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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】
95
:
煌月の鎮魂歌6 7/29
:2015/08/27(木) 00:33:10
ワインカラーのベルベットにふんだんにフリルとレースをあしらったドレス、数える
のがいやになるほどのボタンとリボンと何枚ものペティコート、ぴかぴかの赤い革の
ブーツ。手にはいっぱしの貴婦人らしく、日除けの役にはたちそうにないレースと絹の
きゃしゃなパラソル。
肩からはドレスとお揃いのちっぽけなポシェット。こちらもふんだんなレースと
ビーズで飾られ、肩紐は金の鎖と赤い革が交互に編みあげられた凝った細工、細い手首
には青いサファイアの輝きを放つ、シンプルなブレスレットがきらめきを放つ。
肩の上には見たことのないインコほどの大きさの赤い小鳥。火のひとひらが羽に
なったような真紅の胸をつくろい、足もとには、白に黒の縞のはいっためずらしい柄の
子猫が金色の目でこちらを見つめている。どれもこれもが凝っていて、うんざりする
ほど愛らしい。
「ちょっと。人が話してるのに、返事しなさいよ」
反応するほどの相手ではないと判断して目を閉じかけたとたん、ぐいとパラソルで足
をつつかれた。
さすがにむかっ腹をたてて身を起こす。少女は気後れした風もなくまじまじと
ユリウスを見つめ、「ふうん」と鼻を鳴らして肩をすくめた。
「まあ悪くはないわね。とりあえずはだけど。アルカードが直接教えてるってことは、
なんとかものになりそうな素質はあるってことだし。ベルモンドの力は確かにある
みたいだから、あとは努力と、十分な精神力がそろってるかどうかってとこかしら」
「ひっぱたかれたいのか、クソガキ」
ユリウスはうなった。
この一週間ほど、アルカードはベルモンド家を離れている。
何か理解できない理由で、世界の別のところに行く用事ができたらしい。出発の前日
に淡々とそのことを告げてから、自分の留守の間も訓練は続くと付け加え、山のような
課題図書と古風な字体でつづられた手製の問題集を押してよこした。さらに帰ったら
きちんと課題をこなしたかどうか口頭試験をすると宣言した。ユリウスはたっぷりと
文句と悪罵を並べたが、もちろんアルカードは聞く耳を持たなかった。
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