[
板情報
|
R18ランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
| |
守り神
1
:
ウエストリバー
:2007/08/19(日) 20:49:43
ご無沙汰しておりました。ご存知ない方は、以後おみしりおきを。
以前、リバースワールドにて「AP・AR小説【守り神】」を投稿していたウエストリバーという者です。
最後の投稿の後、PCがウィルスに感染してしまい、小説の投稿が不可能な状態に陥ってしまいました。
バックアップがあったので、原稿完全消失は免れました。
が、小説を書き直そうにも、就職した為に忙しくて時間がありませんでした。
それから頑張って働き、新しいPCを購入し、リバースワールドをお気に入りに入れようとしたら
閉鎖してたりと戸惑いましたが、なんとかこちらへたどり着けました。
すべてのスレッドを拝見してみると、以前よりも作家さんが増えており、喜ばしい限りです。
クオリティも高く、当方も対抗心というか、以前にも増して創作意欲が沸いてきました。
そこで、以前投稿した「守り神」から、多少手直しを加えた物を、再度投稿していきます。
誤字・脱字を修正し、多少の台詞を追加したりしています。
もちろん、新しい話も投稿いたします。
大変長らくお待たせいたしました。再度
「AP・AR小説【守り神】」
をお楽しみください。
19
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:10:12
3-3
「あ、亜美ちゃん!?」
「なぁに、ママ?」
「亜美ちゃん、胸が膨らんできてる…こ、これはどうゆうことなの!」
「え?あ、もしかして…」
といって、亜美はコチラをみる。亜美は少し信じられないといった表情をした後で、にこりと笑顔をコチラに向けてきた。
オレもそれに笑顔で答える。そして、次は母さんの番であった。
「亜美ちゃん、どうして大人みたいな体になっちゃったの…?」
「ほら、ママも自分の体みて。」
「え?う、うそぉ!胸が萎んでるわ!」
「うふふ〜。亜美ね〜、お兄ちゃんに大人にしてもらったの〜♪」
嬉しそうに亜美は語っているが、その上半身裸の状態で大人になった亜美は、家族で一番スタイルが良い美人の女性になっていた。
顔は可愛かった童顔から、きりっとした表情になったが、まだどこかあどけなさが残っている。
手や足もすらっと伸びており、まさにモデル顔負けのボディだった。
思った以上にボインになってるな…。しかも上半身裸…。股間の辺りが痛かった。
「う、おぱんつが食い込んでいたい…」
といって、亜美はするりと、最後の砦「くまさんぱんつ」をおろしてしまった。そこには、少し茂みが見えている。その事の重大さを知らない亜美は
ぼーっとたっている。その異様な光景に、オレの股間はさらに痛くなった。
一方、2歳へ戻っている母は、その胸は見る見るうちに萎み、背もそれに比例するかのように縮んでいっている。
手足もすっかり細くなり、母さんは自分の腕を交互に見比べながら必死に現状を把握しようとする。
「あ、あ…ママ子供に戻っちゃった…」
「違うよ。ママ。もっと戻るの」
「え?それじゃあ、ママは…」
「そう!ママはね〜、赤ちゃんになるの〜」
「い、いやよそんなのぉ!」
母さんはいやいやと首をぶんぶんと横に振っている。その時、すでに母さんは7歳くらいまで戻っていた。
その姿はまるで、駄々をこねる子供のようで、42歳の母さんとは思えなかった。そうこうしているうちに
どんどんと母さんは小さくなっていく。もうすでにエプロンに包まってしまった赤ん坊くらいになっていた。
「でも、お兄ちゃんは亜美を大人にしてくれたから、ママはきっとかわいい赤ちゃんにしてもらえるよ」
といった亜美は、裸であったはずだが、いつのまにか服を着ていた。そしてエプロンもしており、傍からみたら若い母親にしかみえない
姿である。だが、その姿は中々に乙なものである。
「ふぇ?たっくんがわたちをあかたんにちたの?」
逆に、自分が着ていた服はぶかぶかのだぶだぶになってしまった母さんには、ふりふりとした飾り付けがされた赤ん坊の洋服を着ていた。
20
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:10:55
3-4
「きゃー!ママかわいい〜!」
「あうう〜!あみたん、やめて!まま、ちったくなってゆから、ちゅよくだかれゆといたいの」
「ごめんごめん。でも、ママが赤ちゃんの時って、こんなに可愛かったんだ〜」
オレは、記憶はこのままに、「環境だけ適合化」する事にした。要するに、亜美は母親としての知識や経験を持つが、
6歳児であった頃の記憶ももったままで母親になる。まぁ、体が覚えてるというほうがしっくりくるな。
母さんの場合は、母親としての知識や経験も持っているが、その体は2歳なので、2歳程度の思考や行動くらいしか出来なくなっている。
…まぁ、実質ほとんど2歳児になると思っても良いだろう。
「ふあ〜、あみたんのおむねあったかい〜」
「ママ…お母さんって、思ってたより大変なんだね…。」
「そうよ〜。いまはあみたんがままなのよ〜」
赤ん坊になってしまい、母さんの口調はどこか間延びしている。それがいっそうかわいらしさに拍車を掛けている。
それとは反対に、子供から大人になり、母親としての知識をつけた亜美は、気楽に思っていた母親の大変さを知った。
すぐにあげられるものだけでも、炊事・洗濯・買い物・育児・家計……そういった知識が、亜美の中に今はある。
「そ、それに、わたしが冗談でいってたことって…」
と、亜美は顔を赤くする。初めてHな本を見たときは、手に取るだけでもドキドキしたものだ。
まぁ、亜美もこれと似たような思いを味わっているのだろう。文字通り、大人の階段を一気に登ったな、亜美。
「まま、おなかちゅいた」
「あらあら。この子ったら。ほんと、抱きしめたくなっちゃう♪」
「ま、ままくるちい…」
そういって、亜美は母さんをぎゅっ!と抱きしめた。けれど、赤ん坊となった母さんにはすごい力だったのだろう。
本当に苦しそうにしながら、亜美の胸を押し返そうとしている。赤ん坊の力なので、当然亜美を押し返す事は出来てなかったが。
「うふふ。ごめんなさいね。じゃ、おっぱいのみまちょうね〜」
といって、亜美は自分の胸をはだけさせる。
母さんの首に右手を優しく添えながら、自分の右胸へと母さんの口を持ってくる。そして、母さんは吸い込まれるように
亜美のおっぱいにむかってその口を向ける。そして、ちゅーちゅーと可愛らしく母乳を吸い始めるのだった。
「ん…、ちょっと変な感じ。だけど、なんかほんわかとする…」
亜美はソファーに腰掛けて、ゆっくりと母さんに母乳を与える。初めてのはずだけれど、知識や経験は付いているので、それは
手馴れた様子であった。そして、ある程度母乳をすい終わると、亜美はゆっくりと、そしてやさしく母さんの体を揺すり、子守唄を歌った。
「…ね〜〜むれ〜……♪ね〜〜むれ〜……♪ね〜ん〜ねんころり〜よ〜…♪」
と、優しい歌声がリビングに響く。優しく揺すられて子守唄が響き、そしてお腹一杯になった母さんは、その瞳が何度も落ちたり上がったり
を繰り返していた。まどろむとはこういう状態のことをいうのだろう。関係ないが、オレも少しまどろんでしまった。
「あぅ〜、まぁ〜ま♪………す〜、す〜、す〜……」
21
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:11:35
3-5
母さんがあどけない笑顔を浮かべて、ママと呼んだ後、力なく首が倒れ、そのまま小さな寝息を立てて眠ってしまった。
「あら、もう寝ちゃったのね…。ちょっと残念。それじゃ、お部屋でおねんねしましょうね」
といって、亜美は母さんの部屋へと向かっていく。オレもそれについていく。
そして、母さんの部屋についた。以前のベッドがあっただけの簡素な部屋ではなく、おもちゃやぬいぐるみがあり、
ベビーベッドがおかれ、その天井にはなにやらクルクルと回るものが取り付けられていた。
亜美は、そこへ優しく母さんを降ろし、そばにあったイスに腰をかける。そして、そばにあるオルゴールのネジを巻く。
キリキリキリ、キリキリキリ、キリキリキリ、キリキリキリ………
ネジを巻き終えて、イスの傍の棚に置いた。
少しテンポが違う気がしたが、それでも素晴らしい音色が部屋を優しく包む。
「♪〜〜♪♪〜…♪〜〜♪♪〜…♪〜♪〜♪♪♪♪♪〜♪〜♪〜…」
先ほどの子守唄が、オルゴールの優しい音色と共に奏でられる。柔らかな日差しが差し込む中で、この音色を聞いていると、
大人のこっちまで眠くなってくる。それは亜美も同様だったみたいで、今度は亜美がうつらうつらと頭を上下させ、それは
やがて、うつむいたまま、壁にもたれかかるようにして止まり、ゆっくりと胸を上下させていた。
「はは、亜美は大人になっても子供だな」
とはいえ、見るもの全てを和ませるような雰囲気をオレは感じていた。今は夏だから、風邪を引く心配もないだろうし
二人をこのまま寝かせておく事にする。念のために、亜美の肩にタオルケットをかぶせ、母さんにもタオルケットをかぶせておいた。
ドアとかちゃりとあけて、できるだけ静かに部屋を後にする。
リビングに戻ると、裕美が困った顔をしてソファーに座っていた
「どうしたんだ?」
「あ、たっくん。あのね、実はシャワー浴びようと思って栓をひねったんだけど、全然お湯が出ないのよ。
それで、こういうの修理する仕事してる友達の知り合いを呼んだんだけど、今日は忙しいらしくて、くるのが遅くなりそうなんだって。
だから、今日は銭湯でも行って来て。」
「わかった。裕美は銭湯嫌いだからな。早く直るといいな」
「全くよ。あ〜あ、なんか体が汗臭いわ…」
今日は銭湯に行く事になった。少し早い目にいくのもいいと思ったので、オレは部屋に戻って早速準備を始める。
…無論、銭湯へ「子供料金」で尚且つ「女風呂へ入れる」年齢になるためだ。たしか、6歳くらいまでならば女湯に入れてもらえたはず。
オレは自分を6歳になるように念じ、環境のみの適応化をした。すると、部屋は何だか子供むけっぽいロボットのプラモデルや、
カード、勉強机などが置かれた部屋になった。そして、オレは着替えを持って銭湯へ向かった。今から楽しみだ。
22
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:12:19
4-1
【守り神4】
オレはあれから着替えをもって近くの銭湯へを足を運ぶ。それはいいのだが、6歳の体にとっては中々距離がある。
もはや、軽い遠足をしたくらい歩いた所でやっと目的地へと到着する。時間が時間なだけに、さほどにぎわってはないない。
少し下町っぽい雰囲気がオレはすきなのだが、裕美は逆にそれが嫌いなようで、小さい頃に数回行って以来来ていない。
不意に後ろから声が聞こえる。
「たっくんまだいるかな…、あ、いたいた。」
「どうしたんだ、裕美?お前は銭湯嫌いだろ」
「こらぁ!お姉ちゃんに向かってお前とか呼び捨てしちゃだめでしょうが!」
「いでで…ご、ごめんなひゃい」
ついいつものクセで裕美と呼び捨てにしてしまった。今は裕美からすれば、年の離れた弟だ。
生意気な口を叩いてしまったオレの頬を、裕美は両手でつまんで引っ張る。これが結構痛かった。
「わかればよろしい。」
「…で、お姉ちゃんはどうして銭湯に来たの?銭湯、嫌いなんでしょ?」
「う〜ん、修理に来る人がね、今日中には無理だって言ってきたの。でも汗臭くて我慢できないから…。」
「ふ〜ん。そうだったんだ。」
「まぁ、明日には朝一番で来てくれるらしいから。あ、大人一人と子供一人で。」
と、銭湯に来た理由の説明をしたあとで、裕美はお金の支払いをした。
そしてオレをひょいと抱き上げて
「さぁ〜て、一緒にお風呂入りましょうね〜」
「お、おろせ!恥ずかし…うぶ!」
「ほらほらたっくん、おっぱいでちゅよ〜」
「むぐぐ…」
オレを抱き上げた裕美は、降ろせとせがむオレの顔を胸に押し付ける。
その胸はとても柔らかく、そして甘い香りが立ち込める。抵抗はするが、大学生の力に6歳のオレがかなうはずはなかった。
不意に後ろから声を掛けられる。
「こらこら。なにたっくんいじめてるの!」
「あら、母さん。母さんもお風呂入りにきたの?」
「銭湯に来たんだから当たり前でしょ。…それより、たっくんにお話あるの。裕美は先に入ってて。」
「は〜い」
といって、裕美はオレを降ろして、先に女湯と書かれたのれんをくぐっていった。
そして、未だに母親やってる亜美が話しかけてくる。
「お兄ちゃん、私、いつのまにか寝ちゃってた…。タオルケット、ありがとね。」
「気にするなって。ところで母さんはどうしたんだ?」
「まだ寝てるわ。一人にするのは危ないから、お隣の奥さんに、
お風呂の間だけ面倒見てもらうよう頼んできたわ。だから、母さんのことは大丈夫よ。
まぁ、それはこっちにおいといて…」
「うん?」
「お姉ちゃんが書いた書置きに、二人で銭湯に行くっていう書置き見つけてね。ちょっと思いついた事があるの。
ほら、お姉ちゃんって、いっつも私のこと子供扱いしてたじゃない?だから…」
「…裕美を子供にするのか?」
「ううん、赤ちゃんにして欲しいの。そしたら、どうしても私に頼らざるを得ないでしょ?だから、ね?お願い!」
亜美は手のひらを顔の前であわせてお願い!としてくる。まぁ、ちょっと思考がぶっ飛びやすい姉だから、
この程度の悪戯なら問題はないだろう。それに、裕美の赤ん坊姿に興味もあったし、オレはこの提案に乗る事にした。
23
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:13:18
4-2
「よし、まかせとけ!」
「やった!そうと決まったら善は急げよ!」
といって、亜美はオレを引き連れて、番台で勘定を済ませて、脱衣場へ向かう。…当然、「女」の。
「(うお、こ、これは…!)」
新しく出来た銭湯ならば、若い人も多いのだろうが、こっちは下町じみた銭湯。
大きな浴槽が一つに、寝転がりながら入る事ができる、小さな浴槽が3つほどあるだけだ。
あとは、頭や体を洗う為の場所がいくつか。いかにもな銭湯である。
その所為か、あまり若い人はこず、主におばちゃん世代がたくさんいる。
だが、その中にも、おばちゃんの影響からか、新しい銭湯がしっくりこない若い女性もおり、
そんな女性の裸体がちらほらと見える。やはり、6歳になってここに来たのは正解だった。
と、目の保養をしていると、亜美が着替え中の裕美を指差してオレを急かす。
「ねぇねぇ。早くぅ〜」
「わかったわかった。じゃ、やるぞ」
オレは、裕美を10ヶ月くらいの赤ん坊にまで戻るように念じる。その変化はすぐに現れ始める。
着替え中の裕美は、高いところのロッカーを使っていたのだが、脱いだシャツを入れようとしたが、手が届かなかったのだ。
「あれ…?さっきまでは余裕だったのに。手が届かない…。なんで?」
訝しげにロッカーを裕美は見つめている。動かずにじっと見つめていたことにより、今、
自分に何が起こっているのかが分かったようだ。徐々に高くなっていくロッカーや周りの景色を
見続けていて、裕美は一つの結論を出した。
「もしかして、私、小さくなってる?え?何この声!…うそぉ!!」
そういった裕美の口からは、先ほどまでの声より一段高い声になっている。
そして、裕美は自分がただ小さくなっているだけではないことを悟った。
「やだ、私、子供に戻ってるんだ!だれかぁ、だれかぁ〜!!」
裕美は叫んでいるが、周りは何事もないかのように平然としている。
「なんでみんなきぢゅいてくえやいの?やら、あたち、あかたんになってうぅ!」
全体的にスリムだった裕美の体は、今は逆に丸みを帯びている。すでに裕美は2歳くらいまで退行していた。
舌が回らなくなり、その言葉はどこかたどたどしい。そして、その足元には、裕美の服が力なく重なっている。
「たちゅけてぇ〜!だえか、たちゅえ…えあ!あうう〜…あうあ〜!」
とうとう、裕美は10ヶ月まで退行し終えた。この頃には、すでに言葉をしゃべることが
出来なくなってしまったようだ。ここで、オレは裕美の記憶から、亜美が母親であるという
記憶を取り除き、亜美が小学生だったときの記憶に戻す。そしてその頃には、
亜美は裕美の下へと歩んでいった。そして、赤ん坊になった裕美を抱き上げる。
24
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:14:07
4-3
「お姉ちゃん。かわいい赤ちゃんになっちゃったね♪」
「あう?あ〜う??あうぅ、あう?(だれ?もしかして亜美??あなたは、大人になったの?)」
「ふふふ。いっつも私を子供扱いしてるけど、これじゃあ立場が逆ね〜。
お姉ちゃん、私を子供扱いするから、神様が私の立場になって考えてみなさいって言ってるのよ、きっと。」
「う〜あ〜…。(そんなぁ〜…)」
結構強引な説得だとは思ったが、オレが赤ん坊に戻った時も自分の所為だと思い込んだくらいだし、
これくらいでも十分納得はするだろう。それは置いておくとして、何故赤ん坊になった裕美の言葉が分かるんだ?
