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TSFのSS「白と黒の羽」※再掲、修正・加筆

1luci★:2015/09/05(土) 00:56:34 ID:???0
ふと顔を上げると、ゆっくりと、たゆたうように落ちてくるそれと目が合っていた。

青。白いそれを包む空より青い瞳に、俺は吸い込まれそうになる予感が心に過ぎった。しかしその神秘的な青い視線を、俺は外すことができなかった。

やぱい、と思った時には既に遅かったのか、俺はそれが落ち行く先を目指して走り出していた。

手を翳し、白い羽に包まれた身体を落とさないよう、それを受けた。手には羽毛のくすぐったさと、僅かな重さ。それと遭遇した奇跡というか、運命というか、複雑な心境が交錯し、俺の鼓動が速く、激しくなっていた。

きみはだれ。 なんて陳腐な言葉だろう。見たままの存在なら、いや、たとえそうでは無かったとしても、俺は相当運がいい。

どう見える?  反対に問われ俺は動揺を隠せなかった。羽毛に包まれた、いや、白い羽根に包まれた裸体が、否応なく目に飛び込んできた。

て天使?  いるわけない、と思っても目の前の現実は消えたりしない。半裸のそれを道ばたで抱き留めている俺の姿は、想像すると変だった。けれど道行く人々はそんな俺に一切構わず、目も向けず歩き去っていった。

なら、そういうものなのよ。人は見たいモノを見る動物だから。 青い目が瞬きもせず、その表情に笑みを浮かべながら、解らないことを言った。

わたしと目があったのはあなただけ。真に何かを求めていないと見つけられない筈。 俺は何も求めていないのに、なんで見つけてしまったのだろう。確かに一人になりたいとは思っていたけれど。……違う。自分に嫌気がさしていただけだ。

抱き留めていた腕をゆっくりと下げ、天使のような存在を地に下ろした。

ありがと。……本当言うと、わたしの目的とも合致していないと見えないんだけどね。 白い手が俺の胸元に差し出され、掌が心臓の真上に翳された。

あ、あのさ。

そう、それが望みなら叶えてあげる。 それは、俺が答える間もなく羽根を広げ俺を包んでいった。俺の背後で羽根が閉じられると、羽根自体が俺の身体をそれに引き寄せていた。

2luci★:2015/09/05(土) 01:00:07 ID:???0
うわっ。 きゅっと包まれた俺の身体。くすぐったさを感じながらも俺の心は覗き込む青い目にどぎまぎしていた。次第に密着していく半裸の身体に興奮を覚えていく自分がいた。

あら。気にしなくてもいいのに。自然な事でしょう。 下を見ていた視線を上げ、くすっと笑うそれ。俺は頬が火照るのを感じつつ、その心地よさに身を委ね始めていた。

どこかに連れていってくれるのか? それとも匿ってくれるっていうのか?  何も捻らず、感じたままを話していた。

連れていく? 匿う? あなたに相応しい結末を用意してるから、黙って。 それは、羽根で覆った繭の中で静かに、しかし命令口調で言った。

俺に相応しい? 俺は一人になりたいだけだ。

言葉を紡ごうとした瞬間、外していた視線を絡めた。

赤。血のように、煉獄の炎のように赤い瞳が俺を射すくめた。さっきまでは晴れ渡るように青かったはず。その視線は俺から反論する意思を奪っていった。

お前、なんなんだ?!  動揺は隠せず、声が震えた。光が透けていた羽根の繭は、それが羽根であった事すら判らないくらいどす黒く変化していた。

何に見える?  あなたの不安が視覚を変化させたのかしら。片方の口の端を器用に持ち上げ口だけで笑うそれ。けれど見つめる瞳には笑みなど湛えていなかった。

藻掻く。さっきまで張りつめていた股間が今はそれがウソのように萎びていた。瞬きを一度もせずに見つめる赤い瞳に、その恐怖に俺は呑まれていった。

人ならざる者に抱きすくめられ、動揺は最高潮に達していた。胸の鼓動はこれまで以上に速まり、背筋を冷たい汗が流れていった。

ふふ。これからあなたは一人ぼっちになれるのよ。この、あなたのいた場所で。誰もあなただと思う事なんてなく。親も姉弟も恋人も友達も、誰一人あなただと気づかない。自分がイヤで一人になりたいと思っていたあなたに力を貸してあげる。二度と元に戻れない、孤独故の天国と地獄を教えてあげる。

