっかく買ったチケットを使わないでおくのはもったいない気がした。
(これ以上深い関係ってどんなのだろう?)
僕は思い切って2枚目を切り離した。
一瞬、目の前が真っ白になったが、すぐに収まった。
その一瞬で何かが変わった。さっきと何かが違っていた。しかし、それを具体的に説明することはできなかった。
しばらくして早紀が戻ってくると、その姿に違和感を覚えた。早紀が妙に大人びて見えたのだ。
服装はブレザーのままだし、その他変わったところは見られなかった。それにも関わらず、早紀が僕より年上のように感じた。
「ねえ、早紀ちゃん――」
僕がそう言いかけると、早紀は驚いた顔で僕を見つめた。
「ちょっと、どうしたのよ急に」
「えっ……何か変なこと言ったかな?」
「だって、私のこと急に名前で呼ぶんだもん。いつも『お姉ちゃん』って呼んでたのに」
(お、お姉ちゃん!?)
「あ、そうだ。今日は算数の日だったよね。おやつはその後にしようね」
僕は早紀に手を引かれ、立ち上がった。その時、僕の背丈が早紀の胸の辺りまでしかなくなっているのに気づいた。僕はどうやら早紀の弟になってしまったようだ。
「これから何するの?」
「今日は九九の練習をしましょう」
「九九は全部言えるよ」
「本当?じゃあ、7の段言ってみて」
「七一が七、七二十四、七三二十一、七四……あれ?」
「ほら見なさい。しばらく練習してないから忘れちゃってるじゃない」
僕は体が縮んだだけでなく、知能まで小学生レベルになってしまっていた。
僕は子供部屋に連れて行かれ、30分間九九の練習をさせられた。
「よしよし。ちゃんとできたわね」
早紀に頭をなでられ、とてもいい気持ちになった。だが、僕は満足していなかった。
2枚目を使うと愛情が永遠のものになる。あの男はそう言った。確かに、兄弟という関係は何があっても変わることは無い。
だが、僕が望んでいるのはそんな関係ではない。僕は一生早紀のそばにいたいのだ。兄弟愛は永遠かもしれないが、いつかは離れ離れになってしまう。そんなのは嫌だ。
こうなれば3枚目を使うしかない。3枚目を使えば早紀の愛情を独り占めすることができる。こんなすばらしいことは無い。
その夜、僕は早紀と同じベッドで寝た。精神まで幼くなってしまったので、一人では怖くて眠れなかったのだ。
早紀が寝息を立て始めたころ、僕はそっとベッドを抜け出し、机の引き出しにしまっておいたチケットを取り出した。
早紀を起こさないようにベッドに戻り、音を立てないようにゆっくりと3枚目のチケットを切り離した。
翌朝、目を覚ますと部屋の様子が変わっているのに気づいた。昨日と同じ部屋だが、勉強机や本棚がなくなっていた。
何より驚いたのは、ベッドの周りに柵ができていたことだ。
(これって……ベビーベッド!?)
起き上がって自分の体を確かめようとしたが、思うように体が動かない。
何とか四つんばいになることはできたが、立ち上がることはできなかった。
僕はベッドの真ん中にちょこんと座った。僕は水色のベビー服を着ていた。周りには赤ちゃん用のおもちゃか散らかっている。
一番近くにあったミニカーをいじっていると、早紀がやってきた。
早紀はもはや高校生ではなく、立派な大人になっていた。
「あら、もう起きてたの?」
早紀の巨大な両手に体をつかまれたかと思うと、僕は早紀に抱き上げられた。
「さ、ミルクの時間よ」
僕は本能のままに早紀の乳首にしゃぶりついた。
僕と早紀は親子愛という強い絆で結ばれていた。それは恋人同士の結びつきとは比べ物にならない強さだった。
僕は早紀無しでは生きていけないし、早紀は僕のことしか頭に無かった。
僕はまさに早紀の愛情を独り占めにしていた。
30
:
どんさん
:2008/06/03(火) 07:46:09
mogmogさま。
新作、とても、面白かったです。
この展開は自分のツボにどんぴしゃりでとても、楽しめました。
素敵な作品をどうもありがとうございました。
31
:
名無しなメルモ
:2008/06/05(木) 13:03:04
mogmogさん、最高に萌える作品をありがとうございます☆
男性の方が若返って、自分より年上になった女性に甘えるシチュエーションは最高にツボです!
