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女の子です。

312外伝・テレンス物語:2017/02/11(土) 00:22:44 ID:???
その少年は、物心ついた時から人として大切な何かに欠けていた。

後の黒騎士テレンス。
彼が生まれた地は鉱夫が集い発展した鉱山の町・ボンストン。
鉱石は当時から様々な需要があり買い手も多かった為、潤沢な経済のもと瞬く間に発展していった。
そして、そんな町を領地に持つ"バレンタイン王国"も資源を武器に国力を増大させていった。

当時、少年テレンスはまだ4つ歳を数えて間もなかった。ある日少年は、突然死の淵に立たされた。
事のきっかけは、ある時バレンタイン王国王子サーベインの誘拐事件だった。
王子解放の条件は、以前から話のあった隣国カサドールとの和平協定に同意すること。
聞こえは良いが、その中で問題となっていた内容として、"両国は資源を自由に共有することが出来る。"という条文であった。
明らかにバレンタイン王国の資源が狙いであり、仮に資源が隣国に流出すれば、バレンタイン王国の衰退を意味していた。

こうした背景から、バレンタイン王国とカサドールの対立は悪化し、ついには戦闘状態となる。
……のちに判明したのは、王子誘拐の実行犯はカサドールとは何の関連も無い、ただの山賊であったこと。
真っ当な職を欲していた山賊達は戦争をけしかければ、バレンタイン王国が"真っ当ではない"人間達からも兵士を募集するであろう。そして、結果を残せばクズが一転し英雄になれる。という狙いで王子誘拐を計画し、カサドールを名乗って犯行に至ったのである。

話を少年テレンスに戻す。
彼はこの時、真っ当な職を求める山賊達とは考えを異にする山賊の襲撃を受けていた。
父は国を守るためと出兵しており不在、母は嬲り殺しにされ、少年もまたナイフで一突きだったが、治療の末半年後、少年は奇跡的に意識を取り戻した。

が、ショックにより名前以外の一切の記憶を失っていた。
親を持たず、自分が何者かも知らない少年は流れに流れ、今の帝国の地へやってきた。

スラム街のボロに紛れ、何とか死なない程度の暮らしを何年か続けた後、彼は1人の騎士に出会った。
その騎士は、言葉も忘れたテレンス少年を心から憐れみ、養子に迎えつつ、彼が自立出来るよう剣術を教えた。
才能があったのか飲み込みが早く、また学校にも通わせてもらえるようになり、学問においても頭角を現すようになった。

唯一の欠点といえば、人前で感情を顕にすることがないこと。騎士にはその原因はわからなかったが、それは大きな誤解であったことを知る。

ある夜、騎士は深夜だというのに独り言を発するテレンスに気付く。
最初は寝言かと思ったが、少年の部屋から聞こえる声は寝言にしてはハッキリしている。
耳を済ますと、何者かと話しているようだった。

「誰だッ!!」

人売りが誘拐にでもやってきたかと思い、大声で怒鳴りながらテレンス少年の部屋に入るが、テレンス以外に人影がない。
不思議に思いテレンス少年に視線を向けると、彼は鏡の自分に向かって話しかけていた。
笑っているが、瞳の奥に深い闇を宿したテレンス少年の表情に、騎士は底知れぬ恐怖を覚えた。


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