冷静に聞けばゾッとする事を、明るい声色で語るそれが、俺の背中に回した手に力を込めた。

3luci★:2015/09/05(土) 01:05:11 ID:???0
そんなこと望んでいない。真に受けるなんてどうかしてる。 逃げようとすればする程、それの腕がきつく締まった。

そして、仲間を増やす手伝いをするの。いいわね。 遠ざかる声は耳に漸く届く程の音だった。けれど、やけに耳に残る言葉。意識を失う前にみたもの、それは人ならざる者の身体が俺の中に入っていく、そんな非現実的な場面。俺が俺であった時最後に目にしたもの、だった。

……ん、なんだよ? 叩くなよ……俺は寝て……。ぼーっとした頭はうまく回っていなかった。薄目を開けると見覚えのないビルの一室。辺りは薄暮で、周囲には男が数人、俺を覗き込む。

次第にはっきりしてくる意識と、胸のあたりを触られている感触。

え? え? なんだ?  目の前の男たちの腕が俺の身体に延びていた。男に触られているという気持ち悪さが沸き上がってきた。しかし同時にそれが心地よいことだ、そんな心理も心の奥底に生じて来た。

男達は俺が目覚めたと知り一瞬その動きが止まった。その隙をつき俺は身体を捻って集団から逃れようとした。けれど直ぐさま俯せに押さえ付けられてしまった。

こんな所で寝てた? 裸で? 違う、俺は……そう、あの天使みたいなヤツと。身体に入り込む場面がまざまざと俺の脳裏に浮かび上がってきた。そんな事を考えていると、男達の一人が口を塞げと言った。背後から手を回され俺の口が塞がれた。嫌な、予感。

男が一人俺の前に顔を出した。見知った顔。途中で道は違ってしまったけれど、俺の弟。この辺で知らない者はいない、ワル。その弟がじっと俺の目を見つめながら、そうこうを崩した。

あんたみたいなのが裸でいたら誰だってやりたくなるだろ。こりゃ俺達が悪いか、露出させたあんたが悪いか。考えなくてもわかるだろ。

弟の名前。言おうとしても口を塞がれ明確な音にならない。どうして俺が判らないのか。

宵闇の暗さとホコリっぽい室内がいやにリアルに感じられ、恐怖を煽り立て俺は身震いしていた。男が男に何をしようというのか。弟はワルであっても男に興味があったなんて俺は知らなかった。しかも実の兄に。

男達の手が俺の四肢と身体を持ち上げ運んでいった。ほんの少し移動し、俺の目の前に汚いソファーベッド。所々に染みがつきすえた匂いが鼻腔に広がっていった。

4luci★:2015/09/05(土) 01:18:56 ID:???0
軽い金属の触れる音した方向に目を移す。その先に下半身をさらけ出した弟の姿。

足、開かせろ。 そんな言葉は女に遣えばいい。俺に使う必要はない。夢中で身体を暴れさせるけれど腕も足も掴まれ動けなかった。そして、間抜けにも、その時初めて何かが違うことに気づく。

暴れる俺の頬には汗で付いた長い髪があった。近づく弟の姿が正面に見えたとき、胸の膨らみが目に入る。これは一体なんだっていうんだ?

頭の中で言葉のイメージが踊り狂い、的確な判断ができなくなっていた。俺の踊る視線は、弟が自身のペニスに唾液を塗っている場面も認識できていなかった。

灼熱。そんな言葉が瞬間浮かび上がり、消えた。何が起こったのか想像も難くない筈なのに、俺の身に起きる筈のない出来事を想像することすらできなかった。

やめろ。 そう叫んでも弟には届かなかった。身を引き裂くという形容詞はこんなとき使うんだと、初めて知った。これまで経験の無い痛みが全身を貫く。

力を振り絞ってもびくともしない男たちの力。そして覗き込む情欲にまみれた、顔と目。心の底から湧き出る恐怖と悔しさに、身体が震える。涙がこぼれ落ち頬を濡らす。それが髪に絡み益々頬に髪がついた。