知能や精神も幼児化しているのがまた良いですよね♪
32
:
名無しなメルモ
:2008/07/01(火) 23:43:43
キヨシの今後の活躍を期待しています。
サイコロみたいに主人公以外の者が巻き込まれるアイテムの
登場を心から期待してますので今後とも頑張ってください。
33
:
mogmog
:2008/07/03(木) 13:06:47
「放浪商人キヨシ 人生まるごと日記帳 その1」
「美佐枝ちゃん、小枝ちゃん、学校に遅れるわよ」
「はーい!」
私は自分の部屋を飛び出し、どたばたと廊下を走っていた時、姉の美佐枝が自分の部屋から顔を出した。
「足音がうるさい!」と怒鳴られるかと思い、あわてて謝ろうと姉の方を振り返った時、姉は狐につままれたような顔で私を見つめていた。
「ど、どうしたの?ぽかんとして」
私は戸惑いながら言った。
「え、い、いや、ごめんなさい!」
そう言うと姉はあわてて部屋に引っ込んでしまった。
「変なお姉ちゃん」
最近姉の様子がおかしい。家に帰るなり自分の部屋に引きこもり、夕食の時間まで出てこないのだ。部屋で何かこそこそしているのは前々から気になっていたが、最近では朝食前にも部屋で何かやっているようなのだ。
いつか部屋で何をしているのか暴いてやろうと思っていたが、そのチャンスがようやく訪れた。
翌日私の中学は入学試験で休みだった。一方姉の高校は通常通り授業がある。
姉が家を出たのを確認すると、姉の部屋に忍び込んだ。この部屋に入るのは私が小学2年生のときに姉と遊んだとき以来だ。
漫画本は姉が高校に入学したときに捨てちゃったし、パソコンは調子が悪くて修理に出している。特に夢中になるようなものは見当たらない。そこで机の引き出しを探ってみることにした。
1つ目の引き出しには文房具が詰まっていた。ここには無いようだ。続いてもうひとつの引き出しを開ける。すると1冊の分厚い日記帳が入っていた。
引き出しから取り出し、机の上に置く。なかなかの重さだ。表紙には「人生まるごと日記帳 名取美佐枝専用」と書かれていた。
「ふーん、お姉ちゃんの日記帳か。おもしろそう。何が書いてあるんだろう」
しおりが挟まっていたのでとりあえずそのページを開いてみる。だが開いたのは真っ白なページだった。
「あ、そっか。ここ今日書くページか。昨日はなんて書いたんだろ」
わくわくしながらひとつ前のページを開く。
そこには普通の日記帳とは違う書き方で書かれていた。
普通の日記帳には最初に日付を書くもだが、この日記帳には日付の代わりに「18年128日目」
と書かれていた。
「変だなあ。今年は西暦でも元号でも18年じゃないのに……」
と、ひとつ思い当たることがあった。
「そういえばお姉ちゃん今年で18歳だっけ」
姉の誕生日は9月下旬。それから128日目、つまりおよそ4ヶ月後はちょうど今の時期にあたる。
「なるほど。これお姉ちゃんの年齢を表しているのね。美佐枝専用ってのはそういうことか」
納得したところで改めて日記を読んでみる。
「18年128日目。朝起きるとすぐに昨日つけ忘れた日記をつけた」
最初の一文を読み終えた瞬間、私はふわっと宙に浮かんだような気分になった。
突然のことに驚き、思わず目をつぶった。しかしすぐに不思議な感覚は無くなり、再び椅子に着地した。
目を開けると元の椅子に座っていた。机の上には分厚い日記帳。何も変わった様子は無い。
「何だったんだろ……」
気を取り直して次の文を読もうとしたとき、廊下で足音がした。
(まさか、お姉ちゃんが戻ってきた!?)
忘れ物を取りに戻ってきたのかもしれない。だとすればこの部屋に入ってくるはずだ。そうなればただでは済まない。
私はドアをそっと開けてみた。すると目の前を1人の少女が走っていった。
(誰!?)
その後ろ姿は姉のものではなかった。だがどこかで見覚えのある姿だった。
その少女は急に立ち止まり、こちらを振り返った。
その顔を見て私は目を見開いた。その少女は私だったのである!