…まぁ、大方察しはついてるけど。
「聞コエルカ?」
「(やっぱりか。で、今度はなにしたんだ?)」
「ウム。声ニナラヌ者ノ声ヲ聞ク事ガ出来ルヨウニシタノダ。意識シナケレバ聞コエナイガナ。」
「(なるほどね…。今回はそれだけなのか?)」
「ソウダ。今ノウチニ楽シムガヨイ」
「(ん?今のうち?)」
「デハナ」
「(おい、ちょっとまてよ!)」
予想通り、裕美の言葉が理解できるのは神の仕業だった。なんか今回は一方的に話を
終わらせてきたけど…。今のうちにというのも気になる。なんだか嫌な予感がする。
…この件は後で考えるとするか。今は忘れよう。なんか声が聞こえると赤ん坊に戻ってない気が
するから、意識しないようにしよう。
「じゃお風呂に入りましょうね〜。ほら、たっくんも。」
「あぅ〜〜〜」
亜美の腕の中でもがきながら何かを訴えようとしている。大方恥ずかしいとでも思っているのだろう。
先ほどまで21の大学生が、突然10ヶ月の赤ん坊に戻って、弟に裸見られるのは恥ずかしいものなのだろう。
そんな裕美のことはつゆしらず、意気揚々と裕美を抱いたまま、亜美は浴場へ入っていった。
オレも遅れてソレに続く。浴場の中は、男湯と大差はないようだ。見える景色はむさくるしい男湯とは比べ物にならないが。
「(ビュ〜ティホゥ〜!)」
思いのほか、若い女性を見受けることができる。亜美は、先に裕美と共に体を洗いに向かったようだ。オレもそちらへと向かう。
そこには、全身泡だらけの赤ん坊の裕美と、楽しそうに裕美の体を洗っている亜美がいた。
「ほらほら裕美ちゃん。きれいにしましょうね〜」
「あぶぶ!ぅあう!!?」
どうやら、目に泡が入ってしまったようだ。裕美はつい目を擦ろうとしてしまったが、その手を亜美が掴む。
「だめよ、目を擦っちゃ。先に洗い流すから、もう少し我慢して、ね?」
といって、シャワーで泡を洗い流した後、冷水機の水で目を洗わせていた。その間に、オレも自分の体を洗う事にした。
オレが洗い終わった頃に、亜美は洗い場へと戻ってくる。そして、裕美をオレに預けて
「ごめん、お兄ちゃん。私も洗いたいから、少しの間だけお姉ちゃんの面倒みてて。」
「あ、ああ。わかった」
25
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:14:44
4-4
と、返事をしたが、ここでまたもや悪戯することにした。折角だから、裕美に亜美を洗わせてあげようと考えた。
今度は念じるまでもなく、少し考えただけで変化が始まった。
「あれ、シャンプーに手が届かない…も、もしかして!」
「あう、あたち、体が大きくなってきた」
大人の体をしていた亜美の腕や足は、みるみる縮んで行き、逆に、赤ん坊の裕美の腕や足は、みるみる伸びていく。
先ほどまで言葉もまともにしゃべれていなかったが、だんだんとしゃべれるようになってきているようだ。
「も、もちかちてあたち、あかたんになゆの?お、おにいたんのいぢわゆ〜!」
「あら、胸も膨らんできたわ。なんだかさっきまでが嘘みたい。」
「はっは。亜美はもうたくさん遊んだだろ?次は裕美の番だ」
「うふふ…亜美ちゃん、たっぷりお礼をしてあ・げ・る…♪」
「ふ、ふぇ〜ん!」
一転、お互いの立場は逆転。裕美は、ほとんど元通りの体になり、亜美は元通りを通り越して1歳児くらいまで戻った。
オレは孫を見つめるおじいさんの様な、できる限りの柔らかな笑顔を作り、亜美の今後を祈ってあげた。
こうして、騒がしいお風呂は幕を閉じたのであった。
26
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:15:23
5-1
【守り神5】
「いや〜、いいお湯だった」
「そうね。銭湯も中々だったわ。これからもたまにはいこうかしら」
「ふふ。行きたいときはいつでもいきましょう。…お兄ちゃんと一緒に♪」
「それいいわね!」
「オレは悪戯できればなんでもいいぞ。いやぁ、二人の赤ん坊姿はかわいかったな〜」
まったりと雑談をしながら帰宅する。オレは入浴が済んだので、元の体に戻った。
裕美も21歳に、亜美は現在母親なので26歳にして家に入る。
「さて、私は母さん引き取りにいってくるわね」
「ほいほい。」
玄関に入って荷物を降ろした母さんは、そういってお隣さんの家に母さんを引き取りに行った。
「ふう。私はちょっと部屋で横になってくるわ」
「おばさんくさいなぁ…」
「なにか言まして?」
裕美はオレの肩を掴み、ソノ手でオレの肩を強く握る。伊達にソフトやってるわけではなく、
オレは肩がメキメキと音を立てているように思った。
「い、いえ何も…」
「あらそう。私ったら、てっきりおばさんくさいって言われたような気がしちゃって。おほほほほ」
「ハハハ、やだなぁ、お姉さまに向かって、そんなこと言うわけないじゃないですか」
「そうよね〜。…じゃ、私は部屋に戻るわね」
旋律が走るとはこのことだろう。すべてはあの力が物語っていた。
裕美はそのまま2階の自室へと帰っていった。入れ替わるように、お隣へと
母さんを引き取りに行った亜美が帰ってくる。
「ただいま〜」
「おかえり。母さんは?」
「しーっ!少し眠っちゃってるみたい」
「そうか。やっぱ寝顔も可愛いなぁ」
「じゃ、母さんを部屋に寝かせてくるわね」
といって、亜美は母さんをあの部屋へ連れて行く。オレも一人で玄関でいるのも
なんだから自室へと戻る。とたんに暇になってしまった。
「(なんかする事ねぇかな〜)」
と、頭の中で考えると
27
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:15:56
5-2
「アルゾ」
「(うわっ!…相変わらず突然だな)」
神の声が聞こえてくる。毎回毎回、突然出てくるな。とか思ってしまう。
「…オ主ニ「力」ヲ与エタ理由ヲ思イ出シテミヨ」
「(「力」をくれた理由?………あー)」
そういや、手伝ってもらうぞとかなんとかいってたっけ。
化身を助けるためとかどうとか、そんな理由だったはずだ。
「思イ出シタカ?」
「(あ、ああ…。で、具体的になにすりゃいいんだ?)」
「人ノ世ニモ化身ハオル。ワレハソノ化身カラ、人間ノ知識ヲ得テオル。
ダガ、人ノ世ニ長イ間オルト、汚染サレテユクノダ。ソノ、汚染サレタ化身ヲ
赤子ニ戻シテ欲シイ。後ハ、別ノ化身ガ回収ニユク」
「(わかったよ。で、その化身様はどこにいるんだ?)」
「今ハオラヌ」
「(は?じゃあどうするんだよ)」
「案ズルナ。今晩マデ待テ」
「(…わかったよ)」
「デハ、マタ夜ニナ」
相変わらずマイペースで話を進めていく神に少々あきれつつ夜を待つことにした。
特にする事もなく、程よくほてった体をベッドに寝かせていると、いつの間にか眠ってしまった。
──…ぷ〜〜ぅぅ〜ん…
「う、う〜ん……」
なにやら変な音がする。その音はとても小さいのだが、なぜか耳に付く。
──…ぷぅ〜うぅ〜〜〜ん……
「ううん…」
その音は大きくなったり小さくなったりを繰り返し、オレの周りを飛んでいるようだ。
どこか挑発的な音に徐々に苛立ちを覚える。間違いない、これは蚊だ。
少し寝ぼけていたが、蚊の飛ぶ音を聞くと、不思議と頭が冴える。
安眠してるときにやられると激しく苛立つ。当然、オレも苛立っている。
──……ぷぅ〜ん……ぷう〜ん、ぷっ
ついに音が止む。少しすると、ちくっ、と、軽い痛みを覚える。蚊が刺したのだろう。
ここまでくれば手遅れだが、憎っくき蚊をしとめるチャンスでもある。肉を切らせて骨を絶つ、だ。
オレはその時を見計らい、腕に何かが乗っている感覚のある場所を思いっきり叩く。
28
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:16:36
5-3
バチーンッ!
──ぷぅ〜ん……
「くそ…蚊め。うざいったらありゃしない」
オレの渾身の一撃は見事に外れた。おかげでで自分の手を自分で叩くという情けない状態になる。
どうして夏になると蚊が沸くんだ。寝るときにウザイし、かまれたら痒いし。
血ならすわせてやるから、痒くする成分だすなと文句を言いたい。
というか、そもそも血をすうんじゃねぇ!
大体なんで蚊なんているんだよ。病原菌を運ぶわ、イライラする音出すわ、蚊なんて
いない方がよっぽど世の中のためなんじゃないか。
…って、蚊に文句をたれたところでどうしようもない。
肉を切られて、骨まで絶たれたオレは、痒み止めを取りにいく。
痒み止めはひんやりとしていて、さっきまで痒かったが、徐々に痒みが引いていく。
心地よさを感じていると、それをぶっ潰すかの用に声が聞こえてくる。
「目覚メタカ」
「(……まさか、蚊はあんたの仕業か)」
「ダカラドウシタ。デハ、オ主ニ仕事ヲ与エル。コレカラコノ家ヲ出テ右ヘ行キ、5分ホド歩ケ。
後ハソコデ出会ウ女ヲ赤子ニ戻セ。後ハ化身ガ引取リニ行ク」
「(…次はもっとまともな起こし方してくれ。とりあえず分かったよ。)」
相変わらず突然現れる神。もう慣れたけどな。しかし、時計を見たが、すでに日付が変わっている。
こんな時間に本当に人がいるのだろうか?
「まぁ、考えててもしかたないよな…」
すでに家中静まり返っており、オレは静かに家を後にする。
できる限り、ゆっくりと玄関のドアを開けて、ゆっくりと閉める。
流石に夏とはいえ、夜は少し冷える。だが、部屋の中は熱くなるので、その冷たさが心地よかった。
とりあえずオレは、神の言うとおりに右へ5分ほど歩く。
街灯がポツポツとまばらに配置され、一つ先の街灯の向こうは、まるで全てを飲み込むかのような
闇に覆われている。その言い知れぬ感覚に、少し背筋が冷える。
5分ほど歩いたが、この間は全く人とすれ違わなかった。
今もそうだ。赤ん坊にする女の人がいないじゃないか。神がなんかミスったのだろうか?
「どうしました?」
「うわ!」
「あ、驚かせてすみません。こんな時間にどうしたんですか?