おお、すげぇ締まるっ。 聞きたくない言葉。それが次から次へと浴びせかけられる。痛みの渦の中で、俺は俺の身体があの人外のモノと等しくなった事を受け容れざるを得なかった。

乾いた音と、弟の息遣いと、男達の嚥下の音。そして俺の口元以上には出ない叫び。ガランとした室内にそれが響いていた。俺に腰を打ち付ける弟の姿など視たくもなく、まして喜悦の表情で口をだらしなく開いてる顔など反吐が出そうだった。涙に濡れる睫毛を閉じ今だけでも耐えようとした。

おら、見て見ろよ。 髪を乱暴に掴まれ下を向かされ、俺の身体にしっかりと突き刺さった部分を見るように促された。

鮮血。それが肉棒を赤く染め、ぬらぬらと光っていた。抽送が繰り返されると痛みと同時に心の底に何かが沸き上がっていた。否定したくても否定できない、それに戸惑いを覚えた。

男の身体。生理現象。それは良く判っていた。裂けている股間も、限界まで開かれた間接も痛かった。もう終わって欲しいと願っていた。やがて、弟の身体がブルっと震える。

身体の中で脈動を繰り返すペニス。呻きながら恍惚の表情を見せる弟。注ぎ込まれた精。全てが夢なんだと思いたかった。緊張していた身体が脱力していく。弟が俺に対して何事か言ったけれど、俺の耳は聞くことを拒否していた。

5luci★:2015/09/05(土) 01:25:30 ID:???0
あの、似非天使に遭ったことを、天使では無くても運がいいと思った自分に腹が立ち、俺を犯して悦に入っている弟が憎らしい。そして、自分を見直そうと一人になろうと思ったことを悔いていた。

よかったぞ。 耳元で囁く弟の声に我にかえった俺は、涙で歪む視界に映る弟を睨んだ。そこに俺を拘束している男達が声をあげた。弟だけで済むと思っていた俺が馬鹿だった。肉欲に駆られた男達がまだ控えていたのに。俺の解放の条件は、この集団が全て肉の満足を得ること。

乳房を握られ、乳首を舌先で刺激され、俺は背筋にこれまでと違う信号が流れていくのを感じていた。ざりっと舐められるとゾクゾクした。けれど、それも肉塊が俺の身体を蹂躙し始めると飛びさって行った。

入れ替わり立ち替わり、何度も何度も俺の中に欲望を吐き出していく男達を見て、同類の筈の俺はそれがとても汚らしい行為に思えていた。俺の新しい器官は、次第に男達の抜き差しに耐えられなくなり悲鳴を上げていた。耐えられない程の激痛は、やがて痺れに転じた。二周目の男が腰を振り始めた時、俺の心は意識を閉ざす選択をしていた。

寒い。 そう思ったからか、突然目が覚めていた。だらしなく開かれた下肢が見え、その手前には仰向けにも関わらず、形の崩れない乳房があった。そうか、夢じゃなかったんだ。俺は……。

股関節を無理に長時間開いていたからか、腕を使わないと閉じられなかった。起きあがろうと力を込めると、どろりとした白濁の液体が体内から流れ出し閉口した。

帰らなくちゃ。 当たり前の言葉が浮かび口から出た。けれど、どこに? まして全裸ではビルからすら出られない。ふと、弟とその仲間がいない事に気づく。どういう訳か弟たちが来ていた筈の服が方々に散らばっていた。

その服がごそごそと動きだし、俺は冷水を浴びせられたように鳥肌が立っていた。視線を外したくても外せない。事の成り行きをじっと見据えていた。

闇の中から二つの光が放たれ、それが明滅しながら弟の服の首回りから出てきた。不貞不貞しい面構えの三毛猫。俺の顔を見つめ、視線を俺の後ろへと転じて総毛立った。暫くそうしながら、三毛猫は諦めたように威嚇を止め俺の膝元へやって来た。他の服からもコウモリやトカゲ、蜘蛛や名も知らない節足動物が現れた。