34
:
名無しなメルモ
:2008/07/03(木) 22:13:34
まってましたよー!
この後、どんな展開とアイテムの登場となるのか期待しています。
35
:
mogmog
:2008/07/14(月) 13:29:02
「放浪商人キヨシ 人生まるごと日記帳 その2」
「ど、どうしたの?ぽかんとして」
もう1人の私は戸惑った様子で言った。
「え、い、いや、ごめんなさい!」
わけがわからずあわててドアを閉めた。
なぜ私が2人いるのだろうか。いや待て。今のシーン以前経験したような気が……。
「あ!!」
思い出した。昨日の朝私が朝食を食べに台所へ向かった時とそっくりだ。でも、あの時部屋から顔を出したのは姉だったはず。ということは……。
姿見の前に行き、覗き込む。そこに映っていたのは私ではなく姉の姿だった。
「わ、私、お姉ちゃんになっちゃった!!」
そういえばさっきから声がいつもと違う気がしていたし、胸にずっしりと重たいものが……
むにゅっ
やわらかくて心地よいものに手が触れた。見下ろすと姉の自慢の乳房が私の両手に包まれていた。
思わずにんまりする私。姉の自慢の体が今や私のものになったのだ!
が、頭脳まで姉のものに置き換わったせいか、興奮はすぐに冷め、この状況を冷静に考え始めた。
どうやら単純に姉と入れ替わったわけではなさそうだ。なぜなら時間が1日前に戻ってしまっているからだ。
では何が原因でこうなったのか。数分前の状況を思い出す。姉の部屋に入り日記帳を見つけ中身を読む。そう、読み上げた瞬間に何かが起こったのだ。
その読み上げた文章は昨日の朝、つまり今の私がいる時間のことが書かれた部分。ということは……
「わかった。この日記の中身を読むとその時間にタイムスリップできるってわけね!」
SF映画の見すぎだと言われかねない結論だが、今の状況から考えて間違ってはなさそうだ。
実証するのは簡単。もう一度試してみればいいのだ。
日記をぱらぱらめくり適当なページを開く。
「13年179日目。紗枝が部屋に遊びに来た」
読み終わった瞬間、私は真っ白な空間に放り出された。床も壁も無い不思議な空間。いつの間にか着ていた服はすべて消え、私は裸になっていた。
その空間を漂いながら、私の体(と言っても実際には姉の体だが)は変化し始めた。乳房は風船の空気が抜けたかのようにしぼんでいき、豊満なおしりもどんどん小ぶりになっていく。
変化が終わると急に重力を感じ、次の瞬間私は姉の部屋に戻っていた。
椅子を降り姿見に自分の姿を映してみる。映し出されたのは13歳、つまり5年前の姉の姿だった。
胸は私と大して変わらず、まだ子供用のブラジャーを着けていた。
「ということは、私もおねえちゃんみたいな巨乳になれる可能性が十分あるってことね!」
そんなことはともかく、どうやら私の予想は正しいようだ。
「ふふふ。この日記を使えばお姉ちゃんのプライベートがぜーんぶわかっちゃうってわけね!」
何か気になることが書いてないか日記をぱらぱらめくっていると、ドアをノックする音がした。
「どうぞ」
入ってきたのは8歳の私だった。
「かわいい!」
思わずそう言うと、私自身であることも忘れて小さな体をぎゅっと抱きしめた。
「うにゅ、く、くるちい〜!」
「あ、ごめん」
私はあわてて手を離した。そう言えば最後に姉の部屋に遊びに来たとき、妙に姉が興奮していたような気がする。
「えっと……何か用?」
「いっしょにままごとあそびして!」
「あ、ごめん。私これからやりたいことがあって……」
「……」
8歳の私は急に黙り込むと部屋を出て行ってしまった。
「あ……」
最後に姉の部屋に来たとき、姉に遊ぶのを断られてしまった。それですねてしまった私は、その後姉の部屋に入ろうとしなくなったのだ。
ちょっと気まずくなりながら再び日記をぱらぱらめくっていると、気になるページを見つけた。
「11年3日目。ママと妹といっしょにデパートへ買い物に行った」
36
:
名無しなメルモ
:2008/07/15(火) 01:02:54
前の文章の伏線といい、素晴らしいです。
AP派の私としては今回はツボでした。
未来にいけないとすると、あとはちっちゃくなる一方になりそうなのは
少し残念ですが、続きを楽しみに待っております。
37
:
とも
:2008/07/20(日) 09:47:26
「愛の片道切符」は最高に萌えました!