こんな時間にうろつくと危ないですよ」
などと考えていたら、突然声を掛けられて驚く。振り向くと、そこには警察官がいた。
どうやら不審者がいないか巡回しているようだ。
あまりのびくつき方に、少し警察官は不審に思ったようだ。
29
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:17:09
5-4
「あの、失礼ですが、こんな時間に何をしてるんでしょうか?あと、年齢と職業を教えてもらえませんか?」
「あ、あ〜、その、財布を落としてしまったので、探しにきたんです。
家がすぐそこなのですが、寝ようとした頃に姉に言われて気づいて探しに来たんです。あ、年は18歳で、職業は大学生です。」
「そうでしたか。先ほども言いましたが、こんな時間にうろつくのは危険です。財布はもう見つかりましたか?」
「あ、いえ、まだです…」
「では、少し私も手伝いましょう。」
「え?いや、あの、その…」
職務質問を受けてしまった。咄嗟に口からでまかせで財布を捜しに来たと言ったが、
そもそも財布は落としてないし、財布を持ってきてもいない。警官の目を盗んで財布を置く事も出来ない。
見つかるはずのない財布を捜すのを手伝ってくれるらしい。
「ありましたよ。」
「え!?」
「これですか?…女性の物のようにみえますが。」
「あ、えと、それ、姉のなんです。お使い頼まれたので、姉の財布を持ってきたんです。」
「そうでしたか。では、気をつけてお帰り下さいね。」
あるはずのなかった財布を、警官が見つけた。それは、少し高そうな革の財布だった。
オレは自分のものではないが、とりあえず受け取っておく事にした。
警官は、オレに財布を渡すと、そのまま巡回へ戻り、あっという間に暗闇の中へ溶けていった。
「ふう…。一時はどうなるかと思ったぜ。」
「あの…」
「うわぁ!」
再び不意に声を掛けられる。今度は女の人の声だ。
またも突然で、つい驚きの声を上げてしまった。
「あ、驚かせてすみません。この辺りで革のサイフをみかけませんでしたか?」
「ん、これの事ですか?さっき拾いましたよ」
「ああ、それです!よかった!」
振り向くとソコには、オレと同い年くらいの女性が立っていた。
オレは彼女に財布を渡す。その時、なんだか心に引っかかるものを感じた。
これは、おそらく、彼女がターゲットということなのだろう。
「ありがとうございました。では、わたしはもう帰りますね。」
「え?ああ、はい。気をつけてくださいね」
といって彼女は振り返り、帰り道を歩み始めた。オレは、息をするかのように、
ごくごく自然に、彼女の赤ん坊姿を頭に思い描いていた。
「あら…?なんか服が大きくなったような気が…」
30
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:17:43
5-5
彼女は当然まだ勘違い程度にしか思っていないようだ。
だが、それも束の間だった。
「うそ、ブラの間に隙間が出来てる!や、やだ!」
若返りに伴い、胸は小さくなっていく。その時に出来た隙間が、これは勘違いではないと教えている。
「ま、まさか、若返ってる…?ああ、パンツがぁ!」
当然、体も小さくなっていく。彼女の服はもとより、下着もついにぶかぶかになってしまい、地面にストンと落ちる。
彼女は拾うためにしゃがむが、退行は止まらない。手も足も短くなったが、なんとか立つ事ができてはいるようだ。
折角だから、近くで確認する事にする。
「一体どこまで小さくなるのよぉ!このままじゃあかたんになっちゃうぅ!」
彼女は精一杯叫ぶが、そろそろ舌も回らなくなってきているようだ。
「あの、どうかしましたか?」
「あ、さっきのおにいたん!あたち、あかたんになったうよぉ〜!たちゅけてぇ〜!」
「だ、大丈夫です。オレがついてます。」
全然大丈夫じゃないけど。というか、犯人はオレなんだけど。
「あたち、あかたんなんてやだよぉ〜!」
「大丈夫。かわいいから。」
「か、かわいくてもだめぇ〜!ひゃあ!」
オレはあまりに可愛らしい彼女を抱き上げる。と、同時に彼女の退行が終わった。
大体1歳くらいだろうか?正直、生まれてから2年くらいたたないと、あまり変化がなくてわからん。
だが、これだけはいえる。化粧で痛んだ肌は、生まれたてのきれいな肌に戻っている。そのお肌は、
すべすべのもっちもち。ついついほっぺをプニプニしてしまう。
「や、やめっ!う〜!おにいたんやめてぇ〜!」
「ははは、こいつぅ〜!…って、え?」
おかしい。適合化して戻したはずなのに、オレの事を「おにいたん」って。
しかも、オレも違和感なくあいてしてるし。しかもしかも、1歳にしてはよくしゃべる。
なんだか、またも嫌な予感がしてきた。と、気配のようなものが感じられる。
「………」
「(やっぱり…。なんかミスっただろ?)」
神は無言だったが、その息遣いの様なものが感じられる。
まぁ、要するに、神が何か用事があるってことだ。こっちも用事あるから丁度いい。
と、次に神が話を切り出してきた。
「スマヌ!我トシタコトガ、コンナ失態ヲシデカストハ…」
「(で、なんとなく予想ついてるんだけどさ。もしかして…)」
「ソウダ。ソノ女子ハ、本当ニ戻スベキ者デハナカッタノダ。波動ガ似テオル故ニ間違エタ。
結果、半端ニ赤子ニ戻ッテシマッタ。シカモ、我ニ近イ「力」ヲ持ツ、
オ主ノ家族トイウ事ニナッタヨウダ。大人ニ戻スニモ、ソノ女子モソロソロ赤子ニ戻ス時期ダッタ。故ニ、
戻スノハ危険ダ。汚染ガ進ム危険ガアル。ダガ、案ズルナ。実質問題ハナイ。」
31
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:18:24
5-6
「(…はっは。問題ないっていってもね、家には新しい家族を迎えるような金ないんですが)」
「ソレナラ心配イラヌ。迷惑カケテシマッタ故、ソレナリノ謝礼ハシヨウデハナイカ。
明日ノ朝ヲ待テ。コチラニモ準備ガアルカラナ。悪イガ、ソノ者ノ面倒ヲ頼ム」
「(わかったよ。今度はミスせずに頼むな)」
「了解シタ」
……あいつ、本当に神なんだろうか?不思議な「力」を持ってるのはわかった。
けれど、なんか親近感が湧いてしまう。こっちはいつもタメ口だしな。というか、天然ボケなんだろうな。
神さまなのに。もう神社にお賽銭奮発するのやめよう。
「おにいたん、どちたの?」
「ん?ああ、なんでもない。…って、名前分からないな。どうしよう?」
「あたち?あたちは「ともみ(朋美)」だよ〜。おにいたんのわすれんぼ〜」
「そ、そうか。ともみか。よ〜し、もう遅いし帰ろうな〜」
「うん〜♪」
とりあえず、もういろんな意味で疲れたんで、家に帰って寝る事にする。
玄関のドアをゆっくりあけて、今は母さんがいるベビールームへとゆっくり運ぶ。
すでに、帰宅するまでに眠ってしまっていたので、そのままタオルケットを腹に掛けて
寝かせておいた。オレも、そのまま自室へ引き返し、
ベッドにぐったりと横になる。しばらくして、うとうとし始めてからすぐに寝てしまった。
32
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:19:02
6-1
【守り神6】
──チュン、チュン
スズメの鳴き声が聞こえてくる。その鳴き声優しく小さいが、さわやかな朝を思わせてくれる。
「ふわぁ〜あ…」
少し大きなあくびをする。朝は気持ちいいのだが、なぜか布団から出たくないのである。
「ワンッ!ワンッ!」
「ん?犬の鳴き声がするな。…近いな。家の敷地に入ってきてる」
家では犬は飼っていないから、野良犬が入り込んだのだろうか。
なんにせよ、このままほえさせてたら苦情が来るだろうから、追い払う事にする。
さっさと普段着に着替えて、武器というほどのものではないが、スコップが玄関に
立てかけられてたので、一応持っていく。
「ワンッワンッ!」
「いたいた…。」
オレは犬を確認する。柴犬のようだが、野良犬とは思えないほど体はきれいだった。
どっかの家から抜け出してきたのだろうか?
「おいこら!どっから迷い込んできたか知らないが、とっととうちに帰れ!」
「くぅ〜ん…。」
「な、なんだ?」
ほえるのを突然やめて、急激におとなしくなる。そして、犬はお座りをした体制のまま、
顔をすくめて、地面に鼻の先をつけるようにしてじーっとしている。
「まさか…」
ここ掘れワンワンとかいう、犬がほえた所を掘ったら大金持ちになったとかいう昔話を思いだした。
オレは、手に持っていたスコップでそこを掘る。少し掘ると、スグになにかにあたる。
感触と音からして、木の箱のようだ。オレは急いでそれを掘り出す。
それは、簡素はオルゴールの様な箱であった。それを開けてみると、何の変哲もないオルゴールだった。
ためしに、ネジを巻いて聞いてみる。
「♪〜♪〜〜♪♪♪〜♪♪♪♪♪♪〜」
昔、小学校くらいのときだろうか。その頃あたりに習った、大きな古時計の曲が流れてくる。
オルゴールとは不思議なもので、その音色はすべてを癒すかのように、聞いていると和やかな気持ちになる。
しばらく耳を傾けていると、不意に声を掛けられる。そちらを見ると、赤ん坊を連れた母親がいた。
「あの、すみません。」
「ん?はい、なんでしょう?」
「そのオルゴール、突然の申し出であつかましいとは思いますが、譲っていただけないでしょうか?
この子はさっきまで泣いてたんですが、そのオルゴールの音色を聞いたとたんに、すやすやと眠りだしたのです。
最近じゃオルゴールなんて売ってませんので、どうしても欲しいのです。」
「…わかりました。大切にしてくださいね。」
その母親は、丁寧な言葉遣いで、オレにオルゴールが欲しいと申し出てくる。確かに、オルゴールは最近見かけない。
オレは、今掘り出したばかりのオルゴールをその母親に譲る。別段思いいれはないが、良い音色だったので、少し
手放すのは迷ったが、赤ん坊のためならいいだろう。
33
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:20:10
6-2
「ああ、ありがとうございます。なんとお礼を申し上げたらいいのでしょうか…」
「いえいえ。気にしないで下さい。」
「本当にありがとうございます。代わりといってはなんですが、コレを…」
といって、母親はオレに皿を渡してくる。よくわからないが、受け取っておく事にスル。
「では、本当にありがとうございました。」
「お気をつけて。」
母親を見送ったあと、皿をどうするか考えてみる。と、皿を手に持って考えてると
またも不意に声を掛けられる。そこには、めがねを掛けて、白髪がまじった60代
くらいの男性が皿を凝視して考え込んでいる。
「あ、あの…」
「むむむ…ちょっと見せてもらえますか?」
「え?は、はい」
どこからともなく取り出した虫眼鏡とルーペを使って、すみずみまで観察している。
ぐるぐると皿を回したり、ひっくり返したり、コンコンと、軽くこづいたりして、
ようやく終わったようだ。皿をオレに見せながらこういってきた。
「突然失礼しました。私はなんだか鑑定団という番組で焼き物の鑑定をしているものです。
これはですね、約100年くらい前の江戸時代に作られたものですね。これはそれはそれは珍しいんですよ。
偽者が多く出回っており、本物は世界に1つしかないのですが、これはその本物なんですよ!ほら見て下さい、
皿のふちから5cm離れたところの、上下左右に東西南北と書かれてますよね?本物はですね、この東の口の中に
さらに東西南北と書かれており、さらにその東の中に東西南北と書かれているんですよ。かなりの技術がないと、
到底真似できない技術でして、これは間違いなく本物です。いや〜、グッジョブな代物ですね〜」
その男性は、よく分からない説明を長々と繰り広げた挙句、「なんだか鑑定団」とかいう
なんだか信用のならないタイトルの番組に出てる人らしい。「グッジョブな代物ですね〜」とか、正直胡散臭い。
「この皿は国宝級のものですぞ!…そこで、ものは相談なのですが、これを国宝の美術品として、美術館に展示しませんか?
