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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】
60
:
煌月の鎮魂歌4 10/16
:2015/05/25(月) 01:10:46
「ユリウス」
いつのまにか、本当に眠っていたらしかった。
軽く肩に手をおかれて、彼はまさに驚いた蛇のようにとびあがった。反射的に
身構え、いつも腰につけていたはずのナイフと鞭を手探りする。
「到着した」
相手は平然としていた。ユリウスが目を覚ましたことを確かめると体を起こし、
席から立つようにうながした。
「ここから屋敷まではまた車だ。半時間ほどでつく。もう連絡は行っている。お前の
来るのを待っているはずだ」
「へえ、そいつはありがたいな」
声がかすれる。舌が乾いて口蓋に貼りついているようだ。二、三度咳払いして、
ユリウスはなんとか嘲笑するような口調を保った。
「歓迎パーティでもしてくれるってのかい? なんだったらもっと芸をしてやるぜ。
おまわりか? お手か? ちんちんか? あんたも手伝ってくれるんだろうな」
アルカードが聞いたようすはなかった。彼はすでに席を離れ、おろされたタラップの
方へラウンジの出口をくぐっていた。呪いの言葉を吐いて、ユリウスは後を追った。
深い森林の中にまっすぐ延びた滑走路に、飛行機は停止していた。小さな管制施設が
隅にある以外は、建物らしきものはなにも見えない。あたりは静かで、鳥の声さえ
聞こえなかった。タラップを降りたすぐ先に、ニューヨークを出る時に乗ったリムジン
よりほんの少し小型なだけの高級車が止まり、ドアを開けて乗客を待っている。
「おいおい、なんにもねえじゃねえか。ベルモンドの本家に俺をつれてくんじゃなかっ
たのかよ」
「ここはすでにベルモンド家の土地だ」
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