知能や精神も幼児化するのがまた良いですね☆
自分もこの切符を好きな女性相手に使って、とことん甘えてみたいです♪
38
:
mogmog
:2008/07/22(火) 12:24:38
「放浪商人キヨシ 人生まるごと日記帳 その3」
再び私は真っ白な空間を漂っていた。膨らみかけの胸はさらに縮み、背丈も一回り小さくなる。次の瞬間、私はデパートの店内に立っていた。
私は左手をママに握られ、婦人服売り場をゆっくり歩いてた。ママの左手は6歳の私の手を握っている。
ママは私の手を離し、洋服を手にとって眺めた。
「ママちょっとこれ試着してくるから、小枝ちゃんが勝手にどっか行っちゃわないように見ててね」
そう言うとママは私の手をにぎり、6歳の私の手をにぎらせた。
幼い頃の自分自身と手をつなぐなんてなんだか変な気持ちだ。
私は幼い私と一緒に売り場の隅のベンチに腰掛けた。
ママは数分で戻ってきた。手には洋服の入った紙袋を持っている。
「ママの洋服は買ったから、今度は美佐枝ちゃんと小枝ちゃんの番ね。さ、子供服売り場に行きましょ」
エスカレーターに乗り、ひとつ上の階に移動した。その間私はずっと6歳の私の手をにぎったままだった。
「まず小枝ちゃんの服から買いましょうか。美佐枝ちゃんはちょっと待っててね」
ママは小枝を連れて幼児服のコーナーに行ってしまった。
しばらくして2人が戻ってくると、6歳の私は買ったばかりの服を着せられていた。
それはピンク色のワンピースだった。胸元に小さなリボンが縫い付けられ、その周りをバラの刺繍が囲んでいる。裾には3列のフリルがゆれている。
そういえば昔こんなの着てたっけ。お気に入りのワンピースで、ちんちくりんになってもしばらくたんすにしまっていた気がする。
ほとんど姉のお下がりだった中で、この服だけは珍しく買ってもらったものだった。
「おねえちゃん、みて!かわいいでしょ!」
6歳の私は大喜びしているようだ。
「あとは美佐枝ちゃんのだけね。えーと、何か買わなきゃいけないものあったっけ?」
「私、ブラジャーがほしいの!」
私の口が勝手に動いた。この体は私の意思だけで動いているのではなく、姉の意思も共存しているようだ。
「え?まだ早いんじゃない?」
「そんなことないよ。もうおっぱい膨らんできたもん!」
「そう?」
ママは私を下着のコーナーに連れて行った。
「じゃあ、これ着てみて」
手渡されたブラジャーをつかみ、私は試着室に入った。
シャツを脱ぐと未熟な胸が姿を現した。乳首の周りがほんの少し膨らんでいるだけで、私が10歳だった頃よりも小さい。とてもブラジャーが必要だとは思えない。
しかし私の両手はブラジャーを着用し始めた。
案の定胸のボリュームが足らず、前の部分が完全にスカスカになってしまった。
「ほらね。まだ早いって言ったでしょ」
ママが試着室を覗き込んで言った。
「もっと小さいサイズのは無いの?」
「無いわよ。これが一番小さいサイズだもの。さ、帰りましょ」
「いやだ!ブラジャー着けたいよう!」
「無いんだからしょうがないでしょ」
(お姉ちゃんったら昔から意地っ張りだったのね)
ぐずりながら私はそんなことを考えていた。
39
:
mogmog
:2008/07/28(月) 14:46:10
「放浪商人キヨシ 人生まるごと日記帳 その4」
デパートから帰ってくると、真っ先に姉の部屋に向かった。また日記を取り出しぱらぱらとめくる。そして、気になる文を見つけた。
「4年342日目。妹が生まれた」
私の体はさらに若返り、とうとう幼児体型になってしまった。
次の瞬間、私はたくさんの幼児といっしょに座っていた。
幼児たちはおそろいのスモックを着ていて、胸元に赤いチューリップの形をしたバッジをつけている。私も同じ服装をしていた。
見渡すと、どうやら幼稚園にいるようだ。先生に紙芝居を読んでもらっているところらしい。
しばらく私も先生のお話に耳を傾けた。すると突然、誰かに肩をぽんぽんとたたかれた。
驚いて振り返ると、いつの間にか別の先生が私の傍らに来ていた。
「おめでとう!さっき美佐枝ちゃんのお父さんから電話があって、あなたの妹が生まれたそうよ。今日からお姉ちゃんになったのよ」
「わーい!やったー!」
口ではそう言ったものの、心の中では残念がっていた。
(なーんだ。出産に立ち会ったわけじゃないのか。つまんないの!)