もちろん無料(タダ)でとは申しません。これほどのものですから、厳重に扱います。そして、これを提供してくれたあなた
にも謝礼金として、これくらいを毎月支払います。正直申し上げて、これくらいでも足りないくらいの芸術品ですがね。」
といって、男性は紙とペンをいつのまにか持っていて、そこに書かれた金額を見てみる。
「いち、じゅう、ひゃく、せん………い、一千万円…!?」
「はい。これをあなたが死ぬまで、毎月国から支払われます。私が詐欺ではないとゆう証明のために、あなたにすぐそこにある美術館
までご同行願いたいのですが?」
「は、はい」
「では、行きましょうか」
34
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:21:35
6-3
**美術館**
「これはこれは。本日はどういったご用件でしょうか?」
「これを見たまえ。例の「アレ」だ。」
「「アレ」と申しますとまさか……なんと!?これは本物に間違いありませんね!?」
「当然だ。わかったか?さぁ、この方に今すぐお金の支払いと、手続きと、あの国に連絡しろ!」
「わ、わかりました!」
オレをほったらかしにしてすごいペースで話が進んでいる。「アレ」と呼ばれた皿は、奥から出てきたガラスケースの中に
丁寧に添えられ、早速中央に展示されていた。流石に、詐欺だとしても、この大勢の目に入った今、持ち逃げするのは無理だろう。
価値を知っているのか知らないが、人だかりが出来て、入り口から人がぞろぞろと入ってくる。
そして、一般人ばかりかと思いきやマスコミも流れ込んできている。それも、日本の人ばかりではない。
「オーウ!コレハ素晴ラシイデース!ワガ「あめりか」モ、コノ美術品ノ保管・管理ニ全面的ニ協力シマース!」
と、なぜか「あめりか」の大統領まで来ている。最近日本語の勉強をしていたらしく、そのすばらしい日本語を披露してくれた。
今しがた連絡したばかりなのに、なんでもう来てるんだ?という、疑問をよそに、大統領は美術品に魅入られている。
よくわからないが、大統領は焼き物が趣味なんだろうな。そういう事にしておこう。考えるの疲れた。
もう、詐欺でもなんでも、偽者だとしても、あんなそっくりな大統領とその日本語聞けたからいいや。
「では、こちらにサインを」
とか言われたので、適当にサインする。そして、アタッシュケースが運ばれてくる。
「この中に1千万円入っています。今は美術品に目がいってますので、今のうちに帰宅されたほうがよろしいかと…」
「わ、わかった。」
促されるままに裏口から抜ける。そこにあった車に乗り込み、帰宅した。
**自宅**
「ただいま〜」
「おかえり。どこいってたの?」
「いや、ちょっと。それより、これ見てくれ」
亜美が出迎えてくれる。もうすっかり母親が板についたようだ。
オレはアタッシュケースを開ける。中に入っていた大金に、亜美は目を丸にしている。
無理もないな。オレもマッハを超える展開に頭がついていってないからな。
「お、お兄ちゃん、こんな大金、一体どうしたの??」
少し混乱した頭で事情を説明する。最初は嘘扱いしていたが、つけていたテレビで
さっきの皿について緊急生放送していたから信用してくれたようだ。
35
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:22:06
6-4
「うそみたい…」
「…心当たりがあったけどな。オレに「力」をくれた神がいるんだが、その神の手違いで、お金の面で苦労する事になったんだよ。
だからどうにかしろ!っていってあったんだが…まさかここまでとは。」
「なんだかお兄ちゃんの方が偉そうね。相手は神様なんでしょ?」
「まぁそうなんだが…。ただな、お金があるっていっても、働こうな。金持ちになって遊び呆けるのは嫌だからさ。」
「うん、わかった。お兄ちゃん偉いわね〜」
「うわ!亜美、やめろ!」
亜美は、オレの頭をなでた後、オレの頭をぐるんぐるんと回す。反撃しようとしたが、頭を回されすぎで並行感覚がなくなり、亜美を
捕らえる事が出来なかった。前の亜美ならばどうという事はないのだが、今の亜美にやられると結構きつい。
そこで最終手段をとる事にする。
「あはは〜♪」
「あ、あみ〜!やめないと子供に戻すぞ!」
そこでピタッと止まる。あまりに回されすぎで、未だにグルグルと視界が回っている。
しばらくして、やっと視界が安定したと思った、その時
「別にいいも〜ん!」
「どわああああ!」
またもやグルグルと回される。大人の体なのはいいが、まだどこか精神的に子供のようだ。オレは最終手段の決行に踏み切る。
グルグルと回されていたが、やがて手が離れる。徐々に視界が安定してくる。目の前に、先ほどより一回り小さくなった
亜美がこちらを見ている。ぶかぶかになり始めた服を見て、自分の胸に手をあてている。
「お兄ちゃん!まさか、本当に?」
「当然だ。いう事を聞かなかったからな。」
「冗談じゃなかったの?」
「当然だ。オレはやるときはやる男だ」
亜美の体は、あっという間に6歳くらいまで戻る。久しぶりに元の亜美の姿をみた気がする。
やはり大人の亜美もいいが、元の亜美が一番かわいいと思う。まぁ、今回はおしおきなんで
元通りを通り越すけどな。また赤ん坊にするか。
「あれだ。一度警告したのにやめなかったから、赤ん坊まで戻すからな」
「ええ!?そ、そんな〜」
「亜美、一生で何度も赤ん坊になれるなんて、普通の人には無理なんだぞ?」
「頼んでなんかないよぅ」
「オレの「愛」だよ。受け取れ」
「そんな愛なんかいらない…」
亜美で遊ぶのって楽しいな〜。いじり甲斐があるってもんだ。
しかし、何度見ても、赤ん坊に戻っていく様子って面白いと思う。
普通の赤ん坊なら、髪の毛もきれいに生えてないはずでも、しっかりと原型をとどめたまま
小さくなっていく。とか考えてたら、亜美はもう随分と幼くなっていた。
「おにいたん。あみ、いつもどちてくえゆの?」
「ん〜、それいっちゃお仕置きにならないな。」
「ふぇ〜、できゆだけはやくもどちてね」
「はっはっは。いい子にしてたらな?じゃ、寝室に行こうか」
亜美をひょいと抱き上げて、いつもの部屋へと向かう。相変わらずこの部屋だけゆっくりと時が
流れているような部屋だ。亜美におむつとベビードレスを着せてからベッドに寝かす。体力とんと
落ちてしまった亜美はすぐに寝付いてしまう。
36
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:23:51
明日は大学のサークルで集まる予定。だから悪戯をしようと思う。
気づけば午後7時だったので、少し早めに寝た。
7-1
【守り神7】
「ピリリリリリリ♪…ピリリリリリリ♪」
「うるさいなぁ…」
──ッピ!
オレは目覚ましにセットしておいた携帯電話のアラームを止める。その時計には、丁度7時が表示されている。
もう二度とあの目覚まし時計は使うまい。
寝起きでだるい体を起こして、洗面所へ行き、洗顔をし、歯磨きをする。
そして、髪型を整えて、自室へと戻り、ささっと着替えを済ます。
朝食は大学へ向かう途中にコンビニで何か買えばいいだろう。
「さて、行きますか。…っと」
誰にいうでもなく一人呟く。大学へ行く前に、一つやり忘れていた事があるのを思い出す。亜美を大人にしておかないと、
朋美の世話をしてもらうことができないからだ。
オレはベビールームへと赴き、亜美を探す。まぁ、探すまでもなく亜美は赤ん坊になったその姿でベッドの上ですやすやと寝ていた。
このまま寝顔を拝見し続けていたい所だが、そうすると本来の目的が達成できないので起こす事にする。
「おーい、亜美。おきろー」
──ぺちぺち
寝ている亜美の頬を優しくはたく。少しもぞもぞと動いたと思うと
「う〜ん、もうちょっとねかちぇて…」
──ぺちぺちぺちぺち
寝ぼけ声の返事が返ってきた。まだ起きないつもりらしいので、要求を無視してしぶとくはたく。
今度は先ほどよりもぞもぞと動いたと思うと
「だから〜…、もうちょっとねかちぇてほちいの…」
──ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち……
またも寝ぼけ声で返事が返ってくる。当然、要求を無視しつつ、優しく、それでいてしつこくはたく。
37
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:24:29
7-2
「うう〜、わかった。おきゆかや、ほっぺたたたくのやめて」
「よろしい」
ちょっとかわいそうに思ったが、このまま亜美が寝ていては大学へ行って悪戯が出来ない。
起きた亜美を抱き上げて、床に寝かせる。
「じゃ、またお母さん役やってもらうからな」
「わかった。それよりはやくもどちて〜」
亜美は今起きたばかりなので、眠たそうに目を擦っている。
オレは亜美の大人の姿をイメージする。
途端に、亜美のぽっこりと出たお腹は、見る見る打ちにへこんでいく。
短かった手足も、ぐんぐんと伸びていき、やがて、全くふくらみのなかった胸にも二つの山が出来上がる。
だが、一つ忘れていた。亜美はベビードレスにおむつという格好だという事を。
大きくなったときに、ベビードレスが裂けて、丁度その裂けた先っぽが、亜美の胸の先端を隠している。
下半身の方はおむつだが、いかんせん赤ん坊用なので、少しきつそうだ。
「むぅ…これはなかなか…」
品定めするかの用に、じろじろとその姿の亜美を見ていると
「ん?お兄ちゃんどしたの?」
亜美はまだ気づいていないようだ。が、オレがあまりにも凝視しているので、亜美は自分を見下ろしてみる。
その時、初めてオレがずっと亜美を凝視していた理由が分かったようだ。途端に顔を赤く染めてオレの方を見ると
「お、お兄ちゃん!早く出ていきなさいっ!」
「わわ、わかった!すぐ出て行く!」
──バタン!
「ふう…いいもんみたな」
一生で一度あるかないか…というか、まずない経験を出来た事に、オレは満足感した。
だが、本来の目的の方を忘れるわけにはいかないわけで。
オレは自室へと戻り、サイフと携帯をポケットにいれてから家をでる。
「いってきまーす」
一応着替え中であろう亜美に声を掛けてから玄関をでる。
38
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:25:16
7-3
途中のコンビニによって、おにぎりを買って食べていく。大学は自転車で数分で着くので、
のんびりと自転車をこいでいく。…とかなんとか思ってたらもう着いた。門をくぐると声を掛けられる。
「おっはよ〜」
「お、早いな。」
「誰かさんがいっつも遅いだけよ」
「そうか。弘樹の奴は時間にルーズだからな」
「あんたの事よ!ったくもう…」
こいつは同じサークル仲間の笹木志保(ささき しほ)まぁ、いわゆる幼馴染というやつだ。
うちのサークルには、なぜかそこいらのアイドルに引けを取らないほどの逸材がそろっている。
…オレ以外だが。とはいえ、サークルのメンバーは、ほとんど幽霊なので実質4人。
メンバーは
・山本卓美 (オレ)
・笹木志保 (ささき しほ)
・川西弘樹 (かわにし ひろき)
・西谷美穂 (にしたに みほ)
の4人。他は、サークルの形を作るためだけに入っている幽霊ばかりだ。
というのも、サークルと、その活動が「地域のお散歩」だからだ。
今時、こんな事をするなら、バイトやゲーム、はたまた、趣味や勉強をする人の方が断然多い。
弘樹と美穂は、中学からの同級生。腐れ縁というか、クラス替えをしても、必ず同じクラス。
進学も同じ高校。選択科目も全部同じ。成績もほぼ同じ。顔は…さっきもいった通りだ。
オレは志保と他愛もない世間話をしながら、活動場所へと向かう。というか、活動が散歩なので、
校内のベンチに集合するだけなのだが。しばらく志保と雑談をしていたが、いつまでたっても現れない。
「おっそいな。ったく、弘樹の奴はなにしてんだ」
「そうねぇ〜…。あんたはともかく、あの二人が遅れるのは珍しいわね。」
「オレはともかくって…」
「気にしな〜い。気にしな〜い。ちょっと電話してみましょ」
「…わかったよ。オレは弘樹に電話するわ。」
といって、お互い携帯を開き、メモリーから各々の電話する相手の番号を出す。
そして、携帯の受話器を上げる。
TRUUUUU・・・・TRUUUUUU・・・・ガチャ
「…もしもし?」
「ああ、弘樹か?今どこだ?」
「悪い悪い。ちと寝坊しちまってな。しかも今、ちぃと用事があってな。あと10分くらいでいく。」
「わかったよ。今度この埋め合わせ、しろよな」
「わかったわかった。じゃあな」
──ブツ、ツー、ツー、ツー……
用件だけ伝え終わると、すぐに携帯が切られる。同じ頃に、志保の方も携帯を閉じている。
だが、その顔色はいまいち優れていなかった。
39
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:26:25
7-4
「どした?」
「うん…。美穂が電話に出たんだけど…」
「出たんだけど?」
「すぐ切られちゃったの。一瞬、赤ちゃんの声が聞こえたから、まだ家なのかなぁ」
「ううむ。まぁ、こっちはあと10分くらいで来るらしい。」
「そう。これからどうする?」
「そうだな…もうちょっと話してるか」
「わかった。じゃ、ちょっとジュース買って来る」
「あ、オレコーヒー頼む。」
聞こえたかどうかは分からないが、志保は自動販売機の方へと向かっていった。
オレは一人になり、携帯をおもむろに開く。メールも着信もなし。
一応、弘樹にメールを送っておく。すると、すぐにその返事が返ってきた。
「わかってるからそう急かすな。できるだけ早く行くから」
と返ってきた。まぁ、さっき電話したばかりなのにメールするのもアレだったか。
そうこうしていると、志保が帰ってきた。だが、手にはジュースが一本握られているだけだった。
「…オレのコーヒーは?」
「え?コーヒー?」
「聞こえてなかったのか…」
オレはがっくりと肩を落とす。そして、とぼとぼと自動販売機の方へと向かおうとすると
「冗談よ。はいこれ」
「おお、さすがだな。悪いな」
志保はかばんの中からコーヒーを取り出してオレに手渡す。オレはブラックが一番好きなのだが
志保は一番甘いカフェオレを買ってきた。まぁ、買ってきてもらった手前文句をいうのは筋違いだろう。
カフェオレはカフェオレで、たまに飲むと、ほどよいアクセントとなり、飽きを防いでくれるし。
と、プルタブを開けて飲もうとすると、志保が手を出してくる。
「その手はなにかな?」
「じゃ、120兆円。」
「金取るのかよ〜…。しかも120兆円って…小学生か?」
「いいから払う!」
「へいへい」
オレは渋々サイフから120円だけ出して志保の手に乗せる。
「なにこれ?ふざけてんの?あと119兆9999億9999万9880円足りないわよ。」
「…残りは出世払いで頼む。」
「仕方ないわね〜。今回だけよ?」
どうせ明日には忘れてるから適当に受け流しておく。
というか、120円程度でいちいちそんな事を考えるのも疲れるし。
オレはコーヒーを口に含み、少し口の中でころがしてから、ゆっくりと飲み込む。
そして、はぁ〜っと、ため息をつく。お腹から口へかけて、コーヒーの香りが広がる。
「二人とも遅いな〜」
「そうよね。まぁ、もうちょっと待ちましょ」
その時、オレの体を包むように、フワリと風が舞い上がった。
40
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:26:55
8-1
【守り神8】
「おーい」
弘樹に電話してから10分後、遅れて美穂と弘樹はやってきた。
「おそいぞ!…とはいえ、本当に10分でくるとはな」
「それについては悪かったって。」
「二人とも遅くなってごめんね。それじゃあいきましょうか」
そういうと、美穂は先立って歩き出した。
「ま、適当にぶらつくか」
「いや、美穂がいい場所を見つけたんだってよ。オレはその場所の確認に行ってて遅れたんだ」
「へぇ〜!ねぇねぇ、一体どんなとこ?」
「それは……。ついてからのお楽しみということで♪」
一瞬、美穂の様子が暗くなったと思ったら、転じて明るく返事をする。
「じゃあ、一体どの辺りなの?もうこの辺は踏破しちゃってるわよね?」
「ん〜、そう思ってたんだけどね。近くの森林公園あるでしょ?」
「ああ、最初の頃によく行ってた、本当の森のような公園ね。そういえば最近は行ってないわね」
森林公園…最近行ってないので、よく思い出せないが、確か、山の麓あたりに作られた、公園というよりもたんなる広場といった方が
しっくりくるような所だったはずだ。水のみ場や、多少の遊具があるから、公園となっているのだろうが。
しかし、あそこの山は、麓は公園として遊ばれているくらいだが、山の奥へは立ち入り禁止だった気がするのだが…
「そうそう。それで、久しぶりに歩いてたら、脇道を見つけたのよ。それでね…」
「美穂っ!それ以上はついてからのお楽しみだろ?」
「あ、そ、そうね。危うく口がすべるところだった」
突然弘樹が美穂を怒鳴りつけた。といっても、さほど大きな声ではなかったが。
「弘樹、何怒鳴ってんの?」
「折角内緒にしてるんだ。どうせなら、お前らを着くまで色々妄想させたいからな」
「ふーん…」
おいしいものは一人占めしたいというか、そこまでして俺らに内緒にしたいのだろうか?