こいつら。まさか。信じられない事が次から次へと起こって、不可思議なことに麻痺してしまっていたのかも知れない。俺は立ち上がり迷わず弟の服を着始めた。正直言って自分を犯したヤツの服など着たく無かった。けれど、ここで丸裸でいても仕方ないのも事実だった。輪姦した男達から比べれば、まだ弟の服がましだ。

6luci★:2015/09/05(土) 01:30:57 ID:???0
下着を付けずに着たせいか、あちこち擦れて痛かった。閉ざされた部屋の扉まで行き開けようとしたけれど、後ろからぞろぞろと三毛猫や他の生物どもがついてくる。俺の予想が正しいなら、こいつらはさっきの男達の筈。野放しにしたくなかった。この場所で野垂れ死ねばいい。

憎悪に燃え滾った心。俺以外を外に出さないように、蹴りつけながら扉を開け、外に出た。ビルの外へ出ようと暗い廊下を歩き始めた俺の耳に、扉を引っ掻く音と三毛猫の鳴き声。在りし日の、俺を追いかけていた頃の弟の姿が脳裏に浮かび俺の足を止めた。

扉を開けると、コウモリもトカゲも、全てが一斉に外へ出て闇の中に吸い込まれていった。ただ、三毛猫だけが扉の前で座って待っている。

……おいで。 自分でも驚く程可愛らしい声が室内に響く。猫は腰を下ろした俺の胸元に飛び込んでいた。

あの、天使のようなモノは、孤独を俺にくれると言ったけれど、そうはならなかったようだ。俺はこれからの生活をなるべく考えないように、痛みで歩きづらい身体を揺らしながら、ビルから出ていった。

アパートまでの道は街灯や自販機の明かりが灯り、所々を照らしていた。誰にも会わなかったにも関わらず、たとえ誰かに会ったとしても俺だと気づかれる筈もないのに、こそこそと隠れるように早足で歩いた。

部屋の前に着き、はたと気づいた。アパートの鍵は俺の服に入っていたんだ。無駄と判っていてもノブを回すと、軽い音が聞こえドアは開いた。訝しみながら漆黒の闇が出迎える室内に入った。しんと静まり返った室内には特に人の気配も無かった。抱いていた猫が胸から飛び降りた。

室内の明かりを点ける。目に映る見慣れた部屋。机の下から猫が顔を覗かせていた。鍵を閉めて出ていったのに、どうして開いたんだろう。疑問を抱きながらも、俺は弟の服を脱ぎユニットバスの扉を開いた。

あの似非天使が目の前にいる、そんな錯覚が生じて息苦しくなってくる。しかしそれは鏡に映った自分の姿。ビルの中でされた事も、人外のモノがいた事も事実以上でも以下でも無かった。頭では理解していたつもりだったのに、自分という存在が消え、違うモノになっていることに鏡の中の女は嗚咽を漏らし泣き始めていた。

あっち行け!  猫が一声鳴いて足下に擦り寄っていたけれど、それを蹴りつけ浴室から追い出した。そのまま足下がぐらぐらと揺れる気がしながら、床に座り込み一頻り泣いた。どうして俺が? なんで? 様々な感情と疑問が渦巻き、心から離れなかった。

7luci★:2015/09/05(土) 01:38:53 ID:???0
それでも男達の唾液の匂いが俺をゆっくりと動かした。立ち上がり鏡を見ると泣きはらした目で見つめる似非天使の姿を再び認めた。じっと見ていると、しかし、似非天使と目の前の女は細部が違う。

金に近い琥珀色の瞳が俺を射抜く。青だの赤だのに変化していた瞳とは違うのは判っていても、似非天使に見られている気分になって急いでシャワーを浴び始めた。

女は知っているけれど、体内の残磋をどうやって洗い流せばいいのか判らず、徐に股間にシャワーを当てた。思わず叫びそうになる程浸みて痛みが走った。

ひりつく痛み。ぬるつく粘液。それが身体から流れ出していった。全部出たのか判らない。でもそれ以上のことを考えたくなかった。

頭上から降り注ぐ熱いシャワー。恐怖も悔しさも、身体に染みついたような唾液も流せるんだろうか。身体を包み込む繭のようなソープの泡。洗い流せば新しい俺になるんだろうか。何もかも元に戻るんだろうか。