幼稚園から帰ってくると、すぐに姉の部屋に戻った。脚が短くなったせいか、玄関から部屋までの距離がさっきより長く感じられた。
部屋に机は無く、代わりに幼児用の小さなテーブルが置かれていた。後に私の部屋に置かれ、私が小学校に入学した時に近所の家に譲ってあげたものだ。
テーブルは、この家を去るときには鉛筆やクレヨンの落書きだらけになっていたが、今目の前にあるテーブルはぴかぴかの新品だ。
そのテーブルの真ん中にあの日記帳が置かれていた。
またぱらぱらとページをめくる。すると、最も気になる出来事が書かれたページを見つけた。
「よねんさんびゃくくにちめ。しらないおじちゃんからにっきちょうをもらった」
たちまち姉の部屋は消え、次の瞬間私は居間で人形遊びをしていた。
すぐそばのソファーでは、ママが刺繍をしていた。ママのおなかは大きくふくらんでいる。この中に赤ちゃんの私が入っているなんて信じられない。
「うっ……」
突然ママがうめいた。
「だいじょうぶ?」
「うん。おなかの赤ちゃんがちょっと暴れたみたい。もうすぐ生まれる証拠ね」
「いつうまれるの?」
「あと1ヶ月くらいだって先生が言ってたわ」
「ふーん。ねえ、ママ」
「何?」
「わたしにっきかきたいの」
「あら、急にどうしたの?」
「いもうとがうまれたら、そのことをにっきにかきたいの」
「でも、美佐枝ちゃんはまだひらがな上手に書けないでしょ?うまく書けるようになったら買ってあげるわ」
「えー。いますぐほしい!」
「だーめ。だいたいこんな体で買い物に行けないでしょ?」
「いいもん!パパにたのむから!」
そう言って私は居間を出て行ってしまった。
ふてくされながら姉の部屋のドアを開けると、目の前に見知らぬ男が立っていた。
男は背が高く、黒いスーツを着ていた。黒いシルクハットをかぶり、背筋をピンと伸ばして立っている。いかにも紳士といった感じの人だ。
「だ、だれ?」
「私の名前はタケダキヨシ。世間では放浪商人キヨシと呼ばれております」
「ほうろうしょうにん?」
「旅をしながら品物を売っている人のことです。では早速私の店に行きましょう」
男が指を鳴らすと一瞬にして景色が変わり、いつの間にか私は古びた店の真ん中に立っていた。
「これをあなたに差し上げましょう」
そう言って手渡されたのは、あの分厚い日記帳だった。
「この日記帳にはあなたが生まれてから死ぬまでのことをすべて書き込むことができます」
「でも、わたしじがかけないよ」
「この日記帳は鉛筆をにぎっているだけで勝手に日記を書いてくれるのです」
「へえ。すごーい!」
「それだけではありません。あなたが大きくなって文字が読めるようになったらこの日記を読んでごらんなさい。もう一度その日の出来事を体験できますよ。さ、持って行きなさい」
「ありがとう!」
男が再び指を鳴らすと、元の部屋に戻ってきた。男の姿は無かった。
(ふーん。この日記帳はこうして手に入れたのか)
日記帳をテーブルに置き、ぱらぱらとめくる。
(そう言えば生まれてから死ぬまで書き込めるって言ったっけ)
最初のページを開くと「0年0日目 病院で生まれた」とだけ書かれていた。
読み上げようとしたが、やっぱりやめておくことにした。少なくとも立てるようになっていなければ日記帳にたどり着けなくなってしまい、しばらく赤ちゃんのままでいる羽目になってしまう。
ぱらぱらめくり、別のページを探す。
「ぜろねんにひゃくきゅうじゅうくにちめ。はじめてたてるようになった」
40
:
mogmog
:2008/08/08(金) 10:24:35
「放浪商人キヨシ 人生まるごと日記帳 その5」
幼い体がさらに縮み、ぷっくりとした乳児体型に変化する。
そして私は、再び居間に座っていた。