まぁ、オレが思っている以上にすごいものがあったなら弘樹の態度もわからないでもないが。
「じゃあ、改めて行きましょう。」
しばし沈黙の後、美穂がまた歩き出す。俺達もそれにつられて自然と歩き出す。
空気が重くなったのは最初だけで、後はいつものようにわいわいとやりながら楽しく散歩。
そして、あっという間に目的の森林公園にまで辿り着く。
「で、いつもの公園についたわけだが…。美穂、そのわき道ってどこだ?」
「こっちこっち。ただ、道というか、道なき道だから、足元に気をつけてね」
「おっけー」
美穂は山の方向へと歩いていく。みんな美穂についていく。当然オレもついていく。
少し山道に入り、10分ほど歩いて行くと、周りは少し暗くなっていきく。
ただただ、鳥や虫の鳴き声が聞こえるだけになってきた。
更に、道も随分前に舗装して以来ほったらかしになっているようで、もはや道には土しかなかった。
…そろそろ麓から離れて来た。オレの記憶が正しければ、確かこのあたりに看板が立っていたはず…
41
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:27:31
8-2
「「この先危険 関係者以外立ち入り禁止」」
と、お決まりの文句が書かれた木の看板が、記憶通りの場所に立てられていた。どうしてか、こういう看板の文字は赤いペンキで書かれており、
まるで血で書いたかのように不気味であった。さらには、フェンスに有刺鉄線という、とても痛々しいバリケードが築かれていた。
「ここなのか?立ち入り禁止って書いてるじゃないか…」
「おいおい、誰がこんなもの律儀に守るってんだ?見ろ。もう、看板もフェンスもボロボロじゃないか」
「こっちよ。こっちのフェンスに穴が開いてたの。」
美穂が、そのフェンスに沿って、歩いていく。弘樹もついていく。
「どうした、早く来いよ」
「わかった。今行くから」
弘樹は、オレと志保に一声かけてから、再度美穂の歩いている方へ歩みを進めた。
「志保、どうした?」
大体、道が暗くなってきたあたりから、とたんに口数が少なくなっていた志保にオレは声をかける。
「ううん…。なんだか怖い…。まるで誰かに見られてるみたいで…」
志保は少し小刻みに震えている。そして、オレの手をつかみ
「絶対に離さないで…。お願いだから……」
力なくオレに頼み込んでくる。普段は元気な志保なのに、こんなに縮こまっているとまるで別人のように思える。
「…わかった。絶対に離さない」
オレは、志保が握る手を、少し強く握り返し、二人の後を追って歩き始める。
少し歩きにくいが、そのすぐ隣を、少し後ろを歩くように、志保がついてくる。
握っている手が、とても小刻みに震えているのがわかる。
女性の勘はとても鋭いと昔からよく耳にする。
もしかすると、志保は何かを勘付いて、それが何かわからないけれど、とても怖いものと感じた…のかもしれない。
なんにせよ、オレもただならぬ不安感を覚えたので、少々慎重に行こうと思う。美穂と弘樹の、ここをばらしかけた時の態度も気になる。
そして、フェンスに穴が開いている場所へとたどり着く。二人は穴の向こうですでに待っていた。
美穂と弘樹の二人は淡々と歩みを進めていく。志保が、オレの手を握る手に力を少し込めた。オレは志保の手をやさしく握り返した。
「(…そろそろだな。)」
弘樹が小言で呟いているのが聞こえた。
気づくと、回りの雰囲気が少し明るくなってきているようだ
「もう少しみたいだ。」
一歩、また一歩と歩みを進める度に、さらに周囲が明るく感じる。
そして、薄暗かった周囲に木漏れ日が差し込み、一気に明るくなる。
先ほどまでの暗さが嘘のようだ。木々の間から差し込む光が、まるで星空のように、きれいに瞬いている。
「きれい…」
これまで怯えてオレの手を握っていた志保も、両手を広げて、その身に光を受け止めるようにしてそれを眺めている。
「きれいだろ〜!実はな、わざと暗い道を歩いて来てたんだよ。そのほうがこの明るさがもっと際立つと思ってさ」
…悪趣味な奴め。そのせいでどれだけ志保が怖がってた事か。まぁ、そのおかげで志保のかわいらしい一面も見れたけど。
それでも志保がかわいそうだった。だから一言ガツンと言ってやる。
42
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:28:15
8-3
「弘樹、ナイス演出!ちょっと怖かったけど、これだけきれいなもの見せてもらったから許す!」
「…………」
「ん?卓美どうしたの?」
「(人の気も知らないで…。)」
おれが「ふ〜ッ…。」とため息をつくと、耳元で志保が
「たーくーみー?」
と呼びかけてきた。
「だー、聞こえてるって!それよりよかったな、きれいなもの見れて。」
「このあたりには、ものすごく背の高い木があって、その木のせいで、一部昼間でも薄暗い道があったの」
「でまぁ、ここを通ってきたわけだ。…そして、まだ終わりじゃないんだな、これが。ついてこい」
またも弘樹と美穂が先を歩く。明るくなった志保が意気揚々と二人についていく。
「…行くか」
誰にいうでもなく、みんなの後をついていく。
数分後、道なき道から、とたんに舗装された道へと出てくる。先ほどまでの木漏れ日とは違い、まぶしい日差しが降り注ぐ空の下にでる。
つい、手で影を作るように額に腕を持っていく。その視線の先には志保が口をあけてポカーンとしていた。
何があるのかと思い、オレもその視線の先を目で追ってみると
──「でで〜んっ!!」
…という効果音が相応しいような、綺麗なお屋敷があった。
なんていうんだろう。家が真っ白です。まっすぐ伸びる道の脇には植え込みや、噴水やら花壇やらがあります。
緑の芝生が綺麗に生えており、すごく高級感漂っております。浮いてます、オレ。
てか、動揺してるな、オレも志保も。さっきから同じとこ見てどっちも動かない。
視線の先からメイドさんが歩いてくる。空想上のお仕事じゃなかったんですか?と、問いかけたくなった。
「おかえりなさいませ〜。美穂お嬢様ぁ〜」
耳を疑うとは、この時のためにある言葉だな。
「そちらの方々は〜お友達ですか〜?」
随分間延びしてる人だ…。見た目は流れるような黒髪が腰の辺りまで伸びており、柔和そうな顔つきをしている。
見た目年齢は…ざっと16くらい?こんな雰囲気だから年下に見えるのかもしれない。でもそれくらいに見える。
目は心なしかたれ目っぽいな。本日二度目の守ってあげたくなる感に襲われた。
胸元を見ると、メイド服の上から立派に存在を主張する二つのふくらみ。
──ごくり。
どうしてだろう。つばを飲み込んでしまった。おあずけを食らった犬の心境がいまなら分かる。
さようなら理性。こんにちは野生。
「(いたずらいたずら〜♪)」
出来るかわからないけど、部分的に変えるってのを妄想したので試みる。彼女の発育なら二十歳くらいなら
ますます膨らんでいそうだ。これが成功したら逆も可能だろう。いつもの調子で念じてみると、少しずつ膨らんでいる。
「ん〜…、なんか胸が苦しいです〜…。ブラジャーとっちゃおっと…」
「「えええええええええ!!」」
43
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:29:03
8-4
ナイスハプニング!!
おっとりしている割に、素早く手を後ろに回し、ブラのホックを外す。器用だ。
そして、メイド服の襟を広げて胸を出そうとする彼女。あの服、恐ろしく伸縮性がいいみたいだ。
神様、ありがとう。あんなドジな神様でも今ばかりは感謝の気持ちでいっぱいです。
「ふ〜、苦しかった〜」
「もうちょっと、もうちょっと!」
「一気!一気!一気!」
応援団(オレと弘樹)が立ち上がる。いたずらがとんだラッキーを生んだものだ。
志保と美穂は、あたふたと彼女を止めようとする。
だが次の瞬間、延髄に強い衝撃を受けて一瞬頭がクラっとする。
「だ、誰だ!お楽しみの邪魔をするやつは!!」
後ろを振り返ると彼女が立っている。当然、胸はあのメイド服の中にすっぽり納まっている。
というか、何で後ろにいるんだ?
「女の子のお着替えを覗くなど、いくら美穂お嬢様のお友達でも許せません」
さっきまでの天然差が微塵も感じられないくらいきりっとした目つきと口調になっている。
「自分から仕掛けておいて何だが、脱ぎだしたのはきみじゃないか…」
「??仕掛けた?あなたが?なにを???」
「しまった!い、いやなんでもないです。ただ混乱して変なことを言ってしまったというかなんというか…」
「……愚カ者ガ。アマリ欲ニマカセテ「力」ヲ使ウデナイワ。次ハコンナモノデハ済マナイカラナ」
彼女の口調がどっかで聞いたことのある口調になる。あのヤロウ…少しでも感謝したオレがバカだった。
「…ドジハオ主ダカラナ。セメテ誰ニモ見ツカラヌ所デヤレ」
「………」
「(器が小さいな。神様のくせに。)」
「オ主ヨリマシダ」
「人の心を勝手に読むな!」
「は!わ、わたしいったい…?」
「え?いつのまに卓美の前に!?」
突然、みんなが正気に戻った。逃げやがって。折角のいたずらが台無しじゃないか…。
というか、どうやら時が止まっていたらしい。みんな何もわかってないようだ。
「な、何言ってんだ。普通に歩いて来てただろうが」
「あれ〜?そうだっけ…?」
「そうそう。疲れてるんだって。」
とりあえず丸め込むことには成功した。当の本人は首を傾げつつも
「…まぁいいです。それでは、こちらへどうぞ〜」
いたずらには失敗したが、こんな豪邸だ。きっとおいしい紅茶とクッキーとかのお菓子が出てくるに違いない。
先ほどから玄関先でのごたごただったので、彼女は屋敷の扉を開けてオレ達を迎え入れた。
「ようこそ、私のおうちへ」
少々大げさに腕を広げて、美穂が言った。
44
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:29:45
8-5
「そ、そういえばここって美穂の家だったの!?」
「ああ、そうだった!」
思い出す。あのごたごたですっかり忘れてた。
美穂がお嬢様とか呼ばれてた時点でわかっちゃいたんだがな。
「私の家っていっても、正しくは違うわ。いつもは別の家に住んでるし。ここにくるのは一週間に2,3回だけよ。」
「そうなんだ。でも、どうして教えてくれなかったの?」
「どうしてって…。こっちはいとこのおじいちゃん達が住んでるから。別に教えなくてもいいかな〜、って。」
「そこでオレの登場ですよ。酒に酔った美穂かポロリと漏らしたから、つれてきてもらったんだよ」
「あれ、美穂はまだ未…」
「卓美よ!お前はそんな細かい事を気にするような男だったか?」
まだ未しか言ってないのに、俺の言葉に横槍が入った。
お酒は二十歳になってから。良い子は冒険だとしても飲んじゃダメだからね?お兄さんとの約束だ。
「す、すまん」
「よし。で、折角だから、みんなにも教えないか?って。そして、さっきのあれを計画して、今日は実行に移したわけだ。」
「ここのおじいちゃん達、私にすごくよくしてくれるの。だから気軽に遊びにこいって言われてるんだけどね。やっぱりどうも落ち着かなくって…」
「そうだったのか。いや〜、しかし生でこんなものを見れるなんてな〜」
屋敷の中は赤いじゅうたんが敷き詰められている。その辺に寝転がってみたくなるほど肌触りがよさそうだ。
天井にはやたらキラキラしているシャンデリアがぶら下がっている。あれでターザンごっこやったら殺されそうだ。
でもやりてええええええええ!という衝動に駆られる。もう見るの止めることにする。
「それではみなさま、こちらへどうぞ〜」
などと子供っぽい妄想をしていると声をかけられた。
先ほどのメイドさんが通路のに手を向けて、先頭を歩く。オレ達は彼女について行く。
通路を少し歩き、二回ほど曲がると、右手方向は一面ガラス張りで中庭の様子が丸見えだった。
中庭にはよく手入れされた植え込みや花がたくさん咲き乱れており、蝶々も所々で舞っている。
真ん中のあたりに、丸くて白いテーブルと椅子があり、オレ達はそこへ案内された。
テーブルの上には、すでにおいしそうなクッキーと、傍にはポットが置かれている。
45
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:30:20
8-6
「なんつうか、優雅ってこういう感じなんだろうか?」
「こういう場所でクッキー食べてるだけなのにな。」
「でも、素敵よね」
「喜んで貰えたみたいで嬉しいわ。ささ、食べて食べて」
「このクッキー、私が作ったんですよ〜。お口に合えばよろしいのですが〜」
例のメイドさんだ。まぁ、こういうおっとりした人って、料理とか上手そうだし。
一口サクッとかじってみる。
「うまい…」
この一言で十分だった。既製品とは違う、味わい深いのにあっさりとしていて、サクッとした食感。ほどよい甘み。
クッキーってこんなにうまかったのか。
「ほんと。どうやったらこんなにおいしくなるのかしら?」
「その秘密は〜、魔法のブレンドです〜」
「魔法のブレンド?魔法のブレンドってどうやるの?」
「普通の人には無理です〜。何せ、魔法をブレンドしますから〜。そろそろ効果が出てきます〜」
魔法…少なからず縁のあるオレはとても嫌な予感がする。
「あれ…トランクスが広がったような気が…」
こういう場面は何度か見ている。しかし、今回はオレの仕業ではない。
「男の子の方が〜、効き目が早いみたいですね〜」
「お、おい、卓美!オレ小さくなってるぞ!?」
「あ、ああ…」
誰の仕業か。それは大体分かる。だが、こうなった場合どうしたらいいのか。
元に戻す。そんなことは一番最初に試みた。だが、戻らない。何故だ?