泡の中から現れたのは、やはり女の身体。その事実がイヤで早々にユニットバスから飛び出した。タオルで身体を拭くと否応なく柔らかな肉体を触ることになった。豊かな胸にくびれたウェスト、張った腰。何もかも俺じゃない。長い髪が濡れたせいか頭が重くなって肩が凝りそうだった。

猫の鳴き声。それが俺の耳に絶え間なく入り込んでくる。それを無視してTシャツとパンツ、スウェットを履いた。いつもの俺の寝間着。乳首がちょこっと出て、スウェットの股間はつるんとして、女であることを強調していた。ガラスに写った姿に顔を顰めた時、ドアをノックする音が聞こえた。

●●さん、ちょっと、いるんでしょ。開けてちょうだい。 大家の声に驚いたのか、三毛猫は机の下に引きこもっていた。俺は今の姿のままで出ることに躊躇したが、ライトが点いているのに居留守も使えなかった。ノックの音は大きくなり、ついに俺はドアを開けた。

●●さんは? 猫の声がするって言われたのよ。ここにいるでしょ。すぐに捨てて頂戴。イヤなら出ていってもらいます。 矢継ぎ早に口から飛び出る言葉に、俺は口を挟む間もなかった。

それから、あんた誰? ここは●●さんの部屋でしょ?  俺が本人です、そう言えたら楽になるんだろうか。俺が、間借りしていると言った途端、●●さんは真面目そうだったのに見損なっただの、住んでるならもう一人分家賃追加だの、帰って来たら言いたい事を言って去っていった。

8luci★:2015/09/05(土) 01:44:07 ID:???0
●●いるか?  いつの間にか寝入っていたのか、男の声で覚醒した。低く深い声。決して大声ではないのに辺りに、俺の心に響く声。一緒に育ったと言っても過言ではない、旧友。

ああ、ちょっと待って。今開けるから。 暗い部屋の中を器用に歩き玄関の扉に手を掛けた。いつも沈着冷静な旧友の、驚愕の表情というのを見たのはこれが初めてだったかも知れない。

あれ? ●●の部屋だよな。 寝ぼけていたのか、今の状況を忘れ開けてしまった自分の失態を呪った。

ええっと、取りあえず入って。 取り繕う事などできず、かといっていつまでも玄関先で佇む訳にもいかず、俺は旧友を招き入れた。三毛猫が不機嫌そうな声を上げた。

●●も隅に置けないな。いつの間にか彼女ができてたんだ。 普通に考えれば、俺が同じように旧友の部屋を尋ねて女が出てくれば同様に思うことを彼は言った。

深い茶色の瞳が、俺の顔を、そしてだぼだぼのシャツから垣間見える胸元を行き来していた。こいつも男なんだと、改めて感心していたが、いつ帰ってくるのか聞かれ、俺は正直に自身の身に降りかかった件を話す事にした。

じっと見つめながら話を聞く旧友。その真剣な眼差しと、室内に響く俺の高い声が、俺には妙に違和感を感じた。いつもなら俺の声を聞いているこいつが、俺ではあっても俺では無い姿と声を見て聞いている。真剣に。子どもっぽいけれど、俺は今の俺自身に少し嫉妬していた。

そうか、キミが、●●なのか――。 解ってくれた、こいつならきっと解ってくれると思っていた。それが嬉しくて気づいたら旧友に抱きついていた。下着など着けていない、シャツを押し上げる胸の先はちょっと尖って旧友の胸に擦り付けてしまっていた。顔を胸に埋めてしまったせいで、旧友の表情の変化に気づかなかった。

お前だったら解ってくれると思ってたよ。俺は……。 ?! いきなり突き飛ばされた俺は、普段乱暴などしない旧友の顔を見上げていた。

肩を掴まれ、床に押し倒され、のし掛かりながら何事か言っていたけれど、俺は突然の事に何がなにやら解らなかった。

血走った目。欲情に火照った顔。見たこともない表情は、俺を恐怖させていた。

次に行われること。それは弟達にされたことと同じ筈。腕で押し返そうとしてもビクともしない旧友の肉体は、俺の華奢な身体を引き寄せていった。


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