目の前でママとパパが手招きしている。
「美佐枝ちゃん、こっちにいらっしゃい」
両手をつき、ふらふらしながらも何とか立ち上がる。だがすぐにバランスを崩し、ママの腕の中に倒れこんでしまった。
「やった!美佐枝が立ったぞ!」
「すごいわ、美佐枝ちゃん!よくできたわねえ」
ママに頭をなでられ、私はとてもうれしくなった。しかしその気分は、突然の尿意によってかき消された。
我慢しようとしても力が入らず、たちまちオムツをぐっしょりとぬらしてしまった。
「ふえ〜ん!!」
ぬれたオムツはなんともはき心地が悪く、あまりの気持ち悪さに私は思わず泣き出してしまった。
「あらあら、おもらししちゃったの?ちょっと待ってね。すぐにオムツ替えてあげるから」
私は仰向けに寝かされ、ベビー服を脱がされた。
ママは手際よくぬれたオムツをぬがすと、新しいオムツをはかせてくれた。
すっかり気分が良くなった私は泣き止み、そのまま眠ってしまった。
目を覚ますと、私は同じ場所で寝ていた。すぐ横にはママがすやすやと眠っている。添い寝をしてそのまま眠ってしまったらしい。
(そろそろ元に戻ろうかな)
私はママを起こさないようにそっとハイハイで居間を抜け出した。
しかし、日記帳は二階の部屋にある。つまり階段を上らなくてはならないのだ。
階段の下ではるか遠い二階を見上げていると、急に私の体が宙に浮いた。パパに抱き上げられたのだ。
「どうしたんだ、美佐枝?二階に行きたいのか?」
私はうなずいた。
「よしよし」
パパは私を抱きながら階段を上っていった。
二階に着くと、私は姉の部屋を指差した。
「この部屋が気になるのか?」
パパは部屋のドアを開けた。ドアの向こうには何も無いがらんとした部屋が広がっていた。
「この部屋はね、将来美佐枝の部屋にしようと思ってるんだ」
その時私は重大なことに気づいた。日記帳を手に入れたのは姉が4歳の時。したがって、私が今いる時間、つまり姉が0歳の時に日記帳は存在していなかったのだ。
頭の中が真っ白になる。だんだん情けない気持ちと悲しい気持ちが満ちてきて、とうとう私は泣き出してしまった。
「ど、どうしたんだ、急に。ママ!ママ!」
ママがあわてて駆けつけてきた。
「あなた、いったい何があったの?」
「いや、この部屋に連れてきたら急に泣き出しちゃって……」
ママは私を抱きかかえた。
「よしよし。泣かないで」
ママは必死に私をあやそうとするが、私は泣き続けた。
「どうしたのかしら。オムツはさっき換えたばかりだし……」
「おっぱいが欲しいんじゃないか?」
「そうかしら?」
「むぎゅぎゅ……」
私の口にママの乳首が無理やり押し込まれる。だが、そんなもので泣き止むわけが無い。
結局、私は眠気に襲われるまで泣き続けた。
「小枝!私の部屋で何してるの!?」
「ほえ?」
目を覚ますと、私は姉の机で寝ていた。目の前には姉の日記帳が置いてある。
「な、なんでもないよ!」
私はあわてて日記帳を元の場所に戻すと、姉の部屋を出て行った。
(あれって夢だったのかなあ)
自分の部屋に戻ると、さっき体験したことを思い返した。
(とってもリアルだったけど……やっぱり夢だよね)
私は自分をそう納得させた。確かめてみる気にはなれなかった。
41
:
とも
:2008/08/31(日) 18:46:08
人生まるごと日記帳は最高ですね!
自分も乳児にまで戻れたらおっぱいを飲んで甘えたり、オムツをおしっこでぐっしょり濡らして母親に替えてもらいたいです(笑)
42
:
名無しなメルモ
:2008/09/01(月) 18:51:07
ハッカー以来mogmogさんの大ファンです!
ハッカーみたいに他人の年齢をイタズラしまくるネタや
サイコロみたいに他人も巻き込んだアイテムを期待してます!