頭が混乱する。今までになかった事態。故に、何を考えていいものか分からない。
「やめろ、やめてくれ!」
弘樹の低くて重い声が、やや高くなる。変声期などはあっという間に過ぎたようだ。しゅるしゅるしゅるという感じで弘樹は小さくなっていき、
あっという間に赤ん坊になってしまった。弘樹は服の中に埋もれてしまった。そして
「あ〜、うう〜」
と、しゃべれないながらも必死に何かを訴えているようだった。もはや、背骨も退化してしまい、座っている事すら出来ない姿になってしまった。
「はい〜、一人目〜。次は…お友達の彼女かな〜」
お友達の彼女?…志保か!
46
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:31:12
8-7
「そ、そんな、私嫌よ!」
「志保、逃げるぞ!」
オレはとにかくあのメイドの近くにいるのはヤバいと思って、志保の手を握り走り出す。
先ほど入ってきたドアを抜け、玄関のドアへと向かおうとする。だが…
「ま、まって卓美、もう…ついていけない…」
先ほど聞いた志保の声より、高い声がオレに届く。
中庭から抜けるドアをくぐった頃には、志保はすでに12歳くらいの体に戻っており、とてもオレの歩幅には付いてくることが出来ない状態になっていた。
「あたし、あかちゃんに戻るなんていやぁ…」
未知の恐怖に、志保の顔は今にも泣きそうになっている。このような会話をしていても、12歳の体からすでに…
7,6,5…。無情にも、志保は徐々に小さくなっていく。体はシャツで隠れており、さらにそのシャツの中へと体が潜って行く。
抱いている志保の体が、だんだんと軽くなっていくのが感じられる。
オレはしゃがみながら、志保を抱いている中で、志保は徐々にオレを見上げるようになっていく。
その瞳には涙を溜めていた。そして、大体1歳くらいになった時、志保の変化はおさまった。
「う、うっ…たぅみぃ…」
ヒクッ、ヒクッと、しゃっくりのようなものをしながら、志保は泣き出すのを堪えている。
オレはそんな志保を、ただ見つめることしか出来なかった。
「どうして…戻らないんだ…」
「やっぱり〜、あなたは「力」を持ってましたか〜。おかしいと思ったんですよね〜。あなた、男の子なのに変化が遅いから。」
「……」
メイドが何か言っている。しかし、オレの頭の中はこれからどうすればいいのか、どうするべきかを考えることで一杯になっている。
オレの「力」は効かない。なら、オレはただの頑丈にできた人。
「結構な防御壁を持ってるみたいですね〜…。でも、「力」がその程度なら、なんとでもなりますね〜」
──こと、こと…
徐々に歩み寄ってきている。どうする、逃げるか、戦うか。
彼女の「力」は、分かっているだけでオレのものより強い年齢可変の能力。しかし、オレは年齢可変の力は防ぐことができた。
「ただの」女の子が相手なら負ける道理がない。しかし、「年齢可変の力」が効かないというのにあの余裕。何かある。
「別に〜、わざわざあなたを子供に戻す必要もないんですよね〜。つまり力押しです。…それっっ!!」
掛け声と共に、ものすごい衝撃のようなものが体全体にぶつかり、そのまま吹き飛ばされて壁に激突する。
そしてオレは、床に倒れこんで意識が無く…
「ふふ、一丁あがりっと〜」
47
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:51:31
9-1
【守り神9】
「んんっ…」
目を強く瞑って、目をあける。が、まだ目は覚めきっていないようで、目の前がかすんで見える。
目を少しこすろうと腕を挙げようとした。が、何かにその動きを止められてしまった。
「…っ!!」
頭を強く振り、何度も瞬きをして、意識を覚醒させる。
そして、動けない自分を見ると、両手両足は皮のバンドのようなもので固定され、口には猿轡がはめられていた。
次に辺りを見渡した。ここはどうやら診察台のような台の上にいるようだ。
まるで、テレビや映画でよく見る手術室のような部屋だった。人の温かさが微塵も感じられない、冷たい空気が流れている。
どうしてこんな状況になったのか、心当たりを探るとすぐに見つかった。
(そうか…。さっきやられて意識が無くなったんだ。)
とりあえず助けを呼んでみる。
「んん〜!ん〜ん〜!」
だれか!だれか〜!と叫んだつもりだった。猿轡なんて今まではめられたことはなかったが、意外に声が出ないものだということをいまさらながらに知った。
「………」
どうでもいいか、そんなこと。
数分ほど頑張ったが、どうせこの状態じゃ、自分だけでは何もすることはできない。手足を拘束されているし、叫ぶ事も無駄だろう。
何か手はないか…。とりあえず目を瞑り、現状をまとめるか。
まず、自分は完全に拘束されており、何も出来ない状況にある。おそらく、先ほどのメイドにやられたのだろう。
辺りに人の気配はない。敵であろうが、味方であろうが、全く人の気配がしない。
(ところで、他の3人はどうなったんだろうか)
志保、美穂、弘樹…二人は赤ん坊に戻されていたが、そういえば美穂はどうなったんだ?
あの中で美穂の変化は見ていない。となると、美穂も最初からグルだったのだろうか。
──ガチャ
不意に扉が開いた音がした。コツ、コツ、コツと、単調なリズムの足音も聞こえてくる。
どこか不安をあおるその足音。意識がますますはっきりとしてきた。
その足音がオレの寝ている診察台の傍で止まった。
「静かにしててね」
声のした方を向くと、美穂がいた。どうやら無事だったようだ。よかった。
美穂が両手両足の拘束を解いてくれた。猿轡もはずしてくれた。
「はぁ〜。ありがとう美穂」
「いいから。ところで…その…」
「なんだ?何かあるのか?」
「卓美くん、あんなに飛ばされてよく無事だったね」
「え?あ?ああ…」
48
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:52:15
9-2
そういえば、先ほど吹っ飛ばされて壁に叩きつけられてたんだったな。
突然(一方的だったが)バトルが始まって何がなんだかわからなくなった。
あんなデタラメな奴はどうすればいいんだ。年齢可変の能力はもらったけど、戦う能力なんてもらってないぞ。
「なんでだろうな?俺にもわからん」
別の事考えてたけど、ひとまずトボけることにした。
「とにかく無事でよかったわ。」
「ああ…。ただ、どうして美穂は無事なんだ?」
「無事というか、相手にされなかっただけみたい。紅茶を先に飲んでなかったらと思うと…」
美穂は腕を交差させて、少し震えた。
だが、ここで震えているだけでは、何も始まらない。見つかるのが怖いが行動を起こすべきだろう。
「ここを出よう。見つかったら逃げられない」
診察台から降りて、入り口へと向かう。美穂も後ろをついてくる。
──ぎぃ…バタン。
「誰もいない…な。」
ドアを閉めてからでアレだが、一応確認する。
悪いことしてる人って、こんな気分なのだろうか?廊下の先が怖くて仕方がない。
「美穂、この屋敷の構造はわかるよな?」
「ええ、大体は。」
「じゃあ、赤ん坊がいそうな所ってわかるか?わかるなら案内してくれ」
俺はとりあえず、あの二人を探そうと考えた。二人を助けて神とコンタクトを取れば、二人をなんとかしてくれると思ったからだ。
しかし、あちらはこちらの能力の事を知っていた。となると、ほぼ相手の手のひらの上で物事は進んでいる可能性が高い。
ここからが問題だ。あの部屋からは、逃げ出すという選択肢以外はない。そして、その選択肢を無事通過することができた。
この次はどうするか?このまま逃げ出して助けを呼びにいってもいいんだが…。
どちらかといえば、相手は逃げ出す方を想定している気がする。だからこそ、先に助けることもできると踏んだ。
普通に考えると、だ。あのような力の差を見せられて、再度負けるとわかってて抵抗するのは愚かだ。
裏をかきはじめたらキリがないが、とりあえず一度くらい裏をかこうと思う。
49
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:53:06
9-3
「それはいいけれど…。逃げたほうがよくない?」
「それも一理あるんだが。相手もそう考えてると思ってさ。」
美穂は少し考える素振りを見せる。
「そうかも…。私は逃げ出したいし。」
「だろ?だから頼む。」
「わかったわ。一番可能性があるのは、二階の東にある子供部屋だと思う。ついてきて」
じゅうたんを踏みしめながら、慎重に行動を開始した。
これまでにないシリアスな展開に、手のひらの汗が止まらない。心臓の高鳴りもまだ続いている。
──とん、とん、とん…
順調に廊下を進み、階段までやってきた。階段も、何事もなく通過できた。
不気味なほど、何も起こらない。拍子抜けしてしまうほどに。
一瞬たりとも気が抜けないのには変わらないが。
「ここね。」
色々思考しているうちに到着したようだ。
「あけるわよ…」
──ぎぃ……
美穂は少しドアを開けて、中を覗く。
「大丈夫みたい」
美穂はドアを完全に開けて、部屋の中に入った。俺も続いて中に入る。
部屋の中を見渡しても、人の気配はなかった。
「ここにいないとすればどこだろ…」
美穂は当てが外れた為、次に思い当たる場所を考え始めた。
俺は部屋の中に入った為か、気分が落ち着いてきた。
「ふぅ。今更だが、あの二人の所で、あのメイドが見張ってたらおしまいだよな」
「そうね。卓美くんはともかく、私はダメでしょうね」
「何?気づいていたのか?」
「…逆に聞くけど、本気で気づいてなかったの?」
「…うん。」
今考えた事だから、当然今気づいた。美穂は片手で顔を覆い、頭を左右に振る。
「で、でも。きっと何とかなるって」
「……。まぁ、こういう時は多少、大胆に決断してくれた方が良いけどね。」
美穂の表情が少々硬くなった。ちょっと軽率だったと反省。やっぱり神に助けてもらうべきか。
少々、自分だけでどうにかしようと思いすぎた。二人には悪いが、救出は後にしよう。
「美穂、困ったときの神頼みだ」
「いくらなんでも、怒るわよ?」
俺はいたって大真面目なんだが、伝わったニュアンスが違うらしい。
確かに、普通神頼みといえば、半ば諦めに近い意味合いだしな。
50
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:53:45
9-4
「言い方が悪かった。こういう不思議な事に強い奴を知っているんだ」
「じゃ、その人と連絡を?」
「連絡とるというか、多分すでに知ってる。」
「ならどうして助けてくれないの?」
「わからない。何か理由があると思う」
結局頼りにならないんじゃないか。さっき玄関先では居たんだから、きっとこのことも知ってると思ったんだが…。
どうにかして神とコンタクトを取れれば、あの二人はなんとかなるだろう。
本当は先に助けたいけれど、もしも対峙してしまったらどうしようもないことに気づいたんだ。
「二人の救出は後回しにして、先に脱出をしよう」
「でも、さっき相手は逃げると考えて〜──。とか言ってたじゃない」
「それはそうだが…。考えたら状況が違ったんだ」
「なにそれ?卓美くん、言う事が二転三転してるじゃない!ロクに考えずにあてずっぽもいい加減にして!」
「……すまん」
さっき、軽率な行動は慎もうと考えたばかりだったよな…。
堪忍袋の緒を切ってしまったようだ。きつく怒鳴られてしまった。
俺の取った行動は、悪い方向へは転んでないが、良い方向へも転んでない。このままでは、いづれ追い詰められる。
叱られてから、何が悪かったのかわかったよ。
「でも、俺だって──」
「いい。もう何も言わなくていい。卓美くん、頑張ったもんね」
「………」
──ぎぃ、バタン。
弁明する余地もなかった。美穂は言うだけ言って、部屋を出て行ってしまった。すごくもどかしいわだかまりが残る。
「俺だって…。天才じゃないんだよ。諦めては…ないけど…。どう、打破すればいいかわかんねぇんだよ…!」
美穂の去った部屋で、にじむ視界の中で俺は一人、誰にともなく怒りを吐き出していた。
51
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:54:25
9-5
**一階 西 寝室**
「………」
怒ってしまった。なんだかよくわからない出来事に対するイライラを、頑張ってる卓美くんにぶつけてしまった。
わかってる。頑張ってくれてるのはわかってる。だけど、彼のやることは、何も生み出さなかった。
結果的に、ただただ、私の不安を冗長させてるだけだった。
「この後どうしよう?」
…誰に向かって聞いてるんだろう、私は。聞いてほしい人は、自分でさっき置いてきた所じゃない。
誰もいないんだ。独りになった事を実感した途端、体が震えだした。
「おかしいな…。卓美くん助けに行った時も怖かったはずなのに」
中庭での出来事。あの後で、私は逃げ出さずに卓美くんを探し当てて助け出した。
卓美くんに感謝されて、卓美くんがなんとかしてくれて、みんな助かってハッピーエンド。
私の描いてたシナリオ。…なんだ、私だって卓美くんと同じじゃないの。
それなのに…それなのにあんな偉そうな事言って出てきたんだ。
「何様のつもりなのよ、私…」
「あら〜?お嬢様はお嬢様ですよ〜」
「!!」
妙に間延びした女性の声。間違いない、あのメイドだ。いつの間にか見つかっていたみたい。
声のした方を振り返ると、ニコニコと変わらぬ笑顔で、こちらを向いていた。
「逃げ出すならさっさと逃げ出せばよかったのに。」
「本性現したのね。目的は何?お金?」
笑顔は変わらないが、話し方に間延びがなくなる。それだけなのに、威圧感が増した。
背筋が凍るような不安が襲ってくる。
「そんな物に興味はない。興味があるのは、あの男だけ」
隠すつもりはないのか、こちらの質問に答えてくる。しかし、その目は鋭くなり、こちらを睨み付けている。
話し方も、棘のある口調に変わってきている。この人はヤバい。頭がおかしいとしか思えない。
「じゃあ、逃げてもいい?」
「そうね…。別にあなたに用はないけど、折角だから子守を頼もうかしら」
逃げるのは却下された。けれど、子守をすればいいらしい。思考が読めない。
「便利な体にしてあげる」
彼女が腕を下から上へと振り上げた。途端、体に激痛が走った。
「い…たっ!!?」
体中の骨が軋む痛みに悲鳴を上げそうになる。しかし、それは一瞬で過ぎ去った。
次は、マッサージでも受けているように、全身が安らぐ。そのあまりの気持ちよさに、頭がぼんやりとする…。
「ふわぁ〜…」
思わずため息をついてしまう。立っている事が出来なくなり、その場にヘタってしまった。
「気持ちよさそうね」
「はぁ…ふぅ…」
呼吸を深くし、意識を保とうと努める。定まらない視点で、彼女を見上げる。
「何…したの?」
「うふふふふふふ」
彼女は笑い、ニヤニヤとこちらを見つめているだけだった。本当に楽しそうにこちらを見ている。
ふと、体がダルくなった感じにみまわれる。先ほどまでの快楽はなくなり、頭のクラクラも少しマシになる。
52
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 18:54:57
9-6
「うう…」
「そろそろね。こっちへいらっしゃい」
彼女の腕がこちらへ向かってくる。むんずと腕を掴まれ、強引に立ち上がらせられる。
その細い腕には不釣合いな力で運ばれる。彼女がすぐそばにある部屋の扉を開けると、私はそこに放り投げられた。
床はカーペットが敷き詰められていたので、大した怪我は負わなかった。
「鏡を見なさい」
言われたとおり、部屋の中ほどに立てかれられている全身鏡を見る。
そこには、もちろん私が映ってる。だけど、鏡の中の私は元気が無さそうな表情をしていた。
鏡を見つめていると、鏡の中の私の顔は、ハリが無くなっているようだ。目が垂れ始め、多少の小じわが見え隠れしている。
胸も、今のBカップの私からは想像できないような、大きなEカップほどにまで膨らんでいた。背も、少しだけ伸びているように見える。
髪は、少しゴワゴワとした感じのロングヘアーだった。そして、全身の肉付きもよい、艶かしい私が映っている。
私に似てるけど、ちょっと違う人。
「おっぱい出るはずだから。頑張ってね、美穂おばさん」
彼女はそう言い放つと、部屋を後にする。部屋を見渡すと、赤ちゃん用の小さな布団がたくさん敷かれている。
「え、おばさん?」
自分の両手の手のひらを、顔の前に持ってきて見つめる。すべすべだったはずの肌は、少々乾燥気味になっている。
視線を下に降ろすと、視界を遮るような大きな胸が目に入る。自らの腕を掴んでみると、むっちりと弾力がある。
顔をぺたぺたと触る。鏡の中の私も、同じ動きをする。鏡の中の私の胸の部分が、しっとりと濡れ始めていた。
と、頭痛が止まり、意識がハッキリとしてくる。
…あれ?鏡の前にいるのが、私で、鏡に映っているのが私で…でも私じゃない人が映ってて…あれ?
