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試験投下スレッド

605最胸襲来  ◆MXjjRBLcoQ:2005/10/13(木) 18:47:59 ID:pBSSTsig
 インスタントコーヒーをかき混ぜながら、クリーオウは窓の外へと視線を向けた。
 雨は一向に止む気配がない。
 水滴に隠れた窓に、せつらの背中が緑の瞳をすかして小さく映る。
 クリーオウは椅子を窓のそばまで引きずって、サッシに顎を乗せた。
 雨の音以外は静かなもので、サラとクエロの寝息の中に時折ページをめくる音が混じるぐらいだ。
 大きなあくびをかみ殺し、退屈だな、とクリーオウはつぶやいた。
 窓に額を当てる。窓の冷気が曇った頭に鋭く沁みた。
 女二人は眠っているし、空目の読む本は彼女に難しすぎる。
 一度退屈ならと薦められたが、読んだら間違いなく寝るだろうという自信のもと、クリーオウは婉曲的に固辞した。
 つまらない、とクリーオウはもう一度窓のほうへ視線をむける。窓は自分のため息ですっかり曇っていた。
 手のひらで拭う、外は雨しか見えない。
 溜息を吐き、彼女は空目が立ち上がる気配に気づいた。
「クリーオウ」
 次いで、冷静で透通るような美声が響いた。人を惹きつける声につられる形でクリーオウは振り返る。
「本を戻してくる」
 しかし発する声はあくまで事務的である。
「ついて行っていいかな?」
 とクリーオウは尋ねてみても、
「いや、サラとクエロを頼みたい」
 すげなく答える返事は否。
 彼女にしてみれば少し、肩を落とす。すると、
「戻ったら、また騒がしくない程度で、君の世界の話を聞かせて欲しい」
 と、空目の口から驚くべき発言が飛び出した。
 そのような事の重大さをクリーオウが知るわけはない。ただ無邪気に、また少し空目が心を開いたと誤解する。
 少し弾む声で頷き、ドアが後ろ手で閉められるのを見て、
 そしてくぐもった爆発音を聞いた。


 とっさに腕が頭を庇った。
 軋みとともに埃が舞い散る。
 一秒の間をおいて、クリーオウはおそるおそる顔を上げる。
 サラは目をこすり、クエロはすでにベットの上で魔杖剣を構えるのを見て、
「恭一!」
 ドアへと駆けた。
 ノブに手をかけ体重をもってぶつかり、反作用に弾き飛ばされる。
 衝撃で歪みでもしたのか、ドアはぎしりと身じろぎするにとどまった。
「か え   さ  。そ    よ     り   しら」
 かすかに聞こえる会話。クリーオウは耳を澄ます。
「生憎、俺は戦うためのスキルを一切持ち合わせていない。
 俺ができることは、お前が俺の心当たりのある世界から来たことがわかるぐらいだ。
 伝言がある、お前は悠二という者を知っているか?」
 クリーオウがドアを叩く。
「し い   も   く  じ 死にな  !」
 ひとつは明らかに剣呑な怒声で、
「ひぃ  アハァ! ヒ    ァアッ! 」
 もうひとつはけたたましい笑い声で、
「そうか」
 それらのなかでも霞む事のない、消して大きくはないが、遥かにまで響く声が、
「ここが俺の終着か」
 自らの死を認めた。
 瞬間、駆けつけたクエロが、ドアからクリーオウを引き剥がす。
 もう一度、今度は至近からの爆音が響く。
「   !」
 大気が鼓膜を打ち払い、脳の奥で炸裂した。
 ホワイトアウトする視界。
 ドアの向こうで、右足を失った空目が気絶し、近くでクエロとサラが群青の獣と剣を交えるその部屋で。
 クリーオウの身体は、意識とともに瓦礫の底に沈んでいった。。


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