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没作品供養スレ

17 ◆MW38f4t6VE:2006/07/23(日) 02:54:12
三人娘、「歩き出せ!」に入れようとして、断念したシーンです。
タヱは持ってるアイテム的に、特に細かく描写したくなるキャラなのですが、
タヱだけクローズアップすると主人公のようになってしまうので、カットしました…。

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きゃいきゃいと言い合う二人に笑いながら、タヱはザックの中身を整理した。
たくさんの、ここにはいない誰かの大切なもの。
返したとき、どんな顔をするだろう。喜んでくれるだろうか。
タヱはまだ見ぬ誰かを想像して、胸を熱くした。
そして、自分も映った、セピア色の写真をもう一度手に取る。
たった数時間前にはそこにいたはずの、懐かしい世界。
用もないのに足を運んでは、珈琲をねだったあの事務所が、写真には写っている。
机の後ろ、一番左に、伽耶ちゃん。
可愛いなあ。気が弱い彼女がどうしているか、とても気にかかる。いい人と巡り合っているように、今は祈るしかない。
その隣、真ん中に、ライドウ君。
口がへの字じゃないの…美男子が台無しね。今度はこそ笑顔で映ってもらおう。舞耶さんのすごいカメラで撮ってもらうのもいいかもしれない。
ライドウ君も、どうか幸運な巡り会わせをしていますように…
一番右には、私が映っている。
喋った瞬間にシャッターを押されちゃったから、間抜けに口を開いている。恥ずかしいなあ。やっぱり撮りなおし!
ちょうど私の前には、机に座ったゴウトちゃん。
ゴウトちゃんも、ここにいるのだろうか。名簿に名前がなかったけれど、いつもライドウ君と一緒にいるから、巻き込まれているかもしれないな…。
そして真ん中に、探偵さん。
…殺されても死ななさそうな顔をしてる。ふてぶてしくて、いつも余裕ぶってて。
けれど、何も言わずに突然どこかに行ってしまう人だから…今どうしているんだろう。胸が騒ぐ。
どうか、皆、無事でいて。そして、皆で帰りたい――。
タヱは写真を抱きしめ、それからそっと胸にしまった。
お守りの代わりに、いつも持っていたい。
もしザックを何かのはずみでなくしても、これさえ持っていれば、くじけない気がした。

大丈夫、私は一人じゃない。
タヱは確かめるように、小さく声に出して呟く。

「何か言った、タヱちゃん?」
「ううん、何でもないわ」
少し先を行くネミッサに追いつき、タヱは毅然と顔を上げて歩き出した。


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