「うそ、うそ、うそ、うそ…」
認めたくない。うそだと思いたい。「うそ」と呟きながら、私の体は勝手に動き出す。
布団の中の赤ちゃんを抱き上げて、私の体はおっぱいをあげはじめた。
赤ちゃんは寝ながらも、私のおっぱいをちゅうちゅうと飲んでいる。
鏡を見ると、やっぱり私の知らない私がこちらを見ている。
あれだけ嘘だと言い聞かせていたけれど、それもここまでみたい。
「いやああああああぁぁぁぁ!!!!」
すべてを振り払うように、私は力いっぱい叫んだ。これは夢なんだって、自分に言い聞かせるように。
すると、また頭がぼんやりと、気持ちよくなってきた。ああ、やっぱりこれは夢なん──。
53
:
ウエストリバー
:2007/08/20(月) 19:03:00
>>15
>>16
本当に長らくお待たせしました。
ご期待に沿える作品を作れるよう、努力していきます。
54
:
名無しなメルモ
:2007/08/20(月) 20:02:12
おっ、急展開…
続きが楽しみです…
55
:
名無しなメルモ
:2007/08/20(月) 20:29:16
凄っ!さすが書き溜めてた分は読み応えがある・・・。
リアル優先で気長に更新していってください。楽しみに待ってます。
56
:
名無しなメルモ
:2007/08/20(月) 22:13:53
まさに便利な体だ。
中年熟女化&母乳体質の美穂に感激!
今後の展開が楽しみです。
57
:
ウエストリバー
:2007/09/09(日) 23:33:52
報告が遅れてすみません
また仕事が忙しくなってきたので、更新が止まっております・・・
申し訳ございませんが、一段落したら、次のお話と一緒に投稿させていただきます
58
:
名無しなメルモ
:2007/11/23(金) 17:27:48
いいところで停滞しちゃってますね。
そろそろ復活を期待!
59
:
名無しなメルモ
:2007/12/01(土) 17:39:17
復活を激しく希望します。
60
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:12:38
どうも、あけましておめでとうございます>>ALL
挨拶が遅れましたが、今年も稚拙ながらも小説をよろしくお願いします。
仕事の研修期間が終わり、配属先が決まりました。
そこから、仕事を覚えたり仕事の勉強したりで、更新がなかなか進みませんでした。
クリスマスプレゼントか、お年玉として投稿したかったですが、残念ながら間に合いませんでした。
あらかじめ申しておきますが、あまりにダークな展開へ走るつもりはありません。
お話の途中で何か山場が欲しいので、ところどころに入れますが、あくまでも【APAR小説】ですので。
>>58
>>59
3ヶ月以上もお待たせしてすみません。
学生の頃のように時間が取れればいいのですが…。
ご期待に沿えるかわかりませんが、引き続きお楽しみください。
61
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:13:57
【守り神10】
10-1
**2階子供部屋**
美穂が部屋を飛び出して、少ししてから、俺は落ち着きを取り戻した。
今思えば、止めるべきだったと思う。だけど、さっきは体が動かなかった。
何もかもが空回りしてる自分が悔しかった。
「とにかく、美穂を探さないと」
俺は扉に手を掛けて、ドアのノブを回した。
──ガチャ。バタン(「いやああああああぁぁぁぁ!!!!」)
部屋から出る同時に、屋敷の反対の方向から美穂の悲鳴が聞こえる。
少し低い感じがしたが、遠いからそう聞こえたのだろうか。
しかし、二階には人影が見えない。と、言うことは
「一階か!」
──たったった…。
──トントントン…。
──たったった…。
俺はまず階段へ向かって走った。階段は一段飛ばして素早く降り、一階に着いてからは声のした方向へと走る。
と、そこにあのメイドが、ドアの開いた部屋の前でくすくす笑いながら立ちつくしているのが目に入った。
メイドを見つけた俺は、走るのを止めた。というよりも、足が止まってしまったと言う方がいいだろう。
俺に気づいたメイドは、ゆっくりと体をこちらに向けて言葉を放った。
「あ、やっと来たの」
「美穂はどうした!」
「そこにいるわ。くすくす…」
メイドは、ゆっくりと右手を上げ、部屋の中を指した。
「美穂…?美穂なのか…?」
「………」
なんとなく分かった。部屋の中にいる、おばさんが美穂だということが。
ただ、その目に生気が全く見られない。まるで廃人となってしまったかのような目で、赤ん坊に母乳を与えていた。
俺は美穂に駆け寄り、肩を揺らしながら声をかけた。
「おい、美穂!しっかりしろ!!」
「………」
美穂の頭が力なくぐらぐらと揺れて、ぼーっとした表情で少しの間こちらを見つめた。
しかし、そう思ったのもつかの間。すぐに赤ん坊の方へと向き直り、再度母乳を上げ始めた。
美穂は、心が無くなってしまったような哀れとしかいいようの無い状態だった。
「おい!なんでこんな…こんなひどい事が出来るんだよ!」
「ひどい?いいえ、そんなことはないわ」
「とぼけんな!こんなことしておいて、許されると思って」
──きっ!!
「う…くっ…」
怒りを吐き出した途端、メイドが睨み付けてきた。
あまりの剣幕に、言葉がつまり身じろぎしてしまった。
吐き出そうとした言葉は出ず、そのまま言葉を飲み込んだ。
そんな俺を、変わらぬ目つきでこちらを睨んだまま、メイドは口を開いた。
「あなた、あいつに会ったでしょ?その「力」をくれたのは、あいつのはずよ」
「ああ、あんたは神の事を知っているのか?」
と、メイドが驚いたように目を開く。このメイド、間違いなく神とただならぬ因縁がある。
「そう…そうなの…」
何かを確認するかのように、ぶつぶつと何かをぼやいている。
一体、何がどうなっているんだ。俺達を子供に戻したり、俺だけ縛り付けて監禁したり。
更には、屋敷の人であろう人達まで赤ん坊にし、美穂をおばさんに変えてしまったり…。
「なぁ、あんたはなんでこんなことをする?こんなことして何になるって言うんだ?」
「ぶつぶつ…」
「俺達が何をしたって言うんだ?早くみんなを元に戻してやれよ」
「ぶつぶつ…ぶつぶつ…」
ダメだ。自分の世界に陶酔してしまっているのか、俺の声は届いてないらしい。
どうすればいい。俺は何をするのが一番いいんだ。
「いいわ、教えてあげる」
「え?」
その、意外な突然の発言に俺はキョトンとしてしまった。
てっきり、また力任せにねじ伏せられるかもと内心どきどきしていたのだが。
62
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:14:29
10-2
「その代わり、条件がある。その条件を飲んでくれるならのお話」
「……その条件は?」
「あなたの言う、「神」を呼んで頂戴」
メイドの出した条件は神を呼ぶと言う事だった。美穂と一緒に逃げ出そうとしたときに、頭の中で念じてはいたが神からの応答は無かった。
神がこの事態に気づいてないとは考えにくい。となると、何か情報を伝えれない原因があったのかもしれない。
普通に考えれば、その原因はこのメイドと考えるべきだろう。妨害電波のような、そういうものがあるのだろうか。
ただ、どちらにせよあの場所へ行けば何とかなるだろう。
「呼ぶのは無理だ。呼べるものならもう来ているはずだ。神の居る場所に連れて行くのではだめか?」
「それは…なんて好都合なのかしら。その行為に見合う事をしてあげる」
そういうと、メイドは右手を前に突き出し、何かを呟き始めた。
右手の先に小さな輝きが集まったかと思うと、それはパァッ!っと弾け、まるで霧のようになり、天井へ舞い上がった。
その光は、屋敷を包み込むように広がった。あまりの美しさに見とれてしまうほどに、それは綺麗だった。
やがてその光が強くなり、一瞬閃光のように光ったと思うと、俺が見る世界が真っ白になった。
ただ、メイドの姿だけはハッキリと見える。そのほかの人や景色は、すべて真っ白に変わった。
「この光が収まる頃には、みんな元に戻ってるわ。」
「それじゃぁ聞こう。なんでこんな事をしたんだ」
「それは話せば長くなるけど、それは私も教えようと思ってた事。
非常に高度な話になるから、あなたにも分かるように教えてあげる。」
「あなたは、この世界ってどう思う?
なんでこんなに努力してるのに報われないの?
なんでこんなに辛い思いばかりしないといけないの?
地獄って思ったことは無いかしら。」
妙に饒舌になり、色々と質問される。なにやら、人生哲学のような話題になっている。
今までの冷酷なイメージとは違い、何かを伝えようとする熱い意思がひしひしと伝わってくる。
「確かにある。だけど、それを乗り越えて人は強くなるんじゃないか?
暗いことも多いが、逆にいいこともたくさんあるだろう」
「そう、それは確かにそう。続けて聞くけど、あなたは贅沢を続けて飽きた事はない?