43
:
mogmog
:2008/09/05(金) 14:16:28
【放浪商人キヨシ 劇的スイッチ その1】
早朝5時前、雅子は人気の無い公園のベンチで人を待っていた。
その相手は「ミサミサ」、「キノチカ」、そして「キヨシ」。ネットで知り合った仲間だ。
しばらくすると高校生くらいの少女が現れた。
「えっと……始めまして……でいいのかな?トミーです」
「トミー」は雅子のハンドルネームだ。
「ミサミサです。キノチカさんとキヨシさんは?」
「まだみたいですけど」
するとパタパタという足音が公園の入り口の方から聞こえてきた。
「ごめんなさい。遅くなっちゃった」
現れたのは小学生くらいの少女だった。
「あなたがキノチカさん?」
「うん」
「歳いくつ?」
「10歳」
「えっと……これから何するのかわかってるわよね?」
「うん」
「いいの?お父さんとお母さんは?」
するとキノチカはうつむいて黙り込んでしまった。雅子はそれ以上何も聞けなかった。
「それにしてもキヨシさんはまだですかね」
「私ならここにいますが」
驚いたことに、いつの間にか3人のすぐそばに黒いスーツ姿の男が立っていた。
「あなたが人生を簡単に終わらせる道具を持っているという――」
「タケダキヨシです。世間では放浪商人キヨシと呼ばれております。道具というのはこれです」
キヨシの差し出した手には円いスイッチが握られていた。バラエティ番組でゲストが連打してそうなやつだ。
「これが、掲示板で言っていた簡単に死ねる道具なんですか?」
ミサミサが言った。
「死ぬなんてとんでもない。これは『劇的スイッチ』。人生を終わらせる道具であって死ぬための道具ではありません」
「と言いますと?」
「人生を終わらせると言うよりは、新しい人生を始めるスイッチと言ったほうがよろしいでしょうね。簡単に言うと、このスイッチを押せば運命を劇的に変えることが出来るのです。まあ、実際に試したほうがわかりやすいでしょう。代金は1万円になります」
「え?お金取るんですか?」
「1万円で人生を変えられるというのはかなりお得だと思いますよ。3人で割れば4千円もしませんし」
「わかりました。とりあえず私が1万円払いましょう」
雅子は財布から1万円札を取り出し、キヨシに渡した。
「お買い上げありがとうございます。ちなみにスイッチは1人1回までしか押せません。人生を変えるチャンスが何度もあるわけではありませんからね」
そう言うとキヨシは現れたときと同様、何の前触れもなく消えてしまった。
「さてと。誰が最初に押す?」
「雅子さんが最初に押すべきだと思うけど」
「私?」
「お金払ったの、雅子さんだし」
「そう。それじゃあ……」
雅子はそっとボタンを押した。
「あっ……」
「どうしたの?」
「なんか変な感じ」
股間がむずむずする。手を当てて見ると小さなやわらかい塊に触れた。
雅子は2人に背を向け、パンティーの中を覗き込んだ。股の間から陰茎が伸びていた。根元には陰嚢もできている。
股間の変化が大体終わると、変化は脚や上半身に広がっていった。
脚に毛が生え始め、体が全体的にがっちりした体型に変化していった。乳房はしぼみ、硬そうな筋肉に置き換わった。
ミサミサもキノチカも雅子の変化に気づいた。
2人を振り返った雅子は、たくましい男性になっていた。いつの間にか服装が男物に変わっていた。
「私――」
驚くほど低い声に雅子は一瞬戸惑った。
「――男になっちゃった……」
44
:
mogmog
:2008/09/05(金) 14:17:19
【放浪商人キヨシ 劇的スイッチ その2】
「このスイッチ、本当に運命を変えちゃうんだ」
「確かに劇的な変化だけど、痛みとかありましたか?」
「ううん。ちょっとむずむずしただけ」
「今度は私がやりたい!」
キノチカが興奮して言った。
「いいの?キノチカちゃんも私みたいに男の子になっちゃうかもしれないのよ?」
「いいよ。私、前から男の子になりたいって思ってたの!」
キノチカは迷わずスイッチを押した。
「うう……」
「大丈夫?」
「胸が痛い」
「胸?」
キノチカの胸元を見た雅子はあっと驚いた。
