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【1999年】煌月の鎮魂歌【ユリウス×アルカード】

202煌月の鎮魂歌9後半 17/24:2016/07/31(日) 20:26:27
 また長い沈黙があった。ぽつりと、アルカードが呟いた。
「何をだ?」
「お前の魂」
 アルカードはふいにまともにユリウスを見つめた。
 澄みきった蒼氷の双眸に自分が映るのを見て、ユリウスは自分でも思っていなかった
ほど、はげしく動揺した。
「お前の、真の精神の姿」
 アルカードは言った。
「私は長く生きてきた。人の知らないもの、けっして知ることのないものも、多く見て
きた。お前は鞭にふさわしいものだ、ユリウス。聖鞭はお前を受け入れる」
「ずいぶん自信がありそうだな」
 動揺を抑えてユリウスは吐き捨てた。
「そいつは事実じゃなく、願望ってやつじゃないのかい。俺がダメになればもう鞭の
後継者はいなくなる。あの日本人は言ってたぜ、そうなりゃ世界は終わりだってな。
まあその時には俺は死んでるか狂ってるかだから関係もないだろうが、あんたたちにと
っちゃ、俺が試練とやらに合格して暮れなきゃ困るってわけだ。はたしてそううまく
いくもんかね」
「私はお前を訓練し、お前を読み、お前を知った」
 アルカードは動じなかった。
「私は願望と事実の違いを理解している。私はお前が鞭にふさわしい者だと確信した
からこそこの場に迎え入れたのだ。ベルモンドの血は資格のひとつに過ぎない。聖鞭は
資格者の魂を読む。私は理解する、お前を──」
「──あんたに何がわかる!」
 ついに耐えきれなくなって、ユリウスは叫んだ。
 アルカードがそれとわかるほどぴくりと身をすくませる。
 ユリウスは彼の顔に目を据えた。美しい、美しい、遠い遠い月の顔。


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