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没作品供養スレ

4第二の、或いは最悪の再会(別ver.)  ◆F2LGKiIMTM:2006/07/05(水) 02:44:51
「ヒロコというのか。あの女は」
少女の言葉に、また心拍数が跳ね上がる。
あの女、と言った。二人を追っていたのは女なのだ。
「……君達を追ってた奴と同じかどうかは、判らないが。通りを反対側に歩いて行こうとしてた」
ヒロコのことを信じていない訳ではない。彼女は無駄に命を奪うことを好むような性格ではなかった。
それでも、確かめるのが恐ろしかった。
「金髪で……肩くらいまでの、ソバージュの。レザーの服を着た……」
「間違いない。そいつだ」
冷徹な宣告を下したのは、ザ・ヒーローだった。
「まだ一キロ以内に入っていないなら、すぐ離れれば逃げ切れるかもしれない。
ここを離れよう。気付かれる恐れがあるから、双眼鏡で見るのももう駄目だ」
「ちょ、ちょっと待てよ」
頭の中が真っ白になる。目の前の人がザ・ヒーローだということも、今は隠れているところだということも忘れかけていた。
思わず上げた制止の声に、ザ・ヒーローが慌てて口の前に指を一本立てる。
はっとして、まくし立てそうになった言葉を飲み込んだ。
「……信じられない気持ちは解る。知り合いだったんだろう?」
答える言葉も見付からず、子供のようにただ頷いた。
ベスが横に歩み寄って、手を握ってくれる。その手の温もりと込められた力強さが、少し理性を取り戻させてくれた。
「彼女は敬虔なテンプルナイトです」
ベスが言うと、少女が僅かに眉を顰めた。
その変化には気付かなかったらしく、ベスはそのまま言葉を続ける。
「ただ、センターからの脱走の咎で記憶の洗浄と再教育を受けていました。その影響で、情緒が不安定になっていた可能性も」
「え……?」
また、思考が停止する。
(――記憶の洗浄? 再教育?)
確かに彼女は無断でセンターを抜け出し、脱走者として拘束されていた。それから彼女がどうなったかは聞かされていなかった。
しかし事情もあったようだし、彼女も素直に従っていたから、それほど重い罪にはならないのだろうと思っていた。
(それって……洗脳じゃないか)
ベスがあまりに淡々と語る事実に、眩暈がしそうになってくる。
「ふん。センターのやりそうなことだ」
吐き捨てるように少女が言った。見るからに違う時代の人間らしい少女がセンターのことを知っているのは意外だったが、
それよりも、自分があまりに何も知らなかったか――知らされずにいたかを悟ってしまった衝撃が今は勝っていた。
「……ごめんなさい、アレフ。あなたが知ったら悲しむと思っていたの」
ベスが悲しげに目を伏せる。その手は変わらず温かい。
「しかし、あの女が私達を追ってくる理由は恐らく違う」
少女の言葉に、ベスが意外そうに顔を挙げる。ザ・ヒーローは痛ましげな顔をして、唇を噛み締めていた。
「あの女は、もう死んでいる。何者かにネクロマの術で操られているんだ」
「死ん……で?」
ヒロコが二人を襲ったと、そして彼女がセンターで洗脳を受けていたのだと聞いて、これ以上の衝撃はないと思っていた。
しかしそれから数分も経っていない今、それを遥かに上回る衝撃的な言葉が、少女の口から語られたのだ。


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