初めてキノチカに会ったとき、確かにキノチカの胸は完全に平らだった。だが、今ではわずかなふくらみが出来ていた。
ふくらみはTシャツを押し上げ、どんどん大きくなっていく。その様子を眺めていると、雅子は自分のあそこがむくむくと大きくなっていくのを感じた。そっと触って見ると硬くなっていた。
「どうしたの?」
「な、なんでもない!」
雅子は顔を赤らめた。
やがてキノチカの背丈はミサミサを追い抜き、顔つきもすっかり大人っぽくなった。服装も大人用に変わった。
「ねえ、鏡持ってない?」
雅子はかばんから手鏡を取り出し、キノチカに手渡した。
「うわあ、これが私!?」
キノチカは鏡に映る自分の姿を興奮しながら眺めた。
「今度はミサミサさんの番ね」
「うん……」
ミサミサはスイッチを受け取ったものの、なかなか押す勇気が出なかった。
「どうしたの?」
「なんだか怖い。キノチカちゃんみたいに大人になるんだったら良いけど、男にはなりたくないなあ……」
「そんなのやって見なくちゃわからないじゃない。ほら」
雅子に促され、ミサミサは恐る恐るスイッチを押した。
すると今度はキノチカのときとは逆に、ミサミサの体は若返り始めた。本人も自分の体の変化に気づいたようだ。
「私、もしかして小さくなってる?」
雅子はうなずいた。
ミサミサの顔は見る見るうちに子供っぽさが増していき、胸のボリュームも減り始めた。
「いやー!!私の胸が小さくなってく……あ、声も変……」
ミサミサは甲高い声で叫んだ。
小学校低学年くらいになってしまったミサミサの背丈は雅子の胸元にも及ばなくなっていた。
「わたし、なんさいくらいにみえる?」
「えっと……7歳……いや、6歳くらいかなあ。あ、でもまだまだ小さくなるみたい」
「えっ?まだおわってないの!?」
やがてミサミサは完全に幼児体型になってしまった。
「こんなからだやだよー!もとにもどりたいよー!」
しかし、元に戻るどころかミサミサの体はさらに幼くなっていく。
「なんとかちてよ!このままじゃあかたんになったうよー!」
3歳くらいになったミサミサは雅子に助けを求めた。
「そんなこと言われても……」
雅子は困ってしまった。雅子はただミサミサが縮んでいく様子を眺めるしか出来なかった。
「たちゅけて……もう……お、おぎゃー!」
ミサミサはとうとう赤ん坊になってしまった。必死で助けを求めるが言葉にならず、雅子とキノチカには赤ん坊の泣き声にしか聞こえなかった。
「ミサミサさん、すっかり可愛くなっちゃったね。これからはミサミサちゃんって呼ぼうかな」
キノチカはミサミサを抱きかかえた。
「あはは。なんだか私たち家族みたい。私がママで、トミーさんがパパ。ミサミサちゃんが私たちの娘」
「そうね」
「ねえ、本当の家族にならない?」
「えっ?」
「キヨシさんが言ってたでしょ、このスイッチは新しい人生を始めるスイッチだって。私たちが家族になって、新しい人生を始めることをキヨシさんは望んでたんじゃないかな」
「そうね。きっとそうだわ」
「ミサミサちゃんはどう思う?」
「ばぶう!」
「あ、そっか。しゃべれないんだ」
「でも、きっと賛成してくれてるんだと思うよ」
「じゃあ、決まりね!」
「よし、それじゃあ、私たちの住むアパートでも探しに行こうか」
「でも不動産屋さんはまだ開いてないんじゃないの?」
「じゃあ、何か食べに行こうか」
「賛成!私さっきからおなか鳴ってたんだ」
「あぶう!」
「うふふ。ミサミサちゃんもおなかすいてるみたい」
3人は公園を出て近くのファーストフード店へ向かった。
顔を出したばかりの朝日が3人の新たな人生の門出をやさしく見守っていた。
45
:
名無しなメルモ
:2008/09/08(月) 20:30:30
個人的に今回の話はけっこう好物だったりします
「ハッカー」ともども今後も楽しみです
46
:
とも
:2008/09/08(月) 21:11:35
今回は心暖まるお話だな〜と感じました☆
45さんと同じくまたハッカーも続きを見てみたいです!
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