例えば、夏休みを毎日宿題もせずに遊び呆けて、夏休み最後の1日までそれを楽しむとか。
美味しいもの、好きな食べ物を食べたいだけ食べたり、趣味にひたすら没頭して、たまに物足りなさを感じたこととか。」
「(ありすぎて困る…)それはそれで幸せの一つの形じゃないか」
「自分の意思ならね。話は変わるけど、あなたはウロボロスの輪を知ってる?」
「ウロボロスの輪…たしか…」
ヘビが自らの尾を食べ、それが永遠に続くことから、死と再生や不老不死の象徴だったか。
俺が思い出したような顔をしていたのだろう。メイドが話を続ける。
63
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:14:59
10-3
「知ってるようね。そう、無限や永遠、つまり終わりの無い事を象徴するの。
もしも、嫌な事ばかり起こる日を、何日も何日も繰り返すとしたら、あなたはどう思う?」
「そりゃ、地獄だろう。さっきの話と被るけど、それを乗り越えなきゃ強くなれない。」
「なるほど。それじゃぁ次の話。これでおしまいだからついてきて。」
妙にハイスピードな展開に置いていかれそうになる。
普段から多少の文学の心得があるとはいえ、真剣な人生哲学なんて中学校以来だぞ。
「あなたは前世をどう思う?」
「前世って言えば、よくTVとかで「私の前世は超天才だった──。」とかやってるな」
「結論から言うと、その前世はある。私の前世は魔法使いなの。それも、こんな現代じゃない。
剣と魔法、魔王が支配する世界を、いつか勇者様が救って下さる事を夢見て過ごすファンタジーな世界だったわ。」
「………。ふざけてんのか?」
「そんなわけない。あなたの能力だって十分メルヘンな能力じゃない。私が魔法使えたっておかしくないわ」
「…ごもっとも。」
「それじゃ、そろそろ魔法が終わる頃だから、今のうちに屋敷を出ましょうか。約束通り、神に会わせなさい」
「ちょっと待て。なんだ、いきなり人生哲学やっただけじゃないか。俺はまだ説明を…」
「私の話はここまで。十分に情報を与えたはずよ。光は勝手に収まるから、とっととあいつの所へ連れて行きなさい。」
ぼんやりとしているが、ゆっくりと確実に元の色のある世界に戻っていく。
この様子なら、もう大丈夫だろう。俺はメイドと共に、屋敷を後にして自宅の車庫へと向かった。
向かった…というか、あっという間についた。歩き始めて10分も経ってない。
「なんでだ。あんな屋敷家から見えなかったぞ」
「それは、魔法だから」
「ああ、はいはい。魔法ね、魔法。」
「何その態度。気に食わないわね」
「あんたの事許したわけじゃないからな。」
「…別にいいわ。」
成り行きで一緒にいるけれど、俺達をあんな目に合わせた奴となんて一緒に居たいなどとは思わない。
神の所へ行けば、こいつの正体も分かるだろう。多分、こいつの自称魔法も何とかなるだろう。
そしたら、こんな奴なんて子供に戻してあんなことやこんなことをやってやる。
ふふふ…。主導権を握った以上、俺はどこまでも強気になれるぜ。
「とりあえず乗れよ。」
──ばたん。
「………」
──ばたん。
言うまでもなく、勝手に乗ってやがった。まだ車の鍵開けてなかったのに。アバ○ムでも使ったんじゃないのか。
俺はエンジンをかけて車を発進させた。あの場所へは40分もあれば着くだろう。
その間のこの気まずい空気に耐えられるか心配だ。とりあえず、さっきの話の続きでもやろう。
64
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:15:31
10-4
「さっきの続きなんだが」
「何?」
「この世界のこと、この世界は地獄だと思うこと、ウロボロス、前世。たしかこんな話をしてたよな」
「そこまで言えば、もう何がいいたいか分かるんじゃないの。」
そういうと、メイドはプイッと窓の外へ顔を背けてしまった。
あちらも馴れ合うつもりはないらしい。馴れ合わなくてもいいから、分かるように教えてほしいもんだ。
「お前ほど俺は頭はよくないから、よくわからないんだが。」
話を続けようとするも、あちらは全く反応を示してこない。
ぼんやりと運転を続けるハメになる。そうこうしていると、車はあの山へ向かう道へ入っていった。
さっきの話は、あまりに唐突だが頭では整理できてるんだ。
おそらくは、彼女は前世は魔法使いで、今世でも魔法が使える。
で、ウロボロスの話してるってことは、繰り返してるんだろう。
それが、強制されることによる地獄であり、この世界は地獄だ。
と、言いたいんだろう。多分。十分理解できてるじゃないか。ただ認めたくないだけで。
自分もメンヘルな能力持ってるけど、いざ他の人も持ってるというのを聞かされるとな。
あと10分もしないうちに着くので、最後にもう一度確認しようと話かけた。
「ところで、お前はなんで神に会いたいんだ」
「貴方に話す必要はないわ」
顔を窓の外へ向けたままで返事が帰ってくる。やり辛い奴だ。
俺は重たい空気になんとか耐え切り、例の山へとたどり着いた。
たしか車は麓の入り口に止めておいたはずだ。その後、5分ほど歩くんだったな。
「行くぞ」
何を考えてるか読めない、ポーカーフェイスでこちらをじっと見つめてくる。
その表情からは何も読み取れないが、少なくとも熱い視線ではなかった。
「早く行け」という威圧感を持った、冷たい視線なのだと思う。
普段から車に慣れると、少しの山道でさえしんどく感じてしまう。
くしくも、以前と同じ場所あたりで歩きつかれて空気を一杯吸い込んだ。
「すぅーーーーー……」
「はぁーーーーー……」
ふう。たしか、この辺りに祠があって、おばあさんと出会ったんだったな。
そしてその後に美人と出会って、あの人は赤ん坊に戻されるという衝撃的展開になったんだったな。
そうそう、ちょうど今あのわき道に入っていく人みたいな人だったな。
「あの人…まさか」
何のためらいもなく、あのわき道へと消えて行ってしまった。俺は後を追いかけ、わき道へと入っていった。
もしも、もしもだ。ウロボロスの話が関係していたとしたら。あまりにも、同じことが起こってしまっている。
いつのまにか見失ってしまったが、まさかあの人は無限地獄に囚われた人なのだろうか。
心地良いはずの木漏れ日も、今は不安を煽る不気味な輝きを放っている。
──ざわざわざわざわ…
木が、木の葉が風で揺れる。あの時はこの後で神が振ってきて、赤ん坊にされてしまうアレを噴きつけて来たんだったか。
65
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:16:11
10-5
──ばさっ!
あの時のように、そいつは現れた。今度は恐怖心など微塵もないが。
そんなことよりも、この心のもやもやを早くどうにかしてほしかった。
「やっと会えたわね」
「…オ主ハ」
「忘れたわけじゃないわよね。ところで、もうそんな話し方止めたら?」
「………」
「だんまりか。でも、確かにそんなことはどうでも良いわ。」
「………」
「私の用件は一つだけ。私を解放して頂戴」
「………」
なんだか、メイドは白熱しているようだ。口調が早口になっていっている。
「この呪いを早く解いて…。私には無理だったけど、神を名乗るあなたなら…」
神は黙って聞いているかと思えば、ふと口を開く。
「…イイダロウ。覚悟セヨ」
神の前足が高々と振り上げられたかと思うと、勢いよく振り下ろされた。
一瞬だった。何が起こったの判らないぐらいに。ただ、現実としてその足は、メイドの心臓を貫いていた。
「がっ…ふ…。ふふ…そう…これが答えなの。また…私は……」
メイドの目から涙が頬を伝い、地面に落ちる。メイドの頬には、最期に流した涙の後だけが、さっきまで生きていた事を証明するかのように輝いていた。
神の足がゆっくりと引き抜かれた。メイドに外傷は全く無かった。衣服すら破れていない。
「ヤハリ。オ主、一ツ頼マレテクレヌカ。案ズルナ、殺シテナドイナイ」
俺はとっさにメイドの脈を取る。
──トクン、トクン、トクン
脈はある。胸もゆっくりと上下している。よく見ると、ただ眠っているだけだった。
「…何をすればいい」
何故だろうか。不思議と神はメイドを救おうとしている事が俺にはわかった。
「うろぼろすカラ抜ケ出ス事ナド出来ヌ」
「ああ、こいつもそんな話をしていた」
「哀レナ娘。以前、我ガ間違エテ依頼シタ事ヲ覚エテイルカ?」
「覚えている。今は朋美として家にいるあの子のことだな。」
「アレハ、コノ娘ダッタ。魂ノミガ抜ケ出シ、コノめいどノ体ヘト移ッタノダロウ。珍シイコトヨ。
本来ナラバ、前世ノ記憶ヲ取リ戻ス前ニ帰化サセルノダガ、スデに遅カッタ」
この後も、神は色々と説明してくれた。
あのメイドは本来、俺が赤ん坊に戻した女の人として生まれていた。
ただ、いつからか前世の記憶を取り戻したらしい。彼女は前世は高名な魔法使いだったらしい。
故に、この世界の仕組みを理解していたらしい。つまり、死んでもまた新たな生を受けて魂は生き続けるということを。
普通の人はその事に気づかずに一生を終えるのだが、彼女は気づいてしまった。
恐らく、それから逃れる方法を知っているであろう、神に助けてもらいにきた。
今突き刺したのは、魂を抜き取る為で、小さなガラス球のようなものが俺に手渡された。
これを、朋美の胸に当ててほしいと、そう頼まれた。それが、彼女を救う方法だということも教えてくれた。
「頼ンダゾ。我ニハコレグライシカ出来ヌ」
「やれるだけやってみるさ」
俺は来た道をダッシュで戻り、車を飛ばして家に帰る。
家に着くと、すぐに朋美の寝ている部屋へと向かう。
神に言われたとおり、ガラス球の魂を朋美の胸へと押し当てた。すると、ガラス球の魂は朋美の胸へとずぶずぶと埋まっていった。
赤ん坊の朋美の体が少しずつ大きくなっていく。身長も120センチほどに伸び、胸もほんの少しだけ膨らみが生まれている。
小学生ぐらいの体まで大きくなったかと思うと、朋美は目を覚ました。
体の変化に気づき自らの体を見終わると、落胆したようにうつむいた。
66
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:17:14
10-6
「お前…」
「あれ、私…。こんな体になっちゃって…。結局、また地獄のような日々を過ごせということ…?。うっ…ひっく…」
朋美は両手の掌を顔に押し付け、泣き始めてしまった。
「違う。安心していい。その頭脳を封印されるから、前世の事を思い出せなくなるんだって。
だから、何も知らずに一生を過ごせるって。」
「…苦し紛れね。そんな事をして救われると思っているの?」
「あいつはさ。神はさ。こんな事しかしてあげれないのを悔しがってたよ。
普段は神を名乗っているのに、本当に困っている人を助けられないって。
ただ、苦しいと感じて生きていくより、楽しみを見つけて生きて欲しいと。」
「そう…。どうやらその話は本当みたいね。だんだんと頭が悪くなっていくのが判るわ。」
「…最後には、その年相応の知能にまで戻って、俺たちの家族として。朋美として一生を過ごすんだ。」
「ふふ。そうね、朋美は幸せみたいね。感じるの。優しい家族がいるってこと。
私の事を思ってくれるパパがいること。これなら、きっと私も…」
「親父か…。その年で親が死ぬのを体験するのも、結構辛いと思うけどな」
「ううん。パパは今でも、私たちを見守ってくれてるよ。」
「?…??」
「ああ、あたし宿題やらなくちゃ。…あれ、記憶が…もう…。」
「…最後に言っておきたいことがあるの。
あんな酷い事してごめんなさい。八つ当たりして人を子供に戻したりして…。
他のみんなにも、ごめんなさいしといてくれる?」
「…任せておけ。そうだな。今回は反省してるから、こちょこちょの刑で許してやる」
「あはは。ありがとう」
メイド…。いや、朋美はやっと笑顔になってくれた。
酷いことされたけど、誰だって荒れる時はあるよな。罪を憎んで人を憎まずだ。
「私が私じゃなくなっても、私をよろしくね、やさしいお兄ちゃん」
最後にそれだけ言うとふと、朋美の全身の力が抜けた。
その場に崩れるようにして倒れそうになるのを、俺は支えてあげた。
「ああ、もちろんだ。他ならぬかわいい妹の頼みだしな」
「すぅ〜。すぅ〜。」
もう朋美にしか聞こえていないけれど、俺は約束を交わした。
寝ている朋美の顔が、少し笑ったような気がした。
67
:
ウエストリバー
:2008/01/10(木) 00:17:52
10-?
**2階のボロイ部屋**
「う、ううん…」
…何が起こったのか思い出せない。私は今何をしていたんだろう?
たしか、散歩しようってみんなで集まって…どうなったんだっけ?
というか、何故私は全裸なの。風が冷たいわ。
ふと、いつもより胸が重たいことに気づく。胸をみると、いつもの私のサイズじゃなかった。
これは、明らかにEカップはある。もしかして、宇宙人にさらわれて胸を大きくされちゃったとか?
いや、それはないか。自分で言っててなんか悲しくなった。
しかし、体がダルい。なんだろう、この休み明けの気だるい感じに良く似た疲労感は。
眠気覚ましに顔をマッサージしてみたけど、なんだかパサついている。
周りをみると、1LDKぐらいのボロい部屋にいるらしい。
そこにポツンと立て掛けられている鏡を覗き込んだ。なんだか小奇麗な全裸のオバさんがいる。
というか、これ鏡よね?鏡っていうことは、正面に立ったら自分が映るわけで。
で、映っているのがオバさん?自分がたってて、オバさんが立ってる?
ということは、私はオバさん?寝ている間に何が…?
部屋の隅っこに、誰か裸で寝ている。なんか見覚えあるわね…
近寄ってみてみると、そこには志保と弘樹がいた。もちろん、二人とも一糸まとわぬ堂々とした全裸で。
私も裸ってことは、もしかして…もしかする?
(酷いことしてごめんなさい…)
「え?」
頭の中にというか、記憶の中にというか…。なんだろう、空耳のようなものが聞こえた。
すると、私の胸はどんどん小さくなっていくではないか。あっという間に胸がしぼんでしまった。
またいつものBカップかぁ…。なんて考えてると、体がすごく軽くなった。
鏡を見ると、いつもの私がいた。ピッチピチの私。うん、なんかしっくりくる。
「とりあえず、寝よう。多分これは夢」
そう素直に思える自分が誇らしかった。きっと起きたらパジャマ着て、自分の部屋で目を覚ますわ。
「おやすみなさい〜。」
(「…前向キナ娘ダナ。…確カニ「めっせぇじ」ハ伝エタカラナ」)
68
:
ウエストリバー
:2009/03/29(日) 20:30:36
まだこのスレッド(お話)を見てくれている人が居るかどうかはわからない上
今更とは思いますが、個人的にけじめがついてなかったと思うので書き込みをしておきます。
最近は小説を書く、続ける上でのマンネリや表現技法の偏り、ストーリーのブレなどが気になってしまい
書いては削除、書いては削除を繰り返している現状です。
当方の小説が好きだと思ってくれている方が居た事は非常に感激です。
今も変わらずこのジャンルは好きですので、満足がいくものが書ければ続きを書くとは思います。
ですがまだまだ忙しい日々が続く為、誠に勝手ながら1年以上も音沙汰なしでしたが、
「執筆の休止」を遅ればせながら宣言いたします。
現在も活動を続けている方や、新しく小説を書いている作家様。
このジャンルが好きな皆さんで、地道でも盛り上がっていくのを願っております。
私事ですのでsageでの書き込みとなりますが、お許しください。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板